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( ^ω^)ブーンと心母少女のようです

1 : ◆tOPTGOuTpU :2008/03/19(水) 22:01:40.93 ID:JAO+O/oE0
1.明けるステージ(プロローグ)


会場の照明が落とされてから間もなくして、ステージを閉ざした臙脂色の緞帳が静かにそよいだ。


観客のどよめきが止み、そうして意識がステージに向けられた辺りになると、
いよいよ緞帳は震えながら昇っていき、

隠された舞台を今、露わにした。


銀色のスポットライトが円光を作り舞台の中央を照らすと、途端に白煙と共にシルクハットを被ったマジシャンが姿を現した。
観客の迎えの拍手に対し、ピエロめいたお辞儀の身ごなしをすると、拍手は更に強まっていった。

高尚なハープのアルペジオが会場に響き渡る。

観客は騒ぐのをやめて、マジシャンの存在すら忘れてしまいそうになるほどに、その音色に聞き入ってしまう。

ステージの右脇で、長い黒髪を一束に結ったアジア美女がハープを優雅に奏でており、
このBGMが、録音でないことを観客は知る。



2 : ◆tOPTGOuTpU :2008/03/19(水) 22:02:54.63 ID:JAO+O/oE0
ゲラニオールめいた香りが舞台から柔らかく発せられ、いよいよ、空気はワンダランドを思わせてくる。

やおら意識が緩んだ頃、マジシャンのショウが開始された。
取ったシルクハットから数羽の鳩を飛び立たせ、
自らの周りを迂回させるという芸からの開始である。

そうして客を一頻り和ませた後に、マジシャンは鳩を赤色のゴム鞠に変身させると、
弾ませ迂回させてみせる。
拍手が鳴り出した辺りで、マジシャンはどこからか取り出したステッキをクルクル弄びはじめた。

すると、鞠の列は徐々にステッキの先に集まっていき、そうして、ステッキの先端に触れた瞬間、
今度は激しい音を立てて、次々に破裂していった。

「ヒッ」と驚くような声が入り交じった喚声が上がりだす。
鞠の破片の一つ一つが、白煙の中、宙を舞って舞台の床に散り散りに落下していく。

喚声が止んだ頃には、ハープの演奏も終了しており、ゴム鞠も一つ残らず欠片として地面に伏している。……
                                    


3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/19(水) 22:03:39.59 ID:ztGD7ob80
支援

4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/19(水) 22:04:21.65 ID:QERwfjrqO
字が読めない

5 : ◆tOPTGOuTpU :2008/03/19(水) 22:04:39.22 ID:JAO+O/oE0
静寂がみえてきた頃、マジシャンは行動に移した。
突然、ステッキを振りかざしたかと思うと、徐に地面へ叩き付けたのだ。

鋭い硬音が残響する。

「「「――――――――ッ!?」」」

恐れ戦く観客の反応に、マジシャンは口元を綻ばせて返した。
次の瞬間、観客はふたたび沸いて喝采した。


ゴム鞠の破片の一つ一つが、残らずトランプのカードに変身していたのであった。
しかも、そのカードは全て裏側であるが、その柄までもが鞠の模様、色と同じという手の込みようである。

今度は、軽くステッキで地面を叩いた。
その拍子に、カード達は一斉に飛び立って、マジシャンの片手に納められていった。

割れんばかりの拍手が会場全体を包み込んだ。

・・ ・・・ 
    

6 : ◆tOPTGOuTpU :2008/03/19(水) 22:06:27.54 ID:JAO+O/oE0
本来ならば、ここからトランプマジックに移るはずであろう。
観客のうち数人を舞台の上に立たせ、カードを引かせたりした、盛り上がるパフォーマンスを。

しかし、今日はあくまで視覚的に魅せるのが筋であり、
マジシャンの"今"の舞踏は、あくまでも、"パーティーを盛り上げる"ための余興にすぎない。



二〇一〇年。    「内藤ホライゾン生誕六十周年記念パーティー」



マジシャンがステッキを一閃させると、
今度は周囲に、薄葡萄色のストールを悩ましく身体に巻きつけた踊り子達を召喚した。


音楽が唐突に再開された。
今度は、テンポが若干速い、どこか明るさを備えるアレンジを施した、チャイコフスキー「金平糖の精の踊り」である。

チェレスタの代わりに、美女のハープが使用されている。
普段の幻想的かつ現実的な硬さを持った音響よりも、一風変わった風味であり、
聴く者を「おや」と思わせた。
バレエ音楽みた感触である。

7 : ◆tOPTGOuTpU :2008/03/19(水) 22:09:31.36 ID:JAO+O/oE0
ハープ以外の音は、どうやら録音されているものらしく、美女とは対称の、舞台の左脇に
設置されたスピーカーから鳴らされているらしかった。

音楽のファンタスティックな響きや、暗い会場全体は観客を不思議に高揚させていった。

踊り子達は、蟲惑的な踊りをマザマザと舞台の上で披露していく。
ブランデー色に染め上げられた舞台と、薔薇めいた香りが、優雅な様を強調させる。

踊り子が前へ躍り出る度に、豊かな乳房が震える度に、男性客たちは驚喜した。
マジシャンは表立つことなく、指揮者めいた動きをし、ダンスのフォローに徹している。

「金平糖の精の踊り」が終盤に差し掛かり、狂乱の曲調となる。
踊り子のストールや長髪は、踊り子の激しい動きに振り回されて、ひたすら宙をうねくった。
スポットはブランデ色を濃くしていき、対照的に周囲の明かりは次第々々に落とされていく。

フィナーレということもあり、客のノリが最前よりも格段に良くなった。

アングラめいた雰囲気のさなかで、踊りは終了し、マジシャンの出し物も一旦の終わりとなった。

8 : ◆tOPTGOuTpU :2008/03/19(水) 22:12:02.56 ID:JAO+O/oE0
客の拍手喝采は、出し惜しみない風情で、ハープのアドリブ演奏の音すら掻き消すほどであった。

踊り子達は投げキッスを客に贈りながら退場し、舞台の上にはマジシャン一人となった。


マジシャンはシルクハットが落ちるほどの勢いで頭を下げると、名残惜しそうに、舞台から消えて行った。
それから暫くして、緞帳が再びステージを覆い隠しはじめる。

熱はそれでも、しばらく冷めることはなかった。
特に、男性客はしきりに口笛やアンコールの要求をする始末である。

ざわめきが若干沈んだ頃、会話が開始された。
男の客の感想としては、「マジシャンのルックスがよかった」というものが多かった。

そうしているうちに、会場全体の照明が灯され、豪勢な部屋が一望出来るようになった。
客は会話の内容を、無意識のうちに社交的なものへすり替えた。




マジシャンは端麗な女性であった。(プロローグ 終)

9 : ◆tOPTGOuTpU :2008/03/19(水) 22:14:52.98 ID:JAO+O/oE0
先に言わなければならないことを。
・長編。全6パート。
・中二成分ギッシリ。
・過去パートと現代パートとかに分かれて進行する。

>>4
ごめん

10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/19(水) 22:15:28.12 ID:ztGD7ob80
支援

11 : ◆tOPTGOuTpU :2008/03/19(水) 22:16:32.53 ID:JAO+O/oE0
2.挨拶風景(第一章)


内藤ホライゾンは六十を迎えた現在では、肝臓が弱っており、アルコールを強く嗜むことが出来ない。
若い頃は酒豪でならしただけあって、酒はしたたかに所有しているのだが、
この有様では「酒も可哀想だ」とのことで、自らの六十周年パーティーに、殆どを無償で放出することにしたのだった。

そのため、マジシャンの前座も終わり会場の明かりが点いた今では、多くの客が上等な酒を味わっていた。
食前ということもあり、大体はカクテルやウイスキーが好まれたが、
食後の秘蔵のコニャックを待ち侘びている人間も大勢居た。
だが、肝心の主役がレッドアイを片手にしているので、慌ててそれを頼む者も少なくなかった。

ホテルのパーティー・ルームが会場なだけあって設備やクオリティは安定しており、
主催者も心置きなくパーティーを楽しめた。

主役である内藤ホライゾンは、会場の隅の円卓に、鷹揚な様子でついていたのだが、
場全体が立食パーティーめいた雰囲気になってきた辺りで、秘書と共に席を立った。

その瞬間、パーティーの参加者は一斉にそちらを向き、遠くの者は会釈をし、
近くの者はぞくぞくと内藤に近寄って来た。

12 : ◆tOPTGOuTpU :2008/03/19(水) 22:19:20.69 ID:JAO+O/oE0
( ・∀・)「内藤さん、誕生日おめでとうございます」

初老の男が頭を何度も下げつつ歩みよった。
内藤と同じく、レッドアイを片手にしているこの男は
先程のマジシャンショウの責任者である。
エンターテイメント事務所の所長の肩書きを持ち、内藤とは、古くからの付き合いであった。

( ^ω^)「どうも、ありがとうございますお」

互いに会釈し合うと、事務所所長のモララーは、早速といった風に、

( ・∀・)「ところで、如何でしたでしょうか先程の出だしは……」

( ^ω^)「勿論楽しませていただきましたお」

( ・∀・)「それはよかったです……何分、途中やり過ぎたかとハラハラしまして……」

モララーは本心から安堵した様子で、「フウ」と息をつくと、

( ・∀・)「内藤さんの誕生日ですし、例のプログラムもある以上……」

13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/19(水) 22:21:04.25 ID:ztGD7ob80
支援

14 : ◆tOPTGOuTpU :2008/03/19(水) 22:21:23.98 ID:JAO+O/oE0
( ^ω^)「いやいや! 盛り上がりは大切ですし、例のは例ので大丈夫ですお」

( ・∀・)「あ、ありがとうございます! ありがとうございます!」

繰り返しお辞儀をし、モララーの手のレッドアイが弾みで零れそうになる。
それからモララーは懐から一枚の名刺を取り出すと、グラスを脇のテーブルに置いてから、
大仰な身振りで、

( ・∀・)「では、こちらがさきほどの娘でございます……どうぞ、お見知りおきを」

内藤にそれを渡した。
頷いてから、内藤はその、名前の部分だけを、素早く読み通した。


          ハインリッヒ高岡 (27)


大人じみた風情を持ちつつも、どこか少女のような雰囲気も携えていた娘だった。
意思の強そうな瞳や、長い睫毛からはカリスマめいたものを思わせ、身体全体からハリとした魅力を感じさせた。
内藤はハインリッヒという娘を気に入っていた。
単なる老人の妄想かもしれないが、なにやら自分に対する熱意のようなものを感じさせたからである。

内藤はグラスを持ったままで胸ポケットに名刺をしまい込むと、モララーに了解の仕草をした。

15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/19(水) 22:23:29.25 ID:ztGD7ob80
支援

16 : ◆tOPTGOuTpU :2008/03/19(水) 22:24:06.55 ID:JAO+O/oE0
そのとき、内藤の後ろで「わぁっ」という子供の歓声が沸いた。
振り返ってみると、ハインリッヒが少女に、風船で形作られた仔犬を渡しているところだった。
少女の零れそうな笑顔と、それを見守るハインリッヒの嫣然と微笑む姿が印象的だった。
風船を貰った少女のほかにも、少年少女は沢山集まって、せがみながらハインリッヒの周りを取り囲んでいる。

ハインリッヒは慌てながらも、優しく子供達を宥めながら風船を作り続けていた。
シャンデリアの光に照らされた彼女の顔には、一筋の汗が煌めいて見え、色気を感じさせる。
舞台の上での、一歩間違えれば殺気にも捉えてしまいそうなほどのオーラは、スッカリ鳴りを潜めていた。
まるで別人であり、その変貌ぶりには感嘆するしかなかった。

眺めているうちに、続々と子供達が増えてハインリッヒを取り囲んでいった。
ハインリッヒは困ったような、はにかんだ笑顔をしながら仕事仲間に手伝いを冗談めいた口調で頼み、周囲を笑わせた。
仕事仲間がバルーンアートの手伝いに勤しむも、一向に子供がハインから離れる気配はない。

そもそもハインリッヒ自体に懐いてしまっているらしく、バルーンを貰っても全く動こうとはしない。
中には抱っこをせがむ子も数名居り、バルーンと合わせて、ハインリッヒは"やんちゃ"な仕事に追われる羽目となった。

笑顔でその光景を見つめていた内藤は、ふと物寂しさに襲われた。
無邪気な子供や、ハインの殊勝な立ち振舞いに、娘の面影を見てしまったのである。

内藤の愛する、デレという心優しい娘の面影を。

17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/19(水) 22:24:12.76 ID:4Fp7BNTI0
これだけ顔文字少ないならブーン系でやる意味無いだろwwwwwwwww

18 : ◆tOPTGOuTpU :2008/03/19(水) 22:25:58.12 ID:JAO+O/oE0
( ^ω^)「………」

今日、デレを見ることが出来るのだろうか。
そう考えるだけで、鼓動が若干早くなるのを感じる。
内藤はしばらくハインリッヒと彼女を取り囲む光景を眺めていたが、ふいにモララーから声を掛けられ、現実に引き戻された。

( ・∀・)「彼女はとても熱心で、それで気配りも忘れない人でして……」

( ^ω^)「とても優しそうな人ですお」

( ・∀・)「はい、大変優しく、それだけでなく勿論技術の方も……」

モララーの言葉は、それ以上聞こえなかった。
内藤は再び、今は居ない娘について、思いを馳せていたからである。

同時に、積年の疑問までもが押し寄せてくる。

デレよ。なぜ私を置いていった?
お前は今、どこに居る? 今まで、どこに行っていた?
十五年前の秋、スカーフを一つ残して忽然と消えてしまったお前。

そしてお前とは、今日会えるのかい?

19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/19(水) 22:28:00.57 ID:ztGD7ob80
支援

20 : ◆tOPTGOuTpU :2008/03/19(水) 22:28:24.86 ID:JAO+O/oE0
最悪の可能性だけは、常に目を瞑ってきた。
今日も、昨日も、十五年前からそうだった。

娘の失踪の裏で急成長を遂げている自分の会社に、虚無感めいたものを内藤は抱いていた。
己の悲壮を尻目に利潤を上げているという事実は、どこか、神からの言い訳みたものを感じさせたのである。

「ヨカッタじゃないか。娘が居なくとも、これで満足できるだろう?」

そういう文句が、今にも後ろから囁かれるようであった。

しかし、内藤はその妥協を潔しとせず、娘を捜索し続けた。
だが、結果は芳しくなく、失意だけが積もっていった。
あざ笑うように成長する「内藤物産」に、自らの会社だというのに、怒りのようなものさえ覚えたのであった。

会社の利潤を認めたら、その瞬間自分は、娘の失踪を受け入れてしまいそうだ。
内藤は常にそう考えていた。いっそ会社さえ潰せば自分の元に娘が戻るのかもしれないとすら考えた。
だが、社員を路頭に迷わせる羽目になり、そもそも、自らの資産が増えれば、娘を探す手段が増えると思うと、
とても会社の成長を止めるつもりにはなれなかった。

歯がゆいジレンマを過ごしているうちに、酒が喉を通らなくなった。だが、今更アルコールの未練など無かった。
そろそろ、デレも三十の年を迎えた頃か……。もしかしたら、もう、私の孫が居るのかもしれない。
内藤は娘の「死んだ可能性」を決して考えず、ズットいき続けた。

そうして過ごしていたある日、一つの朗報が舞い込んできたのであった。

21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/19(水) 22:29:49.98 ID:ztGD7ob80
支援

22 : ◆tOPTGOuTpU :2008/03/19(水) 22:30:07.82 ID:JAO+O/oE0
世界的な霊能力者、「クー・ルー」がデレの行方を霊視してくれるというのだ。
勿論、霊視というのは生者にも適応され、実際、成果を上げることもままあるという。
テレビでも顔を出さない、謎に包まれた人物であり、内藤は常々この人に霊視を頼みたいと願っていた。
そうしたところ、取引先のモナー氏が取り付けてくれたのであった。

だが、彼は確かに"つて"を持っていたのだが、クー・ルーは多忙のため、内藤の願う日付に取り合わせられなかった。
ようやく取れた予約の日は、内藤の誕生日パーティーと同日であった。……

内藤は思いを振り切るようにかぶりを振ると、いつもの取引行儀でモララーと会話をした。
モララーの愛想に隠れた要求をのらりくらりとかわし、手際よく話を終わらせてから、
自社の社員の愛想の渦に突入する。

クラッカーかと勘違いするほどの拍手に驚きつつも、一人々々に握手していく。
中には名を知らぬ社員も居たが、気にせず歓迎されることにする。

内藤が社員の輪に囲まれている頃では、場全体の雰囲気もスッカリ団欒めいたものとなった。
アペリティフ片手に談話する紳士淑女、それにハインリッヒに群がる少年少女、それぞれが楽しみ、時は過ぎていった。

   

23 : ◆tOPTGOuTpU :2008/03/19(水) 22:32:23.07 ID:JAO+O/oE0
トレンチを片手に、ボーイ達は優雅に会場を歩いていたり、または立ち止まっていた。
サイズが割かし大きな黒盆には飲み終えたグラスを乗せて、
サイズが小さめの銀盆には酒の注がれたグラスを乗せているらしかった。

しばらく、団欒の空気は続いた。

七時になれば、皆はテーブルについて、食事を待つことになる。
だが、それまでの間はこうした酒を味わう時間のままだろう。

社員の輪を抜けた内藤は、ボーイにレッドアイの御代わりを貰ってから、再び歩き出した。
進みながら内藤は、まるで自分がアリ地獄になったかのような感覚をおぼえる。
近くの人間が吸い寄せられるように自分の元に集まり、揉み手をするというのは、見ようによっては滑稽である。

勿論、そんな感情はおくびにも出さずに内藤は次々と握手していった。
掛けられる言葉も殆どがテンプレートのようなもので、真新しい感情というものは涌いてこなかった。

「内藤さん!」

近くに居た男が、バリトン調の声をかけた。

( ^ω^)「これは! 先日はどうも……」

( ´∀`)「いえいえ、誕生日おめでとうございます!」

クー・ルーとのアポを取り付けた、モナーであった。

24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/19(水) 22:33:50.58 ID:zGjGU/mc0
原子心母?

25 : ◆tOPTGOuTpU :2008/03/19(水) 22:35:18.89 ID:JAO+O/oE0
モナーは悠然と内藤に近づくと、力強く握手を交わした。
フロック姿のモナーは片手にカウボーイのグラスを持っており、どうやら既に何杯も飲んだのか、
仄かに頬に赤みが差し、吐息はウイスキー特有の匂いを含んでいた。

( ^ω^)「いやあ、来てくれてありがとうございますお!」

内藤はそう言いながら、秘書に軽く目配せをした。
さっと頷いた秘書は、ハンドバッグから白絹に包まれたモノを取り出すと、内藤に手渡した。

( ^ω^)「ところで、例のはこれでいいんですかお……?」

一頻りの恒例的な挨拶が済むと、レッドアイを秘書に持たせてから、絹の包みを解いて中のものをモナーに見せた。
それは、薔薇の刺繍が施されたハンカチであった。

薔薇は雪のような純白色をし、どうやら品種は、フラウ・カール・ドルシュキーのようである。
そして、二十世紀の「開幕」を告げる白薔薇の女王を、薄ピンクのグラジオラスのサークルがグルリと取り囲んでいる。
ハンカチそのものの色までも薄ピンクであり、どこか処女を思わせる風情であった。

( ´∀`)「はい、おそらく……デレさんの念の強い品であれば、とのことですモナ」

( ^ω^)「では、これを……ステージで……」

神妙に頷いてから、内藤はハンカチを秘書に渡し返した。

26 : ◆tOPTGOuTpU :2008/03/19(水) 22:37:29.59 ID:JAO+O/oE0
突然、モナーは右を向いて唐突に手招きを始めた。

すると、間もなくして、鮮やかなドレスに身を包んだ淑女が近づいて来た。
皺一つ無い艶やかな肌をしたその女は、スカートの裾をつまみあげて恭しくお辞儀した。

(*゚ー゚)「内藤様、誕生日おめでとうございます」

( ^ω^)「ありがとうだお、しぃちゃん!」

長女デレと同級生であったというしぃに、内藤は朗笑と共に言葉をかける。
血色のよい顔色で、おそらくリキュールをそこそこに煽ったものと思われるが、
しかし、アルコールの匂いを一切感じさせず、杏に似た香りを持っていた。

そういえば、マジックショウのときの、あの優しい芳香は消えてしまったのかしらん。
内藤はそんなことを考えつつ、モナー父娘と談笑のひと時を楽しんだ。



時間は六時四十分となった。

       

27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/19(水) 22:39:12.91 ID:ztGD7ob80
支援

28 : ◆tOPTGOuTpU :2008/03/19(水) 22:40:59.75 ID:JAO+O/oE0
照明の照度が若干落とされ、ムードは僅かに変化した。
光はかすかにオレンジを帯び、ボーイの数も減ってきたようだった。

客人の半数近くは自らの座席につき始め、子供などは既にナイフをフォークを持ち、キンキンと音を立てて遊んでいた。

既に、マジシャンショウの前に乾杯は済ませてあったが、食事が運びこまれる前に
乾杯の仕切り直しをするらしく、新品のグラスが用意されている。

( ´∀`)「まぁー忙しくはないですけどね、ま、その分、ミスだけはないようにしないと……」

( ^ω^)「そうですお、でもだから神経使っちゃって……」

などと言いつつ、二人とも辺りを気にしだした。
そうして、お互いがそう考えていることを知った二人は、サっと返事を言い合うと、各々の席につこうとした。
だが、内藤が足を動かそうとするところを、しぃが突如、呼び止めた。

(*゚ー゚)「内藤さん」

( ^ω^)「ん? 何でしょうかお?」

29 : ◆tOPTGOuTpU :2008/03/19(水) 22:42:24.12 ID:JAO+O/oE0
内藤がおどけた風に答えると、しぃは若干伏し目になりつつも、
毅然とした態度を持ちながら、

(*゚ー゚)「すみません。パーティーが終わったら……少し、お話したいことが。どうしても……」

と、今までとは違った物言いで、真剣な意味合いが含まれているのだろう、
それを悟った内藤は、

( ^ω^)「分かったお、しぃちゃん」

丁重な言葉で返した。


・・ ・・・


時間は七時となり、再び照明は落とされた。


                      (挨拶風景 終)

30 : ◆tOPTGOuTpU :2008/03/19(水) 22:44:54.43 ID:JAO+O/oE0
3.霊視ショウ

・・

・・・

( ^ω^)「……というわけでして、とにかく、えー……皆様の発展も、これからを祈ってですお……
      とにかく、乾杯!!」

その掛け声の後に、騒ぎ立てるようにして「乾杯!」という異口同音の声が響いた。

若干へどもどしてしまったが、無事に挨拶を終わらせることが出来、ホっとしながらで内藤は壇上から降りた。
席につくと、フゥと声を漏らす。
秘書が素早く「大丈夫ですか」と声を掛けると、内藤は「いや平気だお」と呟いた。

(;^ω^)「緊張するんだお……」

「あの、霊視ショウですか?」

(;^ω^)「そうだお」

内藤はコクリと頷いた。

31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/19(水) 22:46:09.16 ID:ztGD7ob80
支援

32 : ◆tOPTGOuTpU :2008/03/19(水) 22:48:24.28 ID:JAO+O/oE0
会場が突如拍手に包まれた。舞台の方を見やると、どうやら、再びショウが開始されたらしい。
先程のとは打って変わって、ダークなあしらいを施している。
照明は深い紫色で、BGMもシタールを使用したインド音楽であった。

会話はそこで打ち切られたが、内藤はひたすら潜心していた。

今日、ようやくデレの行方が分かるかもしれない。
パーティーということもあり、表の顔は笑っていたが、裏はどうしようもない不安に満たされていた。

内藤は妻のツンと、次女のペニサスを失っていた。
だからこそ、不安でタマラなかったのだ。
デレまでもが……もうこの世から居なくなってしまったのではないか、と。
どうしても振り払いきれない幻想であった。

だが、家族の女が全て、自分の元から去っているという事実は、あまりにも重かった。……
                                    

33 : ◆tOPTGOuTpU :2008/03/19(水) 22:50:47.22 ID:JAO+O/oE0
ふたたび拍手が湧き起こったが、内藤は気にすることなく考えに没頭した。


ツンは……妻は、二十六年前に交通事故に遭ってしまった。

デレは……長女は、十五年前に一枚のハンカチを残して忽然と姿を消してしまった。

ペニサスは……次女は、五年前に一枚の遺書を残して自殺してしまった。


三人のことを、思い出すだけで、胸が張り裂けんばかりに痛んだ。
知らぬうちに己が何かしてしまったような、自責の念が、苛んでいく。
そうして、せめてデレだけは……デレだけは……という儚い希望が、内藤の胸中に拡がっていくのであった。

    

34 : ◆tOPTGOuTpU :2008/03/19(水) 22:54:03.58 ID:JAO+O/oE0
気がつくと、内藤は両手を組んで「お祈り」のポーズをしていた。
そっと外してから、舞台の方にやおら目を移す。

ハインリッヒが躍動していた。
複数のアシスタントと共にステージマジックを披露している。
ダンシングケーンと呼ばれる、ステッキ浮遊のマジックであるが、
視覚効果を最大限に取り入れて、見世物として最大限に昇華させている。……


会場の明かりは、各テーブル毎のアルコール・ランプが主となり、
今まで役目を果たしていたシャンデリアは、現在、ランプの光にキラリと時折反射するのみで、全く休んでいる。

既にメイン・コースは終了し、
客人はマロン・シャンテリーや食中酒のオーヘントッシャンに舌鼓を打ちながら、マジシャン・ショウを楽しんでいた。
だが、彼らの胸中では、モヤが渦巻いていた。

真打であるクー・ルーの霊視ショウに対する、期待と不安が入り交じっているのであった。

35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/19(水) 22:56:44.12 ID:ztGD7ob80
支援

36 : ◆tOPTGOuTpU :2008/03/19(水) 22:57:28.92 ID:JAO+O/oE0
一切のメディアに、顔を出さない女であるらしいが、どのような風貌なのだろう……。
世界を又に掛ける霊能力者とは、果たして真実なのであろうか……。
そして、もしそれが真実なのだとしたら、観客である自分のまで厄めいた影響が降りかかるのでは……。
また、本当にデレ嬢は見付かるのであろうか…………という…………。

・ ・・
・・ ・・・・

内藤の緊張感はただごとではなかった。
無理もない。
これから、世界に名を轟かす怪魔人ともいうべき相手に、娘の所在を尋ねるのだから。

(;^ω^)「………」

それにしても……。内藤は俯き加減で、そう考えた。
何故わざわざこの日に、しかもパーティーの最中という条件を、クー・ルーは取ったのであろう。
この日しか……この三月三日にしか不可能ならまだしも……パーティーが終わった後でもいいではないか……。
条件をクー・ルー側から提示されたときから、常に感じてきた疑問であった。

37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/19(水) 23:02:25.99 ID:ztGD7ob80
支援

38 : ◆tOPTGOuTpU :2008/03/19(水) 23:02:26.18 ID:JAO+O/oE0
だが、こちらの言い分には、クー・ルー側は一切妥協しなかった。
仕方なく、パーティーの中に霊視ショウと取り込むという譲歩を、内藤側がすることになった。
非起訴の誓約書をワザワザ書かされもした。思い返しても、涙ぐましい譲歩だと内藤は思った。

単なる売名ではない。これは内藤の考えであった。
何か、裏が……背後に何かが存在するのではないだろうか。
内藤物産への打撃……そんな生半可なものではないような。

しかし、もうこの場ではいくら不満を漏らしても無駄だ。
内藤は振り切るように、エクスプレッソを喉に流し込んだ。

フ……と目を閉じて首を上に逸らす。
頑丈な鎖に吊るされたシャンデリアが、今にも落下して自分の顔に激突するような錯覚に見舞われる。
だが、不思議と恐怖しない。恐怖しない……。
恐、怖……。

内藤は、マジックショウの喧騒の中で、半醒半睡となっていった。……

・・ ・・・

・・・



39 : ◆tOPTGOuTpU :2008/03/19(水) 23:05:45.13 ID:JAO+O/oE0
内藤が目を覚ました頃、マジシャンショウは終盤を迎えていた。
瞬きながら見たステージの上では、既に、ハインリッヒが軽くお辞儀をしていた。
内藤はハっと覚醒すると、沸き起こる拍手の中で喉を鳴らした。

次だ……。
腋窩がカァっと熱くなり、そうして水っぽくなるのを感じる。
控え室に向かうこともない、いきなりの霊視が、これから始まる……。
面会を全くせず、はじめての対面といってもいい、それが、……今から……。

鼓動が高まり、身体全体が熱っぽくなり、喉がカラカラに渇く。
震える手でエクスプレッソを取ると、途端に水面が痺れたように打ち震えるのを見て驚く。
急いで残りを飲み下す。だが、喉がコーヒーの流し込まれていく感触を全く覚えなかった。

これから行われるショウは、あまりにも非常識だと思う。
だが、これ以外にクー・ルーが許さなかったのだ。
ほとんど、突発的といってもいいような霊視ショウを……。

騒ぎが静まった頃、BGMも止み、空気が移り変わった頃、司会が唐突に叫んだ。

「さて! これからのショウは皆様ご存知の通り! さる世紀の大霊能力者とも言うべき方にございまする!
 そして! 霊視するは内藤様のご令嬢!
 果たして霊能力者様はどのような言葉を、霊の力を借りて麗しい口から発せられるのか!
 それでは、しばらくご清聴に願います!」

40 : ◆tOPTGOuTpU :2008/03/19(水) 23:06:35.13 ID:JAO+O/oE0
五分ほどうせます

41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/19(水) 23:07:15.90 ID:A97D3/eR0
なん……だと……?

42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/19(水) 23:07:43.99 ID:yjHbsVKf0
なんというじらし

43 : ◆tOPTGOuTpU :2008/03/19(水) 23:13:20.19 ID:JAO+O/oE0
お待たせ。ジラシストでごめんね。
アーサー・クラークに黙祷。では再開します。

44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/19(水) 23:14:23.29 ID:yjHbsVKf0
クラークなら仕方ない

45 : ◆tOPTGOuTpU :2008/03/19(水) 23:15:21.17 ID:JAO+O/oE0
絞られたライトが、暗黒のステージを照らす。
舞台上には、向かって右手と左手側に、椅子が備えられ、
そうして正面奥にはクロスオーバーのレースカーテンが据え付けられている。

しばらくして、カーテンがゆるく戦ぎ、そうして一人の女性が現れた。
しなやかな動作で、スポットライトの浴びる位置に着く。

この人が、クー・ルー……。観客のほとんどは息を呑み、ステージの上の美女を凝視した。
アゼリアベージュ色の艶やかなドレスに身を包んでいるが、化粧らしい化粧はほとんどしていない。
にも関わらず、その面容からは例えようもないほどのオーラが放たれていた。
スっと筋の通った勇ましい鼻梁や、若干垂れた大きな目がそうさせるのか。
はたまた、ほっそりした身体つきや、漆黒の長髪がそう感じさせるのか。

クー・ルーは目礼した。
シンと静まり返った中では、その動作すら異様なものに思われた。
それから、鷹揚な歩きで左手の椅子に腰掛ける。
慌ててスポットライトが彼女を追う。

またも訪れた沈黙は、スタッフすら唖然とさせた。

46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/19(水) 23:16:45.65 ID:ztGD7ob80
支援

47 : ◆tOPTGOuTpU :2008/03/19(水) 23:18:07.04 ID:JAO+O/oE0
もう一つのスポットライトが、内藤の頭上を照らす。
ハっとどよめく中で、平静を保とうとした司会の声が響き渡る。

「……えー! それでは、内藤様! 壇上にお上がりくださいませ……」

台本すら忘れたかのような混乱した声であった。

内藤は、緊張でどうにかなってしまいそうな身体をおさえ、必死で立ち上がると、ぎこちない歩みで進んで行った。
階段を上りきったとき、内藤は心臓が掴まれたような気分に陥った。
クー・ルーと視線が合ったからである。

その瞳の中の虚空が、恐怖を呼び覚ますと同時に、内藤に一つの感覚を与えた。

この娘と……オヤ……? どこか、昔会ったような……という、既視感みたものを……。


(;^ω^)「……どう、も……」

川 ゚ -゚)「よろしくお願いします」

内藤は反対側の椅子に腰掛けると、長く息をついた。
この移動が、とてつもない苦行に感じられた。
だが、文字通り、本番はこれからである。

48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/19(水) 23:19:02.01 ID:8kTi+kzJ0
漢字読めなすぎワロタ

49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/19(水) 23:19:09.13 ID:yjHbsVKf0
支援

50 : ◆tOPTGOuTpU :2008/03/19(水) 23:19:56.58 ID:JAO+O/oE0
唾を飲み込むことすら躊躇われるような空気が、会場を覆っていた。
子供の客など、雰囲気に圧されて今にも泣きそうであった。
だが、泣くことは許されないと理解しているのか、身体を小刻みに篩わすばかりである。

スポットライトは失せ、代わりに舞台全体をあてどなく照らすライトに切り替わる。
内藤の身体に熱が帯びる。慌てて黒のハンカチで顔を拭い、
そうしてクー・ルーに娘のハンカチを渡さねばと思い出す。

川 ゚ -゚)「では、それをお願いします」

自分の考えは見透かされている。内藤は愕然とすると同時に飛び上がるように立つと、
やはりぎこちない動作で向かい側のクー・ルーに、娘のシルクのハンカチを渡した。

六十の老体に、この熱と緊張は危険だ……内藤は半ば朦朧としている意識の中で、そう考えてばかりいた。
クー・ルーがハンカチを受け取り、「どうも」と会釈したときなど、腰が抜けてしまいそうであった。
また……これから、自分の椅子に戻らなければならないのかという……意識が、重く圧し掛かったので…………。

泣きそうになりながら、内藤は自分の椅子に向かって腰掛けた。
頭上で輝く、強い白色の光が体力を奪っていくのを感じる。
額を濡らした汗が、筋をつけながら顎に到達して、それからポタリと舞台に垂れた。

51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/19(水) 23:20:09.42 ID:w67dNhET0
やぁ(´・ω・`)今日もまた君かぁ。来ると思ってたよ。歓迎しますよ。

http://school7.2ch.net/test/read.cgi/exam/1190694160/l50

に「どんなもんじゃーい!」って書き込むと明日からちんこのサイズが1cm伸びます

健闘を祈る


とりあえずちんこ伸ばしとけ
伸ばしといて損はないと思うぞ

52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/19(水) 23:21:06.88 ID:ztGD7ob80
支援

53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/19(水) 23:21:16.40 ID:A97D3/eR0
支援

54 : ◆tOPTGOuTpU :2008/03/19(水) 23:22:49.91 ID:JAO+O/oE0
川 ゚ -゚)「…………。ありがとうございます……」

ハンカチを見続けていたクー・ルーは、内藤が椅子に座ったと同時に礼を言った。
こころなしか、クー・ルーの瞳は至純なものへ変化していったようだと、内藤は思った。
だが、悲哀めいたものも感じさせられる……老体はズキズキと痛んでいく。

川 ゚ -゚)「それでは、これからはじめます……。内藤……デレ さんの……行方を、今……」

そう言うと彼女は固く目を瞑り、ハンカチを握りながらわずかに俯いた。
眉根を寄せ、口を一文字に締めており、若干苦悶げにも映った。

再び、水を打ったようになった。
BGMも奏でられておらず、司会ですら困惑しているこの空間は、まさにワンダランドと言えた。

(;^ω^)「………」

内藤は、動悸がおさまらないばかりか、呼吸も難しくなるほどの緊張に襲われていた。
掌から信じられないほどの汗が溢れ、その手で圧していた腿の辺りが濡れそぼった。


ふいに、クー・ルーが顔を上げた。

川 ゚ -゚)「それでは……」

55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/19(水) 23:25:02.97 ID:yjHbsVKf0
支援

56 : ◆tOPTGOuTpU :2008/03/19(水) 23:25:30.61 ID:JAO+O/oE0
(;^ω^)「………!」

いよいよ、始まるのか。
はやる気持ちを抑えきれず、内藤は思わず立ち上がった。
観客も同様で、全くの沈黙が一瞬にして破れ、ざわめついた。

川 - )「………」

フッ……とクー・ルーの表情から生気が失せ、そうして椅子に凭れこんだままで気絶した。
ざわめきは更に高まる、彼女の身を起こそうと急いで内藤は立ち上がる。
だが、耳のつんざくばかりの鋭い司会の声がとどろく。

「皆様ご静粛に! ご静粛にお願いします! 内藤様もどうか彼女にお手を触れられぬよう!
 彼女は只今霊とシンクロなさっているのです! どうか、どうかそのままで……」

内藤はピタリと静止すると、おずおずと後方に下がった。
                         

57 : ◆tOPTGOuTpU :2008/03/19(水) 23:27:57.44 ID:JAO+O/oE0
やがて、クー・ルーの肢体がヒクと痙攣した。
その震えはやがて身体全体に染み渡り、立ち上がっても、まったく止まなかった。
瞼は軽く閉じているが、その痙攣に合わせて、長く伸びた睫毛が揺らいでいる。

クー・ルーはゆっくりと目を開けた。
それから、何度か息を吐いてから、こう口にした。


川 - )「私は……デレです……」

声色こそ違うものの、イントネーションはまさしくデレのそれであり、
内藤は驚きのあまり心臓が張り裂けそうになった。

(;゚ω゚)「……デレ……ッ!」

再度、内藤はゾンビのように前進した。
ヨタヨタと覚束ない足取りで、ただ、ただ娘の憑依体に近づこうと……無我夢中で……。

だが、遮るようにして、彼女は、

川 - )「そのままでいて、聞いてください。……私の、私の、今を……」

内藤は足をとめた。興奮がいよいよ臨界点に接してきている。
内藤の老体は、現状に耐え切れず悲鳴をあげている。

58 : ◆tOPTGOuTpU :2008/03/19(水) 23:30:33.14 ID:JAO+O/oE0
彼女は両腕を広げて仰視した。
真上から光を受けている彼女は、まさしく女神めいたもののように映った。

嗚々――この女性こそまさしくミューズ……内藤に、恍惚した感情を与えた。

会場の人間は、誰一人として彼女の身体から目を離さなかった。
この人こそ、まさに女神であり、そうして、デレ嬢が今この場に居るのだろうという、確信みたものを持っていて……。



川 - )「私は今……この世に居りません……」


(;゚ω゚)「ッ……!」


唐突に、彼女は衝撃の事実を語った。
内藤は膝が抜け、その場にへたり込んだ。観客も同様に苦しげな声を漏らす。
誰もが、その発言にショックを受けていた。……

59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/19(水) 23:30:35.58 ID:yjHbsVKf0
支援

60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/19(水) 23:32:50.94 ID:ztGD7ob80
支援

61 : ◆tOPTGOuTpU :2008/03/19(水) 23:33:39.81 ID:JAO+O/oE0
続けて彼女は、五月雨式に、


川 - )「私は……殺されました……十五の秋に……」

(;゚ω゚)「なッ……そんな……」

その言葉は会場の全ての人間を震撼させた。
デレのことを詳しく知らず、この霊視ショウに興味を持っていなかった人種ですら、心臓を抉られる思いとなった。
殺人という、あまりに重い概念が、締め付けていく。


次に、天を見つめていた彼女の視線が、ヒタと内藤の顔を捉えた。
能面のような表情で、静かに呟いた。




川 - )「実父の……内藤ホライゾンに……私は、殺されました」


62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/19(水) 23:34:12.29 ID:ztGD7ob80
支援

63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/19(水) 23:35:25.42 ID:yjHbsVKf0
支援

64 : ◆tOPTGOuTpU :2008/03/19(水) 23:35:54.93 ID:JAO+O/oE0
瞬間、会場が割れんばかりに、騒然となった。
とうとう泣き叫ぶ子供も現れ、一部の女性客も緊張で咽び泣いた。
それ以外の客は、口々に何かを騒ぎ立てていた。…・・・


(#・∀・)「やめろ! 今すぐこのショーを中止するんだ!!」

怒号が鳴り響き、困惑するスタッフは更に困惑していった。
急いで緞帳が下ろされていく。
騒ぎは静まることを知らず、罵りすら発生していた。……

舞台上では、


(;゚ω゚)「……そんな馬鹿な……馬鹿な……!」

川 - )「………」


曇った修羅場が、発生していた。

65 : ◆tOPTGOuTpU :2008/03/19(水) 23:38:06.08 ID:JAO+O/oE0
緞帳は完全に下りきり、観客とは隔絶された。
分厚い布の向こうで、周りが混乱していることは充分感じられる。

だが、そんなものは内藤にとって、どうでもよかった。


デレが……自分に、この私に、殺されただなんて……! 

ありえないお……! ありえないお!!


その叫びが内藤の口から発せられることは、なかった。
代わりに、

(; ω )「ッ……。ヒィッ……! ヒィッ……!」

力が抜け、内藤はうつ伏せに倒れこんだ。もう、気力はほとんど消耗してしまった。

慌てて駆けつけたスタッフ達が、内藤を抱きかかえ、起こすも、
内藤はそれを振り払い、力を振り絞って自力で立った。

川 - )「………」 

66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/19(水) 23:38:59.24 ID:ztGD7ob80
支援

67 : ◆tOPTGOuTpU :2008/03/19(水) 23:40:23.94 ID:JAO+O/oE0
(; ω )「……お、教えて……くれお……デレ……!」

よろよろと、今にも倒れそうな動作で内藤はクー・ルーに歩み寄った。
だが、


川 ゚ -゚)「寄るなッ……汚らわしい!」

(;゚ω゚)「ッ……」

一喝し、舞台の上の全てのものを硬直させた。

そうして、静かに語りだした。……


川 ゚ -゚)「どういう気分だ……? 内藤ホライゾン……。この、連続殺人鬼が」

(;゚ω゚)「エッ……な、なん……」

川#゚ -゚)「汚らわしい……女殺しめがッ……!」
                   

68 : ◆tOPTGOuTpU :2008/03/19(水) 23:43:16.89 ID:JAO+O/oE0
(;゚ω゚)「おん……な……殺……」

何のことだが分からない。
内藤は混乱の極致に追い込まれた。

女殺し……? なんのことだ、なんのことだ。
まさか、ツンが、デレが、ペニサスが死んだのは……この僕が……そんな馬鹿な!!
それに、デレは死んだわけと……けど、けど……あのイントネーションはまさしく……。

川 - )「……じょを……」

エッ……? 内藤はクー・ルーの小さな呟きを、朦朧とする中で聞き取った。
何だって……「しんぼ」……? それは一体……なん、……?

(;゚ω゚)「デ……レ……っ」

薄れゆく意識の中で、スタッフの「内藤さん!」「大丈夫ですか!」と叫ぶ声
を聞きながら、

内藤は、精根尽き果てて、意識を失った。……

                             

                       (霊視ショウ 終)

69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/19(水) 23:43:21.30 ID:yjHbsVKf0
支援

70 : ◆tOPTGOuTpU :2008/03/19(水) 23:45:05.04 ID:JAO+O/oE0
今日のトコはここらへんで終わりでっす

71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/19(水) 23:46:18.40 ID:ztGD7ob80

Appleです。まとめさせてもらってもよろしいでしょうか?

72 : ◆tOPTGOuTpU :2008/03/19(水) 23:46:50.35 ID:JAO+O/oE0
ありがとです。お願いしますー

73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/19(水) 23:49:49.45 ID:A97D3/eR0
乙華麗

なんか元ネタでもある話なのか?

74 : ◆tOPTGOuTpU :2008/03/19(水) 23:51:51.02 ID:JAO+O/oE0
あー、そうそう。言い忘れちょったです。
明確な元ネタ自体はないけれど、
俺の大好きな小説と類似した部分は出てくるかもです。

この小説を先に言うべきだろうか?

75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/19(水) 23:53:35.07 ID:A97D3/eR0
丸パクリってわけでもないなら、指摘された時に後書きででもいっときゃ良いんじゃね?

76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/19(水) 23:56:10.73 ID:JAO+O/oE0
そうだね、まぁ後書きで羅列しよっかな。

すみませんアップルさん、
>>9の前書きに、
・作者の大好きな小説と類似した部分がけっこう頻出します。
と追加お願いします。

77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/19(水) 23:59:07.01 ID:ztGD7ob80
>>76
了解しました

78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 00:11:04.24 ID:CV96yPHRO
乙ー

79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 00:11:46.35 ID:Mfi+7uPR0
http://applevip.web.fc2.com/shinbo/shinbo.html

80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 00:14:31.08 ID:jYAgKe3h0
うほっありがとうございます!

ここで一つ。
えー、実は自分、そろそろ仮免を取らなくっちゃあならなくなったので
次の投下は未定だったりします

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