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ロリ×百合=

1 :1:2008/08/24(日) 00:15:00.12 ID:pZ3FAYND0
ちょっと前に1日分だけ張ったけどどうせ見てる日といなかったと思うので
今日は最初から最後まで人いなくても完走するんだ

百合話(エロゲの)とちょっとした絵を張るので嫌いな方は見ないでください
文句がある人も見ないでほしい

内容わからないところもあると思うけど、妄想で補ってほしい

2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 00:15:30.20 ID:JUvDd2IZ0
はぁ?
胸がないのなら少年でも良いだろ

3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 00:16:05.85 ID:kg4pMiws0
よしきた

4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 00:17:37.06 ID:pZ3FAYND0
軽く人物説明

千夏 この話の主観

春菜 千夏の幼馴染

5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 00:18:15.28 ID:euUkm2uJ0
この花かな?
さりげなく期待してるわ

6 :1:2008/08/24(日) 00:19:53.24 ID:pZ3FAYND0
アンジェラ「卒業式、開式の辞」
静寂の中、シスターアンジェラの声が響いた。
私たち、卒業生の入場が何度かやり直させられて、正直少しだれて来ていた所だったけど、
その声で一気に緊張が蘇る。
春先のまだ冷たい空気がさらに冴え渡り、身体が引き締まる心地がする。
絶対零度のシスター アンジェラ。
○等部に進級してから、ずっとわたしたちを見ていた人。
そのあだ名の通り、厳格、冷徹、くすりと笑ったことさえも(少なくてもあたしは見たことが)ない。
張り詰めたような雰囲気をいつもまとっている彼女のことを、私たちは畏れ、時には憧れたりもした。
こうして、卒業式の予行演習が始まった。
……………………………


先に断る
絵を期待してる人には申し訳ないけど、あんまり数はないし 中盤までエロシーンはありません

7 :1:2008/08/24(日) 00:21:43.78 ID:pZ3FAYND0
こういう「本番の前の練習」というのはキライじゃない。
少しピリッとした、身の引き締められるような緊張感も好きだ。
みんなの前に立て、とか、そういうのになると少しまずいけど。
おかげで大会や記録会の時には、何度ミスをしたか……。
………………………。
聖マリエル女学院。
それが私達の学び舎の名前。
名前の通り、キリスト教系の私立の学校で、幼稚園から大学まで、ほとんどエスカレーター式に進級できる。
そんなわけだから、卒業すると言っても、エスカレーター式にみんな揃って進学するだけ。
卒業ソングにつきものの「お別れ」なんて趣きは薄いと思う。
けれど。
千夏(……卒業か)



あとスレ立てるのとか初めてだから生ぬるい目でご観覧ください

8 :1:2008/08/24(日) 00:23:47.05 ID:pZ3FAYND0
……やっぱりそれなりに感慨はある。
○等部での3年間。長いようで短いようで、けれど、過ぎてしまえばあっという間。
いい事も悪い事もあって、好きな事や嫌な事もあったけど、
振り返れば、それらのひとつひとつはかけがえの無い思い出。
そんなかけがえのないひとつひとつを積み上げてながら過ごした時間は、やっぱりかけがえのないもので……。
……やっぱり、卒業っていうんで少しセンチになってるかも。
でも、そんな時間を変わり映えのしない毎日、という子もいる。
そして、実はそう言ってる本人こそが、周囲の人間の毎日を色々な意味でドラマティックにしていたりする。
少なくとも私の喜怒哀楽は、その子によって振り回されていると思う。
しかも、当の本人は間違いなくそのことに気付いてない。
……あ、何か不安になってきた。

9 :1:2008/08/24(日) 00:24:59.70 ID:pZ3FAYND0
千夏(……まさか、寝てたりしないよね)
私は目だけを動かして、
向こうの椅子に座ってるはずの女の子を見ようとしたけど、
名前の順番で座って、しかも首を動かさないでとなると、「さくらぎ」と「ともはら」ではあまりに間がありすぎた。
ついでに視線だけを周囲に巡らせて見ると、
やっぱりあちこちに、いかにも眠そうな感じの子が、ちらほらと見かけられた。
……まずい。
寝ちゃうぐらいならともかく、椅子から転げ落ちて「どんがらがっしゃん」なんて音、立てたりしちゃわないだろうか。
それとも、うとうとしたりして、隣の津山あたりに寄りかかったあげく、肩口によだれをべったりくっつける、なんてことないだろうか。
万が一、いびきなんてかいたりしたら最悪。
……センチな気持ちが、一気に消えてなくなった。
千夏(すぐ隣だったら、注意してやれるのに)
どうして私の苗字は、「ともの」とかじゃないんだろう?
それなら、もっと、近くにいられたのに……
アンジェラ「卒業生、起立」
千夏「……!」
がたっ!
突然だったので、胸がドキッとする。
それでも立ち上がる時によろけたり、ということはなかったけど……
やはり横目で見ると、目の隅で、ちょっと頭下げてる子が見えた。

10 :1:2008/08/24(日) 00:26:53.93 ID:pZ3FAYND0
髪を結わえた赤いリボンが揺れる。その子が、私の○等部での生活をドラマチックにしてくれた女の子だ。
隣だと、津山に何かやらかしたんだろうか?
千夏(はーるーなー)
彼女に心中でそうツッコんだ。
やがて、卒業式のプログラムは「卒業証書授与」まで進んだ。
名前がひとりひとり呼ばれていく。
それらには、知った人の名前もあれば、顔を見たことの無い人の名前もある。
呼ばれる名前が、私たちのクラスになった。
苗字が「あ」から「い」、「う」になって、
「か」になって、「き」になって「く」になって……
うわ、少し緊張してきた。

11 :1:2008/08/24(日) 00:28:13.51 ID:pZ3FAYND0
担任「佐倉木千夏」
千夏「はい!」
私は返事をした。
その声は、講堂の中の静寂に吸い込まれて、消える。
自分の走る番を終えた時のような安堵が、胸に降りる。
呼ばれる苗字はわたしの「さ」から「し」になって、「す」、「せ」、そして「た」で、
担任「谷山智恵」
委員長「はい」
……委員長って、そんな名前だったっけ。
そして、苗字は「つ」に行って……。
そろそろだ。
千夏(ちゃんときめてよ、春菜)
まさか返事でトチるなんてことはないと思うけど……
…………
と、突然名前の読み上げが止まった。

12 :1:2008/08/24(日) 00:30:39.36 ID:pZ3FAYND0
千夏(ちょっと。何があった?)
何であの子が呼ばれない?
わたしは○等部での彼女のことを、頭の中でひっくり返した。
……色々とやらかした子ではあるけど、「問題児」と言うほどではないはずだ。
テストだってまあ普通だったし、悪い事をするような子では絶対にないし。
そりゃあ、教室移動の時に移動する教室間違えたとか、体育の授業の時に体操着忘れたとか、なんてことはたまにやってたけど。
……いや、修学旅行のときに迷子になったなんてやらかしてたっけ。
千夏(あの時は……大変だった)
そのことは、昨日のことのように思い出せる……
でも、それにしたって卒業を取り消すようなことじゃない。いくらうちの校則が厳格だからって、本人には悪気なんてないんだし……

13 :1:2008/08/24(日) 00:31:48.41 ID:pZ3FAYND0
なんて考えていると、またシスター アンジェラの声が響いた。
アンジェラ「学院長と高橋先生は急用のため職員室に戻られましたが、本番ではこのような事はありません」
今気がついたけど。担任の先生にしても、校長先生にしても、マイク使って喋ってたのに、シスター アンジェラは自分の声で話している。
怒鳴ったり叫んだり、という調子でもないのに、講堂の隅々にまで声が行き届いている。
千夏(昔、声楽でもやってたのかな?)
アンジェラ「では、読み上げを代行させていただきます」
アンジェラ「出席番号12番からですね」
千夏(うわ……これは緊張するわ)
シスター アンジェラに呼ばれるなんて。
返事する時にちょっと噛んだり、とちったりしても仕方ないかも。
わたしは自分の時以上にハラハラしながら、次の名前が呼ばれるのを待った。
アンジェラ「友原春菜」
春菜「はい」
その返事は、特に声が裏返ったり、タイミングがズレたり、なんてこともなく。
講堂の静寂の中に消えていって。
千夏(……ふぅ)
こっそりと、私は安堵のため息をついていた。

14 :1:2008/08/24(日) 00:32:23.56 ID:pZ3FAYND0
友原春菜。
それは、私の親友の名前。
初等部からのつきあいで、ぽけっとしてて、ちょっと抜けてて、
傍から見てると危なっかしい子。
本当に大事な親友で……そして。
そして……私にとっては……

15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 00:33:07.19 ID:KHqJmHce0
素人が書く場合の百合は普通に女子校とかじゃなくて家が近い幼馴染みくらいにしておけば良いのに

16 :1:2008/08/24(日) 00:34:04.04 ID:pZ3FAYND0
「しかし、あなた方に告げるならば、情欲を抱いて女性を見つめる者は既に、
心の中で姦淫を犯しているのです」(マタイによる福音書:5.28)

17 :1:2008/08/24(日) 00:34:50.81 ID:pZ3FAYND0
アンジェラ「それではこれで、卒業式の予行演習を終了します」
あちこちから、ホッとしたような空気が流れる。私の肩からも力が抜けた。
けど、
アンジェラ「……最後に、注意があります」
また講堂の空気が緊張した。
アンジェラ「卒業を目の前にして、感傷的な気分になってしまう時期です」
アンジェラ「学院内で進学される方もいらっしゃれば、この学舎を巣立たれる方もいらっしゃいます」
厳かな響きをもって、シスター アンジェラの声は講堂の隅々にゆきわたる。
アンジェラ「これまで喜びや悲しみを共に分かち合ってきた友と離れ、新しい環境に臨む事は大きな試練でしょう……しかし、」
アンジェラ「必要なのは試練に立ち向かう強い心であって、不安を紛らわす行為ではありません」
不安……紛らわす行為……
千夏(……まさか!)
きゅうっ、と、胸の奥を締め上げられたように思えた。
講堂に並ぶ生徒たちがざわめく中に、私だけがとけこめない。
シスター アンジェラが右の手のひらを上げ、ざわめきをとどめる。

18 :1:2008/08/24(日) 00:36:19.81 ID:pZ3FAYND0
アンジェラ「最近、学院内の風紀が少し乱れています」
千夏(いや、そんなことはありません)
私はアンジェラに、心中で言い訳した。
アンジェラ「卒業という事で、勉学に関係のないものを持ち込んだり、不道徳な行いをしても容認されるかのような意識がありはしないでしょうか?」
千夏(……!)
言い訳さえも出来なくなった。
勉学に関係のないもの。不道徳な行い。
……心当たりが多すぎる。

19 :1:2008/08/24(日) 00:37:23.94 ID:pZ3FAYND0
アンジェラ「一時の感情に流され、偽りの道に進む事が無いように」
……
……偽りの……道?
アンジェラ「皆さんは、今、心身を形成している大切な時期であるが故に、非常に不安定な時期でもあります」
アンジェラ「さまざまな誘惑は、そうした心の弱い時にこそ起こるものです」
静まり返った講堂の中。
今度は私もとけこめた。
ただし。アンジェラの話に引き込まれて、というのではなくて。
偽り、と言われたことが、胸に重くて。
そして同時に、ちょっとだけ、許せなくて。
千夏(ウソだって……言うんですか、アンジェラ?)
けど、そんなちっぽけな意地は、次の台詞で吹き飛んだ。

20 :1:2008/08/24(日) 00:37:58.61 ID:pZ3FAYND0
アンジェラ「このようなことを考えたくはありませんが、仮に、偽りの道へと踏み外してしまったという方が現れた場合……」
アンジェラ「その方の卒業 進学の撤回も、やむを得ません」
ずん、と重い何かが、全身にのしかかったようだった。
アンジェラ「そして、正しき道に戻られるようにある種の強制を行う用意があります」
強制……!?
自分の血の気の引く音を、私は確かに聞いた。
千夏(何を……されるの?)
世の中には。苛められたり痛くされたりすることで気持ちよくなる人もいるっていうけど、
少なくとも、私にそういう趣味は無い。
それに……この場合の強制なんていうのは、
されて気持ちよくなったりするような、そんな甘っちょろいものじゃないと思う。

21 :1:2008/08/24(日) 00:38:33.76 ID:pZ3FAYND0
千夏(……ん? でも……)
考えて見れば、そんな「強制」をやったりしたら、大騒ぎになる。伝統や体面なんかを重んじる学院が、本当にそんなことを、なんて……
千夏(心配することなんて……ない……よね)
そう自分に言い聞かせても、不安は拭えない。
アンジェラ「本来ならば、邪な思いを抱く事だけで罪に値します。『マタイによる福音書』5章を思い出して下さい」
思い出せなかったけど、
何が書いてあるかは察しがついた。
アンジェラ「あなた方の日々の行いは全て聖母マリア様が、そして……」
アンジェラ「私たちシスターが見守っているという事を心に留めておいてください」
アンジェラ「以上です。教室にお戻りなさい」

22 :1:2008/08/24(日) 00:39:24.60 ID:pZ3FAYND0
授業が終わると、私はすぐに陸上部の部室に向かった。
走って、とにかく身体を動かして、嫌なことを忘れたい。
けど……
千夏(……お腹空いた)
部室に入って、自分のロッカーを開くその前に。
下級生が誰も来ていない中、ベンチに座り、とりあえずお弁当を広げる。
こみ上げる不安を、ご飯やおかずと一緒に飲み下す。

23 :1:2008/08/24(日) 00:40:22.89 ID:pZ3FAYND0
学期末ともなると、午後からの授業はもう無い。
のはいいけれど、どうせならそのまま春休みに突入してくれればいいのに。
授業が午前中で終わるのは嬉しいけど……
千夏(……給食、ないのは少し辛いかな)
陸上部の部室に、私がまだひとりだけ。
下級生とかはまだ、誰も来ていない。

24 :1:2008/08/24(日) 00:41:02.42 ID:pZ3FAYND0
毎朝、自分のお弁当を作るっていうのはなかなか手間だ。
ましてや、こっちはアスリートの端くれだから、栄養バランスもそれなりに考えておかないと落ち着かない。
炭水化物はご飯で取って、野菜類もしっかり取って。別にダイエットしてるわけでもないから、それなりにお肉も取る。
燃焼しきれて、体も作れる程度のエネルギーと栄養価。
バランスについては、結構自分でも自信がある。
千夏(……これで味が良ければねぇ)
そしたら春菜にも作ってやれるのに。

25 :1:2008/08/24(日) 00:41:33.46 ID:pZ3FAYND0
……寄宿舎生の食生活はどうなってるんだろう? 
千夏(朝食と夕食は出る、っていうけれど……足りるのかな?)
校則で禁止はされているけれど、お菓子の持ち込みなんかは絶対やられてるに違いない。
千夏(そうした買い食いつまみ食いも、偽りの道に入るのかな)
いくらなんでも、それで卒業取り消しなんてことにはならないと思うけど……
千夏(ご飯抜き、程度で済む話だよね、それなら)
思いついて、ひとりで吹き出しそうになった。
………………
ご飯の最後の一粒を飲み込み、「ごちそうさま」と誰に言うとも無く口にして、ランチボックスを片付けた。
千夏「ふぅ……お腹いっぱい」
お昼を食べたら、少しは落ち着いた。
卒業取り消しとか、強制とか。
不安が消えたわけじゃないけれど、あまりくよくよ考えても仕方ないよね。
千夏「うん。大丈夫大丈夫」
私は立ち上がり、自分のロッカーに手をかけた。
大げさなことにはならないよ。大げさなことをしないなら。
やばいものの持ち込みとか、やばいこととか……
千夏(……いや、アレは……アレなことに使わなければ、不道徳なことには……)

26 :1:2008/08/24(日) 00:42:30.29 ID:pZ3FAYND0
マッサージ機は、疲れた筋肉をほぐすのに必要なだけ。勉学には関係ないけど、部活動には関係あるし、うん。
……多分。
千夏「……まあ気をつけといた方がいいよね」
???「何に気をつけるんですか!?」
いきなり後ろから声。同時にばたん! とドアの開く音。
千夏「うわぁああぁ」
腰を抜かしそうになりながら振り返ると、息を弾ませた女の子がひとり。

27 :1:2008/08/24(日) 00:43:36.09 ID:pZ3FAYND0
薫「はあっ、はぁっ……い……いつも……早いですね、先輩!」
千夏「あー……うん、長谷川もね」
おでこに光る汗を拭いながら、彼女は微笑んだ。
長谷川薫。私の後輩で、陸上部のマネージャー。
何やら、私のことをすごく気に入ってるらしい。
そう……とっても、気に入ってる、らしい。
薫「んむっ」
長谷川の目が、ベンチの上に置いたままの私のランチボックスに止まる。
薫「先輩、もうお昼食べちゃったんですか?」
千夏「うん……まあね」
薫「献立はどうなってますかっ」
千夏「えーと……ご飯にサトイモ、ニンジン、ゴボウの煮物……」
目を閉じて腕組みをしながら、ふんふん、と頷く長谷川。

28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 00:43:51.80 ID:bzByIHMr0
処女宮じゃねーか…

29 :1:2008/08/24(日) 00:44:24.00 ID:pZ3FAYND0
薫「……うん、バランス的には問題はありませんね」
薫「じゃあ、メニュー組み立てますね。まず準備体操終わらせたら……」
千夏「もういいってば、長谷川」
私は苦笑した。
千夏「私はもう隠居してるんだから。部室には顔出してるけど、別に部活ってわけじゃ……」
薫「何を言ってるんですか、先輩!」
ずずいっ、と、長谷川が私に詰め寄った。
私の方も、たじたじっ、とあとずさってしまい、
背中がロッカーに当たってしまう。

30 :1:2008/08/24(日) 00:46:05.74 ID:pZ3FAYND0
薫「先輩の足は、陸上界の宝です! 磨けばもっともっと輝きます!」
千夏「いや、褒めてくれるのは嬉しいけど……」
薫「能力のある人は、それを伸ばす義務があるんです!」
千夏「そんな、私なんて大したこと……」
薫「全国大会出場選手が、そんなことじゃいけませんよ!」
千夏「あれは、運が良かっただけで……」
薫「佐倉木先輩が鍛えたら、空を駆けることだってできますよ!」
ここまで来ると、どう言葉を返していいのか分からない。
長谷川のことはかわいい後輩だと思うし、期待されたり憧れたりされるのも、決してキライじゃない。
けど、この押しの強さは……苦手だ。
今は、何か言うたびに詰め寄ってくる長谷川が、気がついたら私のすぐ前に立っていて、
何だか、蛇ににらまれた蛙というか、ネコに追い詰められたネズミみたいな感じが。
千夏(た……食べられる……)
薫「せんぱいっ」
千夏「は、はいっ」
薫「着替えてください。練習しましょう」
千夏「あ、は、はい」
……どっちが先輩だか分からない……。

31 :1:2008/08/24(日) 00:47:20.16 ID:pZ3FAYND0
とりあえず長谷川にどけてもらい、改めて自分のロッカーを開いた。
ベストを脱ぎ、ブラウスのボタンを外す。
そんな私を後ろから、長谷川がまじまじと見詰めている。
千夏(やりにくいなあ)
でも、そんなことを言ったら「女の子同士だから気にしなくてもいいじゃないですか」とか、
あの押しの強い口調で言われて、また詰め寄られるような気がする。
上を着替えて、スカートの横のホックを外した時、

32 :1:2008/08/24(日) 00:47:56.19 ID:pZ3FAYND0
薫「せんぱいっ」
千夏「う……何かした?」
薫「今から質問に答えてください」
質問?
薫「あなたが森の中を一人で歩いていると、一匹の動物が現れました」
何なのか訊く前に、話し始める長谷川。
薫「どうやら背中に乗っけて案内してくれるようです。その動物はなんでしょう? ゴリラ、馬、ライオンから答えてください」
何かの心理テスト? それなら……

33 :1:2008/08/24(日) 00:49:09.10 ID:pZ3FAYND0
千夏「ライオン」
そう答えた。森のライオンというのもちょっと不自然かもしれないけど、
馬だと普通だし、ゴリラの背中、っていうのもピンと来ないし。
薫「その動物の背中に乗って進んでいくと、とっても気分が良くなってきました。
 思わず鼻唄なんかも出てきます。その鼻唄は、どんな曲ですか? クラシック? 演歌? ロック?」
千夏「演歌」
ライオンだし、どうせ早駆けなんてしないんだろうし。
だったら多少ゆったりした曲なんかでもいいと思うけど、クラシックは何か格調高そうな気もする。
だったらおもいっきりこぶし聞かせてがなって見ても面白いかもしれない。
薫「喉が乾いたな……と思っていると、通りがかった女の子がコップに入ったミルクを渡してくれました。
あなたは、どれだけ飲みますか? ちょっとだけ? 半分? 全部飲んじゃう?」
千夏「全部」
せっかくの好意なら、ありがたくもらうのが礼儀だと思う。食べ物とかなら、残さず平らげて、感謝する。
部活用のパンツに履き替えて、シューズの紐をしっかりと結ぶ。
この感覚は好き。準備完了、って感じがして、自分が引き締まっていくのが分かる。
さて、じゃあ走りますか……
千夏(ん?)

34 :1:2008/08/24(日) 00:49:42.51 ID:pZ3FAYND0
見ると、長谷川が俯いて少しもじもじしている。
千夏「どうしたの? トイレ?」
薫「……先輩……」
千夏「何?」
薫「先輩って……先輩って、Hだったんですね!」
……。
……えーと。
千夏「どの話の何をどう考えればいいのかな?」
薫「今のはですね、H度をはかるテストだったんですよ」
長谷川の顔がこちらを向く。
上気した頬に、妙に目がキラキラと輝いている。
薫「えーとですね、先輩のHの傾向は、」
薫「刺激を求めて、アブノーマルなことが好きで」
薫「キスとかさわったりするのが、もうしつこくてねちっこくて」
薫「性欲度200%なんですよ」
自分で言ってから、長谷川は恥ずかしそうに自分の顔を両手で覆った。
薫「スゴい……先輩がそんなだなんて、知りませんでした」
しばらく絶句した後で、
千夏「は……長谷川っ!」
私は、上ずった声で叫んだ。

35 :1:2008/08/24(日) 00:50:45.02 ID:pZ3FAYND0
千夏「な、何だよその、バ、バ、バカな質問は!?」
薫「雑誌に載ってたんです、心理テスト。今月号のレモン ティーンに」
……レモン ティーン……女の子向けの、少しHな雑誌。
シスター アンジェラに言わせるならば、勉学に関係のない、
偽りの道まっしぐらな物のひとつだろうけど、実は隠れ読者は結構いる。
で、どうやら目の前にいる後輩も、その隠れ読者のひとりらしくて……
千夏「まさ、まさか、そんなバカなテスト、信じてなんか……」
と、身を乗り出した私に向かって、
薫「せんぱいっ。Hなのは悪いことじゃありません!」
再び長谷川が、ずずいっ、と間合いを詰めてくる。

36 :1:2008/08/24(日) 00:51:25.04 ID:pZ3FAYND0
薫「さっき、シスター アンジェラはあんなこと言ってましたけど」
ずいっ
薫「神様も、産めよ殖えよっておっしゃってますし」
ずいっ
薫「産んだり殖えたりするには、やっぱりHが必要なわけで」
ずいっ
例によって、私は長谷川に詰められるたびに、
たじたじとあとずさり、
薫「っていうか、大事なのは愛だと思うんですよ」
という台詞で、部室の隅に追い詰められてしまった。
薫「で、私、どんなにHでも先輩のこと好きですし」
長谷川の頬が、いっそう紅潮して、
薫「先輩が我慢できないっていうんなら、いつでも押し倒されてもいいですし」
何だか呼吸も弾んできていて、
薫「でも、そういうの自分からだと恥ずかしいっていうんなら、きっかけはあたしが」
そう言って私の肩をつかまえて、
薫「と、とりあえず、唇もらいますね」
と、何だかぎらついた目で顔を寄せてくる。

37 :1:2008/08/24(日) 00:53:32.47 ID:pZ3FAYND0
千夏(や、やばっ!)
熱を帯びた吐息と鼻息が、唇にかかった瞬間、
千夏「いっけなーい! きょ、教室に忘れ物しちゃったぁー!」
私は上ずった声でわざとらしく声を上げ、
長谷川がひるんだ隙に、肩の手を外してその脇をすり抜けた。
長谷川「あ、せ、せんぱいっ!」
千夏「やばいやばい、ちょっと教室に戻るねー!」
振り向きもせず、部室のドアを開けて飛び出した。

38 :1:2008/08/24(日) 00:54:56.80 ID:pZ3FAYND0
………………
千夏「あ、危なかった」
本当にキスされるところだった……
部室から離れたところで、走るのを止め、歩く。
千夏「……どうかしてるよ、長谷川は」
千夏「押し倒すとか、Hは悪くないとか……私たち、女の子なのに」
校舎入り口前で、足が止まる。
自分で口にした言葉が、重くなった。
私たち、女の子なのに。
千夏(そうだよ……女の子同士なのに)
胸が、苦しい。
それは、ずっと前から抱えているもので、
そして絶対慣れることができない痛み。

39 :1:2008/08/24(日) 00:55:38.99 ID:pZ3FAYND0
千夏「偽りの……道か」
校舎に並ぶ窓。そのひとつに目を向ける。
私のクラスの窓。春菜は今日、確か掃除当番だったはず。
……いた。
長い髪と、頭の後ろで結んだ真っ赤なリボン。
自在ぼうきの柄を持って、お掃除の最中。
千夏「春菜……」
小声で、そっと呼んでみる。
痛みと幸せとが、充足と欠落とが。
切なさが喉元までこみ上げて、なかなか飲み下せなかった。
本当。どうかしてる。女の子同士なのに。
どうして親友に、こんなに切なくならなきゃならないんだろう?

40 :1:2008/08/24(日) 00:56:22.24 ID:pZ3FAYND0
ほうきが動くたびに、トレードマークのリボンが揺れる。
春菜は掃除に一生懸命なのか、見ている私のことなんか、全然気が付かなくて。
千夏「……そっちの方が、いいよね」
やっと飲み下した切なさ。私はちょっとだけ笑えた。
が。
春菜の後ろから、近付く人影。
千夏(……早坂?)
早坂は春菜の後ろに忍び寄り、
いきなり抱きついた。
千夏(……!)
見ていた私は笑いがひきつり、
直後、走り出した。

41 :1:2008/08/24(日) 00:56:56.75 ID:pZ3FAYND0
校舎入り口のドアをくぐり、
シューズを下駄箱で脱ぎ捨てて、
玄関から階段に至る廊下を見た瞬間、
廊下を歩いている子たちの現在位置と、歩いている方向を脳裏に焼付け、
最も効率のいいラインをイメージすると、
全身のバネを弾けさせた。

42 :1:2008/08/24(日) 00:58:01.86 ID:pZ3FAYND0
千夏(何で気付かないんだ、春菜!)
廊下を静かに歩く女の子達の脇を、スキーの大回転競技のように駆け抜けて、
階段上り口で手すりをつかみ、身体に乗ったスピードを殺し、
2段飛び足で階段を駆け上がる。
千夏(全く、どいつもこいつも……!)
階段を駆け上がったら、廊下を見る。
千夏(好きになったり、キスしたがったり、抱きついたり……!)
教室までの進路はクリアー。
千夏(女の子同士で、どうかしてる!)
私は10メートルもないラインを一気に駆け抜け、
教室のドアを開くなり、叫んだ。

43 :1:2008/08/24(日) 01:00:23.33 ID:pZ3FAYND0
千夏「おいっ! 何やってるんだ!!」
槇「あら、女王様のご登場」
早坂が、春菜に寄せていた顔をこちらに向ける。
ついさっきの、長谷川とのことを思い出し、顔と頭がさらに熱くなった。
千夏「何だよそれ。とにかく春菜から離れろっ!」
っていうか、春菜も今すぐ早坂から離れろっ!
槇「あら、どうして?私はクラスメイトと親睦を深め合っているだけよ」
黙れっ、早坂!
千夏「春菜がイヤがってるだろ、そんなの親睦じゃないっ!」
槇「イヤがってる?」
早坂が、抱き寄せている春菜(だ〜か〜ら〜、離れろって!)の顔を覗き込んだ。
槇「春菜さん、イヤだったの?」
春菜「できれば……」
いつもの、気の弱くて、頼りなさそうな声が、その口から漏れる。
槇「できれば?」
その後に続くはずの、「イヤだ」とか「止めて欲しい」とかいう言葉を待たず、
早坂は抱き寄せていた手を春菜の身体に滑らせる。
身体を震わせ、小さく声を上げる春菜。

ttp://wktk.vip2ch.com/vipper97187.bmp

44 :1:2008/08/24(日) 01:01:28.16 ID:pZ3FAYND0
春菜「あっ……」
槇「ねえ、正直に言って。本当に、イヤだった?」
……何楽しそうな顔で……春菜の耳元に囁いてるんだっ!
千夏「いい加減にしろっ!」
私は春菜と早坂の間に強引に割り込んで、ふたりを力任せに引き離した。
突き飛ばされた形の早坂が、バランスを崩して机に手を突き、
ガタッ!
その拍子に、大きな音が教室の中に響き渡る。
それで、私は頭に上っていた血が少し引いて。
千夏(うわ、ヤバい……)
教室内の気まずすぎる空気に、いまさら気がついた。
春菜「チイちゃん……」
すぐ側で、春菜が不安そうにしている。
早坂が、ゆっくりと私の方に顔を向けた。
その手に何か握られている……雑誌?

45 :1:2008/08/24(日) 01:02:16.68 ID:pZ3FAYND0
槇「千夏さん……聞いてもいいかしら」
その雑誌のタイトルは……
槇「あなたが森の中を一人で歩いていると、一匹の動物が……」
千夏「そんなくだらない雑誌、捨てろおっ!」
私は早坂の手からレモン ティーンをひったくると、
グッチャグッチャに丸めてゴミ箱に放り込んだ。
槇「あ〜あ、もったいない」
私は早坂を、かなり険悪な目でにらみつけた。
千夏「掃除当番じゃないだろ。早く帰れよ」
槇「そうね、そうさせてもらう。またね、春菜さん。今度は二人っきりでね」
ヒラヒラと手を振って出てゆく早坂。
とっとと出てけ……って、春菜!
千夏(あんなヤツに手なんか振るんじゃない!)
私は春菜の手を掴み、間近に顔を寄せた。春菜の表情が、怯えたように引きつる。

46 :1:2008/08/24(日) 01:03:02.24 ID:pZ3FAYND0
千夏「春菜!」
春菜「え、な、なに?」
千夏「もうちょっとピシッとしろっ!」
キョトンとした目で見つめ返す春菜。
ああ、もう……このおボケさんはっ!!
千夏「春菜がシッカリしないから、あんなヤツにからかわれるんだ!」
春菜「そんな、だって……」
千夏「言い訳しない! そんなんだから、修学旅行で迷子になるんだ!」
言った瞬間、みるみるうちに春菜の顔が赤くなった。
まずった、と思った時には、春菜が手を振り払っていた。

47 :1:2008/08/24(日) 01:03:45.72 ID:pZ3FAYND0
春菜「ひどい! そんな事、今言わなくたって……」
千夏「い、いや、だからっ……私は春菜の事を思って」
春菜「だったら、人の恥ずかしい思い出を大声で言わないでよ!」
怒ってるのか泣いているのか、
よくわからない顔で私を数秒見返した後で、
春菜は教室を飛び出してしまった。
千夏「ちょ、ちょっと、春菜……」
智恵「は、春菜さん……掃除は?」
「廊下は走るな」という学則が身に染み付いているらしく、
春菜はせいぜい、早歩き、という程度のスピードで遠ざかっていく。
けど、呼びかけてみても、春菜は振り返ろうとはしない。
……気がつくと、教室内は静まり返っていて、
さっきとは比べ物にならないくらい気まずい空気が満ちている。
と、後ろからと肩を叩かれた。

48 :1:2008/08/24(日) 01:04:19.66 ID:pZ3FAYND0
ひろみ「佐倉木さん。はい、これ」
振り返ると、柳瀬が私に自在ぼうきを差し出している。
千夏「……なに、これ?」
ひろみ「友原さん、飛び出しちゃったでしょ? 責任持って、掃除手伝ってくれるかしら?」
……受け取ろうと手を差し出すが、柳瀬は不意にほうきを引っ込める。
ひろみ「……上履き履いてからにしましょうか?」
千夏「分かったよ」
私は裸足をぴたぴた言わせながら、一度教室を出た。

49 :1:2008/08/24(日) 01:05:24.89 ID:pZ3FAYND0
ほうきで床を掃き、机を運ぶ。
おそらく、○等部での最後の掃除当番……
なんて思っても、あまり感慨はわいてこない。
みんなは制服なのに、私だけが部活のスポーツウェアで浮いてる、っていうのもあるし、
何より、さっきの春菜とのこともあって、相変わらず気まずいままだ。
せめて、春菜の机を運んでやろうと思ったけど、
思いついた時には委員長がもう運び終わっていた。
ひろみ「佐倉木さん、大変だったね」
不意に、柳瀬が声をかけてくる。
千夏「あー、いや、ちょっとイライラしていたから」
冷静になってみると、とても恥ずかしい。
よりによって、春菜に当たるなんて、最低だ。
ひろみ「そうじゃないわ。修学旅行のとき」
千夏「え? うん、大変だった」
私は掃除の手を止めて、はぁぁ、とため息をついた。
千夏「……大変だったなあ」
……………………………。

50 :1:2008/08/24(日) 01:06:23.62 ID:pZ3FAYND0
……一昨年の修学旅行。
わが学び舎の修学旅行は、ミッション系ということもあってか、定番な奈良や京都などのお寺めぐりではない。
もちろん、どこかのテーマパークで大はしゃぎして遊びまくるものでもない。
毎年毎年、外国人墓地とか、教会とかを見て回るようなひたすら地味なものなのだ。
しかも、うちの学校は修学旅行を「学」を「修」めるための旅行と本気で考えており、
班毎に旅先での研究テーマを決めて、レポートを出すなんていう課題が毎年毎年出される。
私たちが研究テーマに選んだのは、なかなかに由緒ある大きな教会だった。
裏手には外国人墓地があり、その向こうにはちょっとした森があるなんていう、あまり日本ぽくない雰囲気の所で、
私たちは牧師さんに許可を取って、教会の中や周りの写真を取ったり、
教会の歴史なんかをメモしたりしていたのだ。
そんな中で、一緒の班にいた津山が、ぽつりとこう言った。
圭子「ねえ、友原さんは?」
その時の私は、デジカメでステンドグラスの写真を撮ってて、
言われた瞬間、とても嫌な胸騒ぎがした。
すかさず班の全員に携帯で連絡を取って見たら、
「こっちにはいないよ」とか、
「あれ、そう言えば見てないねえ」とかいう答えしか返って来なかった。

51 :1:2008/08/24(日) 01:07:08.61 ID:pZ3FAYND0
私は、広い教会の中と、墓地と、森の中を走り回り、
大声で春菜の名前を呼びまわり、
30分後、森の少し奥まったところにある殉教碑の近くで、途方にくれた彼女を見つけた。
……見つかった後、
地図もあったし、森を抜ける道まできちんとできているのに、
どうして道に迷えるのか全員本気で悩んだ。
………………………
大変だった。本当に大変だった。
千夏「……あそこまで春菜が方向音痴だったなんて、知らなかったよ」
予想できたことではあったけど。
ひろみ「あたしたちも大変だったよ、佐倉木さん」
ちょっとだけ、意地悪そうに笑う柳瀬。
ひろみ「佐倉木さんは殺気立って走り回るし、友原さんが見つかった後は、修学旅行の間ずっと手をつないだままだし」
……指摘されて、私も顔が熱くなってきた。

52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 01:07:45.32 ID:YOBRHhNGO
ほう…

53 :1:2008/08/24(日) 01:07:45.48 ID:pZ3FAYND0
千夏「だ、だって。だってまた春菜がどこかに行っちゃったら……」
ひろみ「にしたって、寝る時も食事の時も手つないでたし。見てて、うわーって感じだったよ」
千夏(うぅ……)
ひろみ「あれ、どう見ても友達っていう雰囲気じゃなくって……」
千夏「!」
ひろみ「過保護な親と子っていうか、姉妹っていうか」
安堵と、拍子抜け。
……ちょっとだけ、つまらなかったりして。
千夏「あれは……春菜がちゃんとしてないから」
ひろみ「ちゃんとしてないからって、あそこまでくっつくのはどうかなぁ?」
智恵「柳瀬さん。お喋りしないで、きちんと掃除してください」
委員長の声で、柳瀬が舌を出し、私から離れた。
……ありがとう、委員長。
心で委員長に感謝して、私も掃除に戻った。

54 :1:2008/08/24(日) 01:08:18.88 ID:pZ3FAYND0
…………………………
掃除が終わって、部室に戻ってみると、
部員も集まっていて、もう準備体操などを始めていた。
その中で、やっぱりジャージに着替えていた長谷川が、
クリップボードを抱えながら、駆けつけた私の方をにらんでいた。
薫「何やってたんですか、先輩」
口をとがらし、頬を膨らませている。
千夏「あ、ごめんごめん。掃除手伝わされちゃって」
薫「……」
薫「また友原先輩と何かあったんですか?」
……鋭い。
千夏「んー、まあ大したこと無いよ」
薫「……つまんない」
千夏「ん? 何か言った?」
薫「え、何でもないです。じゃあ、始めましょう」

55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 01:08:48.35 ID:SvsWcmAF0
絵は嫌いじゃない
文章はまったく読んでないけど

56 :1:2008/08/24(日) 01:08:59.65 ID:pZ3FAYND0
今日も部活が始まった。
長谷川は、クリップボードを手に、私の練習にくっついている。
何だか私の専属トレーナーみたいだけれど、いまさら誰も文句は言わなくなっている。
何だかんだ言って、マネージャーとしての仕事はちゃんとしているし、
私以外の部員にも、練習メニューの立て方などが実際的確で、
この一年で陸上部全体のレベルはかなり底上げされたと思う。
色々と扱いが難しい長谷川だけど、そういう意味では、私は信頼はしている。
……柔軟体操の時とかで、やたら体をくっつけてくるのはどうかと思うけどね。
さっき、卒業間近で隠居の身だなんて私は自分で言ったけど、
走るのはやっぱり好きだ。
だから、こうして毎日部活には顔を出している。
……いやな事があっても、気がまぎれるからっていうのも確かにあるけど、
かわいい後輩たちが、がんばっているのを見るのも好きだし、
ついつい、フォームの矯正とか、色々口を出してしまう。
みんなで同じ目標に向かって、自分を鍛えるというのは、本当に楽しい。
自分が成長した、と記録で分かった瞬間は「やった!」って思う。
こういうのを知って欲しくて、私は何度も春菜を陸上部に誘ってるんだけど、
未だに本人からいい答えは返って来ない。

57 :1:2008/08/24(日) 01:09:45.35 ID:pZ3FAYND0
部員「ありがとうございました!」
部員全員が唱和して、今日も部活が終わる。
ほとんどの部員は、口々に「終わったぁ」「疲れたぁ」なんて言いながら、部室に戻る。
私もそれにならおうとして、
千夏(春菜……まだ怒ってるかな)
さっきのことを思い出し、気が重くなった。
十中八九、絶対忘れてるとは思うけど……。
薫「先輩、途中まで一緒に帰りましょう」
千夏「あ、ごめん。ちょっと用事があってさ」
薫「……また友原先輩ですかぁ?」
また長谷川がむくれたけれど、
千夏「ん、まあそんな所。じゃあまた明日」
私は気付かなかった振りをして、寄宿舎の方に向かって走った。

58 :1:2008/08/24(日) 01:10:23.81 ID:pZ3FAYND0
………………………………………………
舎監の人に聞いたら、春菜はまだ帰ってなかった。
千夏(……また、二ノ宮のところに行ってるのかなあ)
二ノ宮秋穂は、一つ下の、図書委員をやっている寄宿舎生で、
春菜とは随分と仲が良い。
「大人しい同士だから、気が合うんだよ」なんて春菜は言ってたけど、
同じ「大人しい」でも、質が全然違うと思う。
そして、二ノ宮が春菜を見る目も、
春菜が二ノ宮を見る目とは、質が全然違う。
千夏(私よりも、二ノ宮と一緒のがいいのかな)
……さらに気分が重くなった。
口うるさくて、何やかやと言って来るよりも、
何を言っても笑って頷いてくれる相手の方が、確かに居心地はいいのかも知れない。
千夏(……えーと、どうしよう……)
図書室に行って、ふたりに割り込む度胸はなかった。
こういう時は、長谷川の押しの強さがうらやましい。
私は少し考えて、とりあえず教室に向かった。

59 :1:2008/08/24(日) 01:11:07.07 ID:pZ3FAYND0
……掃除の途中に、春菜は教室を飛び出して、
おそらく二ノ宮のいる図書室に向かった。
つまり、カバンは置きっぱなしと言うわけで、
寄宿舎に戻る前には必ずカバンを取りに教室に戻らなければならない。
待っていれば、春菜は来るはず。
その時に謝って、それでさっきのことは終わりにしてしまおう。
また校舎に入って、誰もいない廊下を抜ける。
……いつも見慣れている廊下は、誰もいなくて、
窓から入る夕焼けの光が白い壁をオレンジ色に染め、
窓枠や掃除用ロッカーの影を、長く伸ばしていた。
きれいに一点透視図法を描いた風景の中、
私は自分の教室まで歩いて、ドアを開ける。
ガラッ……
ドアの音が、妙に大きく響く。
無人の教室。
窓からやっぱりオレンジ色の夕日。
たったそれだけのことなのに、知らないところに迷い込んだような感じがした。
ただ、正面の教卓の上には、カバンがひとつ置いてあって、
「友原」という名札が付いているのが見て取れる。

60 :1:2008/08/24(日) 01:12:02.87 ID:pZ3FAYND0
私は教室の中に足を踏み入れると、
春菜のカバンを取って、自分の席に座った。
椅子を引くと、「がたっ」という音。
さらさら、という微かな衣ずれさえも聞き取れるほどの静寂。
誰もいない教室に、私だけがひとり。
私と、春菜のカバンだけ。
千夏(……春菜、早く来ないかな)
私は春菜のカバンと自分のとを、並べて机の上に立ててみた。
手を放すと、春菜のはバランスが悪くて、倒れそうになる。
倒れそうになるのを私のカバンに寄りかかって立っている、という形になった。
つまんないことなんだけど、何だかちょっとだけドキドキした。
さらに、私のカバンのストラップを、春菜のカバンにひっかけた。
ひっかけるだけじゃなくて、巻きつけるようにしてみる。
カバン同士が抱き合ってるようにも見えた。
と、ストラップをいじっているうちにバランスがおかしくなったのか、
私のカバンがぐらりと揺れて、次の瞬間、春菜のカバンを巻き込んで倒れた。
バタン……
千夏(……!)

61 :1:2008/08/24(日) 01:12:45.10 ID:pZ3FAYND0
それはまるで、私が春菜を押し倒したように見えて、
誰もいない、耳鳴りを起こすほどの静かな教室の中で、
私は身動きができない。
何かが、見透かしているようで。
「これが望みなのだろう」、と。
………………………

62 :1:2008/08/24(日) 01:13:17.74 ID:pZ3FAYND0
どれほどの間、私はそうしてたんだろう。
不意に、教室のスピーカーが微かにブツッと鳴り、校内放送が鳴った。
下校を告げるアナウンスと、閉店直前のスーパーのようなお別れの音楽。
千夏「……!」
私は我に帰ると、
千夏「春菜……カバンのこと、忘れてるね」
そう自分に言い聞かせて、意識を現実に戻し、
ふたつのカバンを手に取って、また寄宿舎に向かった。
舎監「友原さんなら、まだ戻ってませんねぇ」
千夏「……そうですか」
舎監「伝言なら伝えますけど?」
千夏「じゃあ、これ渡しといてください。忘れ物です」
ドサッ……
舎監「……あの子、カバンを忘れちゃったの?」
千夏「まあ、春菜ですから」
舎監「預かっておきますね。わざわざありがとう」
舎監の先生は、窓口からカバンを受け取った。
外に出る。
西の日は大分傾いて、今日もまた、一日が終わろうとしている。

63 :1:2008/08/24(日) 01:15:14.66 ID:pZ3FAYND0
千夏「代わり映えのしない一日……か」
あたしはため息をついた。
代わり映えのしない毎日と言えば、確かにそう。
春菜に振り回されて、やきもきして落ち込んで、
そわそわして、笑って

      フラッシュバック

机の上に倒れる、ふたつのカバン。

千夏(忘れろ忘れろ−−)
イヤな連想を自分の中で打ち消し、ちょっとだけ深呼吸。
心が落ち着いたところで、校舎から寄宿舎へと続く道に、人影がひとつ、歩いてくる。
千夏(春菜−−)
やっと来たのはいいけど・・・
千夏(春菜〜)
何かいつまでたってもこっちに気付く気配がない。
そうして、やっと春菜は私に気が付いたらしい。
目の前、距離にして約数メートル。
そこまで来てから、きょとんとした顔でこちらを見る。

64 :1:2008/08/24(日) 01:15:56.80 ID:pZ3FAYND0
千夏「……や、やあ。偶然」
なんて言いつつ、手を上げてみる。
……うっわー。すっごい不自然。
自分で声上ずってるよ。
春菜「どうしたの、こんな所で」
千夏「別に……たまたま通りかかって」
春菜「そうなんだ」
千夏「……」
春菜「……」
春菜「ねえ、チイちゃん」
千夏「な、なにっ?」
春菜「ひょっとして、誰か待ってるの?」
千夏「……」
春菜「寄宿舎の子だったら、呼んでくるけど」
千夏「……」
春菜「チイちゃん?」
千夏「いや、いい。……帰るわ」

65 :1:2008/08/24(日) 01:16:41.74 ID:pZ3FAYND0
……何か、疲れた。
私は肩を落とし、春菜の来た方向に歩き出す。
すれ違う時の春菜の顔は、やっぱりきょとんとした、何が起きてるのかよく分からない顔。
忘れてるって、思ってたんだよなぁ……。
千夏(ホント、代わり映えのしない一日……)
春菜に振り回されて、やきもきして、空回りして。
それで結局、何となくいつも通り。
で、いつものように、私と春菜は親友で。
千夏(ま、いっか)
千夏「春菜」
私が振り向くと、春菜は寄宿舎に入ろうとしていた所だった。
春菜「?」
千夏「また……明日ね」
春菜「うん、また明日」
また明日。
それは、また会おう、っていう意味で、
明日も、今日と同じように、って意味。
それはやっぱり、幸せなことなんだろう。
校門に続く道を半ばまで来た辺りで、私はもう一度寄宿舎の方を振り向いた。
千夏(また明日ね、春菜)
そう心で告げて、今度こそ私は帰途についた。

66 :1:2008/08/24(日) 01:18:16.38 ID:pZ3FAYND0
夜。
不意に、眼が覚めた。
充電中の携帯を手に取ると、AM3:00をちょっとすぎた所。
千夏(……寝よ)
携帯を戻し、再び毛布を被って眼を閉じる。
………………
時計はAM3:15。
真っ暗な中、寝返りを打って、見るともなく天井を見た。
静寂。自分の息遣いと、心臓の鼓動だけが感じられる。
千夏(春菜……今何やってるんだろう?)
やっぱり眠ってるかな?
今の私みたいに、夜中に不意に目が覚めたり、なんてことはないのかな?
千夏(……メール送ったりとか……できたらなぁ)
無論、春菜は携帯なんて持ってないけど。
普通に眠ってるんなら、どんな夢見てるんだろう?
私のこととか出てきてたりしないかな?

67 :1:2008/08/24(日) 01:18:53.57 ID:pZ3FAYND0
……そう言えばずいぶん前に、2コ下の益田っていう寄宿舎生の子から、
そういう「好きな人に夢の中で会いに行くおまじない」を教えてもらったことがあった。
このみ「千夏ちゃん、誰に会いたいの?」
その質問は、適当にはぐらかしておいたけど、
少なくとも最初の一回目は、大成功だった。
その夢のことはよく覚えている。
それは明晰夢というやつで、
夢の中で自分自身、「これが夢だ」と分かっているものだった。

68 :1:2008/08/24(日) 01:19:24.94 ID:pZ3FAYND0
白くて淡い光の中、目の前で制服姿の春菜が微笑みながら振り向いて、
春菜(チイちゃん)
そう呼びかけてくる。
私は春菜の側に立って、どうせ夢なんだから、ってことで、色々やった。
手をつないだ。柔らかくてひんやりしてる春菜の手の感触を確かめた。
腕を組んだ。春菜の腕を私の体に押し付けた。
あまつさえ抱きついて、石鹸とシャンプーと肌の匂いを味わい、温もりを全身で感じた−−
千夏「……っ!」
心臓の鼓動。重く、速く。
今日つかまえた、春菜の手の感触がよみがえる。
夕暮れの教室。春菜のカバンを押し倒す、私のカバン。
夢の中で春菜にしたことは、抱きしめる、程度では終わらなかった。
それは夢だけど、私にとっては、確かな、体験。
夜毎夜毎に反芻する、私だけの記憶。

69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 01:19:44.94 ID:z7+f4QwA0
誰も読んでない気がする

70 :1:2008/08/24(日) 01:20:00.19 ID:pZ3FAYND0
妄想の中、わたしは春菜にキスをする。
唇をふさぎ、舌を差し込んで、春菜をむさぼる。
千夏「春菜……好き」
吐息にまぎれて、私の本心がこぼれる。
熱っぽい口の中、私の舌と、春菜の舌が触れ合う。
互いの唾液にまみれた舌が、互いの口の中を行きつ戻りつして、激しく絡み合う。
春菜の腕が、私の背中に回される。
抱きしめられながら、私は春菜の胸元に手を伸ばす。
襟元のリボンを引いて、ブラウスのボタンを外す。
肌と衣の間から漏れる、熱を帯びた匂い。
私は春菜の唇を解放し、開かれた襟ぐりに鼻面を突っ込む。
むせ返るほどの淫靡な匂いを吸い込みながら、汗ばんでる肌にキスマークをつける。

71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 01:20:19.26 ID:JUvDd2IZ0
>>69
よく分かったな

72 :1:2008/08/24(日) 01:20:45.65 ID:pZ3FAYND0
千夏「春菜……はる……なぁ」
現実の私もまた、パジャマの前のボタンを外している。
自分で自分の胸をまさぐり、乳首をつまみながら、
妄想の中で、春菜の胸を撫でさすり、乳首に指の腹を掠らせる。
千夏「んっ……!」
私の口から、エッチな喘ぎ声が漏れた。
その喘ぎ声は、春菜のそれになる。
春菜にもっと触りたくて、もっと感じたくて、もっと感じて欲しくて、
口は春菜の喉を責めて、左手は胸を撫でて時々乳首をくすぐって、右手はお尻の谷間をなぞり上げ、
さらに片脚をスカートを捲り上げて足の間に割り込ませ、
お互いの太もも同士を擦り合わせる。
体の奥から、大きな波が押し寄せてくる。
現実の私の胸とお尻から、電流のようなものが走る。
千夏「気持ち……いい」
それもまた、春菜のもの。
現実の私が感じる「気持ちいい」は、妄想の春菜が感じる「気持ちいい」。
春菜をもっと気持ち良くしたくて、
私は自分を気持ち良くする。
同じ気持ちいいを、春菜にも感じて欲しい。
春菜(チイちゃん……ダメ)
妄想で、春菜が声を上げた。
唇を喉から耳たぶに移して、
私は囁きかけた。

73 :1:2008/08/24(日) 01:21:48.60 ID:pZ3FAYND0
千夏(何がダメなの?)
春菜(だって……だって、私おかしくなりそう)
千夏(なってよ、春菜。春菜もおかしくなって)
自分の指をパンティのなかに潜らせる。
しっとりとして、熱を帯びた部分。
その頂点と中心とを指先で愛撫すると、また喉から声が漏れた。
千夏「あ……あぁっ……」
春菜(チイちゃん……そこは……!)
千夏(そこって、どこ?)
春菜(そんなの……言えない)
ふるふる、と春菜は可愛く首を振る。
千夏(言ってくれなきゃ、分からないよ?)
春菜(いじ……わる)
千夏「春菜……どこが一番……感じるの?」
春菜(く……ク……リ……)
秘められた個所の頂点の包皮を向いて、爪の先で摘む。
千夏「んあっ……!」
体。弓なりに反った。

74 :1:2008/08/24(日) 01:22:25.53 ID:pZ3FAYND0
千夏(ここが好きなんだね、春菜)
春菜(ダメ……チイちゃん、ダメだよ!)
千夏「ダメなんかじゃないよ……ダメなんかじゃないから……!」
愛撫を激しくすると、全身に熱が駆け巡る。
私の体の中で、何かが暴れて、高みへと押し上げる。
妄想の春菜も、私の腕の中で激しく悶えた。
私自身の体も、上り詰めながら波打ち、波打つ体を自分の腕で押さえつけ、
押さえつける感触を、妄想の中で変換する。
悶える春菜を、抱きしめている感触に。
千夏「いいよ、イッて……私の腕の中で……!」
春菜(チイちゃん! ああっ、チイちゃぁん……!)
千夏「はるな……はるなぁっ!」
私の口と舌に愛されながら、春菜が喉をのけぞらせて、一際高い声を上げた。

75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 01:22:53.06 ID:5dUM68oi0
俺が見てる気がする

76 :1:2008/08/24(日) 01:22:56.49 ID:pZ3FAYND0
同時に私も、背を反らせたまま体を震わせ、絶頂の波を全身で味わって――
ベッドの中に身を静めて、けだるさと虚脱感の中に身を委ねた。
千夏「はぁっ、はぁっ……はぁっ……はぁ……」
荒げた呼吸も、すぐに静まっていって、
後には罪悪感が残された。
千夏(また……やっちゃった……)
また、春菜を犯した。
それは、2回目3回目、というわけじゃなくて……
2桁、いや、3桁は絶対行っている。
千夏「偽りの……道……」
今朝の――正確には昨日の――予行演習でのアンジェラの言葉を思い出す。
積み上げた日々。時間。想いと、罪と。
もしそれらが偽りの道だというなら、何でこんなに苦しいんだろう?
千夏「アンジェラ……間違いだと言うのなら」
千夏「今すぐ私の気持ちを消して下さい」

77 :1:2008/08/24(日) 01:23:34.43 ID:pZ3FAYND0
……自分の気持ちを思い知ったのは、いつからだったっけ……
前は、好きって分かっていても、そばにいられるだけで良かったのに。
私のすぐ近くで、笑ったり、ぽけっとしてたりするのを見ていられれば幸せだった。
……陸上部にいつまでたっても入らない、とか、言いたいことは色々あったけど。
千夏(修学旅行の時、からかなぁ……)
――今日の昼、柳瀬にからかわれた通り、
修学旅行では迷子事件の後、私はずっと春菜をつかまえていた。
それは、心のどこかがとても安らぐもので、
同時に、どこかがむずむずして落ち着かないもので。
そのむずむずした気持ちの正体は、「もっと触れたい」「もっと深い所でつながりたい」っていう、
「欲望」って言っていいもので……
千夏(んくっ……)
私は腕を上げ、眼を覆った。
原因とか、何がどうしてとか、そんなの大した問題じゃない。
問題なのは――一番問題なのは――

78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 01:23:35.20 ID:NfGLUnUEO
>>69
読んでるが、冗長的で、眠い俺にはだんだんきつくなった

>>1には悪いが、
まとめサイトに載る事期待して寝る
ガンバレ、>>1

79 :1:2008/08/24(日) 01:24:33.22 ID:pZ3FAYND0
千夏「どうして……今そばにいてくれないの?」
腕の下。閉じた瞼から、涙が出てきた。
会いたい。
今すぐそばに来て欲しい。
そしたら同じベッドで、一緒に寝て。
春菜がイヤだって言うのなら、エッチなことは絶対しない。
でも、親友だったら、同じベッドで眠るくらいしてもいいよね?
一日中、一晩中、ずっとふたりっきりで過ごしたい。
ふたりで夜更かしして、いろんなこと喋りたい。
いつもみたいに、私が怒ったりとか、お説教するとか、そんなんじゃなくて。
つまんない、他愛のないどうでもいいことで、けらけら笑って時間を過ごせたら。
春菜をひとりじめしたい。二ノ宮も、早坂も、誰もいない所で――
千夏「無理だよ……そんなの」
何も握るものがない手を、ぎゅっと握った。
千夏「春菜は寄宿舎生だし、学校から出ることなんて、全然ないもの」
ましてや、昼も夜もふたりっきり、なんて。
修学旅行だって、昼も夜も、クラスのみんなと一緒だった……。
千夏(旅行?)
そのキーワードに、何かが閃く。

80 :1:2008/08/24(日) 01:26:14.84 ID:pZ3FAYND0
もうすぐ卒業。記念に卒業旅行に行こう、って誘うのは、別に悪いことじゃない。
思わず身体が跳ね起きた。
卒業旅行。
ずっと学校の中にいる春菜を連れ出せる。
泊りがけにすれば、その間ずっと春菜と一緒にいられる。
春休みは約2週間。その間ずっと……
……はまずいにしても、2泊くらいなら。
いや、3泊。
3泊も4泊も、あんまり変わんないよね。
だったらいっそのこと5泊にしたって……
千夏「……でも、陸上部みたいにうやむやにされたらどうしよう……」
春菜(どうしようかな……しばらく考えさせて)
なんて答えが返ってきて、
気がついたら春休み終わっちゃう、なんてことも、春菜だったらありえる。
千夏「……どうやって、切り出そうかなあ」

1日目終了

>>78
おやすみ

81 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 01:32:19.01 ID:XZoyEmoQO
これは更新を待つべきなのか?

82 :1:2008/08/24(日) 01:35:42.49 ID:AAffAfRV0
規制されちゃった・・・

83 :1:2008/08/24(日) 01:36:40.21 ID:AAffAfRV0
翌朝。
卒業式まで後7日
いつもの時間に起きて、いつものように家を出る。
いつもなら、春菜は今日もちゃんと学校来てるかなぁ、とか、
朝連でどれくらい体動かすか、なんて考えてるんだけど。
千夏(どうすれば、春菜は「行こう」って言ってくれるかな?)
休日に外に連れ出して遊びに行く、なんてこととは訳が違う。
しかも、昨日は修学旅行のこと蒸し返しちゃったから、「旅行」がNGワードになっているかも……
千夏(……春菜に限ってそれはないか)
しかし、こう言っちゃなんだけども、
春菜はお世辞にもアクティブな子じゃない。
それは、陸上部の答えをいつまでたっても出さないことからも分かる。
春菜(旅行? 面白そうだね、行く行く)
なんて反応は、絶対しないだろう。
千夏(どうやって釣ろうかなぁ……)
……仮にも友達相手に「釣ろう」っていうのもアレかも知れないけど。
千夏(釣る……にしても、エサがないとなあ)
今度は友達相手に「エサ」か、と自分で自分に突っ込みを入れた。
もうちょっとマシな言い方ないもんかなあ……
駅の改札を通って、電車に乗った。
………………

84 :1:2008/08/24(日) 01:38:08.43 ID:AAffAfRV0
電車を下りて、改札をくぐる。
通勤途中のサラリーマンな人とか、私のように通学途中の、制服を着た人たちにまぎれて、
私は聖マリエル学院への通学路を進んだ。
電車の中でも色々考えてみたけれども、答えは出ない。
「釣る」は「引き」、「エサ」は「つかみ」と言いかえられる、なんてことを思いついたくらい。
で、春菜の興味を「引き」つけて、「つかむ」ようなものがあるかと言えば……。
千夏「ないんだよなあ、これが」
以前、「いつも休みの日には何やってるの?」と訊ねたら、
春菜「別に……みんなとおしゃべりしたり、秋穂ちゃんから借りた本、読んだりとか」
なんていう答えが返ってきた。
趣味か何かに没頭したりとか、そういうことはないらしい。
おかげで、とっかかりみたいなものがない。
変なものの誘惑を受けていない、ってことでは、春菜は間違い無くマリエル学院の学生だろう。
……敬虔かというと、そんなこともなさそうだけど。
思わず背中を丸め、溜息をついた時、


もうちょっと長めにして、時間を置くことにする
連投について調べてくる

85 :1:2008/08/24(日) 01:39:52.63 ID:AAffAfRV0
電車を下りて、改札をくぐる。
通勤途中のサラリーマンな人とか、私のように通学途中の、制服を着た人たちにまぎれて、
私は聖マリエル学院への通学路を進んだ。
電車の中でも色々考えてみたけれども、答えは出ない。
「釣る」は「引き」、「エサ」は「つかみ」と言いかえられる、なんてことを思いついたくらい。
で、春菜の興味を「引き」つけて、「つかむ」ようなものがあるかと言えば……。
千夏「ないんだよなあ、これが」
以前、「いつも休みの日には何やってるの?」と訊ねたら、
春菜「別に……みんなとおしゃべりしたり、秋穂ちゃんから借りた本、読んだりとか」
なんていう答えが返ってきた。
趣味か何かに没頭したりとか、そういうことはないらしい。
おかげで、とっかかりみたいなものがない。
変なものの誘惑を受けていない、ってことでは、春菜は間違い無くマリエル学院の学生だろう。
……敬虔かというと、そんなこともなさそうだけど。
思わず背中を丸め、溜息をついた時、
薫「先輩っ!」
だんっ! と何かが背中にぶつかってきた。
千夏「うわあああっ」
薫「おはようございます!」
背中にぶつかってきた長谷川は、そのまま両腕を私の首に巻きつけてきた。
薫「どうしたんですか、先輩。何か暗いですよ?」
千夏「別に、暗くなんか……」
薫「悩み溜め込むのは良くないですよ。私に話してみてください」
(ぎゅううっ)
言いながら、長谷川は私に体を押し付けてくる。
足がもつれて、転びそうになった。

86 :1:2008/08/24(日) 01:41:03.04 ID:AAffAfRV0
千夏「あー、気持ちだけ、っと、もらっとくから」
薫「そんなぁ、水臭いですよ、先輩。わたしと先輩の仲じゃないですか」
千夏「いいってば。ほら、手離して」
薫「ええ〜っ」
文句を言う長谷川を無視して、からみついた腕をほどいた。
私と並んだ長谷川が、口をとがらせながらこちらを見る。
薫「先輩、私のこと嫌いなんですかぁ?」
……何でそういう話になるの?
千夏「別に嫌ってなんか……」
薫「じゃあ、好きなんですね? わぁい」
千夏「こら、やめろって」
今度は腕にしがみついてくる長谷川を、慌てて振り払った。
千夏「そういうことはやめなって」
千夏「昨日のアンジェラの話、聞いていたでしょ?」
薫「もちろん聞いてましたよ。でも、私が先輩を好きって気持ちには、偽りなんてありません」
顔を輝かせながら、まっすぐな目でこちらを見てくる。
千夏「女の子同士で好きだなんだ、って、ヘンだと思わない?」
そう……それって、すごくヘンなこと。
ヘンで、いけないことなんだから。
でも、長谷川は屈託なく微笑んだ。
薫「やだなあ先輩。好きって言葉で、何考えてるんですか?」
千夏「何って、別に何も……」
薫「佐倉木先輩は私の憧れなんです。誰よりも速く走って、とってもきれいでかっこいいと思います」
薫「そう思うのは、好きってことですよね。これっていけないことですか?」
千夏「別に……いけなくはないけど」
薫「ならいいじゃないですか。私は佐倉木先輩のことが大好きです」
そう口にする長谷川は、迷いが無く、誇らしげで。
実際私は少しうらやましくなったけど、

87 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 01:41:03.19 ID:XZoyEmoQO
>>84
主人公が連投についてググってるかとおもてふいたわ

88 :1:2008/08/24(日) 01:42:22.37 ID:AAffAfRV0
千夏「こら」
私は、こつん、と長谷川の頭を小突いた。
薫「あ痛」
千夏「学年末テスト終わったからって、浮ついてるんじゃないの?」
薫「そんなことないですよう」
千夏「じゃあ解放感で心のたがが緩んでる。ピシッとしろ!」
これは昨日、春菜に言った台詞。
思いっきり先輩面して、ちょっと語調を強くすると、長谷川はその場で背筋を伸ばした。
薫「は、はいっ、先輩!」
千夏「ニヤニヤしない、顔も引き締める!」
薫「はいっ!」
長谷川は、緩みまくった自分のほっぺを自分でぴしゃりと打った。
千夏(こういう反応の良さが、春菜に少しでもあればなあ……)
薫「せんぱいっ」
千夏「ん? ああ、何?」
薫「先輩も引き締まっていきましょう!」
千夏「あぁ、うん。そうだね」
薫「引き締まってませんよ!」
………………
朝練のメニューは、そんなに大したものじゃない。
柔軟体操と、軽い走りこみ、せいぜいがそんな程度。
すぐに授業が待っているんだから、そうそう激しい運動はできない。
だから、せいぜいが軽く汗を流す程度のものになる。
体が目がさめていく感覚は、やっぱり気持ちがいい。
これが大会直前だったりすると、授業中は睡魔と戦わないといけなくなったりもするんだけど。
あと、朝練で好きなのが……

89 :1:2008/08/24(日) 01:45:16.01 ID:AAffAfRV0
千夏(そろそろ……かな?)
100メートルのフレームを、スタートラインまで戻りながら、
寄宿舎から校舎入り口までの道を見る。
いつもなら、この時間に春菜が道をやって来るはず。
名前を呼んだり手を振ったりすると、手を振り返したりしてくれるのだ。
他愛ないことだけれど、とても幸せ。
あ……ほら。
いつもの、大きくて真っ赤なリボンをつけた女の子が、
道を歩いてやって来る。
その姿を見るたびに、私はいつも安心する。
今日も遅刻はしなかったし、具合悪くして休む、なんてこともなかった。
千夏「春菜ぁ」
そう呼んで、いつものように手を振った。
けど。
千夏「春菜?」
春菜はこちらに振り向きもせず、まっすぐに道を進む。
そうして、そのまま春菜は玄関の中にまぎれてしまった。
……春菜?
千夏(何か……あったの?)
薫「先輩! よそ見しないで!」
いつの間にか、傍らに長谷川が立っていた。
薫「時間は限られてるんです、ムダにしちゃいけませんよ」
千夏「あ、ごめんごめん」
………………


PCシャットダウンしてきたらまた書けるようになったんだけど、次規制されても同じ方法で書けるようになるのか?
教えて!

90 :1:2008/08/24(日) 01:46:39.29 ID:AAffAfRV0
その日の朝から、
私は春菜に話し掛けるタイミングをとりあぐねていた。
ゆうべからさんざん悩んで、結局どう切り出していいか分からなかった、というのと、
やっぱり、朝から春菜の様子が変だったから。
見ていると、心ここにあらず、という感じで、
……春菜がボーッとしてる、というのはいつものことだとして、
顔色も悪く、授業中もずっとうつむいたままで、
体育の授業でマラソンをした時は、今にも倒れそうだった。
それでも何とか、今日の最後の授業を迎えたけれども、
春菜の顔色はさらに悪くなっていて、近くの席の子も心配そうに見ている。
千夏(アレ、なのかな?)
生理だっていうなら、きちんと先生に話せば、体育は見学にさせてもらえる。
いくら校則がきびしいからって、そこまでひどくはない。実際そう言って、休ませてもらった生徒もいる。
千夏(授業終わったら、寄宿舎まで送っていこう)
そう思いながら、また春菜の方を見た。
相変わらず彼女は具合が悪そうで……
あれ?
千夏(何やってるんだろ?)
春菜は机の脇のカバンをいじって、
こっそり、何かを取り出そうとしていた。
千夏(薬か何かかな?)
そう思った矢先、
講師「友原さん」
先生が春菜を指名した。
千夏(先生……よりによって、こんな時に……)
名指しされた春菜は、反応がない。
講師「友原さん?」
千夏(うあああ、勘弁して)
心中で叫ぶ。
春菜か、講師の先生に向けてかは自分でも分からない。

91 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 01:47:05.37 ID:3QtPunHq0
絵はまだなのか?

92 :1:2008/08/24(日) 01:47:33.75 ID:AAffAfRV0
講師「友原さ……」
春菜「は、はいっ!」
やっと反応した春菜は席から立ち上がり、
手にしていた何かを机の中に入れると、
おぼつかない足取りで黒板へと向かう。
千夏(春菜……大丈夫かな?)
そして、黒板に書かれてある問題を前にした瞬間、
(ぐらっ……)
膝が折れ、
腰が沈み、
まるでぜんまいの切れた人形のように、
春菜はその場に倒れた。
……どさっ。
きゃあああっ! という悲鳴が教室に響く中、
千夏「春菜!」
私は席を飛び出し、教壇にかけつけ、春菜を助け起こした。
千夏「春菜! 春菜!」
目を閉じた無防備な顔。
それを腕に抱え、頬を平手でぴたぴたと叩く。
反応はない。
千夏(……!)
一瞬、恐ろしい想像が沸き起こった。

93 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 01:48:25.18 ID:AAffAfRV0
>>91
>>6

94 :1:2008/08/24(日) 01:50:32.27 ID:PY3OXTUK0
手のひらを口元にかざす。指先で頚動脈と手首を確かめる。
呼吸あり。鼓動もあり。
けど、大至急手当てをしないと……!
千夏「ドア開けて!」
ドアの傍の席の子に言い放ち、春菜の体を抱えあげようとして、
千夏「ん……んぐっ!」
持ち上がらない。
千夏(春菜、重っ!)
運動部だから、体力には自信あるのに!
千夏(寄宿舎で何食べてるの、春菜!?)
ふたたび、春菜を抱えあげようと試みる。
左腕は背中、右腕はそろえた足の膝裏、
折った左膝を腰の上辺りに添えて、
肩、肘、手首、
腰、膝、足首、
下腹、背筋、食いしばった奥歯、
全部の個所に、いっせいに力をこめて……っ!
千夏(せえ……のっ!)
智恵「無理はいけないわ、佐倉木さん」
千夏「……え?」
出鼻をくじかれる。
見ると、委員長が春菜の足首を両手に抱えていた。
智恵「二人で、保健室まで運びましょう」
千夏「そ、そうだね」

また規制されたよ!

95 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 01:50:46.05 ID:XZoyEmoQO
それにしてもIDがAとfばっかだな

96 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 01:52:44.16 ID:PY3OXTUK0
私は体の位置を入れ換えた。
春菜の背中に回って、両脇の下に手を差し込み、胸を抱えるようにする。
智恵「じゃ、いきましょ」
千夏「うん」
千夏・智恵「せえ……のっ!」
……………………
人の体というのは、すごく重い。
ただでさえ重いのに、なまじ力が抜けていると、ぐにゃぐにゃしているものだから、運び辛いったらありゃしない。
それでも、私たちは廊下を進み、階段を降り、保健室の戸を開けて、
何とか春菜の体をベッドまで運ぶことまでやり遂げた。
珍しく、保健の先生がいて、
校医「極度の緊張と、疲れによるものね。しばらく休んでれば起きるから、大丈夫」
と言ってくれた。
千夏「本当にそれだけなんですか? 大丈夫なんですよね?」
校医「大丈夫ですってば。寝不足みたいなものだから。そんなに心配することはありませんよ」
……寝不足。
千夏「授業中に倒れるようなのが寝不足だなんて、そんな……」
智恵「佐倉木さん」
委員長が、私の脇を突ついてきた。
智恵「それじゃあ、後はよろしくお願いします」
千夏「よろしくお願いします」
二人で頭を下げた後、私たちは保健室を出た。
智恵「ふぅっ。大変だったね、佐倉木さん」
千夏「あ、委員長、服……」
智恵「え?」
私が指差す先を見る委員長。

97 :1:2008/08/24(日) 01:54:34.90 ID:PY3OXTUK0
委員長の制服の、胸からお腹にかけての辺りは、白い汚れがついていた。
春菜の上履きの、裏の汚れがこびりついてしまったのだろう。
智恵「ああ、大したことないわ」
言いながら、ポケットから携帯ブラシを出して汚れを落とす。
智恵「……何があったのかしら、友原さん?」
千夏「私も知りたい、それ」
千夏「寝不足で、倒れるくらいに緊張するなんて……」
智恵「マラソンがいけなかったのかしらね?」
千夏「朝から様子はヘンだったけどね」
智恵「……佐倉木さんもよく見てるね」
「よく見てる」……?
千夏(どういう意味かな?)
いや、見てるっていうなら……。
千夏「委員長こそ、寄宿舎生でしょ? ゆうべは春菜、宿舎で何かあった?」
智恵「私も知らない……。少なくとも昨日は、夕食も普通にちゃんと食べていたし、特にヘンな様子はなかったけども」
智恵「……同じ寄宿舎生っていっても、ずっと見ていられるわけじゃないから」
そう言って、委員長は複雑な顔で笑う。
私はその顔を「よく分からなくてごめんなさい」、という意味に取った。
千夏「ああ、そりゃそうだよ。別に、同じ部屋にいるってわけでもないんだし」
智恵「もしそんなことがあったら、友原さんと同室の人は大変だね」
千夏「そうだろうね……それなら私が春菜と相部屋になるよ」
親指を立て、自分自身を指差した。
千夏「私がちゃんとしつけてやるんだから」
智恵「……」
智恵「佐倉木さんが一緒にいるんなら、頼りになるでしょうね」
智恵「逆に、佐倉木さんに頼りっきりになっちゃって、友原さん、もっと……」
千夏「もっと、何?」
智恵「もっと……その、うん、アレになっちゃうかも」
問題。アレ、という代名詞に入る適切な言葉は何でしょう。
ヒント。あまりよい意味の言葉ではありません。多分。

98 :1:2008/08/24(日) 01:56:20.94 ID:PY3OXTUK0
千夏「そしたら、甘ったれた性根も私が叩き直したげる。陸上部に入れてびしびし鍛えてやるんだから」
それならむしろ望むところ。
一日中、春菜とずっと一緒にいられる。想像するだけで頬が緩んできそう。
千夏(こら、落ち着け、私)
春菜がさっき、倒れたばっかりだってのに……。
智恵「佐倉木さんて……」
千夏「何?」
智恵「佐倉木さんて、友原さんのことが本当に好きなのね」
一瞬で、私の顔がこわばった。
胸の奥が、黒く、重くなったような感じがする。
千夏「そ、それって……どういう意味?」
智恵「え? 仲が良くていいなあ、って意味だけど?」
心配性で、苦労性の委員長。
いつもいつも、人から面倒を押し付けられて、それでもその役目を果たしているのは、人がいいから。
その委員長が私に向けている顔は、邪気の無い、やっぱり人のよさそうな顔のはず、なんだけど……。
その時、チャイムが鳴った。
今日の午前の終わりを告げる、
同時に、私たちにとっては、今日の授業の終わりを告げる鐘だった。
…………

99 :1:2008/08/24(日) 01:57:48.88 ID:PY3OXTUK0
昨日に春菜と別れた時は、別におかしな様子もなかった。
委員長の話によると、夕食の時も特に変わった様子はなかった、とのこと。
すると、夕食の後で……
千夏「……何かあったのかな?」
中身を半分以上残して、ランチボックスの蓋を閉じる。
先生は言った。緊張とか寝不足とか、たいしたことはないんだろうって。
寝てれば治る。倒れた春菜に、私がしてやれることは何もない。
そうは言っても……
もやもやしてて落ち着かない。
千夏「やっぱり、確かめておかないと、ねえ」
宿舎の春菜で、何か知っていそうな相手と言えば……
頭の中で心当たりを探りながら部室を出ると、長谷川と出くわした。
薫「あれ、先輩、どこに行くんですか?」
千夏「あ、うん。ちょっと、用事があって」
薫「……また友原先輩のことですかぁ?」
千夏「まあね。世話が焼けるんだ、あいつ」
何か言いたそうな顔の長谷川を無視して、私は校舎の中に戻った。

100 :1:2008/08/24(日) 01:58:52.29 ID:PY3OXTUK0
下級生の教室が並ぶ廊下というのは、どうも居心地が悪い。
つい去年やおととしまでは、確かに自分達の居場所はそこだったというのに、
風景も、そこにあるいろいろなものも見慣れているだけに、
よく知った友達に、知らん顔をされてるような違和感や疎外感があるような気がする。
実際、「上級生」っていうだけで、周りの女の子たちは特別な目で私のことを見ていた。
その教室の前に立ち、クラスの女の子に声をかけて、その子を呼び出す。
このみ「あれ、千夏ちゃん。どうしたの?」
やって来たのは益田このみ。手にモップを持っている。
千夏「悪いね、掃除してるところに」
このみ「ううん、もう終わるところだから」
鼻にかかったような声を出しながら、ふるふると首を振る。
このみ「で、どうしたの? 珍しいね、千夏ちゃんがこっちに来るなんて」
千夏「いや、あのね……昨夜、春菜に何か変わったことなんて、あった?」
このみ「ううん、特になかったけど? どうして?」
ちょっと迷ったけど、春菜が授業中に倒れたことを話した。
このみ「ええっ……!」
予想通りに大声をあげかけた益田の口を、手でふさぐ。
このみ「ふぐ……ふが、ふが……」
千夏「落ち着きなって」
千夏「今は保健室で休んでる。大したことないってさ」
このみ「……ほんとに?」
益田の口が、私の手のひらでもにょもにょと動いた。
千夏「ほんとほんと」
このみ「良かったぁ……」
ため息が、私の手のひらに当たる。
千夏(もう大声を出すこともなさそうだね)
そう判断して、手を離した。

101 :1:2008/08/24(日) 02:00:20.07 ID:PY3OXTUK0
千夏「でも、昨日とかに春菜に何かあったのかな、って思ってね。何か知らない?」
このみ「昨日? 昨日は別に、お姉ちゃんに変わった様子は……あっ」
益田が小さく声を上げ、自分の口元に手を上げた。
このみ「でも……まさか……」
千夏「何? 何か知ってるの?」
このみ「うん……おまじない、したんだ」
……へ?
千夏「おまじない?」
こくん、とうなずく益田。
このみ「運命の人に出会えますように、って。お姉ちゃんの分もやったの」
千夏「……それが、どうして春菜が倒れたことに関係するのかな?」
このみ「うん……ひょっとしたら、おまじないがききすぎちゃって、その副作用みたいなのが出たのかなって……」
副作用って……。
千夏(そのおまじないってのは強烈なカゼ薬か何か?)
というか、人ひとり卒倒させるようなのはおまじないじゃなくて「呪い」っていうんじゃ……。
千夏「……あー、多分それ関係無いから」
このみ「そうかなぁ……」
千夏「関係あったら大変だよ」
千夏「昔だったら、益田は魔女ってことになって、火あぶりにされちゃうんだから」
このみ「えぇ〜」
おろおろと怯える益田。

102 :1:2008/08/24(日) 02:02:39.97 ID:PY3OXTUK0
魔女狩り。
それは、キリスト教の歴史の中でももっとも暗く、おぞましい部分。
狂信的集団ヒステリー、っていうのが一般的な見方だけれど、
だからといって、隣近所同士、家族同士が疑心暗鬼でお互いを監視して、密告し、
拷問にかけて「魔女です」と自白させ、むごたらしく殺していった、という事実が軽くなるものでもない。
授業でこのあたりを聞かされた時は、教室全体にいやな空気が立ちこめたように思った。
さらにやりきれなかったのは、これについてレポートを書かされた時、
「魔女狩りとは、教皇庁がお金持ちからお金巻き上げる大義名分に使った、という一面がある」という文を図書館の本で見つけた時だった。
そうなったら私なんかは家がそれなりにお金があるから、真っ先に火あぶりにされるだろう。
……ちなみにその本を紹介してくれたのは二ノ宮だ。
秋穂(「魔女狩り」についてお調べなのですか?)
秋穂(なら、この辺りがご参考になるかと思います)
そう言ってきた時の二ノ宮の笑顔には、底意地の悪いものが確かにあったと思う。
……まあそれはともかく。
千夏「だから、それは関係無いから」
頭を撫でて、怖がってる益田をなだめる。
大した冗談を言ったつもりじゃなかったんだけど、益田にはけっこう堪えたらしい。
千夏「そんなに大げさにならないでよ。怖がらせたってんなら謝るから」
このみ「でも……あたし、強制されちゃったりしたら……」
……強制。
私の胸の奥でも、何かが「ぐさっ」と突き刺されたような気がしたけど、
千夏「おまじない程度でそんなことやってたら、盆暮れ正月のたびに大騒ぎになってるよ」
千夏「初詣するウチの学校の子だって、珍しくないんだから」
無理やりそれを押し殺した。
千夏「私に今告解もしたから、ますます心配すること無いって」
このみ「そっか……そうだよね」
私に頭を撫でられている下で、益田の顔が無邪気そうに笑った。

103 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 02:02:45.22 ID:edJjF3xpO
ロリ×百合=俺

104 :1:2008/08/24(日) 02:04:38.32 ID:PY3OXTUK0
私は図書館に向かった。
春菜のことをよく知っていると言ったら、やっぱりこいつを外すことはできない。
千夏(苦手なんだよなあ、どうも)
そんな苦手な相手に話を聞かなきゃならないほどのことかというと、
そんな大げさな問題でもない、というのは分かっているんだけれども、
やり始めたことを途中で止めるのは、さらにもやもやした気持ちを引っ張ることになりそう。
千夏(まあ、春菜についてよく知っていそうなのは確かだし)
背負わなくてもいい義務を自分で背負っちゃったような気分で、図書館へと廊下を進む。
みんな春菜が悪いんだ。春菜が倒れたりしなければ……。
ドアをくぐると、紙の匂いと静謐な空気。
自分の足音、服の衣擦れの音ですら、何かを乱すような。
少し緊張しながら、カウンターにいる子に声をかける。
千夏「二ノ宮秋穂さんって、いる?」
女生徒「二ノ宮さんは……今はいないみたいですね」
女生徒「何か用ですか? 伝言なら聞いておきますけど」
千夏「いや、別にいいよ。大した用事でもないから」
私は手を振って、カウンターから離れた。

105 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 02:05:35.24 ID:3QtPunHq0
長い
もう少し短く纏めろ

106 :1:2008/08/24(日) 02:06:50.31 ID:PY3OXTUK0
千夏(春菜、もう眼を覚ましているかな?)
廊下を進む。
ついさっきには委員長と一緒に、春菜を運んでいった廊下だ。
角を折れると、保健室のドアが見えた。
と。
そのドアの前に、見覚えのある人影。
ロングヘアーの、眼鏡をかけた女の子。
あれは……。
千夏「二ノ宮じゃないか」
ドアを閉めているということは、今しがたまで保健室の中にいた、ということ。
私は早歩き気味に近づいた。
千夏「二ノ宮」
呼びかけると、眼鏡をかけた顔がようやくこちらに向いた。
秋穂「あら、佐倉木先輩」
千夏「佐倉木先輩、じゃない。何で二ノ宮がこんな所にいるんだ?」
秋穂「友原先輩が倒れられたと聞きましたので、様子を見に来たんです」
……情報が早い。
千夏(……いつ、誰から聞いたんだ?)
いや、それよりも先に聞かなきゃいけないことがある。
千夏「……春菜は? 起きてた? 様子は?」
秋穂「まだお休みでした。ふつうに眠ってらっしゃるようでしたので、特に心配はいらないか、と」
そう言って、上品そうな笑いを浮かべる二ノ宮。
言葉遣いも丁寧で、物腰や動作も優雅で隙が無く、
お嬢様とかお姫様という言葉がこれほど似合う女の子もそうそういないんじゃないかと私も思う。
けど、この子の雰囲気に時折ヘンな黒さが見え隠れするのは、私の気のせいだろうか?

107 :1:2008/08/24(日) 02:08:46.90 ID:PY3OXTUK0
千夏(……いや、それはともかく)
千夏「二ノ宮。ゆうべ、春菜に何か変わったこと、なかった?」
秋穂「ああ、多分それは、私です。すみません」
申し訳なさそうな顔をして、ぺこり、と二ノ宮が頭を下げた。
千夏「いったい春菜に何をしたんだ」
思わず、半歩ほど身を乗り出した。ついつい口調も強くなる。
が、二ノ宮も一歩も退かずに答える。
秋穂「本をお貸ししたんです。多分、それをお読みになってるうちに、朝を迎えられたのではないかと思います」
……そういうオチか。
千夏(春菜、単純)
本当に面白い本というのは、時がたつのも忘れるくらいに読みふけってしまうものであるらしい。
らしい、というのは、私にはまだそういう経験がないから。
……ついでに、眠れない夜ならば、面白い本がなくたって、こっちはいくらでも過ごすことができる。
千夏「で、何の本貸したの?」
秋穂「小説ですわ」
千夏「ミステリーか何か?」
秋穂「いいえ。愛についての話です」
上品な、おしとやかな笑顔のままで、
眼鏡の奥のまなざしが、かすかに細められたように思える。


>>105
朝までに終われば良いな
って程度の長さだよ

108 :1:2008/08/24(日) 02:09:55.26 ID:PY3OXTUK0
……二ノ宮秋穂。
春菜が無邪気に信頼し、「かわいくておとなしい子」というこの後輩に、
得体の知れない「黒さ」を感じるのはこういう一瞬だ。
千夏「駄目じゃないか、そんなことしちゃあ」
私は「黒さ」に気づかない振りをして、
千夏「春菜は単純なんだから」
先輩風を思い切り吹かせて、二ノ宮に言葉を返す。
秋穂「それもそうでした。友原先輩のことは、私が一番良く知っていますのに」
秋穂「これからは気をつけます」
再び、二ノ宮は頭を下げた。
千夏「ま、あまり気にしなくてもいいよ。私からも春菜に言っとくから、んじゃね」
そう鷹揚な振りをしながら話を打ち切り、閉じられているドアに手をかけると、
秋穂「佐倉木先輩?」
と、また細めた目で二ノ宮が牽制してくる。
千夏「ん? 何?」
秋穂「友原先輩のお休みを邪魔するのは……」
千夏「邪魔なんてしないよ。ちょっと顔見るだけ」
秋穂「特に心配はいらないと思いますが?」
千夏「目の前で倒れられて、運んできた方としてはね、さすがに気になるんだよね」
千夏「それに、これでもこっちは親友のつもりだし」
微妙に立ちふさがるようなポジションにある二ノ宮の体を少しどかして、
私は保健室のドアを開いて部屋の中に入り、
そのままドアを閉じてしまった。
……さすがに鍵はかけなかったけど。

109 :1:2008/08/24(日) 02:11:17.20 ID:PY3OXTUK0
保健室の中に、先生はいない。
ベッドのカーテンを開けると、仰向けになって眼を閉じた春菜がいる。
耳をすませば、静かな寝息。
毛布の胸のあたりが、その寝息に合わせてかすかに上下している。
ベッドの横にあった丸椅子に腰を下ろした。
眠り姫。
無防備な春菜の寝顔は、まさにそれ。
思わず苦笑し、そして、
目を閉じたまま、びくともしない春菜を見ているうちに、
やっぱり不安がこみ上げてくる。
保健の先生は、大丈夫、って言っていた。
それが、どんなに馬鹿げた杞憂かって分かっていても、消し去ることはどうしてもできなかった。
もし、春菜が。
このまま、目を覚まさなかったら……。
無論、今だって毛布のかかった胸は規則正しく上下してるし、
寝息だってちゃんと聞こえる。
……寝息。
千夏(この寝息、聞いたことある)
確か、修学旅行の時――
迷子になった日の夜。手をつないで、隣の布団で。
千夏「……!」
体の奥底から、違うものが込み上げてきた。
手をつないでいた感触。ずっと一緒の夜。
それもやっぱり、私にとっては、何度も何度も繰り返して反芻してきた……
千夏「……(ごくっ)」
唾を飲む。心臓が重い鼓動を打ちはじめる。
目の前、
動かない、無防備な寝顔の春菜。
目を閉じて、かすかに開いている唇。
待っているような。

110 :1:2008/08/24(日) 02:12:18.53 ID:PY3OXTUK0
千夏(はる……な)
目眩がした。
もし今、私が倒れたら、きっとベッドに突っ伏す形になる。
……そうなったら、自分でも何がどうなるか、分からない。
千夏(……引き締まれ、私!)
両手を、自分の頬に向けて思い切り、打ちつけた。
ばしっ!
千夏「……っ!」
……じぃん、という余韻が去ると、
何とか自分を取り戻せた。
私は立ち上がり、
逃げるようにして保健室のドアに向かった。

111 :1:2008/08/24(日) 02:13:58.31 ID:PY3OXTUK0
保健室を出た。
さすがにドアの前には二ノ宮はいなかったけど、
階段の上り口の角の辺りで、姿を隠した髪の長い女の子がいたような気がする。
千夏(部活……いかなきゃ)
もう始まっているだろう。玄関に向かう。
千夏(長谷川、機嫌悪くしてるだろうな)
それらのことに思いをめぐらせながら、保健室でのことをまぎらわせた。
玄関まで来た。
で、上履きを靴箱に入れて、外靴を取り出す。
その時、隣に人が立った。
何気なくそちらの方に目を向けると、
千夏(……)
千夏(こんな子、いたっけ?)
そこにいたのは、ちょっと背丈の低い女の子。
真っ白な肌。結わえられた黒い髪が、まっすぐに左右に垂れて。
高級血統種の猫のような、そんな雰囲気で−−
自分の外靴を靴箱の中に入れた時、その子も私の方に顔を向けた。

112 :1:2008/08/24(日) 02:15:28.64 ID:PY3OXTUK0
???「何」
不意に、その子が声をかけて来る。
千夏「あ、別に」
千夏「見かけない子だったから」
なぜか、緊張した。
澄ましたような、表情のない顔の、抑揚のない声。
???「私、転校生」
千夏「……へえ、そうなんだ」
こんな時期に?
???「職員室って、どこ」
千夏「職員室なら、廊下をこっちに進んで、角を折れて……」
???「そう」
その女の子は、上履きを履いて歩き出した。
……何だか、
春菜とは違った意味で、危なっかしい感じがする。
千夏「大丈夫? 連れて行ってあげようか?」
???「いい」
振り向きもせずにその子は答え、廊下をすたすたと歩いていった。
………………

113 :1:2008/08/24(日) 02:19:15.32 ID:HP6CsnzZ0
部活に遅れて顔を出したために、長谷川はやっぱり機嫌が悪かった。
部のエースが。一番上の先輩が。そんなんじゃ進級した後の陸上部では。うんぬん。
さんざん小言を聞かされながら、一通りのメニューをこなした後、
再び保健室に顔を出す。
ドアを開けると、そこには毛布のめくれあがったベッドだけ。
千夏(春菜……もう目を覚ましたんだ)
それなら、ということで、今度は寄宿舎へと向かった。
舎監の先生に聞いてみると、春菜はやっぱり帰ってきているとのこと。
ただし、どこかポーッとしてて、やっぱりどこか様子が変で、
部屋に閉じこもったまま、出てこないそうだ。
舎監「寝てるんじゃないかしらね? 昨日は、特に変な様子はなかったみたいですけど」
千夏「……そう、ですか」
……。
寄宿舎を背にして、もと来た道を戻っていく。
途中で立ち止まり、振りかえった。
昨日は春菜に「また明日」と言って別れたのに。
物足りなさを感じながら、また道を歩き出した。
そういえば、今日は春菜と全然口をきいてない。

114 :1:2008/08/24(日) 02:22:25.95 ID:HP6CsnzZ0
………………
修学旅行の迷子事件の後、
私はずっと春菜の手をつかまえていた。
で、こういう状況で何も問題が出ないはずはない。
例えば食事の時、
春菜の隣の席に陣取ったのはいいけれども、
片手がふさがっているわけだから、あまり行儀の良い食べ方なんてもちろんできない。
いつ先生に注意されるかとひやひやしながら夕食、朝食を済ませたものだから、
何を食べたかなんて全然覚えていない。
さすがにトイレは、個室に入るときには手を離したけれども、
「花摘み」が終わった後はすかさず手をつないでいた。
……いや、もちろん手を洗った後に。
眠る時も、もちろん春菜の隣の布団を確保して、
毛布の下で、ずっと手をつないでいた。
その夜更けに、春菜が身を起こしたのにつられて、私も目を覚ました。
千夏(ん……春菜ぁ……どうしたの?)
春菜(えと……トイレ……)
千夏(そ……んじゃ、私も行く)
春菜(チイちゃんは寝てていいよ。トイレくらいひとりで行けるから)
千夏(ダメ……この旅館、結構広いんだから。春菜なら絶対迷う)
春菜(うう……チイちゃんひどい)
目をこすりながら、私も体を起こした。
手をつないだ状態で、真っ暗な部屋の中を転ばないように進んで、
部屋を出た。
廊下の明かりのまぶしさに、思わず目を細める。
壁にあった時計は午前3時をさしていた。
そんな時間だから、廊下には誰もいない。
……ちょっと、からかいたくなった。

115 :1:2008/08/24(日) 02:23:28.98 ID:HP6CsnzZ0
千夏(ねえ、春菜)
春菜(何、チイちゃん?)
千夏(この時間って、出やすいんだってね)
そう言いながら、壁の時計を指差す。
春菜は表情を強張らせながら、
春菜(し、知ってるよ。うしみつどきって言うんでしょ?)
春菜(あ、秋穂ちゃんの貸してくれた本で、読んだ)
そう言って、身を縮こまらせた。
千夏(こういう旅館とかホテルとかって、多いんだってねえ。そういう話が)
春菜(そ、そうらしいね。い、色々な人が来て、色々な事情抱えてるからって)
春菜(よ、夜でも人がいっぱいいるからって、そういうのが、集まりやすいって……)
……そこまでは言ってないけど。
千夏(……よく知ってるね)
春菜(秋穂ちゃんの本で読んだの。お、おばけとかが怖い理由は、よく分からないからだって)
春菜(だから、怖さについて理解をすれば、怖くなくなるって)
あはは、と春菜は小さく笑う。
その笑いは、ますます強張っていくばかり。
ちょっとだけ、賭けに出てみた。
千夏(そっか。春菜はよく知ってるね)
千夏(やっぱりトイレまでつきあうのはアレだよね。ひとりで行ってきなよ)
そう言って、つないだ手を放そうとすると、
春菜(ダメっ!)
ぎゅっ、と握り返された。
春菜(ほら、私、やっぱり迷うかも知れないし、そうすると、チイちゃんにまた迷惑かけるかもしれないから……)
中途半端な知識は、
かえって怖さを強くするということを二ノ宮は教えなかったらしい。
あの女……
よくやった。

116 :1:2008/08/24(日) 02:24:56.40 ID:HP6CsnzZ0
千夏(仕方ないねぇ。じゃ、トイレ一緒に行こうか)
春菜(う、うん)
静かな人気のない廊下を、ふたりで手をつないで進んだ。
私に引っ張られている春菜は、痛いくらいに私の手をつかんでいる。
千夏(そう言えば、この前テレビで見た映画でね……)
春菜(やだ……怖い映画?)
千夏(うん……でも、お化けとか幽霊とかがいきなり出てくるってのじゃないんだけど)
春菜(それじゃあ、殺人鬼が出て来たりとか?)
千夏(えーと、幽霊屋敷ものだったような気がする……詳しい筋は忘れちゃったけど)
春菜(……うう、幽霊屋敷?)
千夏(その映画のシーンで、こういう廊下で、ずっとつきあたりにエレベーターホールがあってね)
春菜(……うん)
千夏(ドアが開くと……)
春菜(……開くと? オバケが出てくるの?)
私は首を振った。
千夏(血)
春菜(……血?)
千夏(そう……血が、洪水みたいにエレベーターから溢れ出して来るの。ホール前の椅子とかをなぎ倒して、ゆっくり廊下に溢れて来るの)
聞いた直後は、大したことはなかったみたいだけど、
その後、じわじわと頭の中でイメージが鮮明になってきたらしく、
しばらくしてから、春菜が私の腕にしがみついてきた。

117 :1:2008/08/24(日) 02:26:38.76 ID:HP6CsnzZ0
春菜(チイちゃあん……!)
千夏(怖がりだなあ、春菜は)
春菜の方に向き直り、空いている手で春菜の頭を撫でてやった。
春菜(チイちゃん、チイちゃんのバカぁ)
千夏(怖がらせちゃったね、ごめんごめん)
言いながら、春菜の頭を抱き寄せた。
春菜(チイちゃん、チイちゃん)
千夏(ごめんごめん。ちゃんとトイレまでつきあってあげるから)
……至福。
春菜(チイちゃん……ぐすっ、チイちゃん)
千夏(……もう。何も泣くことないじゃない)
春菜(うぅ……ぐすっ……)
私の肩で、春菜は声を殺してしゃくりあげていた。
千夏(春菜?)
春菜(ひくっ……あのね、チイちゃん……)
千夏(どうしたの?)
春菜(ちょっとだけ、漏れちゃった……)
……やりすぎた。
千夏(ごめん……本当にごめん)
私は、心の底から謝った。

118 :1:2008/08/24(日) 02:28:41.37 ID:HP6CsnzZ0
春菜の手を引きながら、私はトイレの中に入った。
並んでいる個室は、なぜかひとつだけが使用中。
手近な個室に、私は春菜と一緒に入り、鍵をかけた。
静かな空気の中に、春菜のしゃくりあげる声だけが響いていた。
狭い個室の中、壁に春菜が背をつけて、入り口前に立つ私に向いている状態。
千夏(ごめんね、春菜)
春菜(うぅ……えぐっ……)
トイレットペーパーを引き出し、数回畳んで手に持った。
春菜(……チイ……ちゃん?)
千夏(後始末、してあげるから)
春菜(え?)
そう囁いて、
私は春菜の前に屈んで、
パジャマのズボンに手をかけると、
パンティごと、膝までひきずり下ろした。
春菜(ええっ!?)
千夏(静かに!)
声を上げる春菜を見上げてにらむ。
千夏(大きな声出しちゃダメ)
春菜(でも……チイちゃん何やってるの?)
千夏(私のせいなんだもの……)
千夏(だから責任とって、春菜のおもらし、私がキレイにしてあげるから)
春菜(おもらしなんて……そんな……)
千夏(ほら。足、開いて)

119 :1:2008/08/24(日) 02:30:08.21 ID:HP6CsnzZ0
指先で太ももの合わせ目に触れると、きつく合わさっていた脚がわずかに開いた。
脚に触れた指先には、生温かい湿り気と刺激臭。
両の内ももは、てらてらと濡れて蛍光灯の明かりを反射して、
その光は、太ももの上、アソコから来ている。
目の前に……春菜の、アソコ……。
唾を飲み込みながら、折り畳んだトイレットペーパーを、
まずは、ずり下げたパンティに押し付ける。
布地に押し付けると、指先に生温かさ。
トイレットペーパーを捨てて、また引き出して畳んで押し付けて。
それを何度か繰り返す。
頭の奥が痺れてくる。
頭上からは、春菜の嗚咽。
でも、イヤがってるわけじゃないからいいよね、なんて、
痺れた頭で、そう考える。
何度目かに引き出し、折り畳んだトイレットペーパーが脚に触れると、
春菜(……んくっ)
ぴくっ、と脚が震えた。
春菜の脚を濡らす光に沿って、
トイレットペーパーを肌に這わせる。
肌を傷めるといけないから、そっと。やさしいタッチで。
その度に、ひくひくっ、て春菜の脚が震えて、
頭の上から、春菜の吐息が洩れる。
片脚を拭った後は、反対側も、同じように。
いつしか嗚咽は止んで、
わずかに弾んだ二人分の呼吸の音が聞こえている。
指先が、アソコに触れた。

120 :1:2008/08/24(日) 02:32:15.35 ID:HP6CsnzZ0
春菜(ふぁ……っ)
千夏(春菜……)
もう、がまんできない。
右足を拭いていたトイレットペーパーの面を、
柔らかい春菜のアソコにくっつけた。
春菜(きゃっ……!)
びくん! と両脚がひきつり、
私の手は春菜の太股と、アソコに締め付けられる。
春菜(あ……ごめん)
千夏(いいんだよ、春菜……)
締め付けていた力が緩められ、
手が動かせるようになると、
私は指先を動かして、
トイレットペーパー越しに、春菜のアソコに触れた。
脚を拭っていた時よりも、もっと繊細に。
春菜のアソコは柔らかくて、
私の手の中で形を変える。
形を変えるたびに、春菜の吐息には甘いものが混じり、
やがて、トイレットペーパーが、湿り気を帯びてきた。
千夏(あれ? また濡れて来ちゃったね)
春菜(え……嘘)
千夏(しょうがないね、春菜は。また、お漏らししちゃったの?)
春菜(違う……違うの、それは……!)
千夏(静かに……)
春菜(うぅ……)
手の中で、紙はますます湿って来て、
重さと、熱をはらんでいく。

121 :1:2008/08/24(日) 02:35:11.37 ID:HP6CsnzZ0
熱は、そこだけじゃなくて、
春菜の吐息と、肌も熱くなっている。
ひくっひくっと痙攣するたびに、
わたしの手を挟む太ももが、
うっすらと、汗を帯びる。
熱い。
私も、体が。
心臓が、バクバク言って。
体の、奥底から、
熱いのが、血の流れに乗って、
体中を、駆け巡っている。
私は立ち上がりながら、空いている手を春菜の手に添えた。
手のひらを、ぴったりと壁にくっつけていた春菜の手は、
触れると、すぐに「ぎゅっ」って私の手を握った。
春菜の手のひらも、汗ばんでいる。
春菜も、熱いんだ。
私と、同じに。
屈めていた身を起こし、間近から、春菜の顔を覗き込む。
目を閉じた春菜は、頬を真っ赤にして、喘いでいた。
千夏(春菜……)
春菜(チイ……ちゃん?)
焦点の合っていない目が、私を見返す。
千夏(どうしたの? 何か、様子がヘンだよ?)
春菜(分からない……チイちゃんが、チイちゃんが、ヘンなことするから……)
千夏(私のせいなの? 私のせいで、春菜はこんなになっちゃったの?)
畳んだトイレットペーパーを、ゆっくり引き抜いて、
春菜の目の前に出した。

122 :1:2008/08/24(日) 02:36:58.20 ID:HP6CsnzZ0
千夏(春菜のおもらし……私のせいなの?)
春菜(イヤ……)
顔を背けた春菜の耳元に、唇を寄せた。
千夏(こんなにいっぱい……)
春菜(言わないで……チイちゃんの、バカ)
春菜が、感じてる。
私の手で。私の目の前で。
その時−−

123 :1:2008/08/24(日) 02:39:47.54 ID:oo6xSkhI0
声(……ん……んぁ……)
どこかから、声が聞こえた。
私たちの、声とは違う。
声(……はぁ……あ……ん……)
声(……ひぁっ……あ……きゃっ……)
ふたり分の喘ぎ声が絡まりあって、
しん、としたトイレの中の空気をかすかに震わせている。
声(そこ……や……だめ……)
声(ん……ふ……あ……)
ここは、女子トイレ。
聞こえてくる声も、両方とも、多分私たちと同じくらいの女の子の声。
……個室。
私たちが入ってきたときに、閉じていた。
数メートルも離れていない所で、
女の子同士で……。
手に持っている紙を捨てて、
春菜の赤くなっている耳たぶに、唇で触れる。
春菜(や……)
触れた後は、唇で挟んで、
吐息をかけながら、耳の裏や中を、唇でまさぐる。
春菜(あ……あ……)
春菜の匂い。甘いリンスと、肌の匂い。
唇で確かめる春菜の肌は、繊細で、柔らかくて、溶けてしまいそう。
食べたい、
春菜のこと、食べたいよ。

124 :1:2008/08/24(日) 02:40:20.81 ID:oo6xSkhI0
千夏(春菜……欲しい)
春菜(……え?)
手に持っていたトイレットペーパーを捨てて、
空いた手を春菜のおとがいにかけて、こちらに向ける。
待っているように、小さく開かれている唇を、
自分の唇で塞いだ。
春菜(ん……んんっ)
千夏(ん……は……む……んむ……)
唇で、春菜の唇を味わう。
春菜の唇が、私の唇の中で形を変える。
目を閉じれば、春菜の感触と、春菜の喘ぎと、春菜の匂いしかない。
私の唇が、春菜の口の中に潜り込んで、
熱くて、固いものに触れる。
春菜の歯……
春菜の、中……
千夏(春菜……舌、入れるね?)
唇を絡み合わせたまま、
吐息と一緒に、春菜の口の中に囁きかけて、
舌を、春菜の口の中に差し入れた。
顔を、ぎゅっ、て、押し付ける。

125 :1:2008/08/24(日) 02:41:21.48 ID:k2ypO7nW0
春菜(ん……! んむっ……んっ!)
押し付けた顔を、ぐりぐりっ、て動かしながら、
舌で、春菜の中を探った。
歯とか、歯茎とか、舌先で確かめているうちに、
一番熱くて、柔らくて、ぬめっとしたものに触れた。
春菜の舌。
触れると、ぴくん、て動いて、逃れようとする。
千夏(ダメ……春菜……)
春菜(んはあっ……はあっ……はあっ……)
唇を離して、春菜の目を見た。
私の目も、焦点があってない。
すぐ目の前で喘ぐ春菜が、ぼやけて見える。
春菜(はぁっ……はあっ……はぁっ……)
千夏(逃げないで……お願い……)
潤んだ瞳の春菜。その目じりから、涙が頬に伝っている。
喘いで、開いたままの口をまた塞いだ。
おとがいにかけていた手を離して首に巻きつけた。
再び、私の舌は、暖かい、春菜の中を探る。
また舌先が、柔らかいものに触れた。
逃げ出そうとした時、首を捕まえていた腕にちょっとだけ力を込めて、(んっ)と小さく声を出した。
すると、春菜の舌先が、私の舌に触れて来た。
おずおずと、怖がるように。
私が自分のを動かさないでいたら、
ちょっとだけ触って、という感じだったのが、
輪郭や、表や裏を確かめるように舐め始めた。

126 :1:2008/08/24(日) 02:42:41.42 ID:k2ypO7nW0
私も、動いた。
春菜の口の中で、私たちの舌はからまりあう。
からまりあううちに、春菜の舌も、私の中に入ってきた。
私たちは、互いに舌先で唾液をすくいあげ、
こくん、と喉を鳴らして飲み込んだ。
私は唇を離した。
春菜のパジャマのボタンに指をかけて、
ひとつひとつ外していく。
そうして、はだけた胸についているブラのカップを上にずらして、
ぴん、と立った乳首をさらした。
胸に掌をかぶせて、さする。
掌が、固くなった乳首に擦れるたびに、春菜は喘いで、
身体を震わせ、顔をのけぞらせたり横向かせたりして、必死で耐える。
春菜の暖かい肌の上に、手をゆっくりと滑らせた。
胸からお腹。おヘソをちょっと指でいじってから、
その下へ……
春菜(あ……んっ)
春菜のアソコが、じっとりと濡れていた。
指でいじると、確かに水音が聞こえた。
千夏(春菜……これ)
春菜(イヤ……恥ずかしい)
千夏(おもらし……)
春菜(は……はぁっ……チイちゃんの……意地悪)
千夏(今、キレイにしてあげるね?)

127 :1:2008/08/24(日) 02:44:37.48 ID:k2ypO7nW0
再び私は、春菜の前に屈みこんだ。
そして目の前で、いっぱい感じている春菜のアソコにむしゃぶりついた。
春菜(はあんっ!)
千夏(ん……んちゅっ……ん……んむ……)
春菜(ひあっ……きゃ……いや……だ……あああっ!)
私の口と、舌とが、
春菜のアソコをむさぼっていた。
春菜を濡らしている愛液を、一滴残らず舐め取り、
喉を鳴らして飲み下す。
でも、どんなに舐めても、春菜の泉は尽きることがなかった。
春菜(ダメ……そこ……汚いよ……)
千夏(大丈夫……汚くたって……私がお口でキレイにする……)
春菜(いや……あ……い……それ……だ……)
千夏(ちゅぷ……ちゅ……ふ……んふ……)
春菜(お願い……ダメ……もれちゃう……また……)
千夏(もう……もれてるじゃない……こんなに……)
春菜(違う……ホントに……オ……オシッコ……)
可愛い……春菜、とっても可愛い……
千夏(いいよ……このままおもらしして)
春菜(でも……チイちゃんに……かかっちゃう……)
千夏(いいんだ……春菜なら。春菜のオシッコ……私に出して……)
そう言うと、私は両腕を春菜のお尻に回して、
いっそう強く、顔を春菜のアソコに押し付けた。
口を大きくして、春菜のアソコ全体にむしゃぶりついて、
舌を、春菜の中に入れ、蠢かせた。

128 :1:2008/08/24(日) 02:45:39.29 ID:k2ypO7nW0
春菜(きゃあっ……! ダ、ダメ……それ、ダメ!)
春菜(は、ああっ……きゃ……は……はぁっ……あっ……うん……!)
春菜(……ああっ……! あっ……はあっ……あ……ああっ!)
春菜(ああああああああっ!)
春菜の体が、私の腕の中でガクガクと震えると同時に、
ずっと、ひくひくっ、と震えていた所から、熱くて強い匂いのする液体があふれて出した。
千夏「ああ……春菜……春菜の……」
闇の中、口を開き、舌を出した。
夢の中の春菜から注がれたオシッコを、私は受けた。
ベッドで反り返った私の身体がガクガクと震え、やがて、シーツの上に落ちた。
……。

129 :1:2008/08/24(日) 02:47:06.53 ID:k2ypO7nW0
これで……
この修学旅行の記憶で、春菜を犯すのは、何十回目になるだろう。
真夜中に、春菜がトイレに行きたくなったのは本当。
一緒にトイレに行って、廊下で怖がらせて、春菜がちょっとだけおもらししたのも本当。
そして、トイレに行ったら……
もちろん、春菜はひとりで個室に入った。
後始末も、トイレの用も、もちろんひとりで済ませている。
でも、個室がひとつふさがっていたのは本当。
そこから……エッチな喘ぎ声が聞こえてきたのも、本当。
春菜が個室から出て、手を洗った時、
小さく、その声が聞こえてきたのだ。
それが意味するものを悟った瞬間、
私は春菜の手を引っつかんで、早足でトイレから逃げ出した。
春菜(や……ちょっと、チイちゃん! どうしたの?)
そう訊ねてくる春菜に答えず、私はとにかくトイレから逃げた。
部屋に戻ると、私たちは再び布団の中にもぐりこんだ。
春菜(ねえ、チイちゃん……)
千夏(何?)
春菜(怖くなっちゃったの?)
千夏(……うん)
どんなホラー映画よりも、怖かった。
すると、私の顔のすぐ横で、春菜が笑った。

130 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 02:48:17.31 ID:JUvDd2IZ0
春菜(少し…頭ひやそうか)

131 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 02:48:19.88 ID:Ia6o1tVc0
処女宮じゃねえかwwwwwwwww

132 :1:2008/08/24(日) 02:49:22.70 ID:k2ypO7nW0
春菜(チイちゃんも怖がりなんだね)
千夏(そうだね。うん、やっぱり怖い)
春菜(じゃあ、怖くないように、ずっと手つないでてあげるね)
布団の間で、春菜が、つないでいた手に力を込めた。
千夏(うん……ありがと、春菜)
春菜(じゃあ、お休みなさい。チイちゃん)
千夏(うん、お休み、春菜)
やがて、春菜は寝息を立て始めた。
今日に保健室で聞いたのと、同じ寝息。
けど、私は全然眠れず、暗闇の中で天井を睨みつけてるだけで、
すると、ドアが開き、
入ってくる、人の気配がした。
ふたり。
ふたつの気配は、そっとドアを閉じて、足音を忍ばせ、
ごそごそ、もそもぞ、と布団の中に潜り込んだようだった。
……それは多分、あの時トイレの個室にいたふたり。
真夜中に、トイレの中で……それが、私たちと同じ班、同じ部屋に……
でも、誰だったのかは、結局今も分からない。
……。

133 :1:2008/08/24(日) 02:50:32.54 ID:k2ypO7nW0
人を好きになるのって。
女の子を好きになるって、何なんだろう。
恋をすると、人は強くなるっていうけど、絶対、ウソだ。
春菜がいないってだけで、私はこんなにも弱い。
春菜が倒れたってだけで、不安で仕方ない。
春菜のためにできることが何もないのが、もどかしくって、くやしい。
春菜……。
ああ、でも。
不安で仕方ないなんて、それはウソだ。
だって、私は今夜も、
こうやって、春菜を汚し続けている。
もちろん、一番汚れているのは私自身だけど。
本当は、私は春菜の事が好きでも何でもないのかも知れない。
ただ、欲しいだけで。私は本当は真性の同性愛者で、
エッチなことができれば、誰でもいいのかも知れない。
薫(先輩が我慢できないっていうんなら、いつでも押し倒されてもいいですし)
……!
千夏「そんなこと……できるわけない……」
千夏「私は……私が一番好きなのは、春菜なんだから……」
もうひとりのわたしが、どこかで笑った。
人を好きになることは、その人を大切に思うこと。
なら、夢で毎晩犯しつづけている春菜は、好きじゃないってことになる。
犯して、汚して、自分のものにするなんて、それは、大切になんて思ってない。
なら、私は。
私は、春菜よりも長谷川の方が好きってことになる。
ああ、アンジェラ。シスター アンジェラ。
あなたの仰る通りです。私の思いは偽りです。
佐倉木千夏は、友原春菜を愛してなど……。

134 :1:2008/08/24(日) 02:51:46.96 ID:k2ypO7nW0
千夏(……!)
サイドボードに手を伸ばして、電気スタンドのスイッチを入れた。
柔らかい、オレンジ色の光に照らされたボードの上にある、カルシウムのサプリメントの小壜を手に取り、蓋を開き、
掌で壜の口を振って、出てきた数粒の錠剤を無造作に口の中に放り込んだ。
本来、噛むべきものではない錠剤を噛み砕く。
ばりばり、という音が、口の中で鳴り響く。
ごくり、と飲み込むと、少し気分が落ち着いたような気がした。
千夏(そう言えば、今日はお昼も残したし)
千夏(夕食も、あまり食べられなかったっけ……)
人間の三大欲望は、睡眠欲、性欲、食欲らしい。
……性欲の分を、食欲で補うことなんてできないかな……。
神様、お願いです。
私が、春菜を傷つけることがありませんように…………。

2日目終了



20分ほど休憩します
ってか付いてこれてる人とかいるんだろうか?

135 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 02:54:31.68 ID:5dUM68oi0
(−w−()

136 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 02:55:13.17 ID:ZRZBw6MZ0
                      ー-=≠                   \
                       /      /  /              \
                          /      / /    /               ヽ
                      // /   / /  /|/    〃   l
                        /イ / //  :|  :/  |{   l小   |\    |     ',
                         │ l| l│ |斗-/―-lハ  │l∧_|  ヽ | |      l
                      V | lリl l ∨     ヽ  | ヾ´ヽ | `ヽl | |  _   |
                         | |小_{   _ _   \l       レ| リ  | |  │
                     _ /j∨  j  〃´ ̄ `       ==x   j/   | レ >│
                    _.>     } ///   ,        ヾ /  / r"  |   >>1
               f゙ヽ       ア   八       __ /// / </|_j   l
              | l      厶-‐= ァ  ゝ、    ∨  ノ    ∠        八
            _ | l, -、         {  ∧ >          <二 -  ィ   /}/ ヽ{
          , -( ヽ } /        ヽ/  Vヽハ/>  -‐=≦l/j// jハ/
         r‐'   ヽ l{ |          r‐=ニfム/ `ヽ/ ̄  |-v‐ 、__
         に 、_ )_)'´ │        /|    l| | ∧|フ∧  /∨   :/iヽ
            l   `ヽ  ノ        /   |    l| ∨<大_>│ / /   // く!
         ヽ     /        /   |    l|  /イ|  ∨./   //  `ヽ
          ヽ  /ヘ        _/   {ー― {{  // l|   /   // /   l
            ∠{ /   ヘ     { l    〉‐┬z≧'/__jl|    l  ̄`{{ /     |


137 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 02:56:23.83 ID:XZoyEmoQO
ええい!
明日はやいんだよ!
頑張れ>>1明日夜まで残ってたらまた来る

138 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 03:04:14.53 ID:ZRZBw6MZ0
保守

139 :1:2008/08/24(日) 03:11:26.45 ID:k2ypO7nW0
シャワー浴びてきた

白くまうめぇwww

そろそろ再開しようかな

140 :1:2008/08/24(日) 03:12:00.33 ID:k2ypO7nW0
卒業式まで後6日

……………
眠れない夜を過ごしても、
夜が眠れないわけじゃない。
それなりに身体を動かして、それなりにご飯をちゃんと食べていれば、大体決まった時間にちゃんと目が覚める。
夜はどうしても凹みがちになるけれど、朝になれば、気分は結構前向きになる。
少なくとも、じっとしてるだけで泣きたくなるような気持ちになることは、あまりない。
とは言え、今日ばかりは元気全開という気にもなれないけれど。
千夏(春菜……大丈夫かなぁ)
いつもの通学路を進んでいくと、やがてマリエル女学院が見えてくる。
その中の寄宿舎に、春菜はいる。
今ぐらいの時間は寝ているのか、朝食を取っているのか。
……いや、寝てるなんてことはないだろう、いくら何でも。今寝てたら遅刻だよ。
千夏(でも……寝てなきゃならないくらいにホントに具合が悪かったら……)
千夏(寄宿舎まで迎えに行こうかな……)
千夏(でも、さすがにそれは春菜が嫌がったりするかな)
どんっ。
背中に何かぶつかったみたいだ。
薫「先輩、おはようございます」
千夏(大丈夫かなぁ、春菜……)
薫「先輩?」
千夏(昨夜、寄宿舎の誰かに電話で連絡すれば良かったかなあ)
薫「せんぱぁい」
ガクガクと身体を揺すられてから、やっと私は現実に引き戻された。

141 :1:2008/08/24(日) 03:13:43.31 ID:k2ypO7nW0
千夏「うわあぁあぁ」
薫「何、朝からボーっとしてるんですか?」
千夏「ボーって……あ、おはよ、長谷川」
何だか目と鼻の先に長谷川の顔があった。
昨日みたいに、首にしがみつかれているらしい。
千夏(……どうでもいいや)
長谷川をくっつけたまま、通学路を進む。
薫「う゛〜〜〜〜〜〜」
薫「先輩元気ありません〜〜〜〜っ!」
ゆっさゆっさゆっさゆっさ
千夏「うげ、わあぁあぁああぁぁ!」
首の、とても苦しいところに力がかかった。
薫「かぁおぉるぅにぃ」
ゆっさゆっさゆっさゆっさ
薫「はぁなぁしぃてぇくぅだぁさぁいぃ!」
千夏「うわ、落ち着いて、長谷川、こら、ぐるひ……落ち着けって!」
揺するというよりは、振り回すという感じで、
長谷川は私の身体を前後に動かした。
千夏「うわ、は、うああっ!」
バランスを崩し、思い切り転びそうになったのを、
電柱に手をついてこらえた。
千夏「はぁっ……はぁっ……はぁっ……」
千夏「はせがわっ!」
薫「ご、ごめんなさい、先輩! 大丈夫でしたか!?」
こめかみがひくつくのを感じながら、私は長谷川を睨みつけた。

142 :1:2008/08/24(日) 03:14:39.08 ID:k2ypO7nW0
千夏「……こら」
薫「イヤです」
千夏「まだ何も言ってないだろ?」
薫「離れろって言うんですよね?」
人を転ばしかけておいて、この後輩はなおも離れようとはしない。
千夏「当たり前だ!」
薫「イヤです、離れません」
千夏「いいかげんにしないと本気で怒るぞ」
薫「怒られたって構いません」
薫「だって、離れたらまた先輩元気なくなるじゃないですか」
千夏「そんなの長谷川の心配することじゃない!」
私は強引に長谷川の腕を振り解いた。
千夏「もう私にくっつくな!」
言い捨てて、ずんずんと通学路を進む。
薫「あん、待って下さい!」
千夏「ついて来るなっ! ばかっ!」
……まあ、ついて来るなって言ったって、
ふたりとも行き先は同じ陸上部部室なんだけども……

143 :1:2008/08/24(日) 03:17:32.78 ID:k2ypO7nW0
かなり険悪な空気のままで、ふたりして部室に入って着替える。
そうしているうちに「おはようございます」なんて、後輩たちが顔を出すようになってきて、嫌な雰囲気はうやむやになってしまった。
いつものように、身体を動かす。
身体を動かして、後輩に色々助言をしたりして。
それから、走って、走って。
…………
何本目かのダッシュを終わらせた時、
春菜のことを忘れている自分に気付いた。
長谷川に身体振り回されたからだ、きっと。
薫(だって、離れたらまた先輩元気なくなるじゃないですか)
……。
千夏(本当に余計なお世話だ……)
そういえば……それこそすっかり忘れていたけど、
寄宿舎から校舎までの小道には、ぽつぽつと制服姿が見られるようになってるけれども、
赤いリボンの女の子の姿は見えない。
そろそろ、通りかかる時間なのに。
千夏(……)
薫「せんぱいっ」
千夏「うあぁああ」
薫「どうしたんですか、まだダッシュ残ってますよ」
千夏「……そうだね、ごめん。ボーッとしてた」
その後、練習メニューを消化しながら、小道をずっと観察してたけど、
結局春菜の姿は見られなかった。
見つけられなかった度に私は溜息をつき、その度に長谷川に、
薫「せんぱあい」
と突っ込まれた。

144 :1:2008/08/24(日) 03:18:15.12 ID:k2ypO7nW0
一通り、朝連が終わると、私は部室に駆け込んだ。
「失礼します」と言ってドアを開き、ロッカーを開け、あわただしく着替える。
薫「待ってくださいよ、先輩」
長谷川が何か言ってるけど、私は聞く気がない。
薫「私も着替えるまで、待っててください」
私は着替えると、自分のカバンを引っつかみ、
部室を飛び出し、
ひとまず寄宿舎に向かって走った。

145 :1:2008/08/24(日) 03:19:33.17 ID:k2ypO7nW0
舎監「え、友原さん?」
舎監「いえ、今日はもう登校したみたいですよ?」
千夏「そうですか、ありがとうございます」
すかさず校舎に取って返す。
玄関前で、ちらりと私たちの教室に目をやった。
窓に、長い髪に赤いリボンの女の子。
千夏(春菜……いるんだ!)
玄関に飛び込んで、すかさず靴を履き替えて、
廊下を進み、階段を上り、
教室のドアに差し掛かる……
いた……!
千夏「春菜!」
春菜が振り向くと同時に、私はその肩をがっちりとつかんだ。
千夏「大丈夫? もう、なんともないのか?」
春菜「チ、チイちゃん」
千夏「昨日、授業終わって保健室行ったら、まだ寝てるし。部活終わって見に行ったらベッドは空っぽだし……」
千夏「寄宿舎に行ったら、帰ってはいるけど部屋に入って出てこないから寝てるんじゃないかって言われて……」
春菜「う、うん、ありがとう。もう大丈夫だから」
千夏「ホント? まったく、ビックリさせるなよ……黒板の前に立った途端、ふらーって倒れるんだから」
確かに、顔色が悪いとか、特におかしい様子はなさそう。
私は、肩を掴んでいる手から力を抜いた。

146 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 03:23:15.62 ID:5TSUvKhj0
ハリセンボン春菜(ダメ……チイちゃん、ダメだよ!)

147 :1:2008/08/24(日) 03:23:18.64 ID:k2ypO7nW0
春菜「ごめんね、心配かけちゃって」
しおらしく、謝る春菜。
……突然恥ずかしくなった。
昨日からえんえん気にして、今朝も心配して、
さっきも寄宿舎に顔出して。
千夏「し、心配っていうか……その、見てて危なっかしいんだよ、春菜は」
結局大したことなかったってのに……
千夏「体力無さ過ぎ。そんな調子じゃ、社会に出たらやっていけないんだから」
もとはと言えば、たかだか寝不足で倒れる春菜が一番悪い。
千夏「春菜さあ、やっぱり陸上部においでよ。私がビシビシ鍛えてあげるから」
春菜「いや……でも……ほら、もうすぐ卒業だし」
なるほど。それもそうだ。
千夏「じゃあ、進学したら」
春菜「あの、ええっと……考えとく」
千夏「その台詞は聞き飽きた。で、考えた結果はどうなの?」
私は、長谷川がやるみたいに、春菜に詰め寄った。
千夏「ねえ、春菜……」
今日こそは、ちゃんと答えを引き出す。
っていうか、陸上部に入れる。
体力がどれだけ重要なのかは、昨日今日で春菜もよーく分かったはず。
と、横から声。
智恵「あの、友原さん」

148 :1:2008/08/24(日) 03:25:21.70 ID:k2ypO7nW0
あ、委員長。いたんだ。
智恵「さっきの本のことなんだけど……」
本? 何それ?
千夏(いや、それよりも……)
話はこっちの方が先だ。何ヶ月も前から言ってるんだもの。
千夏「春菜」
智恵「友原さん」
いつも見慣れた、困ったようなごまかすような笑いで顔を強張らせる春菜。
この顔はこれで可愛いけど、今日という今日は……
薫「せんぱ〜い!」
この声は……!
智恵「きゃっ!」
視界の端で、委員長がずっこけた直後、
千夏「は、長谷川……うわっ!」
どんっ、と私の身体に長谷川がぶつかってきた。
さっきみたいに転びかけるのを、また机に手をついてこらえる。
薫「もう、先輩ひどいです。薫が着替え終わるの待ってて下さいって言ったのに!」
間近から、むくれた顔がこっちを見あげていた。
っていうか、にらみつけてる。
う、ちょっと本気入ってる?
千夏「ああ、いや、ちょっと用事があったから……」
長谷川を思いっきり無視してたのは事実だから、ちょっと怒れない。

149 :1:2008/08/24(日) 03:27:23.26 ID:k2ypO7nW0
薫「用事って何ですか? 私もお手伝いします!」
私を正面から見てる目が、ちらりと春菜の方を見た。
千夏「え? いや、いいよ。私一人で大丈夫だから」
ていうか、もう大丈夫なの確認したし。
薫「大丈夫じゃないです! 今日の先輩、元気がありませんでした。朝練の時も、どこか上の空って感じで」
千夏「いや、ホントに、もういいから」
薫「ダメです! 選手の健康管理もマネージャーの仕事なんですから」
千夏「いや、選手って……私はもう隠居の身だし」
薫「選手の指導を行って下さる先輩の健康管理も、マネージャーの仕事なんです!」
春菜「チイちゃん、どこか具合悪いの?」
……待った。今誰が何て言った?
千夏「春菜、誰のせいで……」
薫「ご心配なく、友原先輩」
長谷川が、私と春菜の間に割り込んだ。
薫「佐倉木先輩の事は全て、陸上部マネージャーである長谷川薫が、つきっきりで面倒見ますから」
いや、頼んでないし。
春菜「そ、そうなんだ」
違う。
薫「そうなんです」
違うっての。
春菜「じゃあ……お願いします」
千夏「こ、こらっ、春菜! 適当なことを……」
薫「任せて下さい! さあ先輩、保健室に行きましょう!」
長谷川が私の腕を引っ張り、ずんずんと進み始める。
千夏「な、なあ、ホントになんともないんだってば」
薫「大丈夫です。今なら、保健室には誰もいません」
千夏「それ、どういう意味? ちょっと……」
私の制止は無視され、
廊下まで連れ出されてしまった。
止めろよ春菜〜!

150 :1:2008/08/24(日) 03:29:47.68 ID:jJ6QT6oU0
薫「アスリートが悩みつらみを溜めてるなんて健康上よろしくありません」
薫「今日という今日は話してもらいます」
千夏「いや、話してどうなるもんでもないし」
薫「話せば楽になるんです。悩みなんてのは8割方、人に話せばどうにかなるものだって、本に書いてありました」
千夏「残りの2割だったらどうするんだよ」
薫「それは聞かせてもらってから判断します」
下級生達が歩いている廊下の中を、ひたすらわたしたちは突き進む。
いや、突き進んでるのは長谷川で、私はそれに引っ張られてるだけだ。
千夏「あのさ、長谷川」
薫「何でしょうか、先輩」
千夏「そろそろ……朝拝の時間じゃないか?」
薫「先輩の健康の方が大事です」
薫「神様だって、きっと許してくださいます。今日はお祈りいつもの倍やりますから」
そういう問題でもないだろう。
……結局保健室前まで来てしまった。
ドアを開くと、先生はいない。
薫「さ、先輩。入ってください」
千夏「朝拝は……」
薫「どうぞ」
千夏「……はい」
私が入ると、後ろでドアの閉まる音がした。
……何か、かちゃって音もしたような……

151 :1:2008/08/24(日) 03:30:53.79 ID:jJ6QT6oU0
薫「先輩。ベッドに寝てください」
千夏「いや、だから私はどこも悪くないって……」
薫「カウンセリングを受ける人は、リラックスした状態でいるように、って何かで見ました」
薫「ホントはソファ使うらしいんですけど。だから、ベッドに寝てください」
……。
まぁつきあってやるか。
千夏(こっち心配してくれてるのは確かだしなぁ)
上履きを脱いで、ベッドの上に横になった。
……昨日、春菜が寝ていたベッドだ。
その脇に、長谷川が椅子を持ってきて、腰を下ろす。
薫「では先輩、溜め込んでいることを話してください」
話せるわけないだろ、そんなこと。
千夏(それらしいこと話して、お茶濁そうか……)
千夏(えーと、せーしょーねんの抱えてるっぽい悩みっていうと……)
千夏(いや、エッチ以外のことで……)
前、ティーン向けの雑誌(レモン ティーンじゃなくて)で見た記事だと、多かったのが……
将来への不安……今の自分となりたい自分との落差……
……
う・・・。
今まで考えたこともなかったけど、
なまじ仰向けになってるだけに、全身に何かが覆い被さってきたような気持ちになった。
千夏(……悩むよな、こりゃ)
将来への不安とは、春菜とずっと仲良しでいられるかどうか、ってことだし。
なりたい自分と言えば、春菜を友達として見たいのに、ってことだし。
やっぱり……他人に話せるようなものじゃない。
私の悩みは、いつだって友原春菜から生まれるんだ。

152 :1:2008/08/24(日) 03:32:07.76 ID:jJ6QT6oU0
千夏「えーと……」
千夏(なんて言ってごまかそう……)
薫「なるほど、よく分かりました」
千夏「待て。私まだ何も言ってないぞ」
薫「いいえ、分かります。分かってしまうんです」
……長谷川。あんたいつからエスパーになった?
薫「つまり先輩は、やっぱりエッチなんですよ」
千夏「またそれか……」
私は顔をしかめた。
あのインチキくさい心理テスト、そんなに気に入ったのかね?
千夏「で? 私がエッチだとどうなるの?」
薫「つまりですね。人はもともとエッチなのに、エッチでいちゃいけないなんて決まりがあるから、面倒になるんですよ」
薫「衝動や欲望の類を抑えつけたままだと、人の心に物凄い負担がかかっちゃいます。それは良くありません」
千夏「でも、神様は色々な戒律を人に課しているじゃない? 盗むな殺すなとか……」
その後には、「犯すな」というコトバが来るけど、
口に出すのはためらわれた。
薫「確かに、みんながみんな好き勝手にやり始めたら大変なことになります」
千夏(まったくだ)
目前で一番好き勝手やってる後輩に、心中で深く深く突っ込んだ。
薫「だから、そこで必要なのは愛ですよ、愛」
長谷川が、うんうんと自分で頷く。
……この話の流れ、前にどこかで聞いたことが……
薫「で、いらない負担はきちんと取り除くべきですし、」
薫「それがエッチっぽくても、愛があればいいんですよ」
……とても嫌な予感がする。

153 :1:2008/08/24(日) 03:33:12.43 ID:jJ6QT6oU0
千夏「うん、心配してくれてありがとう、長谷川」
千夏「もう大丈夫だから」
身を起こしかけると、長谷川が腕を伸ばしてそれを止めた。
薫「先輩。それはいけません」
薫「中途半端に治った気になるっていうのがいちばんいけないんです」
薫「根本的に、徹底的に負担を取り除かないと」
薫「……というわけで」
数秒間、私たちは見つめあい――
(がばっ!)
お互い、動いたのは同じ瞬間だったと思う。
けれど、私がベッドから下りるよりも早く、長谷川が私の両肩をつかまえ、そのままベッドに押し付けた。
自分の体重でもってのしかかってくる長谷川の目は、妙にぎらついていて本気で怖い。
薫「せ、せんぱい……!」
私を押さえつけたまま、長谷川もベッドの上に上がった。自分の足で、じたばたする私の足も押さえ込む。
千夏「お、落ち着け長谷川……!」
取り合えず自由になっている両腕を突っ張らせ、こっちを押し潰そうとする長谷川の上体を押し戻そうとした。
と、私の肩を押さえつける手が離れ、
千夏(あっ……!)
そう思った時には、私の両の手首がつかまれ、
千夏(しまった!)
ベッドのシーツに押さえつけられていた。

154 :1:2008/08/24(日) 03:34:37.74 ID:jJ6QT6oU0
薫「もう……逃がしませんよ、先輩」
荒げた息が顔にかかる距離で、長谷川が私を見据える。
千夏「お、落ち着いて長谷川……!」
薫「薫は冷静ですよ」
薫「大事な先輩の為になら、何だってしちゃいます!」
千夏「いや、これはすることが間違ってるって……!」
腕の戒めを外そうともがくけど、手首が完全にきまっちゃってるみたいで、全然動かない。
薫「私、言いましたよね」
薫「先輩にならいつでも押し倒されていいって」
薫「逆もまた真、ってことで、これって、いつでも先輩を押し倒していいってことなんですよ!」
長谷川の顔が迫る。興奮した鼻息までが、私の顔にかかった。
千夏「それ違う! それ絶対違う!」
薫「いいんです、私なら! 遠慮なくエッチ分を解放してください!」
千夏「良くない! 私は良くない!」
薫「問題ありません! これはノーカウントです!」
千夏「ノーカウントって……何がだよ!?」
薫「人命救助の人工呼吸だって……キスのカウントには入らないでしょ!?」
薫「だから……多少エッチっぽいことしても、先輩の貞操にはかすり傷ひとつつきませんから!」
千夏「貞操って……! 長谷川……!」
千夏(これからそれヤバくなるようなことする気か!)
薫「だから……、ここは取り合えず、薫のものになっちゃってください!」
薫「後でちゃんと返しますから!」
千夏「私はモノじゃないぞ、こら!」
薫「なら私が先輩のものになります! この場合は返さなくてもオッケーです!」
千夏「長谷川……怒るぞ……!」
薫「怒ってくださって結構です! 先輩のありのままを全部私にぶつけてください!」
薫「薫は逃げませんから! 先輩の全部受け止めてあげます!」
千夏「く……長谷川……!」
薫「と、取り合えず……唇……もらいます!」
熱い吐息と、口から飛び出した唾とが、私の口にかかった。

155 :1:2008/08/24(日) 03:35:15.04 ID:jJ6QT6oU0
おそらく唇間の距離は、もうセンチ単位とかミリ単位とか。
千夏「やめて……やめてってば、長谷川!」
薫「諦めて下さい、先輩!」
千夏「……キライに……なるぞ」
薫「え……」
力が、緩んだ。
手の拘束を振りほどき、長谷川の身体を突き飛ばす。
呆然とした顔の長谷川に向けて、私はさらに続けた。
千夏「それ以上、無理矢理に何かしようとしたら……私は長谷川のことキライになる」
千夏「もう口も聞かない、絶対近付かない、顔も合わせない」
千夏「一生、長谷川のこと許さない」
薫「先輩……」
……良かった。
分かってくれた。
千夏(……ほっ)
何のかんの言って、長谷川も可愛い後輩だから、
多少アレっぽいところがあるにしたって、失いたくはない。
弾んだ息を整えながら、私も身体を起こした。
千夏「このことは、私も忘れたげる。なかったことにしてあげるからさ」
目を丸くして、じっと私を見ている長谷川。
よっぽど堪えたらしい、身動きもしない。
こういう素直さは、本当に可愛いんだけどなあ……
千夏(ま……勘弁するか)

156 :1:2008/08/24(日) 03:36:40.06 ID:jJ6QT6oU0
息をついて、笑顔を作った。
千夏「いい? もうこんなことしちゃダメだからね?」
ぽんぽん、と、撫でるような加減で、長谷川の頭を叩く。
薫「……先輩」
千夏「何、長谷川?」
薫「先輩は、薫のこと、嫌いになるって……」
千夏「今は嫌いじゃないよ」
薫「じゃあ……好きですか?」
千夏「……まあ、そういうことになるかな?」
ちょっと考えてから、そう答えた。
すると、みるみるうちに長谷川の顔が明るくなっていって、
薫「嬉しい!」
私は再び長谷川に飛びつかれ、ベッドに押し倒された。
千夏「ぐあ! 離れろ長谷川!」
薫「嬉しい! 私も先輩のこと好きです! 大好きです!」
やっぱりこいつ分かってないっ!
千夏「やめろって! 嫌いになるぞ!」
薫「でも、今は好きなんですよね!」
ぎゅううううっ
首に回された腕に、いっそう力がこめられた。
頬にくっつけられた顔がぐりぐりと動かされ、頬擦りされた。
柔らかいものも一緒に触れた感じがする。
キスされちゃった!?

157 :1:2008/08/24(日) 03:38:37.54 ID:jJ6QT6oU0
千夏「この……いい加減に……!」
足を踏ん張り、身体を弓なりに反らせた。
押し付けられていた体と、ベッドとに間ができた瞬間、私は身体を横にずらし、
千夏「しろおっ!」
直後、長谷川と身体を入れ替え、長谷川の身体を下に組み敷いた。
薫「きゃっ!」
という悲鳴を無視して、長谷川の首と肩を腕で抱え込み、
首にはさんで、自分の体重を乗せて、押さえ込んだ。
薫「わ、先輩! く、ぐるじい……!」
千夏「言うこと聞かないからだ! このっ、このっ!」
抱え込んだ腕に力を入れて、締め上げる。
薫「せ、先輩! ストップ! た、タップ! ギブアップ!」
長谷川が自由のきく手で、ベッドのシーツや私の背中をばんばんと叩いた。
千夏「もうしない? いきなり私にくっついたり、抱きついたりしない?」
薫「しませんから、もうしませんから!」
千夏「約束する!?」
薫「します! 約束します!」
千夏「……!」
私が腕を解くと、長谷川は上体を起こして口をいっぱいに開け、ぜぇはぁ、と喘いだ。
薫「先輩に、格闘技の素質があるなんて知りませんでした……」
薫「腕細いから、頚動脈にがっちりきまって……」
誰のせいだ、誰の……。
気がついたら、私も息が上がっていた。
取っ組み合いなんて、今までやったこともない。

158 :1:2008/08/24(日) 03:39:15.64 ID:jJ6QT6oU0
しばらくの間私たちは、
お互いに目を合わせないで、ベッドの上に座って、上がった息を整えていた。
やがて、外が少し騒がしくなってきた。
どやどやと廊下を通り過ぎていく、いくつもの足音。
薫「……朝拝、終わったみたいですね」
千夏「……そうだね」
千夏「教室戻ろうか……」
薫「はい……」
保健室を出て、廊下を歩く女の子達の列に混じる。
……何か、すごい疲れた……。
………………

159 :1:2008/08/24(日) 03:40:40.92 ID:jJ6QT6oU0
教室に戻って自分の席につくと、私は机に突っ伏した。
朝っぱらから何やってるんだろ……。
伏せた顔のまま、横目で春菜の方を見た。
春菜の方も、心配そうな顔でこちらを見て、
……数秒したらすぐ眼をそらした。
千夏(……もうちょっと心配してよ……)
ひろみ「佐倉木さん、佐倉木さん」
肩を揺すられて、顔を上げた。
柳瀬がいる。手にはノート。
ひろみ「朝からずいぶんぐったりしてるね。朝練大変だった?」
千夏「いや、朝練じゃないんだけどさ」
ひろみ「ふ〜ん」
ちら、と柳瀬が横に目を向ける。
視線の先には春菜の席。
ひろみ「昨日は友原さんが具合悪かったね」
ひろみ「ふたりで、何かあった?」
千夏「あるわけないだろ、そんなの」
ひろみ「そんなのって、どんな?」
そんなのって……
千夏「だから、何もないってば」
……あったら、今ごろ大騒ぎだ。
千夏「……で、どうしたの?」
ひろみ「あ、そうそう」
ひろみ「良かったら、これ書いて欲しいな」
手のファイルが差し出された。

160 :1:2008/08/24(日) 03:42:25.90 ID:xPs+8CrM0
ああ、サイン帳か……。
受け取って、ぺらぺらとめくってみる。
ファイルに綴じられたページには、シャープペンやらボールペンやらで、
色々な子の色々な字で、色々なことが書かれてあった。
誰一人として、同じ字を書いてない。
見てて、楽しくなってくる。
千夏「へぇ、もう結構集まってるんだね」
中には、ページ一杯使って、絵が書いてある、なんてのもある。
ひろみ「友原さんには、まだ書いてもらってないけどね」
……ページをめくる手が止まった。
千夏「な。何のことかな?」
声が少し上ずった。
ひろみ「……分かりやす……」
千夏「……何が?」
ひろみ「何でもない」
その時、チャイムが鳴った。
ひろみ「じゃ……書き終わったら、返してね」
柳瀬は自分の席に戻っていった。
ドアが開き、先生が入って来る。
智恵「起立……礼……着席」
担任「連絡事項を伝える前に、今日は大切な事があります」
大切な事?
教室がざわめきだす。
担任「静かに……川瀬さん、こちらへ」
担任が横を向くと、教室の扉が開き、誰かが入ってきた。

161 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 03:42:44.51 ID:C72/9MAKO
わっふるわっふる

162 :1:2008/08/24(日) 03:45:22.43 ID:xPs+8CrM0
千夏(あ……)
ユキ「川瀬ユキです。よろしく……」
そう言って会釈した女の子は、
昨日に玄関で会ったあの子だった。
背が低くて、長い髪を左右に垂らして、
雪の様に真っ白な肌、高級血統種の猫のように、澄ました雰囲気の、
台詞を棒読みしているような抑揚のないしゃべり口。
担任「川瀬さんは、これまで海外で過ごされていましたが、お家の都合で急遽この学院に転校されてきました。」
担任「皆さん仲良くして上げてください」
教室が、一斉にヒソヒソ話で包まれる。
「この時期に転校生?」
「ちょっと幼すぎない?」
「お家の都合ってだと思う?」
千夏(うちのクラスに……入って来たんだ)
川瀬ユキって名乗った転校生は、教室中のヒソヒソ声や視線を浴びながら、微動だにしない。
転校生は、きれいで、人形みたいに可愛くて、
そして、人形のように、表情がない……
と、その顔にうっすらと笑みがさし、
眼が、教室の一隅を見つめる。
その、笑みの先には……




これでやっと 千夏 秋穂 ユキ の3人のヒロインが揃った

163 :1:2008/08/24(日) 03:46:52.00 ID:xPs+8CrM0
千夏(春菜……!?)
顔を上げ、大きく眼を見開いて、
春菜は黒板の前に立つ川瀬という転校生を見つめていた。
知ってるんだ、春菜も。
この転校生のことを。昨日、おそらく初めてこの学校に来た女の子のことを。
…………
その後の授業は、特に生徒を先生が指名して、何か答えさせる、というものではなかった。
それをいいことに、柳瀬からのサイン帳に色々と書きつける。
柳瀬とのつきあいも、結構長い。
気がついたら友達になっていて、色々と気軽に話せるようになっていた。
周りへの気が利いて、冷静で、
だからと言って、暗いとかおとなしいとかそんなこともない子。
気が許せる友人、とは柳瀬のことを言うんだろう。
……春菜をどう思ってるか、とかはさすがに言ってないけれども。
進級しても、仲良しの友達でいたいと思う。
……何だ。
求めなくったって、エッチなこと思わなくったって、
私は友達をちゃんと好きでいられるのに。
何で春菜に対しては、こんな風に思えなかったんだろう。
先生は、チョークを黒板に走らせながら、
第二次大戦後の歴史について駆け足で話している。
サイン帳に書くだけ書くと、春菜の方を横目で見てみた。
春菜も春菜で、教科書を開いてはいるものの、
よっぽど気になるのか、さっきから春菜は転校生の川瀬の方ばかりうかがっている。
ほんと、昨日何やったんだか……

164 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 03:47:50.14 ID:ihCDfGDJ0
薫はヒロインじゃないのか・・・
ちょっと残念

165 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 03:48:45.30 ID:7c8X23fMO
>>1
俺が小学生の頃には9時には寝かされてたぞ?^^

166 :1:2008/08/24(日) 03:50:21.94 ID:xPs+8CrM0
千夏(……)
千夏(川瀬って子も、寄宿舎生なのかな?)
昨日、あの子が学校に来たのは放課後。
まだ春菜が保健室で寝ていた時。
職員室で色々な手続きをしたら、あとは校舎には用はないから、帰るだけのはず。
春菜とあの子が出会うとしたら……しかもあんなにびっくりするようなことをやらかすとしたら、寄宿舎生でなければ説明はつかない。
千夏(寄宿舎、か……いいなあ)
学校終わっても、春菜と一緒にいられるのか……
寝る時も、同じ建物の中。
まるで修学旅行……!
千夏(忘れてた!)
旅行!
でもあの様子じゃ、誘っても乗って来てくれるかな。
結局どう話すかも思いついてないし……
いや、でも。
陸上部よりはまだ分があるだろう。疲れるわけでもないんだし。
……多分。

167 :1:2008/08/24(日) 03:52:59.37 ID:xPs+8CrM0
休み時間になった。
時期外れの転校生、可愛くってきれい、そして何やら謎めいた雰囲気、などなど。
ニュースバリューに満ちている川瀬の周りには、クラスメイトが集まっている。
私はサイン帳を柳瀬に返すと、
春菜の席に歩いていった。
授業中、私は先生の話も聞かず、
春菜を旅行に誘うためのシミュレーションばっかりやっていた。
ああ言われたらこう言う。ああ答えたらこう切り返す。
何を話されるかは大体察しがついてるつもりだけど、
乗ってくれるかどうかは五分五分、いや、ちょっと分が悪いかも知れない。
週末にどこか遊びに連れ出す、というものとは違うし。
……いやいや、逆にその程度の気軽さで切り出せばいいのかも。
席の前に立つ。
休み時間だというのに、春菜はさっきの授業の時みたいに、教科書を開いて、
私に全然気付かない。
女生徒「あの、趣味とかは?」
ユキ「……読書」
びくん! と、春菜が首を縮こまらせた。
女生徒「どんな本読むの?」
ユキ「……」
ユキ「イロイロ」
安堵したように、縮こまった首を戻す。
千夏(何やってるんだよ)
私は春菜に声をかけた。
千夏「どうかした、春菜?」
声をかけられてから、やっと春菜は私を見た。
顔を上げた春菜は、朝と比べて明らかに元気がない。

168 :1:2008/08/24(日) 03:54:16.67 ID:xPs+8CrM0
千夏「なんか、やつれてない?」
春菜「そ、そんなことないよ」
答える口調も、しぼんでるような感じがする。
千夏「そう? それで、なんで教科書なんか広げてるの?」
春菜「え? なんでって……もちろん勉強のため、だよ」
千夏「……」
隠し事されたり、嘘つかれたりすると、結構堪える。
春菜「……」
また、春菜の眼が転校生に向く。
千夏「……転校生に興味があるんだ?」
春菜「えっ? あ、うん……まあ」
千夏「ふ〜ん……」
私よりも、転校生の方が気になるんだ……
千夏(っと、いけないいけない)
いきなり暗くなっちゃいけない。
千夏「あの……それよりさ、春休みって何か考えてる?」
春菜「ううん……実家に帰るだけだと思うけど」
千夏「そうか、帰省するんだ……」
……予定決まっちゃってるんだ。
いや、まだ修正はきくはず。

169 :1:2008/08/24(日) 03:55:47.83 ID:xPs+8CrM0
千夏「ねえ……卒業旅行とか、どうかな?」
春菜は、ちょっとだけ首を傾げる。
千夏「美味しいもの食べて、温泉とか入って……」
春菜「でも、学生だけの旅行って学則で禁止されてるし」
オッケー、それ想定内。
千夏「じゃあ、うちの別荘とかだったら? それだったら友達の家に泊まりに行くって事で……」
春菜「べっ、別荘!?」
こんな理屈が通るかどうかは知らないけど。
千夏「ほ、ほら……それだったら宿泊費も浮くしさ」
千夏「どうかな……」
春菜は、ちょっと考えてる様子。
お願い、春菜。
うん、って言って。
果てしなく長い何秒かの後で、春菜は口を開いた。
春菜「うん……そうだね、そういうのもイイかも」
千夏(……!)
やったっ!
千夏「うん、絶対楽しいって! じゃあOKなんだ!」
春菜「あ、あの……もうちょっと……」
千夏「じゃあ、予定はこっちで立てておくから! 大丈夫、全部まかせておいて!
私はそう答えて、自分の席に戻った。

170 :1:2008/08/24(日) 03:57:14.45 ID:xPs+8CrM0
ノートを広げ、白紙に別荘と、その周囲の事を書き連ね始める。
美術館、博物館、公園、etc……。
頬が緩むのを抑えきれない。
こんなに幸せな気持ちになったこと、ない。
千夏(……行けるんだ)
千夏(春菜とふたりっきりで、一緒にいられるんだ!)
次の授業が始まっても、私のニヤニヤは全然収まってくれない。
千夏(何しようかなあ……)
やりたいこと、やってみたいことなんて、いくらでもある。
それこそ、ノートに書き始めたら一冊全部使い切ってしまうくらいに。
でも、一番やってみたいことって言ったら、それは……
それは…………夜毎繰り返す妄想、
ではなくて、
千夏(言いたいな……春菜に、好きです、って)
それが、ごくごく自然に思い浮かんだ。
私の、佐倉木千夏という人間の全てをかけて、
春菜に、好き、って伝えたい。
……うん。
そうしよう。
その思いつきは静かに、「決意」となって固まっていく。
だから、いっぱい楽しめるような旅行にしなくちゃ……
ああ、忘れていたことがもうひとつ。
人を好きになるって、すごく楽しくて、嬉しくて、
ワクワクするようなことだったんだ……。

171 :1:2008/08/24(日) 03:59:55.23 ID:xPs+8CrM0
部室でランチボックスを広げながら、
傍らに今日の授業中びっしり書き込んだメモを置く。
千夏「♪〜」
思わず鼻歌が出てくるけど、
それが賛美歌のアレンジだというのは、やっぱり私もミッション系だからか。
千夏「ごちそうさま」
ああ、おいしかった。
ランチボックスをカバンにしまう。
春菜つかまえて、色々話つめないと。
私は部室を出た。
もう、掃除も終わってる頃だろう。
校舎に入って廊下を歩いていくと、
向こうの方に春菜の姿が見えた。
ただし、隣には川瀬がいる。
千夏(……?)
春菜は周りをキョロキョロしながら歩いて、
突然中庭へ出るドアを開き、川瀬と外に出た。
上履きのまま。
学則では無論、土足は厳禁。
千夏(何やってるんだろ?)
ふたりを追って、ドアから外に出た。
奥まった場所にある中庭の通り抜けは、ちょっとした穴場だ。
窓からも死角になって、意外と人目につかず、
内緒話や相談事をするのには、重宝する。

172 :1:2008/08/24(日) 04:01:54.76 ID:xPs+8CrM0
……で、春菜と川瀬が、そこまでしてわざわざ内緒話をする理由って何なんだろう?
寄宿舎で何かあったのなら(間違いなく、春菜がドジって何かやらかしたんだろう)、
もう寄宿舎内の連中には話が広まってるだろうから、秘密も何もないだろうに。
中庭の、さらに隅にまで入った春菜が、また周りをキョロキョロと見回した。
入り口の際に立っていた私は、思わず物陰に身を隠した。
……何ビクビクしてるんだ、私は。
そう思いながらも、そっと顔だけ出して、ふたりの様子をうかがってみる。
春菜が壁を背にして立って、川瀬がこちらに背を向けている、という角度。
眼と耳を、春菜と川瀬に集中。
まるで、休み時間の時の春菜みたいだ。
春菜「……」
ユキ「……」
何しゃべってんだろ?
春菜「……」
ユキ「……」
よく聞こえない。
春菜「……」
ユキ「……」
まあ、大声で話すようなことなら、それは内緒話なんて言わないだろうけど。
ふたりは会話していて、私の方には全然気付いている様子はなさそう。
千夏(もうちょっと……近くに……)
身を動かそうとした時、不意に会話が止まった。
千夏(!)
気付かれた!
……というわけでもなさそう。
春菜と川瀬は、黙りこくったまま向かい合っている。
と、
不意に、川瀬が動いた。

173 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 04:03:03.65 ID:ti1fKy5E0
千夏側に傾いて欲しいけど…

174 :1:2008/08/24(日) 04:03:30.79 ID:xPs+8CrM0
手を伸ばし、
春菜を、抱きしめた。
千夏「!」
あまりに突然だったので、身体が動かなかった。
春菜と川瀬も、動かない。
しかも、この前早坂が、春菜に抱きついていたのとは、
何か違う。
その時のように、場に飛び込んで「何やってるんだ!」って言えばいいのに、
なぜか、金縛りにでもあったように動けない。
ユキ「……ペット……」
え?
ユキ「あなたは、私のペットになるの」
「ペット」。
そう、確かに聞こえた。
その意味が、頭の中で形になる前に、
川瀬の頭が動いて、春菜の頭に重なった。
……
……

175 :1:2008/08/24(日) 04:05:44.25 ID:xPs+8CrM0
キスしてる……
そう理解できるまでに、時間がかかった。
理解するまでの間中、ふたりはずっとキスしてた。
そのキスは、ほっぺとかおでことかにするようなものじゃなくて、
唇と唇を交わす、本当の、キス……。
気がつくと、足が震えている。
震えているのは私の足。
足だけじゃなく、小さく開いた唇も震えている。
その震えは、唇の震えは、
否応なく、いま目の前で繰り広げられているキスシーンをいっそう強く私の中に焼き付け、
春菜が、
川瀬と、
川瀬っていう突然出てきた女の子と、
たった今、キスしてるということを、
わたしに強く強く思い知らせている。

ttp://wktk.vip2ch.com/vipper97241.bmp

176 :1:2008/08/24(日) 04:06:43.65 ID:xPs+8CrM0
いやな音がした。
お腹から胸、喉にかけて。
何かが込み上げてくる、イヤな感覚。
私は、自分の口を両手で抑え、
校舎の中にゆっくりと戻った。

177 :1:2008/08/24(日) 04:08:26.25 ID:xPs+8CrM0
込み上げる嘔吐感をなだめながら、ゆっくりと廊下を進む。
トイレまでの距離が、果てしなく遠い。
踏みしめる足の一歩一歩が、まるで太鼓を鳴らすように、
お腹、胸、喉に響いて来るかのよう。
トイレが見えてきた。
中に入ると、幸い個室は全部空いてる。
一番近くの個室に飛び込むと、
口を開ける。
千夏(……! ……! ……………………!)
千夏(……! ……! ………! ……………!)
千夏(……! …………)
千夏(! …………)
千夏(……)
千夏「……っ……はぁっ……はぁっ……はぁっ……」
トイレットペーパーを引きちぎり、口の周りを拭って捨てる。
まだ、喉と口に、イヤな感覚が残っている。
喘ぎながら、ドアを開けっ放しだったことに気がついて、慌てて閉じた。
バン! と物凄い音がした。
狭い空間の中で、私はうずくまった。

178 :1:2008/08/24(日) 04:09:50.72 ID:xPs+8CrM0
怖い。
全身が、ガタガタと震えている。
春菜が、春菜が、
春菜が、キスしてた。
誰かと、
川瀬っていう転校生と、キスしてた。
私以外の人と、
私が、怖くって怖くって、触れることすらできなかったのに、
春菜、大好き、
すごく大好きなのに、
私以外の人と、
なぜ、
川瀬、あいつ、
一体何が、
春菜、春菜、
私、春菜が好き、
千夏(イヤだ……)
千夏(ここ、いたくない……)
手を伸ばす。ドアの鍵を外す。
ドアを開いて、立ち上がって、足を踏み出す。
よろけ。バランスを崩した身体が、壁によりかかる。
倒れそう。
ダメ、倒れちゃいけない。
今倒れたら、二度と起き上がれない。そのまま死ねる。今なら。

179 :1:2008/08/24(日) 04:11:13.68 ID:xPs+8CrM0
息をして、吸って、吐いて、
足を踏み出して、踏み出した足で歩いて、
動作のひとつひとつごとに、
自分がひびだらけになって、崩れるような。
校舎から出た。
門に行きかけて、部室にカバン置きっぱなしなことを思い出す。
引き返す。校舎、芝生、部活やってる女の子の声、グラウンド、
何だかやたらと、わざとらしい。
部室に入る。
薫「先輩、どうしたんですか?」
誰かいる。
薫「先輩?」
後輩の長谷川。
うるさい。
自分のロッカーを開いて、カバンを取り出す。
私のカバンって、こんなんだったっけ。
もっと重かった、軽かった。
薫「先輩、様子変ですよ!?」
持って部室のドアへ。
薫「何があったんです!?」
……黙れ。

180 :1:2008/08/24(日) 04:13:48.22 ID:xPs+8CrM0
振り返って、手を伸ばす。
うざったい後輩の胸ぐらをつかんで、そのまま、ロッカーに叩きつける。
安物のロッカーが耳障りな音を立て、
薫「きゃあっ!」
キンキンとやかましい悲鳴が上がる。
目前でロッカーに押し付けられて、小さくなって、怯えている顔。
胸の奥が刺激される。ひくっ、ひくっ、と黒い何かがうごめく。
千夏「……けるな」
私の口が、何か言った。
千夏「私に話しかけるな!」
腹の底から怒鳴りつけ、乱暴に手を解いて、
私は部室を出て、思い切りドアを閉じた。
バン! と大きい音がした。
胸の奥が、すこしすっきりした。

181 :1:2008/08/24(日) 04:15:55.86 ID:xPs+8CrM0
家に帰った。
自分の部屋に入って、ベッドの上に乱暴にカバンを叩きつけた。
それでも足りずに、ベッド脇にひざまづいて、ベッドを殴りつけた。
殴った。
殴った。
殴っても殴っても足りなかった。
頭突きみたいに、顔をベッドに埋めた。
息が苦しくなった。
身体が酸素を求めて、心臓が重く鼓動を鳴らし始めた。
押し付けている拳に力がこもり、腕がぶるぶると震えた。
鳴き声。呻き声。唸り声。
どれでもあるような、どれでもないような声は、私が出していた。
あれ?
私は何でこんなに苦しいんだっけ?
頭の奥の、微かな、冷めている部分で、そんなことが思い浮かんだ。
思い出せなかった。頭の残り全部が思い出すのを拒否していた。
なのに。
千夏「はる……な……」
身体は覚えていた。よく覚えていた。
春菜が、キスしていた。
春菜が、私以外の人と。
私の目の前で。
大事にしていたのに、大好きなのに。
一緒に旅行行けるって、一緒に遊びたいって、思ってたのに。
春菜、春菜、
千夏「春菜ぁ……春菜ぁ……」
千夏「はるなああっ!」
千夏「あ……ああ……!」
千夏「うああああああああああああああっ!」

182 :1:2008/08/24(日) 04:17:06.20 ID:xPs+8CrM0
とにかく、泣いた。
部屋に閉じこもって、ベッドに顔を埋め、
何度も何度も拳を打ちつけながら、
泣いて、泣いて、泣きまくった。
夕食も食べず、着替えもせず、お風呂にも入らないで、
ただひたすら、泣いた。
……………………
泣きつかれて、眠っていたらしい。
真っ暗な部屋の中で、私は顔を上げた。
……泣くだけ泣いたら、すっきりしたのか、
かわりに、自分の中が空っぽになった。
……。
今まで、考えたこともなかった。
春菜が、私以外の誰かと仲良くなるなんて。
もちろん、春菜には友達が多い。
それは、春菜が友達に好かれてるってこと。
でもそれらは、友達としての「好き」でしかないはず。
二ノ宮にしたって、「好き」の気持ちは強いけど、
それにしたって、女の子同士だ……。
そう。
女の子同士でも、春菜のことが好きで、
好きだけじゃなくて「欲しい」と思っているような人間は、
この世で私だけだと思っていたのに。
千夏(どうして……どうしてあんなヤツと……)
どうして、昨日今日出会ったばかりの相手に、しかも、女の子に……
いや、男の子だってイヤだけど……
昨日今日、学校に来た相手に……
……?

183 :1:2008/08/24(日) 04:21:03.07 ID:vy9VhkjS0
千夏(昨日今日?)
ぼんやりと、宙を見ていただけの眼が、
暗闇に、焦点を結びかける。
そうだ。昨日今日の話だ。
川瀬ユキは、昨日(時計を見ると、まだ昨日)の放課後に学校に来た。
そして、登校日は今日、今朝。
今日は、昼までずっと教室にいた。それまで、春菜と川瀬は、口もきいてなかったはず。
なら、何かあったとしたら、昨日のうちに……
……苦笑。
千夏(……そんなの確かめて、どうするの?)
事実が変わるわけじゃない。
春菜と川瀬は……キスしてたんだ。
あの後、キスだけで終わったのか……
首を振った。そんなの考えたくもないし、思い出したくもない。
……待った。
女の子同士で、いきなり抱きつかれて、キスして。
普通だったら、どんな反応をする?
私ならもちろん、抵抗する。力ずくだというのなら、全力で暴れる。
今朝の保健室では、相手が長谷川だったから抑えこんで済ませたけど、
そうでなかったら殴って蹴って、袋叩きにしたって絶対に許してやらない。
春菜にしたって、悲鳴ぐらい上げるはずだろう。
それに……
川瀬(ペット)
川瀬(あなたは、私のペットになるの)
あいつは、確かにそう言った。
……そう。

184 :1:2008/08/24(日) 04:22:13.68 ID:vy9VhkjS0
思い出せ、思い出せ、思い出せ。
今朝のHRでの川瀬の顔。川瀬を見ていた春菜の顔。
川瀬は笑っていた。春菜はものすごく驚いていた。
休み時間に、川瀬の様子をうかがっていた春菜の顔。
春菜の顔は、やつれたように見えていた。
……何かあった。
川瀬が笑って、春菜がやつれて、
川瀬が春菜に抱きついてキスして、春菜はそれに悲鳴を上げることもできなくなる、
そして、春菜が川瀬に「ペット」って言われなきゃならないような、
……それくらいのことが、あった。
一瞬、春菜が川瀬に一目惚れでもしたのか、と思ったけど、
すぐにそれを打ち消した。
春菜が見る目は、怯えている目だった。
好きな子を見る目なんかじゃ、絶対にない。
……不吉な予感が、胸の中に渦巻く。でも……
千夏(確かめなきゃ……)
私は立ち上がり、灯りをつけた。
手早く、制服からパジャマに着替える。
起きた何かを確かめなきゃ。
泣いてる場合じゃない。
そのためには、気力と体力を回復させなきゃ……
サプリメントいくつか取り出し、適当に口の中に放り込み、一息に飲み込む。バランスなんて二の次。
今はただ、
今はただ、食べて眠るべき時だ。
まだ壊れちゃいけない。まだ死んじゃいけない。
……まだ。

185 :1:2008/08/24(日) 04:24:12.50 ID:vy9VhkjS0
夢を見た。
自分が、ミイラみたいに包帯か何かでぐるぐる巻きにされている。
でも、包帯の中はもう砂か何かみたいになってて、
さらさら、という音と一緒に、包帯の形がだんだん崩れていく。
そして、たるんだりほどけたりした包帯の隙間から、
何かがこぼれていって、
私はそれを止めようとするけれども、全然止められなかった。

3日目終了




いつもならそろそろ起床する時間だ

186 :1:2008/08/24(日) 04:26:06.85 ID:vy9VhkjS0
卒業式まで後5日

起きた。
ざっとシャワーを浴びて、洗顔、洗髪。
下着は洗濯したてのやつを着けて、
ブラウスに袖を通し、
制服を着て、タイを結ぶ。
台所で、家族にあいさつ。
手早く自分の弁当を作る。
朝食を取って、歯をみがき、口をゆすぎ、
鏡を見る。
そこにいるのは佐倉木千夏。
目のあたり、まだちょっと腫れてるかも。
でもまあ、許容範囲だと思う。
それより気になるのは……
一応、毎朝やっていることをそつなくこなしているつもりなんだけど、
どうも感覚がしっくりこない。
足は地についてない感じがするし、
朝食もあまり食べられなかったし、
身体のどこかを動かすたびに、動かしたところから軋みが聞こえてくるような。
千夏「行ってきます」
口にした時、舌がもつれかけた。
いつもの通学路を歩き出す。
やっばり、体と心がうまくつながってないみたい。
まあ、昨日の帰りよりはマシだけど。
改札を抜けて、電車に乗って、降りて、改札を出る。
また歩き。
そして、いつものタイミングで声がする。

187 :1:2008/08/24(日) 04:28:19.55 ID:vy9VhkjS0
薫「先輩、おはようございます!」
振り向けば、長谷川がいる。
いつものような、まぶしいくらいに無駄に明るい笑顔。
千夏「ああ、おはよう」
普通に、挨拶を返せたはず。
長谷川が、ぺこりと頭を下げた。
薫「……昨日は、すみませんでした。どこか具合、悪かったんですか?」
千夏「うん……ちょっと気持ち悪くなって、お弁当全部、その……」
嘘はついてない……はず。
長谷川の顔が曇った。
薫「……今は大丈夫ですか?」
千夏「まあ、何とか」
薫「……あの……」
千夏「……何?」
薫「いえ……あの、本当に大丈夫ですか」
千夏「大丈夫だって。自分のことは自分がよく分かってるから」
笑ってみる。失敗したと思った。
長谷川への受け答えも、自分でぎこちなかった。
長谷川「無理はしないでください。お願いします」
千夏「……サンキュ」
この台詞は、自然に答えられたと思う。
私たちはそのまま並んで、校門をくぐった。
……抱きつかれなくって寂しいとか心細いとか、私は思ってない。
絶対、思ってない。そんなのはいつもの私じゃない。

188 :1:2008/08/24(日) 04:30:16.36 ID:vy9VhkjS0
そう。
冷静でなきゃいけない。
今の自分がちょっとやばい状況であることは自覚しているけど、
自覚できる分、まだ冷静でいられるってこと。
一息おいて、深呼吸して、
取り乱さないように、しなければ。
自分の振る舞いに気をつける。
一挙手一投足が、自分にさらに負荷をかけないように。
大丈夫、大丈夫。私はいつもと変わらない。
大丈夫、大丈夫、大丈夫。
大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫。

189 :1:2008/08/24(日) 04:32:34.71 ID:vy9VhkjS0
授業時間中、やっぱり春菜は川瀬のことをずっと気にしていた。
川瀬の方も時折春菜の方を見て、春菜から見られていることに気付くと、少しだけ笑ったりしていた。
休み時間。
千夏「ねえ、委員長」
声がちょっと裏返った。
智恵「え……何?」
千夏「ちょっと、いいかな?」
智恵「?」
横目で、春菜と川瀬の様子をうかがってから、
委員長の手を取って、廊下に連れ出した。
智恵「どうしたの、いきなり?」
千夏「あ、ごめん……ちょっと、訊きたいこと、あってさ……」
智恵「? 何かしら?」
千夏「その、寄宿舎でさ……」
千夏「寄宿舎で、春菜と川瀬って……どう?」
智恵「どうっ……て?」
千夏「その……仲、良かったりする?」
智恵「仲? ……ううん……どうだろう?」
首を傾げる委員長。
智恵「川瀬さんは、友原さんになついてるみたいだけど……」
千夏「……なつくって?」
……あの転校生は犬か猫か?
智恵「昨日、また友原さん具合悪くしたみたいで……それで、益田さんがオカユ持ってこうとしたら、『私が持っていく』って横から取ってったって」
千夏「へぇ……」
寄宿舎……。

190 :1:2008/08/24(日) 04:36:39.59 ID:vy9VhkjS0
智恵「……どうしたの?」
千夏「え? いや、別に……」
委員長が、私の顔を覗き込むように。じっ、と見る。
智恵「……具合悪い?」
千夏「何が?」
智恵「顔色悪いし……何か、目つきもちょっとコワいかも……」
千夏「ああ……昨日から、ちょっと……ね」
智恵「ヘンな風邪でも流行ってるのかな? 友原さんも一昨日から具合悪そうだし」
千夏「ほんと……何あったんだろうね」
智恵「直接訊いてみたら? 親友なんでしょ?」
微笑む委員長。
智恵「佐倉木さんらしくないね。お大事に」
そう言って、委員長は教室の中に戻った。
……私らしくない……
いや、昨日の今日なら、こんなものだろう。
大丈夫。まだ大丈夫。

191 :1:2008/08/24(日) 04:39:24.51 ID:vy9VhkjS0
今日の最後の授業が終わる。
掃除当番以外の子は、全員教室から出て行く。
私もそれにまぎれながら、横目で春菜の方を見た。
箒を持った春菜には、元気がない。
そして、教室から出ていく子たちの中に、
川瀬がいる。
他の子達が、友達とおしゃべりなんかしてる中、
誰とも口をきかず、また、誰とも連れ立ってる様子もない。
……昨日は野次馬が集まってたっていうのに。
今日は部活は休みだけど、いつものように、まず部室へ行く。
失礼します、と言って中に入り、
カバンをロッカーに置いて、しばらくじっとする。
……春菜は今週、掃除当番。
掃除が終わって、後片付けをして、その後やっとの自由時間。
春菜をつかまえられるのはそのタイミングしかない。
川瀬よりも先に、春菜をつかまえなくちゃいけない。
…………

192 :1:2008/08/24(日) 04:40:59.24 ID:vy9VhkjS0
そろそろいいだろう。
私は立ち上がり、部室を出た。
春菜に確かめなきゃいけない。
ふたりっきりになれるところで話し合わないと。
校舎に戻りながら、ロケーションを考える。
確実なのは春菜の部屋だけど、手っ取り早い方がいい。
できれば、校舎内。
例えば……中庭の、奥とか。
千夏(……!)
昨日、春菜と、川瀬が……
……まさか、今日も……。
しゅっ、と音を立てて、喉が渇く。
危うくなる。
自分が。
千夏(……確かめ……なきゃ)
唾を飲み、昨日の現場へと向かう。
一歩ごとに、自分のどこかにひびが入っていく。
それでも、廊下から外に出る。
脚が重い。
それでも歩を進めて、中庭へ続く通路に入り、
中の様子を伺う。
中庭には人気がなく、
いや、通り抜けの影の中、壁に寄りかかっている姿がひとつ。
……川瀬。
春菜を……待ってる?

193 :1:2008/08/24(日) 04:44:13.99 ID:AM+tiCxp0
川瀬の首が動いた。
目が合う。
……ここで逃げたら不自然だ。
私は、物陰から姿を見せると、
川瀬に向かって歩いていった。
1メートルほどの距離を置いて、川瀬の前に立つ。
相変わらずの無表情。
暗がりからこっちを見ている姿は、警戒している猫のようだ。
ユキ「……何」
千夏「……別に」
ユキ「……」
千夏「……」
千夏「お前こそ、こんな所で何してるんだよ」
ユキ「……別に」
風が吹いた。
中庭の立ち木と、芝生が揺れて、さらさらと音を立てる。
どこからか聞こえる、ピアノの音。
誰かが音楽室で鳴らしているのだろう。
千夏「春菜と……」
千夏「春菜と、何か、あった?」
ユキ「……」
ユキ「別に……」
顔をそらす川瀬。
その口元が、少しだけ歪む。頬が赤くなったように見えた。
私の口の奥で、ぎりっ、と歯が鳴った。
川瀬の目だけが、また私に向けられた。

194 :1:2008/08/24(日) 04:46:24.43 ID:AM+tiCxp0
ユキ「なぜ、睨むの?」
ユキ「私に、何か用?」
千夏「……春菜を待ってるのか?」
ユキ「……」
沈黙は、肯定の意味だ。
千夏「……春菜なら、来ないよ」
ユキ「……!」
川瀬の、今度は顔がこちらを向く。
目が少し見開かれている。驚いているようだ。
ユキ「……どうして」
千夏「具合悪くして、倒れたって……さっき、送ってった」
ユキ「……」
うつむく川瀬。
千夏「川瀬」
ユキ「……」
千夏「春菜に何か、した?」
うつむいたまま、川瀬は答えない。
私は背を向けて、中庭から校舎に戻る。
戻ってから中庭の方をうかがうと、
川瀬はカバンを持って、寄宿舎への道を歩き出す所だった。

195 :1:2008/08/24(日) 04:47:27.61 ID:AM+tiCxp0
もう引き返せない。
何としても、川瀬と会うより先に、春菜をつかまえなくちゃいけない。
校舎に入ると、私はまっすぐに教室へ向かった。
本当は走っていきたい所だけど、
自分の何かが壊れそうな気がして危険だ。
人気のない、静まり返った廊下を進む。
もう掃除は終わっているからだろう。
……掃除の時間、見通しが少し長すぎたかも知れない。
川瀬に牽制したからか?
千夏(……!)
私は自分の教室のドアを開いた。
教室の中は、掃除が終わっていて、誰もいなかった。
たったひとりを除いて。
その、たったひとりは、教室の中、自分の席に座りながら、
大きな赤いリボンを揺らし、私の方を見た。
……春菜。
春菜「チイちゃん……」
意外そうな表情。
千夏「……」
春菜の声を聞くのが、
ずいぶん久しぶりのような気がする。
春菜「どうか、した?」
千夏「……別に」
そう言えば、今日は朝から春菜と口をきいてない。
挨拶すら、かわしていない。
……こんな気詰まりな口なら、ホントはききたくないけれど。

196 :1:2008/08/24(日) 04:49:28.07 ID:AM+tiCxp0
春菜「……そう」
千夏「……」
春菜が、遠い。
目の前にいるけど、春菜はずっと遠くにいる。
春菜「……」
春菜「あの、私に用?」
千夏「春菜は……?」
その距離を縮めたいから、春菜にサインを送る。
千夏「春菜は、私に何か用はない?」
春菜「特には……無い、けど」
春菜がサインを返してくる。
喋り方やしぐさが、「秘密がある」って言っている。
私への、隠し事。
千夏「……じゃあ、どうして教室にいるの?」
春菜「ちょっと、用事があって」
千夏「どんな?」
春菜は答えない。
私は、もうそれを知っているのに。
千夏「……アイツには用があるの?」
その用は……怯えるくらいの、とってもイヤなものなのに……!
私の中のひびが、いっそう危うくなって、
千夏「私には用がなくて、アイツには……あの転校生にはあるんだ」
亀裂から、沸騰したいろいろな物が吹き出しかける。

197 :1:2008/08/24(日) 04:50:09.58 ID:AM+tiCxp0
千夏「どうしてよ春菜? 私たち、友達じゃなかったの!?」
身をすくめる春菜。私から目をそらす。
春菜「……それは」
千夏「アイツに……脅されてる?」
春菜「……」
ビクン、と春菜の肩が震えた。
千夏「言えよ、春菜。もしそうなら、私が……」
春菜「違うの、ホントに。私は、大丈夫だから……」
千夏「大丈夫じゃない!」
たぎる何かが、ひびからこぼれた。
春菜「……!」
春菜は目をそらしたまま。
春菜「……」
春菜「あ、あ……の」
びくびくしてて、今にも泣き出しそう。見てらんない。
……私は昔から、ずうっとそう思ってた。
千夏「転校生だったら来ないよ」
だから、自分が何とかしてあげなきゃ、って、助けてやんなくちゃって。
春菜には私がついていなくちゃって。
千夏「私がウソ言って、帰らせたから」
春菜は真っ青になって席から立ち上がり、戸口から駆け出そうとした。

198 :1:2008/08/24(日) 04:50:41.64 ID:AM+tiCxp0
千夏(……!)
手を伸ばして、春菜の腕をつかまえる。
千夏「春菜……!」
……何があったの?
春菜「お願い……離して、チイちゃん…!」
目の前。怯えた顔。
小さく開いた唇が、震えている。
無防備で、危なっかしくて。
千夏「ねえ……春菜」
……教えて、私は春菜の味方だから。
何があっても、私が春菜を守るから。
だから……
千夏「春菜……!」
行っちゃイヤ……!
春菜「んんっ……!」

199 :1:2008/08/24(日) 04:53:17.06 ID:AM+tiCxp0
離れていきそうな春菜をつかまえて、
私は唇に、唇を押し付けた。
何度も夢見た、春菜の唇。
千夏「ん……んんっ」
春菜「んあ…んむっ…」
柔らかくて、暖かくて……
千夏「んふっ……ん…ふ……」
春菜「……あ、や……んむっ……」
春菜が、抵抗する。
背ける顔を両手でつかまえて、
千夏(ヤだ……行かないで……)
私は再び唇を押し付けた。
千夏「むぅ……んふっ…」
春菜「ふぁ……ああっ…ん」
千夏「ん……ん…む」
食いつくようなキス。
でも、全然足りない。
絡めた唇を開いて、春菜の中への道を、開く。
春菜「んんっ……んむぅ……!」
カツッ……カチッ……
歯と歯がぶつかり合って、音が鳴る。
千夏「んんっ……んふっ……む……」
中に……
もっと……中に……

200 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 04:54:55.13 ID:ti1fKy5E0
テンションあがってきた

201 :1:2008/08/24(日) 04:56:46.74 ID:AM+tiCxp0
千夏(春菜……舌……入れるね)
夢で何度も囁いた台詞を心で繰り返し、
私は春菜に舌を伸ばす。
私の舌は、唇の間でヌルヌルとうねるだけ。
千夏「ん…ぴちゃ……ちゅぅ……ちゅぷっ……」
歯に阻まれて、それ以上は進めない。
春菜「んむぅ……ん、ん………」
千夏「ん……んんっ………っはぁ…」
苦しくなって、顔を離した。
千夏「はあ、はあ……はぁ…」
口の周りが生温かい。
涎が、私の春菜の涎が、まとわりついている。
春菜「はっ……はぁ…はあっ……」
お互いに息を吐き出し、呼吸を整える。
春菜「チイちゃん……」
紅潮した頬。ぼんやりとして、潤んだ瞳の春菜。
思い描いていた以上に、キレイで、可愛くて……
私の……私だけの……
千夏「春菜…」
でも、アイツが……春菜のこと、アイツがもう……キスしてて……
両手で肩を抱き寄せた。
千夏「春菜……はるなぁ……」
千夏(私よりも、先に……アイツが……!)
春菜「ね…お願い……やめて……」
千夏「やだ……やだよ…お願い……お願い…」
こんなに、キレイなのに……もう……
千夏(行かないで、春菜!)
春菜「んむっ…!」

202 :1:2008/08/24(日) 04:58:11.71 ID:AM+tiCxp0
再び唇を押し付けた。
千夏「んむぅ……む…ぴちゅ……ちゅぅ……」
春菜「んぁっ……んむ……ちゅっ…」
春菜、春菜、春菜、
ずっと前から好きだったの。
あなたが好きで、大好きで、
いっぱいキスしたくて、身体中に触りたくて、
つかまえて、私だけのものに、したくて。
春菜……
千夏(愛……してる)
ドンッ!
不意に。
私は突き飛ばされ、とっさに近くの机に手をついていた。
千夏「春菜……」
春菜「……!」
春菜は泣きながら、私の方を見ていた。
涙でくしゃくしゃになった、怯えた顔。
……春菜……私に怯えている。
千夏(今……私、春菜に何を……)
春菜が、教室を飛び出した。
廊下を駆けていく。



>>200
まだ人がいたことに驚いた

203 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 04:59:15.83 ID:HPHZALEL0
おれもいるよ

204 :1:2008/08/24(日) 05:00:21.46 ID:AM+tiCxp0
千夏「待って……春菜!」
慌てて追いかけようとして、私の脚が机にひっかかり、
派手な音とともに、私の身体はひっくり返った。
千夏「……きゃあっ!」
巻き込まれた机と椅子も、床にひっくり返る。
……床に転んで、思い切り手や腕を打ってから、
私はやっと正気に返った。
千夏「春菜……春菜……!」
手と、唇と、歯と、舌と、
身体のあちこちに残っている春菜の感触。
世界で一番大事な子に、私がしたこと……
……その時になって、自分も泣いていることに気がついた。

205 :1:2008/08/24(日) 05:02:52.19 ID:AM+tiCxp0
千夏「……うっ……ぐすっ……ひっく……」
泣きじゃくりながら、周囲の机を戻す。
いたたまれなさと惨めさが渦巻いて、どうしていいか分からない。
……机を戻すと、春菜の椅子に座り、突っ伏して、すすり泣いた。
何を、どうかんがえていいのか分からない。
春菜に、無理矢理キスしちゃった……
春菜は、転校生との事、話してくれなくて……
嫌われちゃった……
どうして? どうしてこうなるの?
私、春菜の事好きなだけなのに……
アンジェラ「何をしているのですか」
……!
反射的に顔を上げると、
戸口に、シスター・アンジェラが立っていた。

206 :1:2008/08/24(日) 05:05:08.25 ID:AM+tiCxp0
千夏「アンジェラ……」
アンジェラ「どうしたのですか、佐倉木さん」
どうしたのですか、って……
千夏「……いえ……別に、何でも……」
アンジェラ「泣き伏せる程のことが何でもないわけがないでしょう」
アンジェラは、教室に入ってきて、私の目の前に立った。
アンジェラ「さあ、話して御覧なさい。一体何があったのですか」
千夏「あ……えと……」
話さなければ、解放してもらえそうにない。
でも、全部話すわけには……
アンジェラ「お友達と、何かあったのですか?」
千夏「……はい」
アンジェラ「……」
千夏「……」
千夏「友達を……傷つけてしまいました」
アンジェラ「そうですか」
全部は無理だけど、話せる範囲のことならば……
千夏「傷つけるつもりなんて、なかったんです。友達が、困ってて……その友達を助けたくて、力になりたくて……」
……それだけじゃなかったけど……その気持ちも間違いなくあったはず。

207 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 05:06:10.11 ID:ti1fKy5E0
>>202
来年一迅社アイリスに応募する俺が百合スレを見逃すわけもなく

208 :1:2008/08/24(日) 05:08:32.21 ID:AM+tiCxp0
千夏「……はい」
まあ……嘘ではないだろう。
アンジェラ「あなた方の年代なら、よくあることです」
よくあること、って、言われても……。
アンジェラ「それで?」
千夏「はい?」
アンジェラ「それで、あなたはその友達とどうなりたいのですか?」
どうなりたいって……それは……!
アンジェラ「仲直りしたいのではないですか?」
千夏「それは……それは、もちろんです!」
このままで、いいわけがない。
アンジェラ「なら、友達に傷つけたことを謝るのですね」
……
千夏「許して……くれるでしょうか……」
アンジェラ「許されないようなことをしたのですか?」
千夏「……! いえ、それは……その……」
アンジェラ「あなたは、その友達のことが好きなのですか?」
千夏「はい!」
アンジェラ「その友達も、あなたのことを好きなのでしょう?」
千夏「……はい。多分」
アンジェラ「なら、ちゃんと謝って、話し合いなさい」
アンジェラ「人と人とのまことの絆も、鍛えられて強くなるものです」
アンジェラ「これは、主があなた達に下された試練と思いなさい。試練は、それを乗り越えられるものの前にしか現れません」
アンジェラ「自分と友達との友情、そして主を信じなさい」
そう仰って、アンジェラは教室から出て行った。
……。

209 :1:2008/08/24(日) 05:10:56.51 ID:AM+tiCxp0
多分あれが、アンジェラ流の励まし方なのだろう。
……。
人に話して、
ちょっと励ましてもらっただけなのに、
千夏(私って……単純)
心が暖かくて、嬉しい。
私は、ちょっとだけ笑いながら涙を拭うと、
手洗い場に行って顔を洗い、
寄宿舎に向かって歩き出した。

210 :1:2008/08/24(日) 05:12:09.50 ID:AM+tiCxp0
勇気の全てを振り絞って、そのドアをノックした。
ドアが開かれると、意外そうな春菜の表情。
千夏「……入っていい?」
春菜「あ、えと……」
……警戒と、怯え。無理もないけど。
千夏「お願い……話があるの」
ここで、きちんと話をしなくちゃ……
春菜「ん……じゃあ座ってて。お茶、いれるから」
千夏「……うん、ありがとう」
私は部屋に入れてもらい、テーブルの前で正座した。
まずは、受け入れてもらった。
最低限、顔も見たくないってほどには、嫌われてない。
春菜「……」
沈黙。
どこから切り出したらいいだろう。
カチャッ、カチャッ……
春菜がティーセットを準備する音が、耳に痛い。
春菜「どうぞ……」
湯気の立つカップが、テーブルにそっと置かれる。
千夏「……いただきます」
春菜のティーカップ……
千夏(春菜もこれに、口つけたことあるのかな……)
……消えろ、煩悩。

211 :1:2008/08/24(日) 05:14:05.92 ID:AM+tiCxp0
春菜「……」
暖かくて、豊かな香りの紅茶が、口から喉、そして胸の中に落ちていく。
緊張と恐れを、一緒に飲み下す。
後は話すだけ。
イメージ。スタートラインに立つ私。
泣いても笑っても戻ることは出来ない、ただ全力で走るだけの時間を思い出す。
千夏(位置について……用意……)
カップから唇を離して、ソーサーの上に置いた時、
カチャ……
千夏(ドン……)
その音を合図に、頭の中で、スタートラインから飛び出す。
千夏「あのさ、春菜」
言葉がつっかえる。キレイなスタート、というわけにはいかなかった。
春菜「……なに?」
千夏「今日のこと……怒ってる?」
揃えた膝の上、握った拳が震える。
地雷原の上を走る気持ちって、こんな感じかな……
千夏「その、なんか……無理矢理みたいだったから……」
……嫌われても、文句は言えない。
でも、春菜は答えてくれない。
千夏「……やっぱり…怒ってるよね」
春菜「あ、ううん、違うの」
千夏「え?」
春菜「……あ」
自分の口を手でふさぐ春菜。
怒ってるよね、って訊いて、「違う」って、確かに答えた。

212 :1:2008/08/24(日) 05:16:11.76 ID:AM+tiCxp0
千夏「怒って……ない?」
春菜「……うん……たぶん」
千夏「そう……」
……良かった。
春菜「……」
重苦しい空気が、少しだけ軽くなった。
お互いに紅茶をもう一口ずつ。
……春菜、私を許してくれた。
千夏(次に……何、話そうか)
話さなきゃいけないこと、話し合わなきゃいけないことは、いくらでもある。
でも、どういう順番で話していいか分からないよ。
とりあえず……この沈黙、何とかしないと。
千夏「部屋……クッションカバー変えたんだ」
う、わざとらしい。
春菜「うん……大人っぽくしようかなって」
千夏「……大人っぽく?」
春菜「そう。ちょっとアダルトな感じでしょ?」
春菜の口から「アダルト」。滑りまくりも甚だしい。
千夏「そうかなあ……」
春菜「そうだよ」
……こんがらがっていたものがほどけていくような。
バラバラになっていたのが、少しずつ、結びついていくような。
でも、知ってる。本当に話さなきゃいけないのは、こんなことなんかじゃない。
話の接ぎ穂を求めて、部屋の中を見回すと、
……部屋の片隅、丸められた二組のパジャマ。

213 :1:2008/08/24(日) 05:18:40.18 ID:AM+tiCxp0
千夏「……!!」
……確か昨夜は、春菜がまた具合悪くして倒れて、
益田がオカユ持っていこうとしたのを、川瀬がひったくって、春菜の部屋に来て……
で、その後は?
その後は?
そのあと、ふたりはどうなった?
春菜「あ……」
春菜が私の目を追って、表情を凍らせる。
考えたくもない私の予想は、当たっていた。
千夏「アイツなんだ……」
春菜「チイちゃん……」
千夏「アイツ……ここに泊まったんだ」
春菜「違うの、チイちゃん……」
春菜がまた、私に嘘をついている。
嘘だって事、もうバレてるのに。
千夏「初めて……だったのに」
気がついたら、声が震えていた。
千夏「私……初めてだったんだよ」
千夏「私の初めては…春菜だから」
春菜「……」
千夏「でも、春菜の初めては、私じゃないんだ」
春菜「あの……」
言い訳なんて、聞きたくない……!
千夏「春菜……!」
テーブルを回り込んで、春菜の身体をつかまえた。
身体がどこかぶつかったらしい。テーブルの上のカップが、音を立てる。
春菜「ね、ねえ……どうしたの?」
春菜の温もり。春菜の匂い。私は今、春菜の身体を抱きしめてる。

214 :1:2008/08/24(日) 05:19:13.51 ID:AM+tiCxp0
千夏「……だ」
でも、今つかまえている春菜は、もう私のものじゃなくなってる。
千夏「…やだ」
私の中。身体中に、音を立てて亀裂が走る。
千夏「私のなんだから」
亀裂の下、ずっとずっと押し殺してきたものが、噴き出てきた。
春菜「……」
もう、止まらない。
千夏「春菜は私のなの!」
春菜「チイちゃ……んむっ」
春菜の唇に食いついた。
体重を乗せて、自分ごと、春菜を床に押し倒す。
春菜「んむぅ……むっ…んん……んっ……」
千夏「ん……ちゅ…ちゅっ………ぴちゅっ」
顔を押し付けて、舌を割り込ませた。
千夏「ん……んむっ」
抵抗する春菜。
許さない。
手首をつかまえて、腕を広げて床に押しつけた。

215 :1:2008/08/24(日) 05:21:48.72 ID:eWxrxaZu0
千夏「ちゅっ……ちゅくっ……ちゅ」
春菜「あ……んむぅ……ん」
千夏「ん……っはぁ……はぁ……は……」
苦しくなって、一度顔を離す。
唾液の糸がひとすじ。私と春菜の唇をつなぐ。
でも、こんなものじゃ足りない。分かってる。
千夏「春菜…お願い……私のものになって……お願い」
春菜「チイちゃん……やだ…やめて……」
怯えた顔。私を拒む春菜。
千夏「……アイツが、いいんだ」
私、ずっと春菜を好きだったのに。
千夏「春菜は、アイツの方がいいっていうの!?」
ずっとずっと我慢してきたのに、春菜を汚したくないって、耐えてきたのに。
春菜「違うの、チイちゃん……話を聞いて」
千夏「ダメだから」
春菜「え?」
千夏「私の方がいいって、分からせてあげる」
もう誰かの手がついてるんなら、私だって我慢しない。
私の我慢していた全部、春菜に教えてあげなくちゃ。
春菜「え、ちょっと……チイちゃん……ゃあっ!」
春菜を仰向けにして、腰を抱え込み、スカートをまくり上げた。
春菜「や…やだ……だめ…チイちゃん……こんな格好…」
真っ白い太モモと、お股を覆う真っ白いパンツ……
この格好、確か、まんぐり返しっていうんだっけ……
頭の奥が、ぼうっとする。夢と現実の区別が曖昧になっていく。

216 :1:2008/08/24(日) 05:23:42.05 ID:eWxrxaZu0
千夏「カワイイ……春菜」
春菜「ねえ、お願い……本当に…」
千夏「……ちゅっ」
パンツの裾からはみ出ているお尻に、口づけした。
春菜「ゃぁあ……!」
お尻だけじゃなくて、布に覆われて、微かに盛り上がる春菜のアソコにも。
千夏「ちゅっ…ちゅ…ちゅ………ちゅぅっ……」
春菜「ひぁっ……あ…だめ……そんなの……」
千夏「どう……気持ちいい?」
春菜「ヘンだよ…こんなこと。ねえ……もう、やめて…」
千夏「まだ、感じない?」
春菜「お願い…やめて……」
おかしいな……ココってものすごく感じる所のハズなのに?
千夏(そっか……お口じゃ、イヤなのかな)
千夏「じゃあ、指で…」
春菜の腰を抱えたままで手を伸ばし、指先をアソコにつける。
春菜「ぁん……!」
綿の布地は、あったかくて、柔らかい。
千夏(春菜の……アソコ)
初めてなのによく知っている。夢で何度も触っているから。
千夏「お願い、春菜……私の指で、感じて……お願い」
割れ目に沿って、指先を動かした。
春菜「ひっ…あ…ね、ねえ……やめて……」
千夏「大丈夫…もうちょっと……もうちょっと我慢して。すぐに気持ちよくなるから…」
良くなって。早く私で良くなって。

217 :1:2008/08/24(日) 05:26:50.10 ID:eWxrxaZu0
千夏(あ……)
指先が、微かに湿り気を感じ取った。
やがて、パンツのアソコの部分に、じんわりとシミが広がっていく。
千夏(嬉しい……)
我に帰った。
指だけに集中してて、忘れてた。
ごめんね、春菜。お口でも、ちゃんとするから。
千夏「ん……ちゅっ…ちゅ……」
春菜の肌は、白くて、とっても柔らかい。
お尻、内モモ、パンツに覆われた所、全部愛おしい。
一日中、キスして触ってても、絶対飽きない。
と、不意に春菜の脚がじたばたと暴れた。
唾液とキスマークのついた脚が、私の顔を打つ。
千夏「ん……んぁ…春菜……ちょっ…」
春菜「いやぁ…ダメなの……これ以上は…ね、お願い……チイちゃん」
ダメ……なの?
千夏「春菜……」
こんなにカワイイ声を出してるのに?
千夏「私じゃ…ダメなの? 春菜を感じさせられないの?」
春菜「違うの、そうじゃなくて……」
千夏「アイツには良くても、私にはダメなの?」
春菜「……そんなんじゃ…」
……そっか……まだ足りないんだね。
と、その時、自分のポケットに入っていたモノの感触に気がつく。
そうだ……コレあったっけ。

218 :1:2008/08/24(日) 05:29:07.09 ID:eWxrxaZu0
千夏「じゃあ……これ、使う」
春菜「な……なに、それ」
千夏「……マッサージ器」
取り出したモノを、私は春菜に見せつけた。
小さくて、ニャンコの手がくっついてたりしてカワイイけど、スゴイんだから。
千夏「これを使ったら……たぶん」
春菜「やだ……そんなの…やめて…」
千夏「大丈夫…ね……上からあてるだけだから…」
マッサージ器を捻る。
ヴィーン……
低い機械音。
ごくっ、と唾を飲んだ。
道具を使って、春菜を……
千夏「これ……気持ちいいから……」
春菜がイヤイヤって、首を振った。
春菜「や……だめ……やめ…………」
デジャビュを感じる。

219 :1:2008/08/24(日) 05:31:40.96 ID:eWxrxaZu0
……そう言えば、こういうシチュエーションも思い浮かべたっけ。
ちょっとハードだけど、嫌がる春菜と強引にエッチしちゃうっていうヤツ。
嫌がっている春菜が、だんだん気持ち良くなって来て、最後は「もっと、もっと」って言うの。
まず、最初はソフトに……
ツッ……
春菜「ぁっ…!」
春菜が可愛く声を上げる。
思ってたとおりの反応。でも、思ってたより十倍カワイイ。
振動でボヤけているネコの手の先を、一番Hな部分で往復させる。
春菜「んぁぁぁあああっ……や…やぁ…コレ…だめ……」
千夏「ね、気持ちいいでしょ……」
パンツの底の部分のシミが、濃くなっていく。
千夏「ほら……春菜のココ…シミができてる……」
春菜「ひんっ……んぁああ……」
千夏「濡れているって事は、感じてるって事だよね」
春菜「ああっ…ぁあ…あ………ん…んふっ…あぁ…」
春菜の声……だんだんスゴくなっていく。
千夏「私で、こんなに感じてくれてるんだよね……」
春菜「あんっ……!」
もっと感じさせたくて、空いている手の指をアソコに這わせる。
千夏「あ……ココ」
春菜「ぅ……んんっ……んふぁ…!」
見ると、割れ目の一番上の部分が、ピン、と尖っていた。
千夏「ほら、パンツの上からでも分かるぐらいに尖ってる」
多分、今の私もそうなってる。
千夏「ここがいいんだよね……」
数え切れないくらい、自分で確かめたから……

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220 :1:2008/08/24(日) 05:34:53.25 ID:eWxrxaZu0
千夏「いっぱい、さわってあげるから……」
いっぱい感じてね、春菜。
春菜「んぁ…あ……ぁあ…ひっ…あああっ…あ…」
カワイイ春菜、エッチな春菜。
春菜の一番素敵なところ、私に見せて。
アイツなんかに見せないで、私だけに教えて!
千夏「春菜を……春菜を一番知っているのは私なの……」
ネコの手を動かすたび、耳に聞こえる機械音の音が変わる。
春菜「ああっ…ん……ひぁ……ぁ…だ、めぇ……」
ネコの手で撫でさすりながら、位置を少しずつ、上の方にずらしていく。
千夏「春菜を一番感じさせてあげるのは私なの」
春菜「んんぅ……ん…っ…ぁ……ふ…ん…い……」
千夏「春菜の一番は、私なの!」
ネコの手が、頂点部分を押し潰した。
春菜「ひぐぅっ……ぅううぅっ………!」
腰から下がガクガクと震える。
千夏(春菜……イッてくれたんだ)
達した春菜の腰を抱きしめて、春菜の絶頂を感じた。
春菜「ん……ぁぁ……はぁ……はぁ…………」
全身から力が抜け、身体がぐにゃぐにゃになる。
ぐったりした春菜の身体に覆い被さり、耳元で囁いた。
千夏「ね……どう? 気持ちよかったでしょ?」
春菜「はぁ……は……はぁっ……は……」
千夏「ん?」
春菜「……ゃ…だ」
千夏「……!?」
春菜「こんなの……やだよ…」
……

221 :1:2008/08/24(日) 05:36:57.99 ID:eWxrxaZu0
……ひどい。
千夏「……そう、まだなんだ」
春菜「……ぇ?」
千夏「じゃあ、直接……あててあげる」
私はまた春菜の下半身に戻ると、
パンツを脚から抜き取った。
春菜「ぁぁあっ……そんな、ダメッ! やだ……」
春菜のアソコが、剥き出しになった。
ピンク色で、キラキラしてて、とってもキレイ……
千夏(ココも……私のものにするからね)
アソコに指を添えて、爪を春菜の愛液で濡らしながらゆっくりとなぞり上げ、
一番上の部分で止めた。
女の子の、一番スゴくて、感じるところ。
春菜「あ……あぁあ……」
千夏「ここ……ここに、押しつけてあげる」
そこに向けて、私はゆっくりとネコの爪先を近づけていった。
春菜「ああ……ぁ…ぁあ……」
千夏「いっぱい感じて……ね」





外があかるくなってきた

222 :1:2008/08/24(日) 05:39:05.43 ID:eWxrxaZu0
直接当てると、本当にスゴイんだよ……
身体がバラバラになるくらいに気持ちよくって、何も考えられなくなるの。
春菜「お願い……チイちゃん…も、もう、充分だから」
千夏「ダメ……」
クニュッ……
春菜「……んぁぁぁあああっ……ああっ……ふぁっ……」
春菜の身体が、弓なりに反った。
手が床の敷物をつかみ、私の抱えてる腕の中で脚が突っ張って、快感に耐えている。
千夏(スゴいでしょ、本当にスゴいでしょ)
今、春菜が感じてる快感がどんなものか、私はよく知ってる。
春菜「んぁ……ぁぁあ……ぁあ……ぁあっ……ふぁ」
だから、春菜の快感は、私の快感。
いっぱい身体で感じて……私も心で感じてるから。
一緒に……一緒に……!
ビクン、ビクン、と、震える脚がいじらしい。
唾液をたっぷりまぶしながら、太モモに口付けた。
春菜「ぁ……ぁあっ…」
春菜……
千夏「ね、いい? 春菜、いいの?」
春菜「あんっ、ぁあっ……あああ」
春菜……春菜……
千夏「ね、お願い……私を好きになって……私のモノになって……お願い…!」
春菜「ん……あ…ぁぁあああああっ…ぁああっ…!!」
千夏(春菜……! はるなぁ……っ!)
その時、私の手の中で、春菜はひときわ大きな声を上げ、
ひきつっていた体が大きく痙攣した後、弛緩して、床の上に崩れ落ちた。

223 :1:2008/08/24(日) 05:40:41.30 ID:eWxrxaZu0
春菜「はぁっ……はぁ…ぁ……はあ………」
イッたんだ、最後まで……
私、ちゃんと春菜をイカせたんだ……
千夏「春菜……ね? 良かったでしょ? ね?」
イッた後って、身体がぐったりして、すごく優しくして欲しくなる。
それ、私はよく知ってる。だから、いい子いい子って、撫でて上げる……
千夏「はる……」
……春菜は、泣いていた。
私なんて見もしないで、
静かに、涙をこぼしていた。
千夏「あ、あの……」
春菜の涙は止まらない。
私の方を見ないまま。
やがて、春菜はしゃくりあげ始めた。
千夏「……ねえ、春菜……」
春菜「う……ぐすっ……ぅぅっ……」
春菜は、泣いている。声を出して。
恨み言も言わなければ、さっきのように私を突き飛ばしたりもしない。
今なら、思いっきり私のことを蹴っ飛ばすことさえできるのに。
ずっと、私のことを見もしないで。
ここに、私なんかいないみたいに。
そうする価値すら、ないみたいに。

224 :1:2008/08/24(日) 05:42:26.10 ID:eWxrxaZu0
千夏「……ゴメン」
私は立ち上がり、ドアを開けた。
部屋から出る時、もう一度春菜を見た。
春菜は私に襲われたままの格好で、
ずっとすすり泣いていた。
最後まで私は、春菜に意識すらされなかった。

225 :1:2008/08/24(日) 05:45:50.08 ID:rZrXwK5A0
どうやって、家に帰ったかは覚えていない。
気がついたら私は自分の部屋にいて、うずくまっていた。
春菜を襲った。
春菜を犯した。
春菜をレイプした。
その事だけは、よく分かっていた。
罪の深さはわきまえているつもりなのだけれども、何も感じない。
アンジェラの言う通り、偽りだったということなのだろうか。
それとも、こんなものなのかな。
ずっと、我慢して我慢して耐えてきたものを吐き出しちゃうと、こんなものなのかな。
こんなもののために、春菜は傷つかなくちゃいけなかったんだろうか。
こんなもののために、春菜は泣かなくちゃいけなかったんだろうか。
だったら、長谷川に迫られたときに応えてあげればよかった。
こんな私のために、春菜は……
千夏「春菜……」
その名を口にした瞬間、脳の奥で、ずん、と何かが鳴った気がした。
その名を呼んではならない、と私は悟った。
その名を思ってはならない、と私は悟った。
私は一生、笑ってはならず、幸せになってはならないのだと思い知った。
身じろぎすると、カサッ、とポケットで何かが鳴った。

226 :1:2008/08/24(日) 05:47:02.06 ID:rZrXwK5A0
取り出すと、折り畳まれたノートの切れっ端があった。
広げると、身のほど知らずの旅行計画が、びっしりと書かれていた。
立ち上がる。
椅子に座って、電気スタンドの灯をつける。
灯りの下に照らされた計画書。
朝早くから学院前で待ち合わせ、歩いて駅まで。
そこから電車に乗って、ターミナル駅まで。そこで乗り換え、別荘のある高原までの電車に乗る。
特急なんかは使わない。各駅停車でゆっくり行く。お金を節約するのもあるし、その間はオープンな場所で、ずっと一緒にいられるから。
この人は私のものだ、って、声に出さずにみんなに言いたかったりして。
その後は、またバスに乗って……
……
メモを畳んだ。
畳んだ状態で力を入れると、びりっ、と音を立てた。
私は、自分の身のほど知らずの計画書を、細かく細かくちぎっていった。
涙は出なかった。
泣く権利なんてないって、知っていた。

4日目終了

227 :1:2008/08/24(日) 05:51:52.64 ID:rZrXwK5A0
卒業式まで後4日


朝が来た。
来なくてもいいのに来た。
とりあえず起きて、いつものようにシャワー浴びて、
挨拶してごはん食べて、
適当にお弁当作って、支度整えて家を出る。
いつもの通学路。いつもの改札。いつもの電車に、いつもの混雑。
いつものように降りて、いつもの道を歩く。
何も考えなくてもこの程度のことはできる。
薫「おはようございます」
後輩が声をかけて来ても、
千夏「ああ、おはよう」
こう返すことができる。
何も思わなくたって、私は生きてゆける。
薫「……先輩、また元気ないです」
千夏「うん、ちょっと、具合悪くて」
こんな風に適当に受け答えをしていれば、普通に過ごしていけるのだ。
これまで、さんざん「普通」を繰り返してきたから、演じる分には問題もないだろう。
けど、校門をくぐった後は、私はまっすぐに生徒用玄関に向かう。

228 :1:2008/08/24(日) 05:52:28.86 ID:rZrXwK5A0
薫「先輩?」
ああ、さすがに長谷川には言っておかないとまずいかな。
薫「どうしたんです、先輩? 部室はこっち……」
千夏「いいんだ、もう。長谷川」
千夏「私、もう走らない」
目の前で、しばらく長谷川が凍りついた。
薫「……先輩、冗談きついですよ……」
無視して私は生徒用玄関に向かった。
薫「先輩……」
薫「せん……ぱい……?」
長谷川の声が追いかけてくる。
何かが揺らぎそう。
逃げ出したいけど、その為には走らないといけない。
私はもう、走っちゃいけない。ほんの少しの気持ち良さも、私は今後味わってはいけないから。
だから、私は歩いている。
薫「先輩っ!」
駆けつけてくる足音。肩をつかまれて、強引に振り向かされた。
正面、間近。真剣な顔。
不安と気遣い、なにより怒り。
長谷川薫のこんな顔、私は今まで見たことがない。
薫「……話してください。何があったんです」
何度も聞いた台詞。
似た状況があったような気がする。
薫「友原先輩と、何かあったんですね?」
誰かに問い詰めて、何があったのか聞き出そうとして。
昨日の私じゃないか。
でも、昨日に私に問い詰められた「彼女」よりは、もうちょっと上手く切り抜けられるはずだ。

229 :1:2008/08/24(日) 05:53:00.80 ID:rZrXwK5A0
笑顔を作って、私をつかまえている手をどけた。
千夏「他の部員が来るよ」
千夏「マネージャーなんだから、早く準備をしなさい」
手が振り解かれて、逆につかまえられた。
薫「選手のメンタルのケアもマネージャーの仕事です」
千夏「私はもう選手じゃないよ」
薫「そんなの許しません!」
ぎりっ……。
つかまえられた手が、痛い。
千夏「何それ……」
長谷川の手を、力いっぱい振り解いた。
千夏「……先輩に向かって聞く口じゃないね」
それでも長谷川は、真正面から私をまっすぐに見据えてくる。
揺ぎない強さで。
薫「言ってください、先輩!」
薫「私、先輩の全部受け止めますから!」
千夏「……うっとおしい」
この子の押しの強さは、前から苦手だった。
千夏「うざいよ、長谷川。あっちいけ」
見開かれた目。
泣き出すかと思ったけど、
(ぱんっ)
乾いた音が鳴った。

230 :1:2008/08/24(日) 05:55:00.59 ID:rZrXwK5A0
片頬が熱い。
やっぱり長谷川は泣いていた。
今し方に私を叩いた平手を、宙で震わせながら。
薫「そんなの……」
薫「そんなの佐倉木先輩じゃありません!」
……なら、ますます私は必要ない。
仁王立ちの長谷川に背を向け、再び私は歩き出した。
長谷川は、追ってこない。
いつまでたっても、追いかけてきてくれない。
……望んだのは、私。

231 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 05:55:19.78 ID:PuAjjEspO
今来た
なんだこれ

232 :1:2008/08/24(日) 05:56:48.07 ID:rZrXwK5A0
休み時間になるたびに教室を出て、ひとりで校舎内を歩く。
彼女を見るのが辛いからだけど、
困ったことに、何かが目に止まるたび、これまで思い出すこともなかった事が次々思い浮かんでくる。
それらは全て、彼女とのこと。
ボケてて抜けてて忘れんぼな彼女との思い出なんて、大半がろくなものじゃない。
私はずっとあの子のお守りをしてきたようなものだ。
苦労と心配は尽きることがなかった。
その時の思いが胸に迫り、ひとりでうろついてる時でさえ、結局彼女の存在を感じることになる。
いつだって彼女は、私の上と私の中に居る。
今までだってそうだったし、これからだってそうなのだろう。
本当は苦労も心配も、ちっともイヤじゃなかった。
いくらだって世話を焼いてあげたかった。
ずっと傍にいたかった。
誰よりも近くにいたかった。
死んだらユーレイか何かになって、ずっとついててやれるのか、なんて思ったことさえあった。
試さなかったのは、単に死ぬのが怖いのもあったし、間違いなく彼女が怖がるから、と分かっていたからだ。
けど、今となっては、傍にいるなんて考えられない。
私は彼女を傷つけるから。
だから、どんなに辛くても、私は死んじゃいけない。
ユーレイになった私は、必ず彼女にとりつくだろうから。

233 :1:2008/08/24(日) 05:59:51.92 ID:rZrXwK5A0
薫「先輩」
何度目かの休み時間に、廊下で声をかけられた。
長谷川だった。
薫「探しましたよ、先輩」
薫「教室に行ってもいらっしゃらないし、クラスメイトの方に訊いても『知らない』って言われるし」
千夏「……何か用?」
千夏「またひっぱたきに来た?」
薫「……叩けば、元気になってくれますか?」
今朝方に私の頬を打った手が、ぎゅっ、と握られた。
グーで殴られたら、さすがに痛そうだ。
どうだっていいけど。
千夏「他の部員にもそうやって、いちいち首突っ込むの?」
薫「先輩は特別です」
ずいぷんと気に入られていたんだね。
そんな価値はないのに。
千夏「もう特別じゃないよ。私はもう走らない」
薫「どうしてですか」
千夏「陸上もやめる」
薫「理由を言ってください!」
千夏「そんなの長谷川に言う必要はない」
薫「……友原先輩なら、言ってもいいことなんですか?」
千夏「……彼女には何も言うな」
押し殺した声で言った。
千夏「言ったら……絶対に許さない」
長谷川を睨みつける。
長谷川も、私を睨みつける。
薫「やっぱり……友原先輩と何かあったんですね」
数歩の距離を置いて、私と長谷川は睨みあう。
……。

234 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 06:01:24.78 ID:CvktEMiH0
あまりの長さに感動した

追いついたってレベルじゃねーぞ

235 :1:2008/08/24(日) 06:01:55.63 ID:rZrXwK5A0
どれぐらい、そうしていたんだろう。
千夏「チャイム鳴ってるよ」
千夏「教室戻らなくていいの?」
薫「……」
薫「今日も……いつもと同じように部活やります」
薫「薫、先輩のこと信じてます」
長谷川は背を向けた。
薫「待ってますから」
千夏「無駄だよ」
その背に向かって、私は台詞を投げる。




>>231
おはよう
今日もいい朝だね

236 :1:2008/08/24(日) 06:03:35.81 ID:rZrXwK5A0
チャイムが鳴った。
今日の授業の終わりを告げるチャイムだ。
掃除当番以外の連中は、カバンを持って教室を出る。
もちろん私も。昨日と同じように。
不意に肩を叩かれた。
ひろみ「佐倉木さん」
千夏「柳瀬?」
ひろみ「ちょっとつきあわない? 一緒にごはん食べよ」
千夏「ごめん……食欲なくて」
ひろみ「じゃあつきあうだけってことで。お話しましょ」
千夏「……別にいいけど」
何のつもりだろう?





>>234
今6割くらいかなぁ

237 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 06:03:50.40 ID:ti1fKy5E0
おもいなー今朝の曇天のようだ

238 :1:2008/08/24(日) 06:05:50.97 ID:rZrXwK5A0
北館、4階。
その廊下の、大きな窓の前。
柳瀬が両開きの窓を開くと、真っ青な空と、丘の下に広がる町並みが目に飛び込んできた。
……
こんな眺めが、あったんだ。
……っていうか。
この世に空があるということさえ、私は今まで忘れていた。
ひろみ「結構いい眺めでしょ?」
千夏「ああ……うん」
私は頷くしかない。
ひろみ「私……私達、落ち込むとよくここに来るんだ」
……私達?

239 :1:2008/08/24(日) 06:07:52.20 ID:rZrXwK5A0
ひろみ「で、悩みもイヤなことも、小さいよね、って思うことにしてるの」
ひろみ「本当に大きなことを、私達は知ってるから、って……」
天と地を見渡す風景に、柳瀬は気持ちよさそうに目を細める。
千夏「あの……何の話?」
ひろみ「あなたの話よ、佐倉木さん」
柳瀬は私の方に向いた。
ひろみ「友原さんと、何かあったでしょ?」
……思ったより、私の周りには詮索好きが多かったらしい。
私は苦笑し、鼻を鳴らした。
千夏「柳瀬には関係ないよ。じゃあね」
ひろみ「関係あるわ。私達にはすごく関係がある」
背を向けかけた私に、柳瀬は呼びかける。
ひろみ「好きな人いるでしょ、女の子に」
ひろみ「私達も同じ」
千夏「え……?」
それは、すごく自然な口調で、気負いも何も全くなくて……。
柳瀬に向き直る。
柳瀬は、微笑んでる。
作り笑いでもなんでもない、ナチュラルな笑み。

240 :1:2008/08/24(日) 06:09:53.26 ID:rZrXwK5A0
ひろみ「私、圭子のことが好き」
ひろみ「それで、圭子も私が好き」
千夏「圭子って……」
私は唾を飲んだ。
千夏「まさか……同じクラスの津山圭子?」
ひろみ「そうよ」
やっぱり自然に頷く柳瀬。
千夏「だ……だって、二人とも、女の子……」
ひろみ「しょうがないじゃない。好きになっちゃったんだから」
……何て。
何て、確かな「好き」なんだろう。
千夏「どうして……」
千夏「どうして、そんな風に言えるの?」
千夏「女の子同士、なのに……」
ひろみ「どうでも良くなっちゃった」
何でそんな風に思い切れるの?
私、ずっと苦しんできたのに。
ずっとずっと苦しんできたのに……!
ひろみ「だから、私達、佐倉木さんに色々アドバイスできると思う」
ひろみ「友原さんの事で悩んでるんだったら、遠慮なく言って。秘密は守るし、相談にも乗れるから」
……。
……春菜、との、事で……。
千夏(はる……な……)
亀裂の走る音がした。
私の中から。

241 :1:2008/08/24(日) 06:11:18.54 ID:rZrXwK5A0
千夏(春菜……)
亀裂はあっという間に、ばっくりと口を開けて、
抑えていたものが、一瞬で身体中を満たし、駆け巡り、
煮えたぎって、私を焼いた。
春菜とのこと。
春菜が大好きだった。
春菜を失いたくなかった。
春菜が遠くへ行ってしまいそうだった。
だからつかまえていたかった。
だから私は……
私は……!
千夏「……………………!」
自分の頭をつかんで、その場にうずくまった。
ひろみ「佐倉木さん!?」
千夏「……………………!」
息ができない。
苦しい。
千夏「……………………!」
声にならない叫びが喉に詰まって、
身体が震える。
千夏「……………………!」
破裂しそう。
破裂してしまえ。
春菜を傷つけることしか出来ない身体なんて、なくなってしまえ!

242 :1:2008/08/24(日) 06:12:36.79 ID:rZrXwK5A0
千夏「……………………!」
千夏「………! ……………?」
暖かい何かが、私を包んでいた。
うずくまる私の背をさすり、頭を撫でて、
私の事、抱きしめている……
目を開けて見てみると、柳瀬の肩。
ひろみ「落ち着いた?」
耳元で柳瀬が囁いた。
私は、ようやく呼吸のやり方を思い出した。
千夏「……はぁっ……はぁっ……はぁっ……」
柳瀬に助け起こされながら、私は立ち上がった。
呼吸が落ち着くまで、柳瀬は何も言わなかった。
千夏「はぁ……はぁ……はぁ……」
ひろみ「……」
千夏「はぁ…………はぁ…………」
ひろみ「もう……大丈夫?」
千夏「……うん……何とか」
今日、人に向かってまともに喋ったのは、これが初めてのような気がする。
ひろみ「ま、そういうことだから」
ひろみ「女の子好きになっちゃう女の子、って、身近にもいるってこと」
ひろみ「色々あったりなかったりって思うけどさ……大丈夫」
ひろみ「佐倉木さんが友原さんのこと好きなのは、ちっとも変じゃないから」
沁みる。
甘酸っぱい、優しくて気持ちのいいものが。
私の顔に、今日初めての、心からの本当の笑顔が浮かんだ。
けど、
千夏「もうダメなんだ……」
私は首を振った。

243 :1:2008/08/24(日) 06:14:50.06 ID:rZrXwK5A0
千夏「私、春菜を傷つけちゃった」
ひろみ「謝ればいいじゃない」
千夏「謝ってすまないようなこと、しちゃったから……」
ひろみ「……え?」
……私は……
私は、卑怯者だ。
春菜を傷つけたことから、ずっと逃げてた。
千夏「柳瀬はさ、考えたことある? もし、自分が乱暴されたら、もし、自分が……」
千夏「自分が、強姦、されたら、って」
心を閉ざして、自分で自分を罰しているフリをして、
自分のしたことから目を背けていた。
千夏「私なら、自分を襲ったヤツのこと絶対許さない。100回殺してやったって、八つ裂きにしたってまだ足りない」
千夏「この世の終わりまで、呪ってやるんだ」
ひろみ「……そう」
千夏「うん。そう」
千夏「……だから、そういうこと」
沈黙が、落ちた。
柳瀬の方も、予想していなかった事なんだろう。
そりゃそうだよ。女の子が女の子に乱暴するなんて。
紛れもない大罪。相談してどうなるものでもない。
ひろみ「……ごめんね、佐倉木さん」
千夏「え……?」
ひろみ「もっと早く、話しておけばよかったね」
……どうして柳瀬が謝るの?

244 :1:2008/08/24(日) 06:16:10.57 ID:rZrXwK5A0
千夏「ね、ねえ……ちょっと待って……」
ひろみ「そうすれば、佐倉木さんがそこまで追い詰められることもなかったのに……」
千夏「柳瀬が謝る事ないって。だって、これは私の……」
ひろみ「他人事じゃないのよ……分かるでしょ?」
千夏「……それは……そうだけど」
ひろみ「だから、私達にも責任があるの。気付けたのに、それを止めることができなかった」
ひろみ「……私は、あなたを許すことも罰することもできないけど」
ひろみ「でも、自分がひとりだなんてことだけは、絶対思わないで」
……
千夏(やだ……)
……
千夏(何、これ……)
……
私は、涙を流していた。
千夏(私……泣いちゃいけないのに)
千夏「う……ぐすっ……ひ……っく……」
ひろみ「……ごめんね……本当にゴメン……」
私は、首を横に振った。
私……ずっとこう言われたかったんだ……
おかしくなんかないよ、って。すごく辛いよね、って。
誰かにそう言って欲しかったんだ……
千夏「柳瀬……謝らなくて……いい……」
こういうのを福音というのかも知れない。
だからもうそれで充分。謝るなんてとんでもない。
……もう少し早ければ、確かにもっと良かったけど。
それでも……
私が泣き止むまで、柳瀬は隣でずっと黙っていた。
それだけでありがたくて、嬉しかった。

245 :1:2008/08/24(日) 06:18:56.53 ID:rZrXwK5A0
ひろみ「昔から、圭子とはすごく仲良しだったんだ」
千夏「そうらしいね」
ひろみ「初等部の頃から、ずっといつも一緒で」
ひろみ「親も仲良かったから、時々相手の家に泊まりに行ったりして、同じベッドで眠ったりとか」
千夏「うらやましいよ」
ひろみ「そうしてるうちに、気がついたら圭子のことが好きになってて」
ひろみ「その好きのなり方が……その……ねえ、分かるでしょ」
千夏「うん、分かると思う」
ひろみ「それで一時期、圭子とまともに口もきけなくなって……エッチなのとか、独占欲とか、友情とかが、わーってなって、ワケ分かんなくなっちゃって」
ひろみ「どうにでもなれ、って、ある時スキ見て、圭子を襲っちゃ……あ」
千夏「……いいよ、別に。続き聞きたい」
ひろみ「……圭子襲ったの。もう嫌われちゃえって」
ひろみ「そしたら……受け入れてくれて。向こうも、ずっと私が好きだった、なんて……」
千夏「……で、現在に至るってわけか」
ひろみ「うん」
千夏「……」
ひろみ「……」
千夏「……修学旅行の時さ、夜、トイレで……」
ひろみ「あの時、外にいたのやっぱり……」
私達はしばらく顔を見合わせて、
何とも決まりの悪い笑顔を交わした。

246 :1:2008/08/24(日) 06:21:24.68 ID:0l7g42h80
千夏「大胆ですこと」
ひろみ「言い出したのは私です」
千夏「自重しようね」
ひろみ「うん」
千夏「……」
ひろみ「……」
ひろみ「……佐倉木さんは、どうするの?」
千夏「……そうだね」
千夏「まず謝りに行くよ、ちゃんと」
千夏「多分、絶対許してくれないと思うけど」
千夏「それで、転校生とのことで色々あるんだったら、柳瀬に相談してみるように、言っておく」
千夏「……多分、それで、終わり」
ひろみ「陸上は?」
千夏「え?」
ひろみ「陸上は続けるの?」
千夏「……」
千夏「……分かんない」
ひろみ「続けなよ。走るのやめちゃダメ」
ひろみ「……うまく言えないけど、佐倉木さんは走り続けなきゃいけないと思うんだ」
ひろみ「本当に、悪いって思ってるのなら」
千夏「……走ることが、償いに、なるのかな」
ひろみ「私はそう思う……友原さんのために走るの」
千夏「どうしてあいつのためになるの?」
ひろみ「佐倉木さんの気持ち、友原さんに届けるために」
ひろみ「今日は無理かも知れないし、明日も無理かも知れないけど」
ひろみ「何日かかっても、何ヶ月かかっても、何年かかったって、いつか許してもらうために」
ひろみ「どこかで金メダルでも取ったら、少しは機嫌直してくれるかもよ」
千夏「金メダルなんて、そんな……」

247 :1:2008/08/24(日) 06:22:48.96 ID:0l7g42h80
ひろみ「だからよ」
ひろみ「罪を許してもらうために難問をクリアするって話、昔からあるじゃない」
ひろみ「これ……逃げ足じゃないんでしょ?」
柳瀬が、私の脚を膝で突付いた。
ひろみ「あなたは誰よりも速く走って、走らなくちゃいけない」
ひろみ「それしか……友原さんに届く方法はないわ、きっと」
私は、自分の脚を見下ろした。
学区内なら、一番速い自信がある。
都内全体でも、多分上から数えて十何番目ぐらいには。
天才とまでは言わないけれど、私の才能、という気持ちはある。
これが、春菜に届く道……
千夏「……」
というより、春菜に届く道がまだ存在してるなんて、思わなかった。
……。
……。
……。

248 :1:2008/08/24(日) 06:25:18.04 ID:0l7g42h80
千夏「そうだね、柳瀬」
千夏「私、走るよ。走り続ける」
ひろみ「うん」
ひろみ「でも、無理しないでね。疲れたら、いつでも言って」
千夏「うん」
ひろみ「もう大丈夫?」
千夏「うん……もう大丈夫」
その時、駆けてくる足音がした。
薫「佐倉木先輩!」
階段の降り口に、長谷川がいた。
……長谷川。
千夏(私、長谷川に謝らなくちゃ……)
なんて感傷を無視して、長谷川は私にかけより、つかみかかった。
薫「大変です、先輩!」
薫「友原先輩が、倒れました」
……え?
千夏「倒れた……って?」
薫「今、保健室で休んで……あっ!」
逆に私の方が、長谷川につかみかかった。
千夏「倒れたってどうして!? 何があった!?」
薫「わ、分かりません……! ただ、いきなり……」
薫「先輩……痛い……」
言われてからハッとして、手を離した。
知らないうちに、相当強い力で掴んでいたらしい。長谷川が涙ぐんでいる。
薫「行ってあげて下さい、先輩」
薫「友原先輩の所へ、行ってあげて下さい!」
……私が、春菜の所へ?

249 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 06:26:44.82 ID:r10QkmOPO
やっと追い付いた……

250 :1:2008/08/24(日) 06:27:03.73 ID:0l7g42h80
ぽん、と後ろから肩を押された。
振り返ると、柳瀬が無言で頷いて、
もっと強い力で、私の肩を押した。
私はよろけて前に踏み出し、
今度は、ばんっ! と、背中を突かれた。
薫「行きなさい、千夏!」
突かれた勢いで私はまた前に踏み出し、
もつれかけた脚は、バランスをとるために、駆け足になった。
千夏(春菜……)
脚だけじゃなく、腕も、姿勢も、駆け足のそれにスイッチしていく。
身体が覚えてる、誰より速く走るためのフォーム。
今はただ、春菜にたどり着くためだけに。
千夏「春菜!」
今日初めて、
私は彼女に呼びかけた。

251 :1:2008/08/24(日) 06:29:38.72 ID:0l7g42h80
二足とび、三足とびで階段を駆け下りる。
千夏(春菜! 春菜!)
踊り場や廊下に向けてなら、階段六段を一気に飛び降りる。
その度にスカートが空気をはらんで大変なことになったけど、
千夏(じれったい!)
最後の、一階の廊下に飛び降りたときはかなり高いところから離陸して、
千夏(!)
離陸してから、ものすごいスピードで迫る廊下に本気で怖くなり、
だんっ!
千夏「……!」
着地した時にはその場に屈み込んだまま、しばらく立ち上がれなかった。
……
私、今何段くらい飛び降りたんだろ?
クラウチングスタートみたいな体勢のままで、スカートに覆われた自分の脚を見た。
今更だけど……
よく着地に成功した……
心臓が、まだドキドキ鳴っている。
深呼吸してから、ゆっくりと立ち上がる。
脚がガクガクと震えているけど、痛めたとかそういう様子はなさそう。
千夏(落ち着け、落ち着け)
胸に手を当てる。
重い鼓動を刻んでいた心臓が、次第に静まっていくのが分かる。
そうして、鼓動が落ち着いてから、
階段上り口の角から、廊下の向こう側をのぞきこむ。
床、壁、天井が一点透視図を描いた奥に、「保健室」のプレートはあった。
あそこに、春菜が……

252 :1:2008/08/24(日) 06:30:10.55 ID:0l7g42h80
千夏(……)
距離にすれば、十何メートルもない。
けど、今の私には果てしなく長く、遠い。
心臓が、また重く鼓動を刻み始めた。
……私に、できるのかな。
今の私に、この廊下を歩いて、春菜に会う権利や資格が、あるのかな……
脚の震えはいよいよひどくなっていく。
力が抜けて、この場に座り込んじゃいそう……
ひろみ(これ、逃げ足じゃないんでしょ?)
膝で突付かれた感触が蘇った。
……
そうだった。
春菜に届くには、私はこの脚しかないんだ。
この前に、春菜が教室で倒れた時だって、
身体が勝手に動いて、春菜の傍に駆けつけていた。
エッチな事とか、そんなこと全然考える余裕なかった。
今だってそうだった。四階から一階まで、あっという間に駆け下りて……
……
今の私は、もうそれでいい。
頭がろくでもないこと考えて、胸がモヤモヤして、腹に変なものためこむぐらいなら、
何も思わなくても、考えなくてもいい。
春菜が倒れて、私はいても立ってもいられなくて……
それだけでいい。

253 :1:2008/08/24(日) 06:32:45.78 ID:0l7g42h80
千夏(今……行くね、春菜)
意識して頭を空っぽにして、
私は廊下を進み始めた。
スプリントとまではいかないけど、早足で、最後の距離を詰めていく。
何も考えなくていい。
伝えること、話すべきことはもう分かってる。
謝って、他の人に相談するように話して、
……必要なのは、たったそれだけのことなのに、何で昨日は……
千夏(……止めよう)
今は、春菜に会って、きちんと伝えることだけを考えればいい。
そして、多分。
私と春菜は、これで終わり。
……終わりって言ったって、始まってすらいなかったけど。
でも……
千夏(私でさえ、ひとりじゃなかったんだから)
千夏(困ってることがあるのなら、誰かに相談すればいいよ)
千夏(私にはもう、そんな資格はないけど……)
千夏(春菜が頼れる人は、いっぱいいる)
千夏(大丈夫だよ、春菜……春菜はひとりじゃないんだから)
欲望が抜けて、絶望も消えた後に、
残ってるのはこんな気持ち。
千夏(この気持ちだけを、ずっと持てていたら……)
……いや、もう止めよう。

254 :1:2008/08/24(日) 06:35:12.52 ID:0l7g42h80
ドアの前に来た。
何度か手を出しては途中で止め、出しては下ろして、
さんざん繰り返した後、戸板に手をかけ、ゆっくりと力を込める。
千夏「失礼します……」
がらっ、という音が大きく聞こえたので、
さらに慎重に、ゆっくりとドアを開いて、保健室の中に入った。
そうしてまた、ゆっくりとドアを閉じ、
カーテンのかかったベッドに向けて、足を踏み出す。
千夏「……春菜?」
春菜「……」
返事は無い。
千夏「起きてる?」
春菜「……」
千夏「あの……入る、ね…」
手を伸ばす。
カーテンを開くと、シャラリと音が鳴った。
その行為は、春菜の中に強引に割り込むようで、
昨日の私自身を思い出させた。

255 :1:2008/08/24(日) 06:40:52.45 ID:0l7g42h80
春菜は布団をかぶった状態で、ベッドに横たわっていた。
めくれた布団が、こちらに向けられた背中だけを見せている。
もう一度、呼びかけた。
千夏「春菜……」
春菜「……」
やはり、返事は無い。
……本当に寝てるのかな?
顔が見えず、答えもないのが、辛い。
手を伸ばした。
半分、春菜に覆い被さるような体勢になりながら、
つとめて、春菜に触れないようにして布団を手に取り、掛けなおす。
千夏(……?)
違和感。
春菜の手が、布団の縁をつかまえている。
ぎゅっ、と、シワがよるくらいに。
それだけじゃなくて、
微かに手が、震えているような……

256 :1:2008/08/24(日) 06:43:58.94 ID:0l7g42h80
と、その瞬間、
春菜「チイちゃん……!」
布団が跳ね退けられ、私の首に春菜の腕が巻きついた。
千夏「……キャッ! は、はるな!?」
名前を呼ばれて、暖かいものにつかまえられて、
頭の中が真っ白になった。
直後、目前に春菜の顔が迫り、
千夏「は、はるな……ん、むっ!?」
唇が、柔らかくて暖かいものに塞がれた。
気付けば、腕が首から背中にまわされて、
私は完全につかまえられている。
ぴったりと合わさった胸。そこからは、心臓の鼓動が伝わる。
それは、春菜の鼓動。
私をつかまえてるのは、春菜の腕。
唇を塞いでいるのは……春菜の……!
千夏(!)
苦しい。
息するのをすっかり忘れていた。
空気を求めて、口を開いた。

257 :1:2008/08/24(日) 06:46:34.41 ID:HRpcSUPH0
千夏「ん……んぁ……っは…あむっ…!?」
それを狙っていたかのように、私の中に、もっと暖かくて、もっと柔らかいものが侵入してきた。
春菜「ちゅくっ……ぴちゅ…んんっ……ちゅっ……」
唇と歯の間で、入り込んできたそれが、ヌルヌルと動く。
これ……
千夏(春菜の……舌?)
そう気付いた時には、舌がヌルリと出て行ってしまった。
その後には小さなキスが繰り返される。
小鳥が餌をついばむような、それが、何度も。
千夏「あ、ん…ちゅっ……ん、ねえ…ちゅ…ん、む……」
何か言おうとしても、唇で封じられる。
春菜「ちゅっ…ん……む…ちゅっ………ちゅ」
触れる、触れる、触れる。
繰り返される……春菜からの、キス。
……これ、夢?
春菜が、私に、キスしてる?
千夏(夢なら、お願い……覚めないで)
ずっと開いていたまぶたを閉じて、
甘美なキスの感触に、心と体を委ねた。
春菜「ん…ちゅ………ちゅっ…ちゅむ…ぁ…あっ……」
千夏「はあ…あ……ちゅ……む……ん」

258 :1:2008/08/24(日) 06:48:34.79 ID:HRpcSUPH0
長めのキス。
また舌が、私の中に入ってきた。
唇の裏側を、左右に行ったり来たりした後、一度出て、
再び私の中に。
千夏「あ……ぁ…んぁ………くちゅっ…ちゅっ」
私は春菜を受け入れて、
柔らかい、熱を帯びた春菜の先に、そっと舌先を伸ばした。
触れた。
触れた後も、春菜は逃げず、私の方を軽く突付いてきた。
千夏「ん…! ふぁ…っちゅ……」
春菜「ん…っ……ちゅく……ぴちゅ………」
私も春菜に応えた。
お互いの口の間で、お互いの舌先が、
それ自体が生き物になったみたいに、相手に触れ合った。
……違う。
今、私、舌だけになってる……
不意に、私の体がグラリと傾いた。
気がついたら、全身からすっかり力が抜けていて、
私は春菜の腕に支えられながら、ベッドに横たえられていた。
春菜が身を起こす。
たった今まで私を包んでいた温もりが離れてしまった。
千夏「ぁ……春菜……」
行っちゃイヤ……

259 :1:2008/08/24(日) 06:51:51.39 ID:HRpcSUPH0
上気した頬の春菜は、私を見下ろしながら、
今まで見せたことの無い笑いを浮かべた。
怖くて、妖しくて、何かに私を引きずり込みそうな……
その笑顔のまま、指先で私の口元をなぞり上げる。
千夏「ぁ……」
唇から全身に、電流が走った。
春菜の指先は、執拗に私の口の周りと、唇とを這いまわり、
千夏「ん……ぁ……ふぁ」
ベトベトとまとわりついていた唾液を拭い取っていく。
春菜は口を開けて、
唾液でテラテラと光ったその指に舌を伸ばした。
千夏(あ……)
春菜「ん…っちゅ……ちゅく…ん、おいし…」
うっとりとした表情で、声をかすれさせながら、
春菜は自分の指をしゃぶった。
私のと、春菜のが混じった、唾液のシロップ……
千夏「……ぁ…はぁ……」
それ、ちょうだい……
私と春菜のシロップ……
あと、それ舐めてる、春菜のベロ……
春菜が覆い被さってきて、またキスした。
春菜「ん……」
今度は私も、最初から舌を伸ばす。

260 :1:2008/08/24(日) 06:54:14.82 ID:HRpcSUPH0
私の舌と春菜の舌とが、何度目かの出会いを果たし、
待ち焦がれていた私は、春菜に激しく絡みついた。
千夏「んぁ…んちゅっ………ん…ぴちゅっ……ふぁ…」
春菜は、私の舌をなすがままに、受け入れてくれている。
淫らな音と、唾液と、
熱と、柔らかい世界の中で、私は思うがままに春菜に甘えた。
千夏「ちゅ…ちゅむっ……ん…くちゅ…っ……」
世界の外で、春菜の手が動いていた。
肩と脇のスナップが外され、
千夏(?)
そのまま上着が剥かれた。
千夏「ん……ぇ? あ、ちょっ……んむっ…」
私が何か言おうとしても、またそれは、唇でふさがれる。
春菜の手が、私の胸からお腹にかけてを降りていき、
降りていきながら、ブラウスのボタンをひとつひとつ外していく。
千夏「んんっ…あ……んむ…ねえ……そんな…」
春菜は答えず、開いたブラウスから手を差し込んで、
手のひらで、私の胸の上に手を当てた。
千夏「んんっ……!」
身体が震えた。
ブラ越しでも、肌が春菜を確かに感じていた。
ブラウスがはだけられて、空いてる腕も入って来る。
胴体に巻きついてきた手が背中にまわり、肌を上下に撫でた。
千夏「ゃんっ……! んぁっ!」
反応して、私の体が反った。

261 :1:2008/08/24(日) 06:56:21.58 ID:HRpcSUPH0
春菜の手が、背中から脇腹に移る。
千夏「あんっ!」
思わず、身が縮まった。
もう片方の手の指が、首筋のラインをなぞった。
千夏「ひゃんっ!」
私の首が、のけぞった。
春菜が私に触れるたび、触れた個所から何かが弾けて、
私の全身にいやらしい電流を走らせる。
春菜「チイちゃんって、感じやすいんだ」
千夏「やだ…そんなこと………ない…」
春菜「そう?」
春菜が微笑む。
妖しくて、全てを絡めとってしまうような。
再び、ブラジャー越しに胸に触れた。
千夏「ひっ……!」
春菜「感じない?」
胸にかぶさった手が、サワサワと動く。
千夏「ん……んぁ…っぁ………」
電流と熱が、胸から広がっていく。
千夏「ぁ……ああぁ…んっ…んん……!」
布地越しに、春菜の手が固くなった乳首を転がす。
春菜「ほら……ここ、固くなってる」
春菜がそこに爪を立てて、
カリカリと引っ掻いた。
千夏「んあああっっ!」
優しくて、もどかしくて、切ない痺れが、私の体をのけぞらせた。

262 :1:2008/08/24(日) 06:58:07.93 ID:HRpcSUPH0
春菜「気持ちいいんでしょ?」
見透かしたような眼。
恥ずかしい……
でも、私の恥ずかしい所、もっと見て欲しくて……
千夏「あ……ん……うん……」
春菜「うれしい……チイちゃん」
私は、頷くしかない。
春菜が、また私に迫る。
千夏「ぅん……んっ…はぁっ……」
唇じゃなくて、今度は首筋に、何度もキスが繰り返される。
春菜の唇が触れるたび、気持ちのいい信号が身体中に走り、私はどんどんエッチになっていく。
胸に、感触。
ブラジャーがズリあげられていた。
千夏「あ……や…やだっ…見ちゃ、やだ……」
けど、春菜は聞いてくれない。
その唇は首筋から、鎖骨、そして、胸に移って……
春菜「すごい……こんなに…」
千夏「や……だめぇ…春菜……」
柔らかくて温かいのが、乳首に触れた。
千夏「ひっ……!!」
私の眼の下で、春菜の頭が動いて、
転がされ、熱い吐息がかけられる。
千夏「ああぁぁぁあぁ…ぁ…ああっ…ひっ……」
上下から挟まれて、優しくなぶられる。
千夏「ああんっ…あ、ああっ……ん…」

263 :1:2008/08/24(日) 07:01:00.42 ID:HRpcSUPH0
何度願ったか、分からない。
何度夢見たか数え切れない。
春菜との、エッチなこと。
あまりに現実離れしていて、
でも、私を揺さぶって、とろけさすような快感は、間違いない現実。
私の五感の全てが、春菜を感じていた。
春菜の吐息。春菜の体温。春菜の匂い。
春菜の唇に、春菜の指に、春菜の囁き。
それらが、私の中に、染み込んで、割り込んで……
私は、何の準備もできないうちに……
私……春菜に犯されてる。
私が夢で、妄想で何度も何度も春菜にしてたこと、春菜にされてる……
春菜の手が動いた。
スカートが捲られて、脚が空気に触れて涼しくなる。
下の方をいじることの意味なら分かる。
千夏「んんっ…ぁ…ああぁっ……」
抵抗した。
恥ずかしいだけじゃなくて、そこは見られたくない。
春菜の呼び起こした熱いのが集まって……
そこからいっぱい、溢れ出しているはずだから。
千夏「ゃ……ゃぁぁっ……」
春菜「チイちゃん……ホントにきれい……」
間に差し込まれた手が、脚を少し開いた。
千夏(アソコが……外に……)
千夏「ああぁっ…ゃ……やだっ……」
春菜「見せて…チイちゃん」
千夏「……」
私は首を横に振る。

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264 :1:2008/08/24(日) 07:03:12.13 ID:HRpcSUPH0
春菜「見たいの……チイちゃんのアソコ」
千夏「だめ……だめなの……」
春菜「どうして…?」
千夏「……」
春菜「ね、どうしてダメなの?」
千夏「……汚しちゃってるから」
私は答えた。
私がエッチで、恥ずかしい所は見られてももう平気。
だけど、そこは……汚いから……
でも、春菜は許してくれなかった。
手が滑り、湿った布地に指先が触れた。
千夏「ああぁっ……ダメェッ……!!」
春菜「……!」
……知られちゃった……。
私がエッチで、いやらしいのを出してるのを、知られちゃった……
千夏「や……ダメ……」
恥ずかしくって、申し訳なくって、涙が出てきた。
千夏(顔……見れない……)
春菜が頬にキスした。
眼を開けると、やっぱり春菜は微笑んでいる。
エッチで優しくて、何でも受け入れてくれそうな微笑。
私がどんなにいやらしくても、悪い子でも、
構わないで包んでくれそうなその笑顔が、

265 :1:2008/08/24(日) 07:04:23.59 ID:HRpcSUPH0
千夏「んっ…ゴメン…ゴメンね、春菜……」
私の、一番罪深い所に温かい光を当てる。
春菜「どうして謝るの?」
千夏「私……私、いつも、春菜のこと考えて……Hな事、考えていたりしたから……だから…」
だから昨日……私は、春菜を……
千夏「だから……」
春菜「うれしい、チイちゃん……」
千夏「……許して、くれる?」
春菜「うん……許しちゃう」
……
洗われる。
心と、体とが。
私の中、縛っていたいろいろな物が、涙になって流れ落ちて、
私の心は裸になっていく。

266 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 07:05:54.31 ID:DDndkvo00
なんで処女宮文字起こししてんだw

267 :1:2008/08/24(日) 07:06:36.66 ID:HRpcSUPH0
どちらからともなく、唇を重ねる。
千夏「ん……ぁ……ん」
春菜「…っちゅ……ちゅっ…」
唇…頬…耳…首筋…様々な所に春菜が口づけを重ねていく。
それは、許しの印。
千夏「ん……ひっ……あ……」
春菜が、いやらしい私を解放して、どんどん私をエッチにしていく。
いやらしい私は、許されている。
千夏「んああっ……!」
手が胸に置かれて、ゆっくりと撫で回す。
もう一方の手は、パンツ越しにアソコに触れる。
春菜「ちゅっ…ん……あむっ……」
耳たぶをくわえられた。
春菜のお口の唾の音と、息遣いの音が、大音量で私に迫る。
甘噛みの感触とともに、私の中に入ってくる。今まで、全然知らなかった快感。
千夏「ひぁ……あ……あ…い…ぃ……」
乳首が、リズミカルに摘まれる。
千夏「ん…んあああっ…あ…ああ、あっ…」
パンツの上から、濡れている部分の中心が指先でもてあそばれる。
身をよじれば、体のどこかが、春菜に当たった。
とてもエッチになっている私のことを、春菜はちゃんと受け止めてくれていた。
春菜「いい? チイちゃん、気持ちいい?」
千夏「んあ…ぁああっ、ひっ…ぁああっ…ああっ」
千夏(気持ちいい……)
千夏(だから、もっと私を気持ちよくして)
千夏(気持ちよくなってる、私のこと見て……!)
千夏「ああっ…あ…も、もう……ダメ……だめぇっ…!!」
乳首が強く摘まれて、アソコに指が突き立てられた。

268 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 07:07:21.41 ID:AVed1wbo0
すごい量だな、今から読んでも終わりには立ち会えそうにないな

269 :1:2008/08/24(日) 07:08:56.55 ID:HRpcSUPH0
千夏「んんっ! …………っっ…ぁぁ……」
一番強い波が私の全てをさらっていき、激しく揺さぶった。
千夏(私、春菜が好き。春菜が好きな、エッチな女の子なの……!)
千夏「……ぁ…はぁ……はぁ………」
春菜「チイちゃん……」
千夏「ん……」
眼を閉じて、ちょっとだけ唇を突き出したら、
春菜はそれに答えてくれた。
春菜「ちゅっ……っぴちゅ……ちゅっ……」
千夏「む……ん……んふっ…」
春菜は、私をとがめなかった。
たった今、人生の中でいちばんエッチになった私を見ても、軽蔑も、罰したりもしなかった。
もし今、この子の背中から白い翼が生えて、「実は天使」とか「実は女神様」とかって言われても、多分私は驚かない。
春菜が導いた絶頂の余韻にたゆたい、春菜と唇を合わせながら、
私は腕を伸ばし、春菜の体を抱きしめた。
……
千夏(ずるいよ、春菜……)
千夏(春菜……服着たままじゃないか……)

270 :1:2008/08/24(日) 07:11:23.05 ID:HRpcSUPH0
寄宿舎までの小道を歩く。
春菜と並んで、手をつなぎながら。
保健室を出てから、お互いに口をきいてないけれど、
時折目が合うと、ドキドキしたりとか、赤くなって顔をそらしたりとか、
その後笑ってみたりとか、そんなことで、
確かに私達は会話していた。
言葉なんて交わさなくとも、互いに、互いの感じてることが分かる。
それだけで、満たされる。
……ついさっきには、あんなに激しく抱きしめられたのに、
今は手をつなぐことしかできないのが、本当はちょっともどかしい。
でも、そのもどかしさが何かくすぐったくて、
同じもどかしさを春菜も感じてると思うと、全然イヤじゃない。
千夏「……」
春菜「……」
また目が合った。
同じように赤くなって、同じように、笑う。
そんな自分が嬉しくて、そんな春菜がいとおしい。
千夏(春菜のこと、お姫様抱っこできたらなあ……)
最初に教室で倒れた時には、それやろうとしてできなかったんだっけ……
千夏(腕力鍛えようかな……)
腕立て伏せを一日に何回くらいすれば……
ぎゅっ、と、つないだ手に力が込められた。

271 :1:2008/08/24(日) 07:16:21.25 ID:HRpcSUPH0
春菜「チイちゃん?」
千夏「な、何、春菜?」
この声で名前を呼ばれる。その幸せが、今ならよく分かる。
春菜「エッチなこと考えてたでしょ?」
千夏「べ、別に、そんなにエッチなことじゃ……」
春菜「考えてたんだ?」
……何か悔しい。
千夏「は、春菜だって……」
悔しいけど、口をきけるのが嬉しい。
千夏「春菜だって……どんなエッチなことなんだろうって、すごく期待してたじゃないか」
春菜「そんな、私は別に……」
千夏「期待してた、絶対……春菜のエッチ」
春菜「私……エッチじゃないもん」
……待て。
その台詞は聞き捨てならない。
千夏「誰がエッチじゃないって?」
千夏「さっき人のことさんざん……」
さっきのことが、強烈に脳裏に蘇った。
千夏「さんざん……その……」
その……アレして……アレされて、あんなになっちゃって……
問題。「アレ」と「あんな」に当てはまる言葉は何でしょう。
……言葉にはとても……

272 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 07:18:17.24 ID:UFC0eaD00
支援

273 :1:2008/08/24(日) 07:18:25.59 ID:HRpcSUPH0
気がつくと、春菜も顔を真っ赤にして黙り込んでいた。
う、気まずい。
千夏「あの……春菜……その……」
春菜「私、エッチじゃないもん……」
……まだ言うか。
春菜「だって、チイちゃんが……あんまり可愛いから……」
自分の顔に血が上る音を、確かに聞いた。
千夏「あ……あう……」
何か言い返そうとして口を開けるけれども、
ものすごく恥ずかしいことを口走りそうな気がして何も言えず、
私は口をパクパクさせることしかできなかった。
一瞬、ぽかんとした顔で、春菜は私の顔を見つめ、やがて、
春菜「……ぷっ……っくっくっく……」
心底楽しそうな笑いをかみ殺し、俯いて肩を震わせた。
幸せと、嬉しさに、楽しさがブレンドされて、
千夏「……あ……あはっ……あはは……」
春菜「うふっ……えへへへっ……」
千夏「ふふっ……ふはははっ」
つないでいた手を解いて、春菜の肩を抱き寄せた。
私達は、並べた肩をくっつけながら、
笑い声を上げながら、小道を進んでいった。

274 :1:2008/08/24(日) 07:22:36.36 ID:HRpcSUPH0
寄宿舎の前まで来た。
春菜は寄宿舎に帰るし、私は家に帰る。
今日はもう、お別れ。
千夏「あ……その……春菜」
……大事なこと忘れてた……
春菜「チイちゃん?」
千夏「その……川瀬の、ことなんだけど……」
私は、言葉をつなげる。
千夏「本当に困ってるんならさ、ちゃんと言ってよ。秘密は守るし、いくらでも力貸すから」
少しでも、春菜と一緒にいたいから。
春菜「……」
千夏「私が頼りないってんなら、春菜の周りにいくらだって友達……」
春菜「チイちゃん」
春菜が私の手を取って、胸に当てた。
千夏「……春菜?」
春菜「それはもう、大丈夫だから」
千夏「春菜……」
春菜「チイちゃんがいるから」
大丈夫、っていう台詞なら昨日も聞いた。
でも、昨日のそれとは全然違う。力のこもった言葉。

275 :1:2008/08/24(日) 07:24:56.32 ID:HRpcSUPH0
千夏「……信じていいんだね」
春菜に取られている手を、ぎゅっ、とつかんだ。
春菜「うん」
頷く春菜。
千夏「無理しないでね」
春菜「うん」
千夏「……」
春菜「……」
春菜とつないだ手を解く。
千夏「……じゃあ、また明日」
春菜「うん。また、明日」
それは約束の言葉。
手を振って、背を向ける。
寂しくないわけじゃないけど、明日になれば、また会える。
それは、とても素敵なことだ。

276 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 07:24:59.04 ID:CvktEMiH0
この>>1はずっとこれ貼ってて何か死にたくなったりしないの?

277 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 07:27:42.68 ID:qg2KATkc0
……まあ、つまるところ。
自分で思ってるほど、私はひとりじゃなかったってことなんだろう。
柳瀬が私を気遣ってくれていたのは意外だったし、
長谷川だって、何のかんのいって私を気遣ってくれていた。
昨日だって、アンジェラが私を励ましてくれて、
何より、春菜が私のことを受け入れてくれた……
千夏(春菜……)
お風呂に入った時、鏡を見てびっくりした。
体のあちこちに赤いポツポツがあった。
キスマーク、と気づいたとき、また恥ずかしくなって、嬉しくなった。
千夏(どうしよう……)
千夏(私、春菜のものになっちゃった……)
本当は、春菜が私のものになるはずだったのに。
私が春菜をいっぱい愛してあげて、私の腕の中で、春菜がイッちゃうはずだったのに。
千夏「うふっ……うふふふふっ」
思い出し笑いはエッチな証拠、という言葉の意味が、やっと分かった気がする。
千夏(参ったなあ。私、春菜のものになっちゃった)
千夏「これからどうしよう?」
湯船に体を沈めながら、春菜に愛された自分の体を抱きしめた。
その後も私は、恥ずかしくなったり嬉しくなったり、ひとりでニヤニヤ笑ったりと、落ち着かなかったりしてたのだけど、
その日の夜は、ぐっすりと眠れたのだった。

5日目終わり

278 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 07:28:56.19 ID:qg2KATkc0
>>276
完走するまで死ねない

279 :1:2008/08/24(日) 07:30:10.55 ID:qg2KATkc0
卒業式まで後3日
朝。
とても気持ちのいい目覚め。
こんなに気持ちがいい朝は、本当に久しぶり。
いつもの朝の支度を賛美歌の鼻歌交じりに済ませていく。
自分で言うのもなんだけど、いつもにくらべてやたら手際よくできた。
朝から力が有り余って、正直困った。
千夏「いってきまぁす」
そう言って家を出たら、足どりが軽くてスキップしたくなった。
浮かれすぎだ、自分。

280 :1:2008/08/24(日) 07:32:09.92 ID:qg2KATkc0
電車に乗って、降りて、いつもの通学路を歩く。
見えてくる聖マリエル女学院。そこは春菜のいる所。
今日もまた、春菜に会える。
私が大好きな、私のことを大好きな春菜に。
スキップとまでは行かないけれども、足がどうしても早足になる。
千夏(ええい、もどかしい)
カバンを脇に抱え、足を大きく踏み出そうとした瞬間、
薫「おはようございます」
声をかけられた。
……浮かれていた気持ちが一気に沈み、
わたしは表情を強張らせ、ゆっくりと振り返った。
千夏「……長谷川」
いつものように、目の前に、彼女が立っていた。
昨日私が、さんざん当り散らしたのに。
その顔には笑み。もっとも、少しぎこちない。
その距離、数歩。数日前は、いきなり間合いを詰めて私に抱きついてきたのだ。
千夏「……おはよう」
数秒ほど、無言。
間が持たず、思わず目をそらしてしまう。
……違う。やるべきことは、こんなことじゃない。

281 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 07:34:14.94 ID:qg2KATkc0
私は……私は謝らなくちゃ。
意を決し、顔を上げて、
千夏「あの……!」
薫「先輩!」
同時に口を開き、ものの見事に出端を挫きあった。
何ともいえぬ決まりの悪さに、やはり同時に顔をしかめ、
薫「……先輩、先どうぞ」
千夏「いや、長谷川からお先に」
手を差し出して譲り合う。
薫「いえ、どうぞ先輩から」
千夏「長谷川からでいいよ」
……交わした言葉の分だけ、居心地の良さがよみがえるような気がする。
陸上部の先輩と後輩。
私はこの後輩に慕われて、時々(いや、しょっちゅう)呆れながら、やっぱり私もこの後輩が可愛かった。
私達は、そんな関係……
やがて長谷川は、数秒前の私のように、
意を決して顔を上げる。
いつもの彼女のようにまっすぐに私を見た。

282 :1:2008/08/24(日) 07:36:05.59 ID:qg2KATkc0
薫「今日の放課後、部活やります」
薫「今日は出てくださいね」
千夏「……長谷川」
薫「はい?」
千夏「……」
千夏「……私、走っていいの?」
薫「先輩は、走らなきゃダメです」
千夏「……うん」
千夏「……分かってる。分かってるんだ」
薫「走れるんですね?」
千夏「うん」
再び、私達は言葉を失う。
でも、その沈黙で、確かに私達は話していると思う。
今し方に交わした言葉を反芻し、意味するものを噛み締めて、
言葉の外にあるものを、互いに分かち合っている。
長谷川が歩み寄り、手を差し伸べた。
そして、わたしの手を取ると、安心したように息をついた。
薫「良かった……」
薫「もとの先輩に、戻ってくれたんですね……」
千夏「ごめん、長谷川」
ようやく、謝罪の言葉が言えた。
千夏「心配かけて、ホントにごめん。あと、八つ当たりして……」
薫「ダメです、許しません」
長谷川は、つかまえている私の手を自分の胸に押し付けた。
手に伝わる温もりと、心臓の鼓動。
薫「おととい、きのう、って休んだ分、しっかりやってもらいますからね」
胸にある手が、ぎゅっ、と握られた。

283 :1:2008/08/24(日) 07:37:02.74 ID:qg2KATkc0
何て、確かな力。
千夏「うん。分かった」
私もその手を握り返し、
そうしてやっと、私も長谷川に笑うことができた。

284 :1:2008/08/24(日) 07:39:29.81 ID:qg2KATkc0
今日は朝連は、なし。
宿舎の前まで行って、春菜の部屋の窓に向かって名を呼びたくなったけど、
さすがに小学生みたいなのでそれは思いとどまった。
理性では分かっているのに、本当はこれっぽっちも恥ずかしいと感じていない自分が怖い。
教室に入って、席に座る。
千夏(春菜……早く来ないかな……)
教室の戸口、春菜の机。
そのふたつを見比べながら、何だか心と体が落ち着かない。
千夏(……着替えて、ちょっと校庭走って来ようかな?)
余分なエネルギーを抜かないと。じゃないと、自分がホントに何かやらかしそうだ。
その時、ぽこん、と後ろから頭を軽く叩かれた。
ひろみ「何ソワソワしてるの」
振り向くと、呆れたような顔をして、柳瀬が立っていた。
千夏「あ……おはよ、柳瀬」
ひろみ「おはよ、じゃないわよ。全くもう」
腕組みをして、深々と溜息をつく。
ひろみ「こっちだって心配してたんだから、連絡ぐらいよこしてよ。こっちの携帯、知ってるはずでしょ?」
すっかり忘れてた……

285 :1:2008/08/24(日) 07:41:32.76 ID:qg2KATkc0
千夏「あ……ごめん」
そうだ……思ってるほど、私はひとりじゃないんだった……
ひろみ「ま、その様子だとちゃんと仲直り……ん?」
千夏「……あ、何?」
柳瀬が身を屈め、私の顔を覗き込み、
ひろみ「ここ、ついてるよ」
そう言いながら自分の喉のあたりを指で示した。
千夏「? 何が?」
ひろみ「キスマーク」
千夏「……!」
同じような所を、慌てて手で覆った。顔に血が上るのが分かる。
千夏「ウソ……!」
ひろみ「……ウ・ソ」
千夏「柳瀬……あんたねぇ……」
ひろみ「ふぅん。自重しろって言ったの誰だったっけ?」
何やら勝ち誇ったような笑みで見下ろす柳瀬。
千夏「違うって! あれは、春菜が……!」
ひろみ「友原さんが? あれって何?」
千夏「春菜が……う……その……」
問題。「あれ」に当てはまる内容は何でしょう。
ヒント。とてもすごいことです。
ひろみ「なあに?」
千夏「あの……だから……」
ひろみ「……」
千夏「……」
ひろみ「自重しようね?」
千夏「はい……」

286 :1:2008/08/24(日) 07:43:42.29 ID:qg2KATkc0
気が済んだのか、柳瀬はにっこり笑って私の頭を撫で、自分の机に向かった。
まだ朝が早くて、人がいなくて良かった……隙が多すぎだ、私。
有り余っていたはずのエネルギーが一気にしぼむ。
千夏(……ホント、キスマークなんてついてないよね)
カバンからコンパクトミラーを取り出し、顔からのど、襟元にかけてを確かめる。
……微妙に、赤くなってる点が、ひとつふたつあるっぽい。
その個所に触れられた感触がよみがえる。
それ以外の所に触れられたのも……
千夏(こら、思い出さなくていいって)
ぶんぶん、と頭を振って、自分の中に湧き上る昨日の記憶を押し止める。
まあ、昨日あったことはあったこととして、
今日はもう落ち着いて、冷静になって、自分をしっかりコントロールして……
春菜「おはよう、チイちゃん」
千夏(うわぁああぁあぁぁぁあ!)
声を掛けられた瞬間、椅子に座っていたにも関わらず、その場でひっくり返りそうになった。
千夏「あ……は、春菜っ……え…あ……」
慌てて振り返ると、春菜がちょっとふくれている。
春菜「もう、ちゃんと挨拶してよ。『挨拶は基本中の基本』なんでしょ?」
千夏「あ……うん……えと…おは、おはよ」
うう……春菜に怒られた……
春菜「うん、おはよう」
春菜が笑う。
いつもの、平和そうな笑顔。
いや、いつも見慣れたものじゃなくて、
私だけを見た、私だけに向けられた、私だけの笑顔。
……

287 :1:2008/08/24(日) 07:47:39.54 ID:sMfUrou60
千夏(隙だらけでも、いっか)
春菜に隠すことなんて、私にはもう何もないんだから。
そう思ったら、逆に心が落ち着いてきて、
恥ずかしさとくすぐったさを感じながら、私も春菜に笑いかけることができた。

288 :1:2008/08/24(日) 07:50:30.47 ID:sMfUrou60
授業の合間の休み時間。
春菜と並んで廊下を歩く。
こういうのはきっと、バカップルって呼ばれるんだろう。
春菜「ねえ、今日の放課後は?」
千夏「ごめん、陸上部に出るって約束したから」
今となっては、長谷川のことも無碍にはできない。
春菜が一番だけれども、私には大事にしなきゃならない人がいっぱいいる。
春菜「そうなんだ……じゃあ、部室まで一緒に行ってもいい?」
千夏「部室までって……教室から部室まで?そんなのでいいの?」
春菜「うん。そんなのでいいの」
身体中がくすぐったい。
くすぐったくて、気持ちがいい。
千夏「ついでに入部もしてく?」
春菜「えと……それは、また今度」
千夏(このォ)
軽くパンチを出す。春菜が手を出して、それを受け止める。
ぱちん、と鳴る音も、気持ちいい。
春菜「私たちっていいコンビだよね。お笑いでもやっていけるかも」
千夏「う〜ん……でも、春菜の頭を叩くのはちょっと気が引けるなあ」
春菜「……なんで、私が頭を叩かれるの?」
不思議な質問をする春菜。
千夏「なんでって……ツッコミはボケ役の頭を叩くものだろ?」
春菜「なんで、私がボケ役なの?」
……春菜、天才。

289 :1:2008/08/24(日) 07:52:47.64 ID:sMfUrou60
千夏「なんでって……それ以外どうしろって言うの?」
見事なボケだ。
春菜「だから、私がツッコミで……」
千夏「出来るわけないだろ!」
裏手で胸を、ぽん、と叩く。
春菜「そんな事ない。チイちゃんだって結構ボケボケだし……」
千夏「春菜から見てボケボケなら、正常って事だよ」
マイナスにマイナスをかけるとプラス。つまりはそういうこと。
千夏「大体、ツッコミには技術が必要なんだよ。それを磨くには練習が必要だから、怠け者の春菜には無理だって」
春菜が何か言い返したそうにしてる。
でもまあ、人には向き不向きというのがあってだね。
千夏「まあ、ツッコミは私に任せておきなって。春菜は、普段通りにしているだけでいいんだから」
春菜「わ、私だって、ツッコメめるもん!」
千夏「へえ〜……」
言い分だけは聞いてあげよう。
春菜「私だって、ものすごいテクニックを持ってるんだから」
千夏「そうなんだ?」
鏡に向かって練習でもしてる?
春菜「もう、ツッコンで、ツッコンで、ツッコミまくって……」
槇「ツッコミまくって……どうなるの?」
春菜「……!?」
気がついたら、早坂が湧いていた。
千夏「ど、どこから現れたんだ!?」
槇「なんだか、楽しそうなお話が聞こえてきたから」
……とてもいやな予感がした。

290 :1:2008/08/24(日) 07:55:20.53 ID:sMfUrou60
槇「春菜さんがもの凄いテクニックで、千夏さんに突っ込むとか……」
千夏「……!?」
そこ、曲解しない!
春菜「そう。そうなの!」
千夏「バッ……!?」
そこの君も悪ノリしない!
春菜「もう、あらゆるパターンでツッコンじゃうの!」
槇「すごい……あらゆる体位(パターン)で突っ込んじゃうのね」
千夏「お前、勘違いするなよっ! これは……んんっ」
春菜の手が、私の口を塞いだ。
春菜「チイちゃんが、泣いて『許して』って頼んでもダメなんだからね。もう、嵐のようにツッコミまくっちゃうんだから」
千夏(ぐああああ、お願い許して)
槇「千夏さんが羨ましい。こんなに素敵なパートナーがいて……」
千夏(こら! 何だそのウットリしたような顔は!)
「ホドホドにね」などと訳知り顔で言い残し、早坂は姿を消した。
私の方は、凄まじい脱力感に襲われて、その場に座り込んでしまった。
千夏(……こいつ……ツッコミきれない)
春菜「どうしたの? チイちゃん」
千夏「……もういい」
……どこからどうツッコんでいいのか分からない。

291 :1:2008/08/24(日) 07:58:07.23 ID:sMfUrou60
最後の授業が終わる。
クラスの女の子達が教室から出る流れに私も混じり、
廊下に出た所で、壁を背にしてよりかかった。
春菜(掃除が終わるまで待ってて)
春菜にそう言われた以上、私は待つしかない。
全くもう、可愛いこと言ってくれるなあ。
私と同じに、少しでも一緒にいたい、なんて思っちゃって。
掃除、ちゃっちゃと終わらせて欲しいけど、
こうやって待たされる時間も、何かいいかも知れない。
槇「何かいいことでもあった?」
……うきうきした時間に、水がさされた。
千夏「……早坂には関係ないだろ」
槇「露骨に不機嫌になるのねぇ。悲しいなあ」
千夏「私は忙しいんだよ。お前につきあってるヒマはないんだ」
槇「あらあら。嫌われちゃったわねえ」
今ごろ気付いたか。
槇「……でもまぁ……」
じーっ、と、早坂が私のことを見つめる。
千夏「な……何だよ」
さりげなさを装って首に手を当てながら、私は早坂を睨み返した。
槇「Aさんと仲直りが出来て良かったわね、Bさん」
なれなれしく私の頭を撫でてから、早坂はヒラヒラと手を振って去っていく。
千夏(何だよ、AさんとかBさんとかって)
ワケわかんないよ。
……。

292 :1:2008/08/24(日) 08:01:04.47 ID:sMfUrou60
千夏(ひょっとして……私のこと心配してくれてた?)
私の見送る背中は階段の門出曲がり、もう見えなくなってしまった。
千夏(まさかね……)
ユキ「佐倉木」
その抑揚のない声で呼ばれたとき、心臓がつかまれたかと思った。
いつの間にか、私の正面に、川瀬が立っていた。
白い肌の、人形のような。
けど、無表情ではない。
ただでさえ切れ長の目は、うっすらと細められ、
口の両端は、微かにつり上がっている。
川瀬ユキは笑っていた。
千夏「何か……用?」
ユキ「春菜って……」
千夏(呼び捨てで呼ぶな……!)
私は川瀬を睨みつけた。
湧き上がってきた敵意と警戒を、心にまとう。
ユキ「春菜って、とっても可愛いわよね」
ぎりっ、と、奥歯が鳴った。
そうだった……コイツ……春菜の初めてを……
つかみかかりたくなるのを全力でこらえる。
千夏「用があるんだったら、さっさと言えよ」
ユキ「クラスの子が話してるのを聞いたの。悪い子とかエッチな子って、卒業取り消されるかも知れないって」
千夏「……それが?」
冷たい笑みのまま、川瀬が私に歩み寄る。息がかかるくらいに。
顔をそむけようとしたけど、壁を背にしているから動けない。
川瀬が私の耳元に、唇を寄せた。

293 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 08:03:38.89 ID:ti1fKy5E0
不安になってきた

294 :1:2008/08/24(日) 08:04:06.88 ID:sMfUrou60
ユキ「春菜、保健室でどうだった?」
囁かれた台詞に、全身が凍りついた。
千夏「……!」
ユキ「あなた達すごいんだ。学校の中で、あんなに激しく……」
ユキ「廊下にいたのが私だけで良かった」
喉が渇いた。
唾を飲もうとするけれど、口も渇いて、うまくいかない。
ユキ「ふたりでお話しましょう」
ユキ「ね……千夏」
川瀬が私の手を取り、引っ張った。
抗うことはできない。
視界の端、廊下の窓の外。
虫が引っかかっている蜘蛛の巣が見えたように思う。

295 :1:2008/08/24(日) 08:07:02.15 ID:sMfUrou60
玄関まで来た時、私は手を振り解いた。
笑みが消え、細められた眼差しが、私の方に振り返る。
千夏「……どこまで私を連れて行くつもりだ」
ユキ「ふたりっきりに、なれるトコ」
ユキ「誰にも邪魔されないような……」
冷たい笑みが、また浮かぶ。
ユキ「私達って、いっぱい仲良くなれると思うの」
ユキ「春菜よりもね」
抑揚のない、棒読みじみた口調が、小さい声で鳴く猫を思わせる。
けど、ネコ科の動物はとても残忍なんだそうだ。
捕まえた獲物をすぐには殺さず、じっくりじっくりなぶって楽しむって、聞いたことがある。
千夏「お前……ヤバいよ。絶対ヘンだ」
ユキ「春菜もそう言った」
千夏「春菜にも……そうやって脅迫したのか」
ユキ「望んだのは春菜。秘密を守るかわりに、何でも言うことを聞くって」
千夏(……春菜……! 一体何やったんだ!?)
ユキ「千夏もそうしてくれるわよね」
ユキ「それなら、あなた達のことは、私達だけの秘密で済む……」
千夏「川瀬……お前……」
ユキ「ユキ」
千夏「何?」
ユキ「ユキ。私の事は、そう呼んで」
ユキ「私達、もう友達なんだもの」

296 :1:2008/08/24(日) 08:10:07.43 ID:sMfUrou60
そう言えば、
こいつ、いつの間にか私を名前で呼んでいる。
ユキ「千夏」
千夏「何だよ……」
ユキ「私、あなたが好きよ」
千夏「……」
ユキ「千夏は?」
千夏「何がだよ……」
ユキ「千夏は……私の事、好き?」
千夏「……」
視線で……
見つめるだけで、人を殺すことが出来たら……!
千夏「……好きだよ」
それ以外、私に答えは許されていない。
千夏(好きだよ、川瀬……今すぐ殺してやりたいくらいに!)
ユキ「待ってるね」
ユキ「私の部屋、3階の東端」
立ち去っていく川瀬。
遠ざかる背中が、自分の余裕を見せ付けていた。
あいつは、私が逃げられないことを知っている。
全身に、重く湿った何かが絡みついている気がした。
そいつはきっと、川瀬の気配――

297 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 08:11:05.61 ID:LR9VpQwI0
これは終わるのだろうかww

298 :1:2008/08/24(日) 08:13:27.80 ID:sMfUrou60
春菜「チイちゃん……」
千夏「……!?」
名を呼ばれ、私は弾かれたようにその方向に向き直る。
千夏「春菜……」
怪訝そうな顔が、こっちを見ている。
……今の話、聞かれた?
千夏(いや、この様子なら大丈夫)
春菜は知っちゃいけない……。
この子はアイツのせいで、すごく苦しんだんだから。
春菜「ねえ……」
アイツのことは、私で止めなきゃ……!
千夏「あ、あの、ゴメンね、ちょっと用事を思い出してそれで廊下を離れちゃって……ちゃんと言っておけばよかったんだけど……あの…」
春菜「……」
千夏「……」
春菜のさらに訝しくなる視線が、痛かった。
好きな人に隠し事をするのがこんなに辛いなんて。
隠し事なら、今までだってずっとしてきたはずなのに……
春菜「……行こうよ、部室」
甘ったれた、すがるような響きの声。
まるで私を責めてるような。

299 :1:2008/08/24(日) 08:15:26.25 ID:sMfUrou60
千夏「あの……やっぱりヤメない? すぐソコまでなんだし……」
怖くて、どうしていいか分からなくて、
「助けて」って叫びたいのに……
春菜「……」
無言で手が差し出される。。
千夏「うん……そうだよね、約束したし……」
差し出された手を取って、歩き出す。
この手は、ずっと私がつなぎたかった手。
そして、今の私が守らなければならない、
今の私を救うことなんてできない、何の力もない手。

300 :1:2008/08/24(日) 08:17:53.37 ID:sMfUrou60
校庭を横切って、部室のドアの前に立つ。
誰もいないことは分かっているけど、
千夏「失礼します」
ノックと挨拶をしてから、部室のドアを開けて、中に入った。
春菜「失礼します……」
私の後ろで、そう言って春菜も入ってくる。
今の私は、ひとりで悩むことも出来ないのかな……
千夏(……考えるのはよそう)
今は、部活のことだけ考えよう……長谷川にもこれ以上、心配かけたくないし。
千夏「ちょっと、待っててね」
私はロッカーを開けて、着替え始めた。
たった二日、着ていなかっただけなのに、
肌に触れるトレーニングウェアの感触が懐かしい。
これを着て、何も考えずに走ることができたら、どんなに気持ちいいだろう……
春菜「チイちゃん」
すぐ後ろで声がしたかと思うと、
千夏「え……きゃっ!」
いきなり抱きつかれていた。
背中から胸に回され、しっかりと体をつかまえている腕。ぴったりとくっついている体。
千夏「や、ちょっ……な、なに……?」
春菜「だって…チイちゃん、なんだか冷たいから」
春菜「この前のこと……怒ってる?」
……この前のこと。
私が春菜に無理矢理キスして突き飛ばされたこと、春菜を襲って泣かれたこと、保健室で春菜に……されたこと。
正直、どれを指しているのか迷ったけど、

301 :1:2008/08/24(日) 08:20:02.15 ID:sMfUrou60
千夏「そういうわけじゃ、ないけど……」
どれを取っても、私が怒るようなものじゃない。
千夏(でも……だからって、こんな所で……)
春菜「じゃあ……ね」
千夏「あ、ちょっと、待って……や…やぁ」
私の制止を聞かず、春菜の手がシャツの布地をつかみ、ズリ上げる。
千夏「ねえ、ちょっと……ダメ…」
春菜「ほら…やっぱり冷たい」
すねる春菜。
でもその手は、お腹と胸を滑りあがり、スポーツブラの中にもぐり込む。
千夏「違うの……そうじゃないの」
春菜「何が?」
何が、って……それは……
千夏(ダメ……言っちゃダメ……!)
千夏「だから……シャワーも浴びてないのに……」
温かくて柔らかいものが、首筋をなぞりあげた。
千夏「ゃん……!」
春菜「全然大丈夫だよ」
千夏「でも……」
手のひらが揺れ、乳首の上をかすめるようにして撫でる。
触れられている所が熱を持ち、体がだんだん火照ってくる。

302 :1:2008/08/24(日) 08:32:39.72 ID:sMfUrou60
千夏「んっ……ふぁ……」
膝から力が抜ける。私は壁に手をついた。
千夏「ね、ねえ……やめて…こんなところで……」
春菜「保健室では良かったのに?」
千夏「で、でも……」
千夏(あれは……春菜が先に……)
目の下で、手の形に盛り上がっているシャツの布地が形を変えた。
今まで胸を覆うようにしていた手が離れて、布地の山が、もこっ、と盛り上がると、
布地の下で、指先が、胸の敏感な部分を摘んだ。
千夏「ん…ぁああっ!」
春菜が指先で、ついばむように乳首を突っつき、
春菜「ね……お願い…チイちゃん……好きなの」
潤んだような声と、熱をはらんだ吐息で、私を蕩かしていく。
千夏「ふぁ…ん……ぁあ……っく…」
春菜「チイちゃんが私で感じてるところ…見たいの……」
千夏(……見たいの、春菜?)
空いている手が、脇腹を撫で上げた。

ttp://wktk.vip2ch.com/vipper97257.bmp

303 :1:2008/08/24(日) 08:36:23.47 ID:sMfUrou60
千夏「ん……ぁあ…ゃ…そんな……ぁ」
春菜「ね? いいでしょ……」
千夏「ん……ん…」
千夏(見たいの……? そんなにHになってる私の事、見たいの?)
春菜「ちゅっ」
千夏「ふぁ……!」
体に電流が走り、背中が反った。
千夏(春菜……春菜になら……!)
春菜「ほら、チイちゃんのココだって……」
摘まれた乳首がつねられる。
千夏「あんっ!」
春菜が触れる度に、囁く度に、私の心が剥かれていく。
春菜「ね?」
千夏「でも……」
理性とか、常識とか、みんな剥ぎ取られて、その奥の私が姿を現す。
春菜「私のこと……嫌いになっちゃった?」
千夏「そんなこと…ない」
春菜「だったら……ね?」
春菜が、Hな私を欲しがってた。
……いいよ、春菜になら。
千夏「……ぅん」
ショートパンツが下ろされて、お尻が少し涼しくなった。

304 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 08:40:14.21 ID:DSMWcNfuO
百合じゃなくてレズじゃん

305 :1:2008/08/24(日) 08:40:25.63 ID:JzfQqvQZ0
千夏「あんっ…そんな……」
千夏(見て……春菜)
春菜「いいなあ……チイちゃんのお尻」
千夏「んぁ……だめ、やぁ……揉んじゃ…」
千夏(……もっと触って)
春菜「きれいで、キュッてなってて、敏感で……」
千夏(春菜にチカンされてる……)
千夏「はんっ…! んっ…ぁああっ…も…ほんと……」
春菜「お尻、ダメなの?」
千夏「う、うん……ダメ…」
パンツの縁に、指先が入る。
ひくっ、と反射的にお尻が震える。
……お尻の谷間が、うずいた。
春菜「直接さわっちゃダメ?」
お尻には、割れ目があって、その奥には……

306 :1:2008/08/24(日) 08:41:38.44 ID:JzfQqvQZ0
千夏「う、うん……」
千夏(その……奥は……後ろの方は……)
春菜「じゃあ……」
パンツの縁にもぐった指が、ツウッ、と腰の横を滑った。
安心はできなかった。
千夏「ぁ……ぁあっ……」
肌を伝う春菜の指が、愛しかったから。
その指が脇腹をかすめて前に回り、オヘソの下でピタリと止まる。
春菜「こっち、さわるね」
手が、パンツの中に侵入した。
千夏「ぃやっ……だめっ! ね、春菜、…あんっ…!」
千夏(やっぱり……そこまでしちゃうの?!)
潜り込んだ手はもぞもぞと蠢いて、熱気と汗のこもる中、さらに下へと進んでいく。
千夏「ん……ぁあっ…は…!」
私を求める手と指が下腹部で動くたび、Hで気持ちいい信号が、全身に走る。
春菜「ね……どこがイイのか教えて」
千夏「だ……だめ…」
春菜の言葉が、また私を蕩かす。
ついに指先が辿り着いた。
私の体の、いちばんHな所に。
千夏(来た……春菜)
指先が私を探り、蠢きだした。

307 :1:2008/08/24(日) 08:43:07.00 ID:JzfQqvQZ0
千夏「っ…………!」
春菜「ここ?」
千夏「ゃんっ!」
指先が、敏感なシコリに触れた。
ひときわ強い「気持ちいい」が走った。お尻が跳ね、春菜の腰に当たる。
千夏「ああっ! ……ぁ…ぁ……ぁああっ…」
春菜「ね、ここ……どうすればイイの?」
千夏「そこ……を……」
春菜「名前で教えて……」
ああ……また……
千夏「ク…」
春菜「ク?」
千夏「ク……クリ…」
また……Hな私が引き出される……
春菜「クリを?」
千夏「クリを……やさしく……つまんで…欲しい」
Hな注文を口にしたら、すっかり剥ぎ取られた理性の部分が「いやらしい子だ」って、私を責めた。
千夏「んんっ……ぁ…はぁ……」
そうだよ……私、Hな子だもの。
皮ごとクリがつままれて、中のシコリがクリュッ、クリュッ、て動かされた。
千夏「んあぁ……や…ぁあ…」
春菜「まだ、強すぎる?」
千夏「…ぅ…うん……」
気持ち良くなりたくて、注文を出せば、
千夏「ぁ……ぁあ…ん……う…はぁ……」
その注文を春菜は受け入れてくれて、
千夏「ん……んぁあ…はぁ……ぁぁああっ……」
愛撫が優しくなった。

308 :1:2008/08/24(日) 08:43:39.61 ID:JzfQqvQZ0
千夏(もっと……感じるね、私)
千夏(だから……いっぱい愛して……)
胸に回されていた手が、不意に動き出した。
ソフトなタッチで、乳首が摘まれる。
千夏「ああっ……あ、あ…は……あ…」
胸とアソコが、同時に愛されていた。
ひとりでHする時と同じだけど、春菜にされてると全然違う。
千夏「ぃ…あ……ぁああ…い、いい……気持ち…ぃぃ…」
温かくって、気持ち良くって、幸せで……
千夏(好きなの、春菜……大好き)
春菜「チイちゃんに、忘れ物を返さなきゃね」
千夏「え……」
潤んだ目で振り返ると、見覚えのあるモノが差し出されていた。
千夏「……ぁ…」
ネコの手の形をした、わたしのお気に入りの……
春菜「そう、前にチイちゃんが私に使ったマッサージ器」
生唾を飲んだ。
千夏「い……や……そんなの使っちゃ…これ以上だと…」
千夏(もっと……気持ち良くなれる)
春菜「使っちゃイケナイって、そんなコワイものを私に使ったんだ……」
千夏「ゴ、ゴメン……だから…」
このマッサージ機のスゴさは、私の体が知っていた。
春菜「だめだよ……どんな事でも二人で分かち合おうってチイちゃん言ってたじゃない」
千夏「それは……ね、ねえ…ホントに、もう……」
春菜「大丈夫だから……ね?」
ウィーン、と、機械音が鳴り始めた。

309 :1:2008/08/24(日) 08:44:14.88 ID:JzfQqvQZ0
春菜「ほら…すごい……」
ボヤけているネコの手がもたらす快感を思い出し、
千夏「あ……ぁぁっ…」
思わず声が洩れた。
春菜「先に胸の方からね」
乳首に、震えているネコの手が、そっと押しあてられる。
千夏「ぁぁあああんっ……!」
春菜の腕の中、私の体がうねった。
ひとりでする時なら自分で加減も出来るので、気持ちよさがどれくらいかっていうのも大体分かる。
でも、他人にされてるとその加減が全然分からなくて、
その不安が、快感をますます倍増させる。
千夏「っ……ああっ! …こんな…だめぇ…あ、ああ…!」
押し付けられたネコの手が、乳首を潰して、ブルブルと震わせた。
千夏「ひぐっ……ぁ…んぁっ……い…い…くぁ…」
春菜「いい? ね、いいでしょ、チイちゃん……?」
千夏「ん……ぅん…あっ! そこ…ん……っく…」
千夏(いいの……それ、すごくいい!)
春菜「感じて……もっとイッパイ感じて……」
千夏「あ、はぁっ……あ…んんっ……んんっ……!」
気持ちよさに、身体中が悲鳴を上げてるみたい。
息が、できない。
千夏(死んじゃう……かも)
千夏(春菜になら……いい……かも)

310 :1:2008/08/24(日) 08:45:54.57 ID:JzfQqvQZ0
不意に、胸からマッサージ器が離れた。
千夏「…んあっ……はっ…はっ……はぁぁ……」
春菜「ダメだよ、チイちゃん。まだ、こっちが残ってるんだから……」
今度はマッサージ器が、パンツの中に潜り込む。
千夏「ゃ……や…ホント…これ以上は……」
春菜「感じて欲しいの……チイちゃんに」
千夏「や…こわい……」
春菜「大丈夫……一緒だから…」
千夏「……」
春菜と一緒……
体に回されてる腕に、力が込められた。
震動するネコの爪先が、私の敏感な所に……
おととい、私がそうしたように、押し当てられる……
千夏「……んあああああっっ! ……ぁぁぁっ…」
チイちゃんの身体が大きく跳ねる。
千夏「あ、ああっ……だめっ! …んぁあっ!!」
千夏(すごい、すごいよぉ、はるなぁ!)
オナニーの時の何十倍も気持ちいい!
千夏「ん、あ、ああっ……あっ…や…やあ……!」
乳首が摘み上げられる。
痛みと「気持ちいい」が一緒になって、身体中を暴れまわる。
千夏「んあっ…ああっ………はぁ、ああっ! や、やだ…ダメ、だめぇ…これ…あ、あ、ああっ!」
春菜「チイちゃん……チイちゃん……!」
春菜が耳元で私を呼ぶ。私のことを欲しがってる。
千夏「あ、ああっ……は、は、はあ…ぁ、ああっ…」
千夏(あげる……春菜! 私をあげる!)
熱い吐息が耳の中で巻いて、さらに熱くて湿ったものが、耳の中を犯した。

311 :1:2008/08/24(日) 08:46:56.72 ID:JzfQqvQZ0
千夏「ああっ…!」
乳首と、クリと、耳と、
千夏「う…ん……んんっっ………!」
熱い、溶けそう、
春菜「ん…チュッ…クチュ…好き……チイちゃん……!」
バラバラになりそうな私を、春菜がつかまえて、
千夏「ああっ……あ、あ、あああっ……あ……」
私の全てが、ドロドロになって、
私をドロドロにしながら、どっかにいってしまったりしないように、春菜が私をつかまえてて……
千夏「……は…ぁ……はぁ……はぁ…」
……ひとたび溶けちゃった私は、
春菜「……チイちゃん」
春菜の腕の中で、また元どおりに……
千夏「は…はぁ……」
春菜「イッちゃった?」
そんな……余韻……
千夏「う…うん……」
春菜「うれしい…」
うなじにキス。また体に電流が走る。
千夏「あっ……」
春菜「ねえ……クラブ終わったら、私の部屋に来て……」
千夏「……うん」
春菜「もっと、お話しよ?」
春菜がまた、わたしにキスした。

312 :1:2008/08/24(日) 08:48:23.33 ID:JzfQqvQZ0
全身から力が抜けた私の服を整えると、春菜はドアから出て行った。
千夏(……春菜)
千夏(今自分が、どんな顔してるか知ってる?)
上気した頬と、潤んだ瞳と、もの欲しそうな微笑……スゴいHな顔してた。
ベンチに腰掛けて、しばらく呼吸を整えた後、
私は長袖のジャージの上下を着て、襟を立てた。
……きっと、キスマークが増えているだろうから。

313 :1:2008/08/24(日) 08:48:56.87 ID:JzfQqvQZ0
再びドアが開いたとき、
薫「先輩っ!」
飛び込んできたのは、やっぱり長谷川だった。
薫「良かった……ちゃんと来てくれたんですね!」
いつもなら、そのままこっちに飛びついてきそうな勢いだったのが、
薫「……あ」
いつものように差し出した手を、不意に止め、
そのまま下ろす。
千夏「……長谷川?」
千夏(やば……Hの跡、どこかに残ってる?)
襟を立てただけじゃなくて、ジッパーも一番上まで上げたんだけど。
薫「約束でしたよね……いきなり抱きついたりしちゃいけないって」
千夏「ああ……うん。そうだったね」
薫「……友原先輩とは」
千夏「……春菜が、どうかした?」
薫「ちゃんと……仲直りできました?」
千夏「うん……まあ、何とか」
また私たちは黙り込む。
薫「今日は、よろしくお願いします」
ぺこり、と頭を下げる長谷川。私もちょっとだけ頭を下げた。
千夏「こっちこそ、よろしく」
薫「準備してきます」
長谷川が、ドアを開いて外にでていく。

314 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 08:49:04.08 ID:MvdSy0gEO
支援
追いつくのにどれだけかかるかな

315 :1:2008/08/24(日) 08:50:18.34 ID:JzfQqvQZ0
……その時になって、やっと気付いた。
千夏(お前の差し金か)
春菜にヘンなこと吹き込んで、保健室で待ち伏せさせて、
それを、川瀬に知られて、
そして、私は……!
千夏(……!)
……違う。もともとは、私が春菜を襲ったりしなければ……
千夏(長谷川を恨むのは、筋違いだよ……)
あいつは、あいつなりに、私の事を心底心配してくれた。
……だから、あいつにももう心配はかけられない……
もう繰り返しちゃいけないよ。
私のせいで、誰かが悩んだり傷ついたりなんてことは、もう起こしちゃいけない。

316 :1:2008/08/24(日) 08:51:32.91 ID:v2H47jsW0
部活が始まった。
自分のメニューをこなしつつ、練習する後輩たちにも出来る限り助言をする。
淡々と、いつも通りに。
本当は、これだってとても貴重な時間のはず。
○等部を卒業すれば、この子たちともお別れなのだ。
もちろん進学したって、私は陸上を続けるけれど、
同じグラウンドで走ることは、もうなくなる。
でも、そんな貴重な時間を噛み締めるなんてことは、今の私にはできない。
ユキ(待ってるね)
ユキ(私の部屋、3階の東端)
……部活が終われば、私は寄宿舎に行って……
寄宿舎で……私は……私は……
薫「先輩……」
声をかけられて、我に返る。
やっぱり長谷川が側にいた。
千夏「ああ、ごめん、長谷川……」
千夏「ボーッとしちゃってて……」
薫「仲直り……できてないんですか?」
千夏「え?」
薫「友原先輩と、まだケンカしてるんですか?」
千夏「それはないよ……そんなんじゃない」
心配そうな顔の長谷川。
いつもなら、「ピシッとしてくださいよ!」くらいのことは言うはずなのに。

317 :1:2008/08/24(日) 08:52:08.74 ID:v2H47jsW0
千夏(助けて、長谷川……)
千夏(私、川瀬に脅されてる……!)
そう口走りそうになる。
千夏「そんな顔するなよ」
笑顔を作って、私は長谷川の胸を裏手で軽く叩いた。
千夏「私は大丈夫だから」
じっ、と見つめてくる瞳。私の奥底まで、見通そうとしているような。
いつものような、まっすぐなまなざし。
千夏(長谷川……)
でも、雰囲気がいつもと違う。
そう言えば、準備体操でストレッチとかの時でも、あまり体をくっつけて来なかったような……
と、長谷川が手にあるクリップボードを私に差し出した。
薫「すみません、先輩。急用を思い出しました」
薫「ちょっと外しますんで、みんなの練習見ててもらえませんか?」
千夏「ああ……いいけど」
私がボードを受け取ると、長谷川は、
薫「失礼します」
そう言って、校舎の方に駆け出していった。

318 :1:2008/08/24(日) 08:52:41.47 ID:v2H47jsW0
部員「ありがとうございました!」
結局、部活が終わるまで長谷川は帰ってこなかった。
用具の後片付けが終わったのを見届けてから、私も着替えて部室を出た。
後輩の部員達は、口々に私に「お疲れ様でした」「さようなら」と言って、去っていく。
気がつけば、私一人だけが取り残されていた。
千夏(……これから……寄宿舎……か……)
カバンを持って、歩き出す。
足が重いのは、部活で体を動かしていたからじゃない。
……春菜もこんな気持ちだったのかな。
千夏(こんなの……誰かに相談なんてできるものじゃないよね……)
ひとりでとぼとぼと歩いてると、
春菜「チイちゃん」
校舎玄関で、春菜に声をかけられた。
千夏「……春菜」
春菜「部活終わったんでしょ? この後何か予定ある?」
千夏「あ…えと……」
千夏(川瀬の……所に……)
春菜「無いんだったら、寄宿舎に寄って行ってよ。約束でしょ?」
……約束。
ユキ(待ってるね)
ユキ(私の部屋、3階の東端)
手がつかまえられ、引っ張られた。
千夏「あ、ね、ねえ……春菜」
春菜「いいから、いいから」
戸惑いながら、心のどこかで安心していた。
千夏(仕方ないよね……春菜に捕まっちゃったんなら)
言い訳にすらならないなんて、自分でも分かってたけど。

319 :1:2008/08/24(日) 08:53:41.40 ID:v2H47jsW0
寄宿舎が見えてきた。
あいつの部屋は3階の東端って言ってたけど……
千夏(見られてる……かな)
並ぶ窓に、あいつの姿があるか。
それを確かめる前に、私たちは寄宿舎のドアをくぐった。
そのまま春菜に引っ張られ、彼女の部屋へと連れて行かれる。
薫「あ、あの……どうも! お待ち、しておりました」
ドアが開くと、そこにいたのは長谷川。
正座してたのが飛び上がって、お辞儀をする。
千夏「は…長谷川……どうして……」
春菜「……今日は、二人でチイちゃんを元気づけようかなって思って」
後ろから囁く春菜。
千夏「ふ、二人で……って」
春菜……自分が何言ってるか分かってるの?
薫「きょ、今日は……よろしく、お願いしますっ!」
千夏「そ、そんな……私、だめ……こんなの…んっ!」
部屋から飛び出そうとする私をつかまえて、春菜が唇をふさぐ。
春菜「ん……ちゅっ……ぴちゅっ……」
千夏「あ…ちゅっ………ぁ…」
口の中で、春菜の舌がうねる。
体中から力が抜けて……
また私が……溶ける。

320 :1:2008/08/24(日) 08:54:39.79 ID:v2H47jsW0
薫「……ぁ…ぁ……」
春菜「ね…いいでしょ、チイちゃん」
千夏「でも……」
春菜「ほら、こっち……座って」
春菜に肩を抱かれて、私はベッドに座らされた。
本気なの、春菜?
3人で、なんて……
春菜「あ、あの……薫ちゃん」
薫「は、はいっ!」
春菜「これからどうすればいいの?」
……どうやら本気らしい。
ただ、色々と分かってない。
分かられて、早坂みたいになられても困るけど。
薫「どうすればって……何がですか?」
春菜「だから……3人でって、どんな風にするの?」
薫「どんな風にって聞かれても……」
薫「あの……違うんです」
違うって、何が?

321 :1:2008/08/24(日) 08:55:11.57 ID:v2H47jsW0
薫「その、私の中では佐倉木先輩がタチ役なんです」
……そこ。何の抵抗もなく恥ずかしいこと言ってるんじゃない。
春菜「え? タチ役って何?」
そこのボケ役。さっきの休み時間には何て言ってたっけ?
薫「えと……とにかく、こういう状況はちょっと予想外なんです……」
つまり、今回は春菜が考えたことなんだね?
春菜「そんな……今さら困るよ」
……考えなしに事を始めないように。
薫「じゃあ、とりあえず……今まで通り友原先輩が佐倉木先輩を襲っていただけますか」
今まで通りって……長谷川、お前。
千夏(春菜がしてくるのは、まだ2回……)
……2回、という具体的な数字が、妙に生々しく感じられた。
2回も……私、春菜に……
昨日と、ついさっきと……いっぱい、愛された。
心臓が、ドキドキと鳴り始めた。
春菜「襲うって……人聞きの悪い」
千夏(これから3回目が……)
しかも、3人で……
やるべきことは、今すぐ立ち上がって部屋を出て行くこと。
二人が止めてくるようなら、振り払ってしまえばいい。
……簡単なことなのに、
千夏(それって……もっとすごいのかな……)
心臓を高鳴らせて、緊張で喉がかわいたまま、
私はそれがどうしてもできない。
薫「じゃあ……愛し合って下さい。私も途中から、参加しますから」
春菜「う、うん……わかった」
春菜が、私の隣に座り、ぎこちない笑いを見せた。
耳まで赤くして、ちょっと震えて。

322 :1:2008/08/24(日) 08:56:37.70 ID:v2H47jsW0
千夏(春菜も……緊張してる?)
千夏「あの……どうかした?」
春菜「あ、ううん、何でもない。チイちゃんは何も心配しなくていいから」
そう言って、顔を寄せてくるけど……
身を乗り出し、息を詰めている長谷川の視線が、ちょっとツラい。
やっぱ……マズいよ、これは。
千夏「あ、あの……春菜、私やっぱり……」
春菜「あ、だめ……」
立ち上がろうとして、春菜が肩を押さえつけて、
千夏「んっ……」
また唇をふさがれた。
千夏「ん……ちゅっ…むっ…はぁぁ………」
春菜「ぁ……あ………ちゅっ……ちゅ………」
体重がかけられる。
私は緩やかに、春菜に押し倒されていた。
上着のボタンがひとつひとつ外されて、
リボンが解かれて、ブラウスのボタンも……
私、また剥かれちゃう……
春菜「ねえ、薫ちゃんも手伝って……」
薫「は、はい! 失礼します!」
千夏「あ、や……やだ……」

323 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 08:56:47.66 ID:UFC0eaD00
支援

324 :1:2008/08/24(日) 08:57:16.33 ID:v2H47jsW0
春菜「ほら、もうこんなに勃ってる」
春菜の指先が、乳首をくすぐった。
千夏「いっ……あっ、はぁ……ぃゃ……」
それだけで、また体中に電気が走ったような気持ちになる。
春菜「ね、ちょっと小さめでしょ?」
薫「は、はい……そうですね」
春菜「ねえ、どう? 気持ちいい?」
千夏「う、うん……ぁ…気持ち……ぃぃ…」
春菜「聞こえないよ」
キュッ、と摘まれる。
千夏「ゃんっ! ……あ………き、気持ち、いい…」
春菜「うれしい…ちゅっ」
千夏「んんっ…」
空いている手がお腹の上を這って、おへそにたどりつく。
爪が、優しくおへそをいじった。
千夏「ひっ……ん、ぁ、ぁあっ…はっ…や、やだ…ゃめっ…くすぐっ……ん…」
春菜「こんなトコでも感じちゃうんだ」
千夏「ち、ちがっ……ぅ、ん……ぁ…はっ……ね、そこ…」
私、オモチャにされてる……?

325 :1:2008/08/24(日) 08:57:53.05 ID:v2H47jsW0
春菜「ほら、薫ちゃんが見てるよ」
千夏「ぇえっ……?」
横を見る。
長谷川がいた。
目を輝かせて恥ずかしい私のこと、見てた。
千夏「やっ…! ゃ……見ちゃ……見ないで……」
顔が、火が出そうなくらいに熱くなる。
顔を覆おうとした手を、春菜がとらえ、ベッドに押さえつけた。
千夏(あ……ぁあ……)
春菜「どお薫ちゃん? チイちゃん、カワイイでしょ?」
自慢するように春菜が言うと、
薫「は、はい……すっごく……」
長谷川が裏返りかけた声で答える。
春菜「ほら、見てないで……薫ちゃんも」
薫「は……はいっ…」
春菜「ほら、チイちゃんも」
千夏「え?」
私……何かするの?

326 :1:2008/08/24(日) 08:58:54.05 ID:v2H47jsW0
春菜「チイちゃんは薫ちゃんの先輩なんだから」
千夏「せ、先輩だから……?」
春菜「命令するとか。『アソコを舐めなさい』とか」

薫「な、舐めるんですか!」
千夏「ちょっ……まっ…待って、お願い…!」
閉じようとした脚を長谷川が抱えて、割り開いた。
長谷川が、ものすごい真剣な目をしていた。
真剣な目で……私の、アソコを……
千夏「ぁああっ! や……ゃだ……長谷川…」
春菜「どう、チイちゃんのは?」
薫「は、はい……とてもキレイで、なんか、見てるだけで……」
顔が近づいてくる。
ウットリしたように眼は細められ、小さく開いた唇からは、もの欲しそうに舌が覗いて、
千夏「ぁ……ぁあっ……」
ちゅっ…
千夏「んんっ……ぁぁああっ…!」
薫が、私にむしゃぶりついて、
薫「ちゅっ……むっ…ぢゅっ…ぢゅるっ………」
私をむさぼり始めた。
千夏「や……だ、めぇ……そんな、ぁ、ぁあ…や」
唇と、舌と、歯が、わたしのアソコを蹂躙していた。
柔らかくて、硬くて、熱くて、ネットリしたものが、
周りと、中と、てっぺんとを這い回ってる。

ttp://wktk.vip2ch.com/vipper97258.bmp

327 :1:2008/08/24(日) 08:59:31.82 ID:gki/A9Kc0
春菜「ほら、チイちゃん……見える?」
ぼやけた眼に、お口で私を犯す女の子が……
千夏「う、うん……見える」
春菜「何が見えるの?」
舌はうねって、唇は吸い付いて……
千夏「長谷川が……」
春菜「薫って呼んであげて」
かすれかけた声で、春菜が注文してきた。
千夏「か、薫が……薫が私のアソコ…舐めてるの」
舐めてるだけじゃない……
太ももを腕で捕まえながら、手のひらでさすっている。
脚の間で動いてる頭の髪が、チクチクって内股やおへその下を刺激してる。
春菜「薫ちゃんの舐め方はどう?」
ピクン、と長谷川の愛撫が一瞬止まり、
直後、もっと強くなった。
千夏「う、うん……あっ! き、きもち…、い、いい……」
アソコにかかる息が、熱い。
春菜「私よりも?」
千夏「……え?」
春菜「私と薫ちゃん、どっちが舐めるの上手?」
千夏「そ、そん…んぁっ! ぁ、ぁ…ぁあ……」
千夏(ダメ、激しくしないで……!)
春菜「そんなの?」
千夏「そ、そんなの……わかんない…よ……」
春菜「じゃあ、比べて……」
耳元に、春菜が口を寄せた。
吐息が、耳たぶにかかる。

328 :1:2008/08/24(日) 09:00:03.19 ID:gki/A9Kc0
千夏「あ! だ、めぇ……そこ…耳は……ゃぁ…!」
春菜「だって、薫ちゃんアソコ舐めてるんだもん。だったら、ね?」
囁き声が、熱と吐息になって、耳をなぶる。
千夏「お、お願い……そんな、一緒になんて…」
春菜「っちゅ……」
千夏「………!!」
舌先が、私の耳を舐めた。
一番激しい快感が、熱くなって、私の体を駆け巡った。
薫「んむっ……ぷぁっ…んっ…」
どうしようもなく暴れる体が、長谷川の力で押さえつけられる。
千夏「ひっ…! ぁ、ぁあっ、や、やあ…だ、め…」
春菜「ちゅくっ…んむっ……むぅ……」
耳たぶは口に捕まえられ、
その奥が、舌で犯されている。
春菜「ちゅくっ……くちゅっ、くちゅぅ……」
耳の凹凸に擦れるたびに、粘膜がいやらしい水音を立てている。
薫「むっ……ぢゅっ……づ…ちゅぷっ……」
長谷川の細められた舌も、私の中で、リズミカルに出たり入ったりしていた。
千夏「あ、や……だめ……あ、ああ、やだ、イッちゃう…私…も、もう……ん…んんっ…!」
千夏「ぃっ…ひっ…あ………ぁああっ、ぁ、ぁ、ああっあ、だ、めぇ…も、もう……ん、んんぁ…あああっ…」
千夏「あ、はっ、あっ………ぁ、ぁあああああっっっ!!」
千夏「はあっ……はぁ………はぁ…」
……春菜と長谷川が導いた高みから、落ちていくような……

329 :1:2008/08/24(日) 09:00:37.39 ID:gki/A9Kc0
そんな余韻は、何秒もなかった。
薫「ん……ぁ……ちゅっ……」
春菜「ちゅっ……ん……」
二人の愛撫は、ちっとも終わってくれない……
千夏「ゃぁ……もう…ダメなの……ほんと…」
春菜「ダメだよ……長距離走だって、急に止まったら体に悪いんでしょ……」
千夏「それとこれとは……んっ…!」
春菜がまた唇をふさぎ、私の中で舌を蠢かせた。
口の中の粘膜に、自分の粘膜を擦りつけながら、
また私を蕩かしていく。
春菜「……んちゅっ……ちゅぷ……ぁは……」
千夏「ん……くぷっ……ちゅ……んっ!」
太ももに、ヌラリと温かいものが這った。
春菜が唇を離した時、足元を見ると、
薫「はぁ……先輩……先輩の脚……」
長谷川が、私の脚を胸に抱きしめながら、
薫「先輩の脚……すごくキレイで……好きです……」
肌を舌で舐め上げていた。
千夏「だ、ダメ……」
薫「先輩……せんぱいぃ……」
持ち上げられたふくらはぎが、長谷川の乳首に押し付けられて、
薫「んっ……んっ、あっ、はぁっ……!」
ゆっくりと、上下に動く。
長谷川の体温と肌の感覚が新鮮で、また私の中で「気持ちいい」が動き出し始める。
千夏「は……ん……あぁ……あ」
千夏(ダメ……もう……本当に……)
春菜「んちゅ……ぷ……ダメだよ、チイちゃん……」
唇に唇を押し付けたまま、春菜が喋った。
春菜「私の方が……はふ……上手いんだから……」

330 :1:2008/08/24(日) 09:01:21.04 ID:gki/A9Kc0
……弾んだ呼吸の三重唱。
川の字の真中にいた状態から身を起こして、
まずは、ひん剥かれた下着に手を伸ばした。
春菜「……チイちゃん?」
呼びかけを無視して、次は足元に丸められている靴下を取る。
脚の指で摘んで引き寄せ、手に取って履く。
薫「はぁ……先輩?」
長谷川の体を乗り越えてベッドから降り、
床に散らばっている自分のブラウスとリボン、スカート、上着を拾い上げる。
ボタンをはめ、リボンを、キュッ、と絞めると、
まずは、まだマグロみたいに寝っ転がってる後輩の頭をひっぱたいた。
ぴしっ!
薫「痛っ!」
千夏「いつまでも寝てるな、ばかっ」
さらに、その向こう側で満ち足りたような顔をしている自称ツッコミ役の頭もひっぱたく。
春菜「痛いよ……チイちゃん」
千夏「ふたりとも、とっとと服着る。急いで!」
部活で後輩たちにハッパをかけるような調子で、パンパン、と手を鳴らす。

331 :1:2008/08/24(日) 09:01:57.72 ID:gki/A9Kc0
薫「は、はい……!」
春菜「チイちゃん……怒ってる?」
千夏「怒っちゃいない。呆れてるだけだ」
春菜「ゴメン……私、チイちゃんに元気になって欲しくて……」
手を打つのを止めて椅子に腰掛けると、
私は深く深くため息をついた。
言いたい事は山ほどあるけど、気力が尽きていた。
この二人に好き勝手されたおかげで、やたら消耗していた、というのが一番大きいけど。
千夏「……気持ちだけ受け取っとく」
……私も、すごく良かったから……あんまり強くものを言えない。
怒りはしないし、このことで二人に距離や壁を置くようなこともしないけど、
千夏(これっきりにしよう……)
こういうのは、間違いなく「姦淫」っていうのに入ると思う。
服を着た二人がベッドに並んで座っている。
その前に、私は腕組みをして立った。
千夏「もう、こういうことはしないように」
千夏「……分かった?」
薫「はい……分かりました」
春菜「チイちゃんだって……あんなに喜んでたのに」
ずいっ! と、春菜の目の前に顔を近づけた。
千夏「春菜……何か言った?」
その距離、数センチ。

332 :1:2008/08/24(日) 09:02:38.59 ID:gki/A9Kc0
この接近はキスするためのものじゃない。
春菜「いいえ……もう、しません」
千夏「よろしい」
千夏「んじゃ、行くよ、長谷川」
薫「先輩……さっきは、私のこと薫、って……」
今度は長谷川の目前に顔を寄せた。
千夏「早く帰るよ、は・せ・が・わ」
薫「は……はい……」

333 :1:2008/08/24(日) 09:03:21.00 ID:gki/A9Kc0
長谷川と一緒に、春菜の部屋を出た。
ふたりして黙ったまま、廊下を歩く。
思い切り気まずい空気が落ちてるっていうのもあるけど、理由がもうひとつ。
千夏(……お腹……空いた)
今日の昼は、食欲がなかったのでお弁当を食べてない。
そんな状態で部活に顔を出して、その後に……その……
まあ……アレだ。
千夏(聞いたことあるなあ……)
千夏(アレって、何百メートルを全力疾走っていうくらいに体力使うんだっけ)
うう……お腹空いたよ……
はぁぁ、とため息が漏れた。
千夏(一度部室に寄って、お弁当食べてから帰ろうかな……)
薫「先輩、あの……」
千夏「……何?」
さっきのことと空腹とで、思い切り声が険しくなった。
薫「いえ……なんでもありません」
廊下を折れて、階段の下り口に来た。
その時、

334 :1:2008/08/24(日) 09:04:07.50 ID:gki/A9Kc0
ユキ「千夏」
心臓が止まった。
ツインテール、白い肌、無表情な顔、猫のような雰囲気。
廊下からの死角の位置で、壁に寄りかかり、
千夏「川瀬……」
あいつが立って、こちらを見ていた。
ユキ「ひどい、千夏」
ユキ「ずっと待ってたのに」
ちら、と、その目が長谷川に向いた。
ユキ「薫って、その子?」
千夏「……長谷川」
川瀬を見たままで、隣の後輩に呼びかける。
薫「はい?」
千夏「先帰ってて」
薫「そんな……一緒に帰りましょうよ……」
千夏「私、こいつに用事がある」
薫「お友達ですか?」
ユキ「そう」
自分が質問されたわけでもないのに、勝手に川瀬が答えた。
ユキ「私たち、友達なの……そうよね、千夏?」
川瀬からの質問には、今度は私が答えない。
千夏「明日の部活には、ちゃんと顔を出すよ。だから、先帰ってて」
薫「はい、先輩……お疲れ様でした……」
不審と不安が入り混じった顔を見せながら、長谷川は階段を下りていく。

335 :1:2008/08/24(日) 09:04:42.89 ID:gki/A9Kc0
ユキ「お疲れ様……」
ユキ「疲れるようなことしてたもんね」
千夏(また……見てたのか!)
ユキ「……どうして来てくれなかったの?」
千夏「……捕まっちゃったんだよ、春菜に」
ユキ「連れてくれば良かったのに」
ユキ「私なら気にしないから」
……ふざけるな。
ユキ「千夏だって好きでしょ。みんなで仲良くするの」
ユキ「私も好きよ。友達と仲良くするの、大好き」
壁に寄りかかっていた背が離れ、
川瀬が一歩こちらに踏み出す。
ユキ「私なら、今からでも構わない」
ユキ「私の部屋に遊びに来て」
千夏「冗談だろ……」
ユキ「本気」
ユキ「二人で、いっぱい遊びましょ……きっと、楽しいから」
また川瀬が近付く。
うっすらと笑みを浮かべて。
私に向けて、延べられる手。
詰められた距離の分だけ、私は退き、
背中に、階段の手すりがぶつかった。

336 :1:2008/08/24(日) 09:06:07.83 ID:IVWO9igc0
ユキ「どうして、逃げるの」
ユキ「怖いことなんて何もしない」
千夏「家、帰らなくちゃ……」
川瀬の足が、止まる。
千夏「私、寄宿舎生じゃない……だから、帰らなきゃ」
ユキ「……」
延べられていた手が、下りた。
ユキ「千夏は、明日も学校に来るんだよね」
ユキ「私、ちゃんと待ってるから」
……
……どうやら、今日は解放されたらしい。
息をつき、川瀬に背を向ける。
階段に足をかけた時、
ユキ「千夏」
また呼びかけられた。
立ち止まる。けど、振り返らない。
あいつの姿なんて、一秒だって余計に見たくない。
ユキ「好きな人を待つ時間って、楽しい」
ユキ「あなたもそう思わない?」

337 :1:2008/08/24(日) 09:07:34.12 ID:IVWO9igc0
食欲なんてなくなっていた。
お腹には何も入ってないのに、吐き気すら感じられる。
微かに目まい。足腰に力が入らず、何もない道で何度も転びそうになった。
それでも家に帰りつき、自分の部屋に入ると、ベッドに倒れこんだ。
気力、体力が、完全に消耗しきってた。
千夏(何か……お腹に入れておかないと……)
身を起こし、カバンから今日のお弁当を出した。
蓋を開けて、ご飯をお箸ですくい、口に運ぶ。
……まだ食べられるはずなのに、飲み込むことが出来ず、
数枚重ねのティッシュの上に吐き出した。
丸めてゴミ箱の中に投げ捨てる。
……どうしよう。
私の卒業だけじゃなく、
春菜の卒業もかかってる。
いや、ひょっとしたら、長谷川も。
校内でのHが発覚して、退学とか放校なんて、
うちの学校ならありそうな話だ。
その鍵を握ってるのが、よりによってあんな……
あいつ……どんな人間なんだろう?
千夏(分からない……あいつのこと)

338 :1:2008/08/24(日) 09:08:41.20 ID:IVWO9igc0
分かっていることといえば……
卒業間際の転校生。イギリスからの帰国子女。飛び級。親は貿易関係の仕事をしている。
他には……春菜を……したヤツ……。
そのことを思うと、腹の奥が煮えくり返りそうになるけど、
あいつについて分かってることは、その程度のことだ。
……そう言えば、誰かと喋ってるなんて所も見たことがない。
転校初日、珍獣扱いで野次馬が群がってたけれども、
次の日には、あいつはひとりで教室を出て行ってたっけ。
千夏(……エイリアン)
その言葉が、自然に頭に浮かんできた。
もともとの意味はただの「外国人」っていう意味だったのが、同じ題名のSFホラー映画のおかげで「怪物」っていうイメージがついちゃって、
おかげで国際空港の案内表示は、今では「フォーリナー」ってなってる、とかいう話を聞いたことがある。
何を考えてるかよく分からない、っていうのは、確かに怪物。
「一番怖いのは、理解できないこと」ということも、何かの本に書いてあったっけ。
……いや、Hなことが好きらしいというのは分かっている。
けど、その「Hの好きになり方」というのも、私たちとは違う気がする。

339 :1:2008/08/24(日) 09:09:25.16 ID:IVWO9igc0
できるだけ落ち着いて、冷静に考えてみる。
あまり認めたくないけど、私は、Hなことが好き。でも、Hが好きな自分には、正直抵抗がある。
早坂あたりだと、そういう抵抗はずいぶんと少ないみたいだ。そして、Hな事がとても好き、というのはよく分かる。
色々言ってやりたい私の後輩も同様に、Hなことにはあまり抵抗がないらしい。
春菜も、意外と抵抗がないみたいだ……というか、春菜の場合は、抵抗を感じるという段階がすっ飛ばされてるんじゃないかという気がする。
……おかげで今日は、ひどい目に遭ったけど、それはともかく。
千夏(転校して、出会ったばかりの女の子に、弱み握っていきなりキスして……)
千夏(その日の夜には、その子の部屋に泊まって……そして……)
……また奥歯が鳴る。
ゆっくりと息を吐いて、心を静める。
千夏(……今度は、その子の知り合いの弱み握って……)
理解が、できない。
いくらHが好きだからって、人を脅してまで……したがるなんて……。
千夏(危険だ……あいつは……)
……ここ最近の春菜と私のゴタゴタのきっかけは、全部あいつから始まってる。
卒業したところで、握られた弱みは消えることはないだろう。私は、私達は、これからもずっとあいつに脅されつづけなくちゃいけない。
何だよ……
どうしてビクつく必要がある? 一番この学校から追い出すべきは、川瀬ユキに他ならないじゃないか。
千夏(そうだよ……あいつのことを先生に言えば……)
……ダメだ。
それだけだと、春菜や私や、長谷川のこともバレるかも……。
あいつに、申し開きの機会を与えないようにするには……
……
方法は、ある。
こっちの被害をゼロじゃないにしても、最小限に食い止める方法が……

340 :1:2008/08/24(日) 09:09:58.44 ID:IVWO9igc0
千夏(ダメージは……私だけで……済ませる……)
その為には……
千夏「くっ……!」
自分の体を抱きしめた。
――私が、川瀬と、する。
――そのことを、私が、先生やシスターに、密告する。
――弁明の機会ぐらいは与えられるだろう。その時に、上手く言えれば……
――私と、川瀬は……
上手くやれば……
私だけを代価として、あいつをこの学校から追い出せる。
千夏(できるの……千夏?)
自問する。
……やるしかない。
選択の余地はない。
これ以上、あいつのいいようにはさせない。
春菜も、長谷川も、私が守る。
守れるのは、私だけだ。

341 :1:2008/08/24(日) 09:11:47.76 ID:IVWO9igc0
その日の夜はなかなか眠れなかった。
昔の時代のお姫様のことを思った。
政略結婚で、会った事もない人のお嫁に行き、好きでもない男に抱かれる時、
そのお姫様は、こんな気持ちだったのだろうか?

6日目終わり

342 :1:2008/08/24(日) 09:12:25.03 ID:IVWO9igc0
卒業式まで後2日
朝。
シャワーを浴びる。
鏡を見た時、体のあちこちにまた赤いポツポツ。
春菜だけじゃなくて、昨日には長谷川からも愛された跡。
……。
……長谷川なら、良しとしなきゃいけないだろう。
今日は、この世で一番嫌いな人間に触れられなきゃいけないんだから。
千夏(ごめん……春菜……)
千夏(いっぱい愛してくれたのに……)
千夏(せっかく……あなたのものになったのに……)
千夏「う……うくっ……」
泣いた。
昨夜もさんざん泣いたのに。

343 :1:2008/08/24(日) 09:15:13.37 ID:IVWO9igc0
千夏「行ってきます」
学園内での不祥事、しかも、Hな不祥事を起こしての退学……
そんなことになったら、家からも追い出されるかもしれない。
それか、ずっと家の中に閉じ込められて、飼い殺しにされたりして……。
千夏(……春菜の方が、大事だよ。絶対)
いつもの通学路を歩き出した。
最後の通学になるかも知れない。
そう思うと、一歩一歩が本当に貴重に思えてくる。
――春先の景色。
道の途中、あちこちに桜の木が見えることがある。
3月初旬だと、まだ花はついてない。
これが、ちょうど新学期の頃になると花が咲き誇り始め、遠目にはまるで雪をかぶったようにも見えるのだ。
満開の桜は華やかだし、その花弁の一枚一枚が風に舞い散っていく様というのも風情がある。
けど、5月頃の、あざやかな緑の若葉が生い茂る姿も私は好きだ。
集めて絞ればそのまま絵の具にでもなりそうな、まぶしい緑。それが真っ青な空を背にすると、とにかく目に映えて、見てるだけで気持ちが良くなってくるのだ。
……前に、春菜にこんなことを話したら、「そういうものなの?」という一言で流されてしまったけど。
千夏(色々……あったなぁ、春菜とは)
修学旅行迷子クラスの大事件から、つまんないことまで。
……これからも、そんな「色々」を積み重ねて行きたかった。
ふたりで、ずっと。

344 :1:2008/08/24(日) 09:16:48.67 ID:IVWO9igc0
部活。今日は講堂の中での練習だった。
目の前では、可愛い後輩達が、走ったり跳んだりしている。
この子たちとも色々あった。
とりわけ、ここ最近に一番色々あった長谷川は、今はみんなの中を忙しく動き回っている。
あの子が入部して来た時のことも、よく覚えている。
新入部員挨拶の時、みんなの前で、
薫(私は佐倉木先輩に憧れて陸上部に入りました! 佐倉木先輩が大好きです!)
なんて宣言したのだ。
それ以来、あの子はその「大好きな佐倉木先輩」にくっつき続け、
気がつけば、誰よりも側にいるようになっていた。
千夏(……薫)
心の中、下の名前で呼びかけてみた。
昨日のことが思い出されて、どうしても気恥ずかしさが出てくるけれども、
イヤな感じは全然しなかった。
千夏(今まで色々ありがとう、薫)
千夏(私、何のかんの言っても薫のことも好きだったよ)
千夏(じゃあね)
私は講堂の出口をくぐった。

345 :1:2008/08/24(日) 09:19:53.29 ID:IVWO9igc0
寄宿舎への道を歩いていくと、目の前に人影が立った。
眼鏡をかけた、髪の長い女の子。
千夏「……二ノ宮」
秋穂「佐倉木先輩。お話があるんですが」
秋穂「お時間を少しよろしいでしょうか?」
相変わらず慇懃なものの言い方。
……ただ、いつもに比べると、少し声が険しいかも知れない。
それと、いつもはニコニコ笑ってるのに(この笑いがまた胡散臭いんだけど)、今は真顔。冗談が通じるような顔じゃない。
千夏「……私、用事があるんだけどね」
秋穂「大事なお話なんです。なるべく手短に済ませますから」
……せっかく覚悟決めてるのに、水差されたくないんだけど。
千夏「分かったよ……で、何?」
秋穂「……その、ここでは、ちょっと……」
二ノ宮は周囲を見回すと、「こちらへ」と言って、物陰に連れて行く。
ずいぶんと勿体をつけるなぁ。
千夏(これで大した話じゃなかったら、ただじゃおかない……)
再び周りを見回してから、二ノ宮は話を切り出す。
秋穂「佐倉木先輩……」
秋穂「先日の卒業式の練習で、シスター・アンジェラのおっしゃったことを覚えてらっしゃいますか?」
千夏「……偽りの道に進むことがないように、とかって話?」
頷く二ノ宮。

346 :1:2008/08/24(日) 09:20:34.14 ID:ZAWCpuur0
秋穂「それと……正しき道に戻られるようにある種の強制を行う、というお話です」
……つい先週ぐらいには、この話を聞いてすごく怖くなったっけ。
ずいぶん昔の事のように感じられる……
千夏「覚えてるけど、それで?」
秋穂「……友原先輩と、浅からぬおつきあいをしていると聞きました」
千夏「……誰から?」
秋穂「誰からというわけではありません……人が話しているのが、自然に耳に……」
千夏「へえ……」
その時、風が吹いた。
吹き抜けた風は、真っ直ぐに下りている秋穂の髪を束の間巻き上げ、彼女の顔を隠した。
その髪が、また下りた時。
二ノ宮秋穂は、うっすらと笑っていた。
あいつを思い出させる笑みだ。
獲物を徹底的になぶる、猫のような。
秋穂「淫らな行為を行った生徒は、学院にふさわしくないという事で、除名……というより、もともと学院に入学していないという事になるそうです」
千夏「淫らな行為、ねぇ……」
千夏「それ、どうやって調べるの?」
秋穂「もちろん、検査をします」
秋穂「シスター達は『処女検査』と呼んでいます」
胸の奥、腹の底。
何かが、どん、と突かれた感じがした。
千夏「……」
千夏「……えげつないね」
秋穂「教会とは、そういうものです」
秋穂「歴史の教科書を見れば、分かるでしょう?」

347 :1:2008/08/24(日) 09:21:29.36 ID:ZAWCpuur0
確かに見えた。
二ノ宮の中にある、黒いもの。
無邪気に信頼する春菜が、決して気付かない黒。
二ノ宮自身も、それを春菜に気付かせないようにしているのだろうけれど。
秋穂「私の心配、分かっていただけますでしょうか?」
千夏「……除名、って言ったよね?」
秋穂「はい……もともと学院に入学してないことになる、と」
千夏「それって……ここからいなくなる、ってことだよね?」
秋穂「そうです」
千夏「……サンキュ、二ノ宮」
私の口の両端が、吊り上った。
千夏「いいこと聞いた」
多分この顔も、春菜には絶対見せられない顔だろう。
千夏「話はそれだけ?」
秋穂「はい」
千夏「ありがとう……私、用事があるから、これで」
秋穂「寄宿舎へ……ですか?」
千夏「うん」
秋穂「友原先輩の部屋ですか?」
千夏「違うよ……それだけは心配しないで」
私は彼女に背を向けた。
秋穂「佐倉木先輩」
秋穂「あなたに何かあると、友原先輩が悲しみます」

348 :1:2008/08/24(日) 09:22:06.50 ID:ZAWCpuur0
何かはある。
これから私が起こす。
千夏「……春菜なら大丈夫じゃないかな」
秋穂「どうしてですか?」
千夏「二ノ宮がいるから」
私は歩き出した。

349 :1:2008/08/24(日) 09:22:39.83 ID:ZAWCpuur0
寄宿舎のドアをくぐり、壁の名札を見る。
「友原春菜」
その名前を、胸の中に刻み付けてから、また進む。
階段を上り、廊下を歩いて、
3階、東端の部屋の前に立つ。
ノックした。
ユキ「どうぞ」
ドアを開く。
殺風景な部屋の中、あいつがいた。
片隅に、うずくまって座っていたのが立ち上がり、私を出迎える。
ユキ「来てくれたのね、千夏」
ユキ「待ってたの、ずっと」
あの、うっすらとした笑みが、私に近付いてくる。
昨日と同じように、伸べられる手。
けれども昨日とは違って、引っ込められることはない。
距離はゼロになり、脇の下から背中に腕が回されて、抱きつかれた。
肩口につけられた頭。髪からは柑橘系のリンスの匂いが鼻をつく。
胸焼けがして、吐き気がしそうだ。
ユキ「千夏も……」
答えない。
ユキ「千夏も……私を抱くの」
こうするの、とでも言いたげに、回された腕に力が込められる。
私も無言で、こいつの体に腕を回す。
柔らかくて、温かくて、気持ちがいい。
気持ちがいい分、触れているところから、体が腐り、侵食される感じがした。

350 :1:2008/08/24(日) 09:23:30.85 ID:ZAWCpuur0
ユキ「千夏……」
ユキ「……あったかい……」
肩とか胸とかに頬擦りされた。
無邪気に見える様は、確かに愛らしくて、
同時に、黒い何かを私の中に渦巻かせる。
……このまま、絞め殺すことできないかな。
くっついていた顔が離れ、
文字通り、目と鼻の先に、こいつの顔が迫った。
瞳に私の顔が映っていた。
私の顔には表情がない。
ユキ「いっぱい楽しいことしましょ」
ユキ「わたしのものに、して上げる」
千夏(ならない、絶対に……)
千夏(体は奪われても、心は絶対渡さない……)
千夏(お前はここから消える)
こいつは初めて、満面に笑みを浮かべ、
目を閉じ、私に接吻した。

351 :1:2008/08/24(日) 09:24:03.59 ID:ZAWCpuur0
ユキ「ん……んちゅっ……ちゅ……ちゅば……」
千夏「んく……ん……ん……」
閉じた唇を、もうひとつの唇がゆっくりとねぶる。
合わせ目のラインに沿って、押し付けられたやわらかい物が、開いたり閉じたり。
押し付けられた顔が左右に揺れて、そのたびに鼻と鼻とがぶつかった。
こいつの唇から、チロ、と舌が出る。
私の唇を這い、合わせ目を何度か往復した。
ユキ「……む……ん……くちゅ……」
千夏「ん……んん……!」
唇の合わせ目から舌が滑り込んできた。
裏側や歯、歯茎を舌がなめ上げ、自分の唾液をまぶす。
擦れあう粘膜の感触が気持ちいいけど、
それを歯を食いしばって耐えた。
遮られているから、こいつの舌はこれ以上入ってこない。
唇をくっつけたまま、こいつは目を開いた。
キスした後、ずっと目を開けていた私と、視線がぶつかる。
ユキ「……ちゅっ……」
笑った。

352 :1:2008/08/24(日) 09:24:53.07 ID:ZAWCpuur0
それが分かったのは、目が細められたのと、押し付けられた唇の形が、変わったからだ。
背に回されている手が動き、
指先が、背骨に沿って、ツウッ、と上る。
くすぐったさに似た感触。
上着の布地から、ブラウスの襟を通って、
うなじに、触れる。
千夏「……うんっ……!」
思わず、声が漏れた。
触れている指が増えて、首筋の中心から、広がるように肌の上を這い進んでいく。
千夏「……ん……んふっ!」
手のひらが首筋をなでながら、伸ばされた指のつめ先が、頸動脈の辺りを引っかいた。
千夏「……ふ……う……ひゅ……」
そこは、吸血鬼が牙を立てる、首の一番柔らかい所。
千夏「……ん……んちゅ……じゅ……」
喉の奥から漏れる声は、閉じた歯とふさがれている唇とで声にならず、
なりそこないの吐息になって、口の中の唾液を外に漏らしていく。
気がついたら、眼を閉じていた。
まぶたを開くと、今度はこいつがずっと眼を開けて、私の反応を観察していた。
眼が合うと、また眼が細められる。
千夏(また……笑った……!)
その時、指先の微妙なタッチが、首筋から体に電流を走らせて、
千夏「ん……! ふぁ……!」
歯が開いた瞬間、舌が私の口の中に滑り込んできた。
千夏「あんんッ!」
後ろから首筋を刺激していた手は、片頬にあてがわれ、
弱点だと分かった箇所に指先を伸ばして、爪でカリ…カリ…と掻いた。

353 :1:2008/08/24(日) 09:25:30.25 ID:ZAWCpuur0
千夏「あふ……あ……は……」
ユキ「んぐ……ん……あ……ぁん……」
舌が、口の中を蠢く。
内側から頬、歯の裏や裏の歯茎が、私のものじゃない粘膜に、ネットリと絡みつかれていく。
あふれた唾液が唇の端から漏れて、顎から首筋を伝って下りる。
不意に舌が起きた。
舌先が、上顎の硬い部分に、チョン、と触れた。
千夏「……ふああああっ!」
耐え切れず、顔を離した。
唇と唇との間、唾液が糸を引いた。
千夏「……んはぁっ、はぁっ……はぁっ……」
ユキ「可愛い、千夏」
見ると、こいつも口の端から唾液の糸を垂らしている。
紅潮した顔に浮かぶ笑みは、いよいよ妖しさを増していた。
睨みつけると、私の頬をいとおしそうに手のひらで撫でてくる。
ユキ「その顔も、好き」
千夏(私はお前が嫌いだ……!)
ユキ「キレイな顔、汚しちゃってごめんなさい」
親指が垂れた涎の筋を拭った。
ユキ「今、キレイにするね」
顔が寄せられて、伸びた舌が唾液の筋を拭い取った。
そのまま、また口に忍び込むかと思ったら、
今度は下へと伝い下りて、

354 :1:2008/08/24(日) 09:26:02.40 ID:ZAWCpuur0
千夏「あ……あは……あああっ!」
頸動脈の、感じるところを舐め始めた。
ユキ「ちゅ……れろ……ん……くちゅ」
千夏「ああ……あ……イヤ……」
唇と舌とが動くたび、
体が熱くなっていく。
ユキ「ココ……感じるんだ……」
くにゅっ、と、甘噛みされた。
千夏「ああ……っ!」
ユキ「いいのよ、もっと感じても」
ユキ「あなたのこと、もっと教えて」
千夏「……さい……」
ユキ「何?」
千夏「うるさい……!」
ユキ「やっと……口をきいてくれた」
……?
こいつの笑みの雰囲気が、ちょっとだけ変わったような……?

355 :1:2008/08/24(日) 09:26:33.57 ID:ZAWCpuur0
ユキ「嬉しい、千夏」
千夏「……」
ユキ「もっと、お喋りしよ」
また笑みが妖しいものを帯びて、口元が私の頸動脈に押し付けられた。
千夏「あ……ああっ……や……あんっ!」
千夏「はぅ……ん……んくっ……ん……」
千夏「い……や…ぃぁ……ふ……ふぁあん!」
体が火照ってくる。
こいつの口が送り込んでくる快感のシグナルは容赦がなくて、
私はこいつの体にしがみついていた。
ユキ「すごい、千夏……顔が真っ赤」
ユキ「ねえ……暑いんでしょ?」
その指先が、私の制服のホックを外し、
襟のリボンをスルリと解いた。
……既成事実を作って、私と道連れに、こいつをこの学院から消す。
その考えが、私の中でだんだん遠くなっていく。

356 :1:2008/08/24(日) 09:27:12.46 ID:hXAwG3xt0
組み敷かれていた。
腕は押さえつけられ、大の字に広げられている。
ブラウスのボタンは全て外されて、胸がはだけている。
外に晒された肌は熱くて、今はその胸にこいつが覆い被さっていた。
ユキ「はむ……あん……ぺろ……」
千夏「あ……はぁっ……あん……や……あっ!」
広げられた胸に顔を突っ込んで、責めている。
唇、舌、歯、だけじゃなくて、
鼻や、吐息、垂れている髪の毛さえも使って、
胸全体を、刺激する。
その刺激の度に、私は声を上げ、体全体を突っ張らせた。
体が反り返るたびに、私の肌が、上になっているこいつの肌に当たり、
その体温や柔らかさも、私に「気持ちよさ」を送り込んでくる。
喘ぎ声の合間の呼吸は弾み、心臓の刻む鼓動は、重く、早くなる。
一秒ごとに、一呼吸ごとに、心臓の鼓動ひとつごとに、
私は高められ、剥かれていく。
さんざんむさぼっていた胸から顔を離し、
こいつが私を見下ろしてきた。
上気した頬。浮かんだ微笑みは妖しさを増していた。
私を高みへと導きながら、暗く、深い奥底からも、こいつの何かが外に出てきている。
ユキ「千夏の胸、素敵」
囁く。

357 :1:2008/08/24(日) 09:28:39.13 ID:hXAwG3xt0
ユキ「あなたは私のモノになるの」
こいつの脚が動いた。
スカートは脱がされて、私の脚は剥き出しになっている。
私の脚を割って、その間に膝を立てていた形だったのが、
片方がその間から出た。
ユキ「こういうの、知ってる?」
中にある脚の内モモが、私の内モモに、ヒタッとくっついた。
千夏「あ……っ!」
脚の柔らかい部分が触れ合って、これから送られる「気持ちいい」の、最初のサインが呼び起こされる。
ユキ「動くね……」
私の目の前で、こいつの顔がゆっくりと、リズミカルに動き出す。
触れ合っている部分が、擦れあう。
柔らかくてもどかしい「気持ちいい」と熱とが、じんわりと全身に広がっていく。
千夏「ん……ぅん……く……」
ユキ「んっ……んっ……んっ……んっ……」
千夏「ん……あ……ああっ……!」
ユキ「んっ……んっ……は……あむっ……」
空気を求めて開いた口を、またこいつが塞ぐ。
触れあった口と口は蠢き、外と内とで粘膜が擦れあう。
押さえつけられた手、絡み合った指も蠢き、弱いけど、確かなパルスを送り込む。
お腹と胸はぴったりと合わさって、私のかこいつのか分からない汗で、ヌルヌルと滑る。
内モモ同士を触れ合わせるこいつの動きは大きくて、私の体も揺さぶっている。

358 :1:2008/08/24(日) 09:29:14.79 ID:hXAwG3xt0
体の下で、ぎしっ、ぎしっ、とベッドが軋む。
千夏「ん……ちゅっ……ちゅぷっ……あ……」
ユキ「んふ……はぁ……んちゅ……」
揺さぶられる。外から、内から。
五感全てから送り込まれた「気持ちいい」のサインが、電流と熱になって身体中を駆け巡り、
電流と熱とは体を火照らせ、ますます五感を敏感にしていく。
私の体が敏感になった分、私の中から心が消えていく。
理性はもちろん、想いも、企みも、願いも、好きだった人のことでさえも、
火照りの中に、流されていく。
押さえつけられてる腕が、切ない。
確かな何かに、しがみつきたい。
ユキ「……んふっ」
また、こいつが笑った。
腕の戒めが緩められた瞬間、
振りほどき、私はこいつの体を、
力いっぱい、抱きしめていた。
体が動いた。体を動かした。
千夏「ん……っ! ふぁっ……あんっ……あんっ……あんっ……」
唇が離れた。
千夏「……え?」
目前、猫の微笑。
私の本性を受け止めてくれる、優しい笑み。

359 :1:2008/08/24(日) 09:29:46.64 ID:hXAwG3xt0
千夏「……せぇ……川瀬ぇ……」
ユキ「ユキ」
千夏「?」
ユキ「ユキ……私の事は、そう呼んで」
千夏「ゆ……」
千夏「ユキ……」
ユキ「そうよ、千夏」
ユキ「私たち、友達なんだから」
千夏「……ユキ……ユキ!」
ユキ「好きよ……千夏」
ユキは、体を離し、私の体を引き起こした。
私たちは、ベッドの上で向かい合わせに座る形になった。
ユキ「キスして……」
そう言って、ユキが目を閉じ、顔を上げた。
千夏「ユキ……」
私はその名を呼んで、彼女に接吻した。
伸ばした私の舌を、彼女の舌は受け入れた。
柔らかくて温かい世界の中で、思いのままに求めた。
千夏「……んふぁっ!」
胸の一番敏感な個所が、摘まれた。

360 :1:2008/08/24(日) 09:30:52.44 ID:hXAwG3xt0
ユキ「千夏……もっと気持ちよくするね」
ユキが背後に回り、後ろから前に手を回した。
手と指が胸を撫でてくる。
唇と舌はうなじを這って、
もう片方の手は、脚の間に忍び込んだ。
千夏「あ……そこ……」
一番深い快感が生まれた。
指が、割れ目に沿って、ゆっくりと動く。
ユキ「ねぇ……ここ、好き?」
千夏「うん……好き……」
ユキ「私の事は?」
千夏「……ユキは……」
指が立てられて、パンツの布地ごと、ほんのちょっとだけ潜り込んだ。
千夏「んあ……っ!」
ユキ「私の事、好き?」
千夏「……き……好きぃっ……!」
ユキの手が、離れた。
千夏「……え?」
ユキ「脱いで、コレ」
指先が、パンツの裾の中に潜って、布地をピン、と弾いた。
ユキ「これ脱いだら、続きしてあげる」
千夏「う、うん……」

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361 :1:2008/08/24(日) 09:31:26.87 ID:hXAwG3xt0
パンツの両脇に指を入れて、腰を浮かせて、脚から抜き取る。
剥き出しになったアソコは、しっとりと濡れていた。
ユキ「うわぁ……凄いのね……」
千夏「いや……見ないで……」
ユキ「恥ずかしがらなくてもいいのよ。私も、同じだから」
千夏「ユキ……も?」
ユキ「確かめてみる?」
手が取られ、背後に導かれた。
ユキ「……んっ……」
指先が、温かくて湿ったものに触れた。
千夏「これ……ユキの……」
ユキ「そう……私の。千夏で、感じてるの」
ユキ「私たちは同じなの……だから一緒に、もっと気持ちよくなろうね」
愛撫が、本格的になった。
千夏「……ぁ……ん…………っ…」
さらされた割れ目に沿って、指が動く。

362 :1:2008/08/24(日) 09:33:28.60 ID:hXAwG3xt0
千夏「あっ……いやあ……あっ……あぁ……」
ユキ「ほら……ここ…」
千夏「ああっ……! や、やぁ……そこ…」
ユキ「ここ?」
千夏「やっ……!」
ユキ「ほら、もっと脚を広げて見せて」
千夏「んっ…あ、や、やだ……見ちゃ…」
ユキ「だめ……ちゅっ…」
千夏「んあぁぁっ……!」
ユキ「千夏って、ホントに敏感なんだ」
千夏「ん……ああっ……」
ユキ「ね、二人で……もっとキモチイイ事しよ……?」
ユキ「ん……」
千夏「んふっ……ぁ、ぁああっ……ん」
ユキ「ちゅっ……ちゅ………」
千夏「ゃぁっ……ああっ……はっ…」
ユキ「乳首……気持ちいい?」
千夏「んくぅ…んっ……ゃ………」
ユキ「もう、ベチョベチョね……」
千夏「ああぁっ……! だめ…んっ………」
千夏「あ、ああ……ぁっ…」
千夏「んあああぁぁっ……あ……はっ、ぁ……ん…」

363 :1:2008/08/24(日) 09:34:02.55 ID:hXAwG3xt0
アソコを繊細なタッチでさぐり、胸を手のひらと指の腹とでそっと撫で上げ、
うなじから肩にかけてのラインを、甘噛みがたどる。
快感の高みへと、一気に引き上げられ、
けど、頂上はまだまだ見えない。
ユキ「ね、気持ちいいでしょ?」
千夏「あ、ああっ……はあっ……」
乳首が弾かれた。
千夏「ひあっ!」
ユキ「気持ちいいでしょ?」
千夏「や…やだ……やめて…」
ユキ「まだダメ? じゃあ……」
ユキ「こっちで気持ちよくなってね」
両手が、下をいじり始めた。
指先でアソコが広げられた時、耳に小さく粘っこい音が聞こえた。
外気に触れているアソコの、さらに奥が、冷たい空気に触れる。
千夏「んぁ…そんな……恥ずかしい……」
ユキ「ほら、ここ……もうヌルヌルになってる」
指が、入ってきた。
千夏「ん、あぁっ……あ、ああっ…だ、だめぇ……」
入った指が、うねる。
千夏「ふぁっ…! あ、ああっ……んっ…!」
ユキ「ね、千夏は、どっち派?」
千夏「ぇ……え?」
ユキ「オナニーする時、穴とクリのどっちでイクの?」
千夏「そ……そんなの……」
ユキ「教えて……」

364 :1:2008/08/24(日) 09:34:34.45 ID:hXAwG3xt0
内モモがつねられた。
千夏「ひぅっ……んんっ…ぁぁああっ……」
ユキ「どっち?」
千夏「……ク、クリ……で」
ユキ「聞こえない」
千夏「クリで……イッちゃう」
ユキ「千夏はオナニーの時、クリでイっちゃうんだ」
頷いた。
ユキ「道具とかは、使ったことある?」
千夏「……」
ユキ「どっち?」
千夏「……ある」
ユキ「ローター? バイブ?」
千夏「そういうのじゃ…なくて……マッサージ器…みたいな」
ユキ「小さいの?」
千夏「う、うん……」
ユキ「アソコに入れたりした?」
首を横に振った。

365 :1:2008/08/24(日) 09:35:05.92 ID:hXAwG3xt0
ユキ「乳首とか、クリとかにあてがうだけ?」
千夏「ん……そう」
ユキ「千夏は、ホントにクリが好きなんだ」
千夏「ね…ねえ……お願い……もう許して…」
ユキ「許すって、何を?」
千夏「だから……」
ユキ「私はただ、千夏に好きになって欲しいだけ」
千夏「だから、それは……んぁっ…!」
ユキ「私のこと好きって言ったのはウソだったの?」
千夏「……んんっ……ウソじゃ…なくて」
ユキ「じゃあなんで、春菜や薫とイヤラシイ事するの……」
千夏「んぁああっ……!」
ユキ「だから今度は神様に誓って……私のモノになるって」
……忘れていたものが、よみがえる。

366 :1:2008/08/24(日) 09:35:47.54 ID:crIs3uHo0
私、春菜が好き……。
今、私がここにいるのは……あの子を守るため……
千夏「そんな……」
「気持ちいい」の中に消えてしまったそれを、たぐり寄せる。
ユキ「春菜を捨てて、私だけのモノになって、千夏……」
千夏「んんっ……い…やぁ……」
春菜は私の……私は春菜のもの……
あんなにいっぱい、愛してくれたのに……
ユキ「ホントに?」
千夏「ああっ……!」
指が、クリをいじりはじめた。
ユキ「ほら……ココは私のこと好きだって……」
千夏「んんっ…あ、あああぁぁっ……や、だめ……そこ…つまんじゃ…や……だ………」
耳の横の髪の毛が掻き分けられた。

367 :1:2008/08/24(日) 09:36:18.84 ID:crIs3uHo0
指が、触れた。
千夏「やっ!」
ユキ「……耳、弱いんだ」
千夏「あ……ぁぁ………」
ユキ「ごめんね、気付いてあげられなくて……チュクッ」
吐息と唾の音が、耳に覆い被さった。
千夏「……んあっ……はっ………」
千夏(ダメ……溶けちゃう……体、溶ける……!)
つかまりたい、確かなものに、何か。
でも、さっきと違って、ユキは私の後ろにいる。
抱きしめたいのに、抱きしめられない。
全身が突っ張って、手と足が、つかまるものを求めて、足掻いた。
ユキ「くむっ……ん…ちゅっ………ぴちゅっ…」
千夏「は…はああっ……あ…ああっ…めっ…だめぇ………」
クリがなぶられて、耳がしゃぶられて、胸がいじられて、
溶けた、蕩けて、熱くなった心と体が、頂上に……

368 :1:2008/08/24(日) 09:36:57.32 ID:crIs3uHo0
千夏(……え?)
愛撫が止まった。
間を置いて、また始まる。
千夏「……んああっ……はぁ………んああああぁぁっ!」
それが繰り返される。
何度も何度も。
ゴールラインは見えてるのに、辿り着きかけると遠ざかる。
千夏「お、お願い……もう、もう……」
ユキ「お願いって?」
千夏「……つ、続けて……途中でやめちゃ…イヤ……」
ユキ「私のモノになってくれる?」
千夏「そ、そんな……」
ユキ「じゃないと、ずっとこのままよ」
ユキ「ちゅ……」
千夏「んんああっ…!」
ユキ「ぴちゅ…」
千夏「……くぅっ…」

369 :1:2008/08/24(日) 09:37:31.89 ID:crIs3uHo0
登りつめたい……イキたい……イキたいのに……
千夏「……ぁ…ぁ」
ユキ「何?」
千夏「お……お願い……」
ユキ「……」
千夏「お願いします……イかせて…下さい」
ユキ「いいの……私で?」
千夏「う、うん……いいのぉ…」
ユキ「ホントに?」
千夏「う、うん……だからっ…おねがい…はやくっ……!」
ユキ「私のモノになってくれる?」
千夏「なるっ……なるからぁ…!」
ユキ「神様に誓って?」
千夏「誓う! 誓います! だから、お願い……私をイかせてぇっ……!」
ユキ「いい子ね……じゃあ……」
千夏「あ……あぁ」
やっと……やっと……
私……イける……
ユキ「千夏……タップリとイかせてあげる」
また私は、組み敷かれた。

370 :1:2008/08/24(日) 09:38:30.24 ID:crIs3uHo0
ユキが、私の片脚を取って持ち上げた。
千夏「あ、ああぁ……」
これ……貝会わせ……
雑誌にあったっけ……女の子同士でHする時の……最後にするやつ。
これも、妄想の中で、何度も繰り返していた。
何度も……春菜と……
ユキ「ほら、見てて。私と千夏のアソコがくっつくところ」
千夏「あ、ああ……私…わたし……」
春菜と……愛し合って……
ユキ「んっ……」
千夏「ふぁぁ……!」
二人のアソコが、ピッタリと合わさって、
ユキの腰が淫猥に動き始めた。
リズミカルな、湿った肉の擦れ合う音が、奏でられ始めた。
千夏「ああっあ、はぁ……あ、あああぁぁあっ!」
ユキ「ね、どう? 気持ちイイ?」
千夏「あ、ああっ………い、いいっ……」
ユキ「そんなにイイの?」
千夏「う……うん、いい……いいのぉ……」
ユキ「もっとよ……もっとよくしてあげる」
千夏「う……うん……もっと、して……」

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371 :1:2008/08/24(日) 09:39:51.41 ID:crIs3uHo0
私もユキを求めて、腰をくねらせた。
ユキ「千夏のクリ……あたってる……」
千夏「う、うん……分かる……私も…ユキのクリ……あたって……ん…すご…い……」
ユキ「ね……千夏……舌、出して」
千夏「え……ぁ…ぁんっ……んちゅ……む」
ユキ「ん…ちゅくっ………んむ…」
何度繰り返したか分からないディープキス。
千夏「んぁ……ちゅ…じゅるっ……む……んくっ…」
ユキ「ちゅっ…ちゅくっ………む…んんっ……」
腕が、私に覆い被さるユキの体に回った。
腰と、胸と、舌と、それぞれが、
ユキを求めて、蠢いて、
ユキ「……」
……ユキ?
千夏(どう……したの)
舌が離れ、ユキが眼で、ドアの方を示した。
ユキ「ほら、あそこ……」
千夏「え……」

372 :1:2008/08/24(日) 09:40:26.05 ID:crIs3uHo0
部屋のドア。かすかな隙間。
その向こうに見える、人の影……
ユキ「春菜……そんなところで見てないで入ってきたら?」
春菜「……!」
春菜……?
そんな……そんなこと!?
千夏「え……ウソ…ウソよ…そんな……ウソでしょ…やだ、やだぁ……」
ガチャッ、と、ドアが開いた。
呆然として、真っ青な顔をした春菜が、そこに立っていた。
どうして……ここに……
なぜあなたが、ここにいるの!?
どうしてあなたが今こんな所にいるの!?
にちゃっ、と音がした。
触れ合ってるアソコの音。
火照った体、口から垂れてる唾液、こいつをつかまえている私の腕、
千夏「イヤァッ! 春菜ぁ…見ないでぇ……見ちゃダメェ……」
ユキ「ほら、見て……千夏の手が私の身体を掴んで離してくれないの」
千夏「違う……ちがうの……これは……ああぁっ…」
あなたを守りたくて……こいつのこと消したくして……
ユキ「千夏は私のモノになってくれるって、神様に誓ってくれたわ」
千夏「や……や、ダメ…お尻……動いちゃう……だめ……ダメなのに……とめられないの……」
ユキ「春菜みたいなオママゴトじゃないの」
千夏「んああっ…あ……や…こんなの……あ、ああっ…だめ……やだ…だめ……」
止まって……私の身体、お願い、止まって!
ユキ「イかせてあげるわ、千夏……」
千夏「やぁ、あ、ああ、イきたくない……だめぇ…やぁ、あ、動かしちゃ、んっ…ん……」
引き上げられる、容赦なく、快感の高みへ、

373 :1:2008/08/24(日) 09:41:09.95 ID:crIs3uHo0
千夏(イヤ……イヤ……イヤああああああっ!)
体が、体が! 体がああああああっ!
ユキ「どう? いいんでしょ?」
千夏「あ……い、いい…の……ゴメン……ゴメンね、春菜……んぁっ……」
こいつが、口をあけ、
私の耳にしゃぶりついた。
千夏「んんんんぁあああああっ……ぁぁああっ…ああ…」
体が達した。
私の、魂を、代価にして。
千夏「は……はぁ……はぁ………ぁ…」
浮遊感の後、高みから叩き落された私の残骸を、
春菜「チイちゃん」
彼女が見ていた。
ユキ「どう? こんな千夏、見たことないでしょ?」

374 :1:2008/08/24(日) 09:41:43.55 ID:crIs3uHo0
……犯されるって、望んでもいない人間に抱かれるって、こんな事だったんだ……
春菜「チイちゃん……」
ユキ「千夏は私のモノよ……」
何も考えられないくらいに……
ああ……
これが、絶望っていうんだ……
春菜「チイちゃん……」
千夏「出ていって……」
あなたに、名を呼ばれる資格は、もうない。
私が望んで、それ、捨てた。
春菜「チイちゃん……」
千夏「お願い、春菜……出ていって……お願いだから……」
足音。
遠ざかる。
私の……私が……
春菜「……私、チイちゃんのことが好きだよ」
ドアが、閉じた。
……

375 :1:2008/08/24(日) 09:42:15.39 ID:crIs3uHo0
思考が止まった状態で、
どれくらい時間が過ぎたのか。
誰かが笑っていた。
声を出して、体を揺らして。
ユキ「くっ……くふっ……くっくっくっくっくっ……」
笑っているのは、ユキだった。
……何がおかしい……
ユキ「うふふふっ……くっ」
私の目の前で、手で顔を覆って、肩を震わせて、
楽しそうに、楽しそうに、私を嘲笑ってる。
止まっていた思考が、動き出す。
脱力していた全身に、力がゆっくりと戻ってくる。
それが臨界を越え、
次の瞬間、私の体は跳ね起き、
生まれてからこれまでに鍛えてきた全ての力でもって、
目の前で笑っている人間の横っ面を、
心と体の力の限り、殴り飛ばした。
ユキ「きゃあっ!」
全裸のツインテールの姿はベッドの上から放り出され、
床の上に転がった。

376 :1:2008/08/24(日) 09:42:50.32 ID:BxJLt4h80
床に転がったままで、こいつはまだ笑い続けていた。
ユキ「……ふふっ……あはっ……あはははっ、ははっ……はっ……」
散らばっている衣服を集めて、
ひとつひとつ身につける。
パンツを履いて、ブラジャーをちゃんと締め、ブラウスのボタンを止めて、
スカートを履いて、靴下を通し、リボンを結び、上着に袖を通す。
ユキ「……帰るの?」
千夏「……もういいだろ」
ユキ「ダメ……」
裸で床に寝転がったまま、顔を上げた。
ユキ「次、千夏の番……」
ユキ「私が千夏をイかせたから……次、千夏が……」
千夏「また張り倒されたいの?」
ユキ「いいよ……千夏が望むなら」
千夏「……じゃあ、私の好きにする」
千夏「消えろ」
私はドアを開き、部屋から出た

377 :1:2008/08/24(日) 09:43:31.38 ID:BxJLt4h80
もうひとつ、行く所があった。
その部屋の前に立ち、ノックした。
秋穂「はい?」
千夏「二ノ宮? 佐倉木だけど」
秋穂「佐倉木先輩? ちょっとお待ちください……」
カチャ、とドアが開いた。
出てきた二ノ宮は、いつもの胡散臭い笑顔を浮かべていたのが、表情を強張らせた。秋穂「……どうされたんですか、先輩?」
千夏「二ノ宮……頼みがあるんだ……」
秋穂「……上がってください。今、お茶をお出しします」
千夏「ここでいい……お茶なんかいらないから……!」
部屋の中に引っ込みかける二ノ宮に、手を伸ばす。
たった今、人ひとり殴り倒した手で、彼女の肩を掴んだ。
秋穂「……佐倉木先輩?」
千夏「……佐倉木千夏は……」
千夏「佐倉木千夏は……川瀬ユキと、淫らな行為を行った……」
声が掠れる。
でも、二ノ宮には十二分聞こえているだろう。
千夏「今なら、色々と跡があると思うから」
千夏「このこと……先生とかシスターに話して……」
千夏「お前なら上手くやれると思う……そして、私と川瀬を、この学院から除名させて」
秋穂「……佐倉木先輩……何があったんです?」
千夏「二ノ宮は、それだけをやってくれればいい」
千夏「春菜のこと……頼む」
突き飛ばすようにして、秋穂から手を離し、
私はドアを閉じた。

378 :1:2008/08/24(日) 09:44:04.83 ID:BxJLt4h80
聖マリエル女学院・裏門。
日当りも悪く、大きな通りにも面してないから、朝の通学時間とかはともかく、いつもはあまり人気がない。
誰にも見られず、見送られることもなく、その裏門をくぐり、
一度だけ、振り返った。
……

379 :1:2008/08/24(日) 09:44:36.80 ID:BxJLt4h80
色々あった、私の学び舎。
……
ここに来ることは、もうない。
……
もし来ることがあったとしても、その時には、聖マリエル女学院の普通の生徒、という形じゃないだろう。
……
思い出にひたり始める前に、背を向けて歩き出した。
思い出には、いつも春菜が関わっている。
彼女を思う資格は、私にはもうない。
だから私は、何も思い出せない。
……
思うことすら、
許されない。
多分。
これが運命だったんだろう。

380 :1:2008/08/24(日) 09:45:21.56 ID:BxJLt4h80






















……長谷川が呼んでいるような気がした。
答える声も、もうない。


7日目終わり

381 :1:2008/08/24(日) 09:46:36.81 ID:BxJLt4h80


私の時間は止まった。
でも朝は来る。
来なくても良かったのだけど、
どっちにしたって私にはもう関係がない。
やるべきことをやって、物事を終わりにして、それで人生が終わるものなら楽で簡単なんだけど、
面倒くさいことに、こうして私は今も、息をして、
平和でけだるいベッドの温もりの中で、生きている。
私はあと、何年生きていられるんだろう。
今の日本人の平均寿命って、何歳だったっけ?
はっきり言って、邪魔なんだけどな。
……だったら自分で終わらせちゃえばいいって話になるけれど、
それすらできない私という人間は、どうしようもないってことなんだろう。
……

382 :1:2008/08/24(日) 09:47:29.27 ID:BxJLt4h80
川瀬ユキに触れられた時に感じたものは、間違いなかった。
川瀬ユキと同類の私は、今、腐っている。
エロくてエッチでいやらしい私は、
こうやって今、体を腐らせているんだ。
幸いなことに、今なら、
今なら、心が止まっている。
体が離れた魂も、あの子の元には行こうとはしないだろう。
あの子が怖がることはない。
そして、あの子には、二ノ宮がいる。
あいつなら、これから何があっても、彼女を守れるから。もっと巧妙に、もっと上手に、もっと確かに。
……良かった。
この世に、私が思い残すことは何もなさそうだ。
私は微笑み、目を閉じて、
柔らかくてあったかい、閉じた世界の中に自分を委ねた。

383 :1:2008/08/24(日) 09:48:18.58 ID:BxJLt4h80
緩やかな滅び。私の死。
千夏(神様、心からあなたにお願いいたします)
千夏(私を救わないで。私がいたという痕跡さえも、どうかこの世には残さないで)
千夏(この心も、体も、私はもう望みません)
千夏(今日明日は無理だとしても、私はいつか必ず、自分でこの世から消えます)
千夏(……もし、私に与えられるはずの恩寵が、あったとしたら)
千夏(それは、あの子にあげてください)
千夏(あの子は苦しんだんです。だから、誰よりも幸せにならなければならないんです)
千夏(私はもう、あの子を愛することはできないから……)
千夏(あの子にご加護を。あの子に幸いと祝福を授けてください)
千夏(……アーメン)

384 :1:2008/08/24(日) 09:48:53.91 ID:BxJLt4h80
携帯電話が鳴った。
ついに来たかな?
放校処分の電話。
千夏(……学校への呼び出しくらいはあるだろうね)
少し緊張して、胸をドキドキさせながら(私の心臓ってまだ動いているんだ……)携帯を取ると、
液晶に映っているのは090ナンバー、柳瀬からだった。
千夏(? 何だろう?)
千夏「もしもし?」
ひろみ「あ、佐倉木さん?」
ひろみ「学校休むなんてどうしたの? どこか具合悪い?」
……クラスメイトへの、ごくごく普通の呼びかけ。
当たり前の気遣いと、その他色々。
千夏「ああ、ごめんね。ちょっと……体の具合が……ね」

385 :1:2008/08/24(日) 09:49:26.41 ID:BxJLt4h80
体。
腐ってます。腐っていく途中です。
ひろみ「珍しいね。佐倉木さん、体誰よりも鍛えてるのに」
ひろみ「……あ、部活とかで、どっかケガしちゃった?」
千夏「うん……まあ、そんなとこ。体、ケガしちゃった」
ケガした。けがした。汚した。
千夏(私……体、汚しちゃった……)
千夏「ねえ……あの子、どうしてる?」
ひろみ「? あの子って?」
千夏「……春菜」
……私の口にその名を上らせることさえも、
あの子を汚してしまいそうで……
ひろみ「……朝から、全然元気ないよ」
ひろみ「やっぱり……また何かあったのね?」
千夏「うん……ちょっと、ケンカ、したかも……」
ひろみ「ケンカ?」
ひろみ「それ、本当にケンカなの?」
千夏「ケンカよりも、ちょっと大変かも……」
……
私のこと、知らないのかな?

386 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 09:49:49.78 ID:sxXF0Ezr0
やぁおはよう。
君達には一生結婚できない呪いをかけた。
呪いをかけるまでも無い?ハハハハ。
呪いを解いて欲しかったら、
このスレに
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anime2/1219228961

ID:ns1lc3oNはしぬべき

と書き込むだけでいいんだ。簡単だろう? 童貞共。



387 :1:2008/08/24(日) 09:50:02.78 ID:kIrHs7xb0
千夏「ところでさ……転校生はどうしてる?」
ひろみ「転校生? えっと……川瀬さん、だったっけ?」
千夏「うん」
ひろみ「あの子なら、学校来てないよ?」
ひろみ「また転校したみたい」
……え?
千夏「ちょっと待ってよ……あいつ、先週入ってきたばっかりでしょ?」
ひろみ「親の都合だってさ……もともと、ここには長くいる予定じゃなかったみたい」
ひろみ「一時的なもので、卒業式までにいるかどうかって話だったらしいよ」
……転校。
もともと、長くいる予定じゃなかった……
卒業式まで、いるかどうか……

388 :1:2008/08/24(日) 09:51:14.37 ID:kIrHs7xb0
千夏「……ぷっ……」
千夏「……っくっくっくっ……」
ひろみ「佐倉木さん?」
千夏「ふっ……ふはっ、ふははははっ……」
ひろみ「佐倉木さん、ちょっと、どうしたの!?」
千夏「あははははははははははははははははは!」
転校だって?! 長くいる予定じゃなかったって!?
卒業式までいるかどうか?!
千夏(そんな……そんなヤツなんかの為に……!)
千夏(春菜は、苦しんで……!)
千夏(私は、私はわざわざ私を差し出して! 抱かれて!)
千夏(春菜に、それ、見られて! あの子を裏切って! 学校追い出されて……!)
バカだ! 本当にバカだ、私は!
神様なんかに祈らなくたって、到底救いようのないバカだ!
こんなバカは死んだって治らない! でもむしろ死んだ方がいい!
生きてる価値なんてカケラもない!
絶望!? ひょっとして、私酔ってた!? 悲劇のヒロイン気取って!?
そんなことだって知ってたら、そんなことだって分かってたら……!
最初から知ってたら……知ってたら……!
千夏(私も……! 春菜も……!)
千夏(誰も……苦しまずに済んだ……!)
ひろみ「佐倉木さん!? ちょっと、聞いてる?! 佐倉木さん!?」

389 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 09:52:03.67 ID:PNuOPy9T0
なんでVIPでやるんだよカス

390 :1:2008/08/24(日) 09:52:26.00 ID:kIrHs7xb0
私は、笑い続けた。
何てバカ。何て滑稽。
全く意味のない一人相撲。
私はひとりで勝手に悩んで、苦しんで、
全て、失った……!
千夏「……ふふふっ……ごめん、柳瀬……」
千夏「あんまり、面白すぎてさ……ふふっ……」
ひろみ「何があったの、ねえ!? ねえってば!」
千夏「直に、分かると思うけどさ……ふふふっ……」
千夏「私、学校退学になるのよ……」
ひろみ「……え?」
千夏「淫らな行為を行ったから……転校してっちゃった、川瀬ユキ相手に」
千夏「先生とかにはもう知られてるはずだよ?」
ひろみ「……」

391 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 09:52:40.99 ID:PNuOPy9T0
勺儲摺醴霾醴髏蠶蠶鸛躔か                    ベ∃壮鎧醴蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶
勺儲靄靄醴醴醴蠶體酌偵Auru山∴          ベヨ迢鋸醴蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶
∃儲霾ヲ露繍蠶髏騾臥猶鬱h  ご笵此∴        ∃f謳廱躔騾蔑薺薺體髏蠶蠶蠶蠶蠶蠶
ヨ儲諸隴躇醴蠶歎勺尓俎赴        レ      ∴f醴蠶鬪にに     躇躇醴蠶蠶蠶蠶蠶
ヨ鐘諸薩讒蠢欟厂  ベ状抃   【●】 厂      ヨ繍蠶蠶臥に        躇蠶蠶蠶蠶蠶蠶
f罐諸醴蠶蠶歎      マシ‥…ヲ冖ヘ      .∴瀦醴蠶襲j         躇蠶蠶蠶蠶蠶蠶
加罐讒蠶蠶欟厂      f ヘffヘ       ∴f醴醴蠶甑        【●】に  蠶蠶蠶蠶蠶蠶
溷霾醴蠶蠶勸      f  ヘヘ  f       ∴ヨ繍醴蠶蠶鬮に に  庇蠶蠶∴蠶蠶蠶蠶蠶蠶
醴蠶蠶蠶蠶髟      f       f       ベ湖醴醴蠶蠶蠶庇 にに庇蠶蠶蠶.∴蠶蠶蠶蠶蠶蠶
蠶蠶蠶蠶欟      f        f         f繍蠶蠶蠶蠶蠶曲ffffffにf蠶蠶蠶蠶蠶
蠶蠶蠶蠶歉     f      ヲ 澁畄_迢艪蠶蠶蠶蠶蠶蠶甜川ff∴ ∴∴ff髏蠶蠶蠶蠶
蠶蠶蠶蠶髟      f     ヲ  コ醴蠶奴繍蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶齡辷f    ∴ff醴蠶蠶蠶蠶
蠶蠶蠶鬮か                .ベ苛ザベ繍蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶醯己に⊇三介ff醴蠶蠶蠶蠶蠶
蠶蠶髏鬮シ      f                 尽慵蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶自辷f躇f鐘f躇蠶蠶蠶蠶蠶
蠶蠶醴勸      f                    氾隅髏蠶蠶蠶蠶蠶靦ff雄躍躇f蠶蠶蠶蠶蠶蠶
蠶蠶醴訃      f              ∴∴∴沿滋溷醴髏蠶髏髏韲譴f醴蠶蠶f蠶蠶蠶蠶蠶蠶
蠶蠶蠶髟      f      _山辷ムf蠡舐鑓躍醯罎體體體驩讎櫑f蠶蠶蠶f蠶蠶蠶蠶蠶蠶
蠶蠶蠶a      f    f躍蠶蠶J蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶醯註珀雄醴醴f蠶蠶蠶曲蠶蠶蠶蠶蠶蠶
蠶蠶蠶廴      ヲ  f醴蠶欟閇憊體醴蠶蠶蠶蠶蠶蠶靦錐讒醴蠶曲蠶蠶蠶曲蠶蠶蠶蠶蠶蠶
蠶蠶欟シ       ヲ  禰蠶蠶蠢螽螽f醴蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶躍蠶蠶蠶曲蠶蠶蠶曲蠶蠶蠶蠶蠶蠶
蠶蠶監シ          ∵ヴ門夢曠髏蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶曲蠶蠶蠶曲蠶蠶蠶蠶蠶蠶
蠶蠶蠶a     ヲ         ∴シ∃愬嚶髏蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶f蠶蠶蠶躇蠶蠶蠶蠶蠶蠶
蠶蠶蠶診      ヲ     ベ沿u旦以迢u讒醴髏曠醴蠶蠶蠶蠶蠶蠶f蠶蠶蠶躇髏蠶蠶蠶蠶蠶
蠶蠶蠶甑シ    ヲ       .げ隅艪蠶蠶蠶蠶蠶蠢J蠶髏蠶蠶蠶蠶蠶f蠶蠶蠶躇蠶蠶蠶蠶蠶蠶
蠶蠶蠶鬮ヒ               ベ状隅髏蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶曲蠶蠶蠶躇蠶蠶蠶蠶蠶蠶
蠶蠶蠶蠢テ∴              ベ川捍軆髏蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶曲蠶蠶蠶躇蠶蠶蠶蠶蠶蠶
蠶蠶蠶蠶ルシ              ∴∃氾据醴蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶躇蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶
蠶蠶蠶蠶蠢此            ∴⊇以f繙醴蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶躇蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶
蠶蠶蠶蠶蠶ル∠∴  .∴∴∠ヨ旦滋躍蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶躇蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶
蠶蠶蠶蠶蠶蠶醢山ム沿当u錙躍蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶躇蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶

392 :1:2008/08/24(日) 09:53:05.24 ID:kIrHs7xb0
電話機の向こう、柳瀬は黙り込んでいた。
ごめんね、柳瀬。いっつも予想の斜め上行っちゃってて。
好きな人襲っちゃいましたとか、好きでもない人とやっちゃいましたとか、学校追い出されちゃいますとか、そんな話ばっかりで。
私ね、バカなの。本当にバカなの。
救いようがないくらいに、頭が悪いの。
電話の向こう、チャイムが鳴っている
千夏「ほら、授業始まるよ、柳瀬」
ひろみ「……」
千夏「柳瀬?」
ひろみ「……」
千夏「柳瀬、聞こえてる? もしもし?」
ひろみ「言われなくったって……」
ひろみ「言われなくったって聞こえているわよ……!」
声が震えている。
千夏「そう、良かった。じゃあ、早く授業に……」
ひろみ「そっちじゃないっ! 聞こえているのはあなたの声っ!」
柳瀬が、腹の底から怒鳴りつけてきて、私は耳から携帯を離さなければならなかった。
何怒ってんだろ?
ひろみ「もしもし! 人の話聞いてるッ!? もしもし!」
千夏「こっちも聞こえてるよ……そんな怒鳴らなくったって……」
ひろみ「怒鳴るようなことしてるからでしょっ、このバカっ!」
柳瀬の声の後ろ、ぱたぱたと駆けていく足音。「早く教室戻らないと」「授業始まっちゃう」という女の子達の声。
ひろみ「ちょっと、待ってて」
数秒ほど、間。

393 :1:2008/08/24(日) 09:53:36.86 ID:kIrHs7xb0
再び、声。
ひろみ「ちょっと待ってて、電話このままで……!」
ひろみ「いい? 今この電話切ったりしたら許さないからね! 待っててね!」
足音。上履きが、廊下を蹴っていく音が鳴っている。
鳴り続けている。
柳瀬が走っているのだ。
何のために?
私との電話、つなぎっぱなしにして、何のために?
足音の響きが変わる。
階段を下りて、また廊下を走って。
ドアの開く音。
エコーと反響音。
……トイレに入った?
ひろみ「……もしもし、お待たせ」
ひろみ「聞こえてる?」
千夏「うん……聞こえてる」
ひろみ「告解して」
千夏「え?」
ひろみ「聞こえなかった? 告解して。今までにあったこと全部、洗いざらい」
千夏「でも、柳瀬、授業……」
ひろみ「あなたの方が大事! 授業なんていくらだって取り戻せる!」
ひろみ「レポートだろうが反省文だろうが、あなたのためなら何百枚だってやってあげる!」
ひろみ「だから吐きなさい! 何があったの?!」
千夏「……長くなるよ」
ひろみ「心配ないわ……時間いくらでもあるもの」
……

394 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 09:53:50.13 ID:PNuOPy9T0
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395 :1:2008/08/24(日) 09:54:11.38 ID:kIrHs7xb0
私は、
今までにあったことを話した。
私が春菜を好きで、彼女を襲って、
後輩が仕組んで、保健室で逆に春菜に襲われて、愛されて、
その現場を転校生に見られたらしくて、弱み握られて、
私は自分を差し出さなくちゃならなくなって、
逆にそれをネタにして、私もろとも転校生を学校から消そうと思って、
私はすっかりエッチに溺れちゃって、その現場を春菜が見て、
私が転校生とのこと、信頼できる別な後輩に話して、密告するように頼んで、
そして……
千夏「……だから、もう大丈夫だって……」
ひろみ「……何が?」
相槌を打つ柳瀬。
ただ、その相槌が震えていて、怒気を抑えているのが分かる。
柳瀬が、怒っている。
こんな柳瀬、知らない。
つきあいが長いから、ちょっとムッとしたりヘソ曲げたりしてるのは何度か見たことあるけれど、そんなものじゃない。
千夏「私がいなくなっても、春菜はもう、大丈夫だって……」
ひろみ「そう……大丈夫なんだ……」
ひろみ「あなた、それ、本気で思ってる?」
千夏「そりゃあ……もちろん」
ひろみ「……バカ」
千夏「知ってるよ、もう……」
ひろみ「分かってないよ、バカ……あなたがいなくなって、大丈夫なわけないでしょう?」
ひろみ「あのね、あなたが友原さんを好きなのはよく分かったけど、世界には友原さんしかいないわけじゃないんだよ?」
ひろみ「あなたがいなくなったら、心配してるわたしはどうなるの? あなたを慕ってる後輩さんは?」
ひろみ「あなたの友達は? 陸上部の後輩は? あなたの家族は?」
ひろみ「あなたを知ってる人、あなたのことをほんの少しでも好きな人、あなたがほんの少しでも好きな人は?」
ひろみ「あなたにそんな権利あるの? それだけの人間傷つけて、後悔させて、ずっと苦しめていいくらいに佐倉木千夏は偉い人なの?」
……

396 :1:2008/08/24(日) 09:54:42.96 ID:kIrHs7xb0
千夏「そんな……だって、春菜が……」
ひろみ「好きな人を言い訳に使うなっ!」
柳瀬が言い放った。
ひろみ「悩むなとか、へコむなとか、落ち込むなとか、そんなこと言う気はないけど……!」
ひろみ「わたし、言ったよね、自分がひとりだなんてことだけは絶対思わないでって」
ひろみ「なのに、何であなたはひとりになろうとするの!? わたしはあなたの力になっちゃダメなの? あなたが春菜さんのことで悩んだりするみたいに、友達のことで一緒に悩んだり、困ったり、考えたりしちゃいけないの!?」
ひろみ「私たちは、あなたを助けちゃいけないの!?」
……勝手なことを……
話聞いただけのくせに……! 話聞いただけで、何も知らないくせに……!
千夏「欲しくなんかない……! お前に助けてなんか欲しくない!」
千夏「誰も私を助けることなんか……!」
ひろみ「そんなの、あなたが決めることじゃないっ!」
ひろみ「あなたにはもう、絶望する権利も資格もない!」
ひろみ「ひとりで勝手に落ち込んで、ひとりで消えてくなんて絶対許さない! 私が許さない!」
……その時、授業終了のチャイムが鳴った。
ひろみ「……今朝も、さっきの休み時間も、掲示板とかには何も貼ってなかったけど……」
ひろみ「このこと知ってるのって……わたしと、あと、二ノ宮さん、っていう1コ下の子だけだね?」
千夏「うん……全部、知ってるのは」
ひろみ「あなたのこと、しばらく私に預けて……」
千夏「……預ける? どういうこと?」
ひろみ「しばらく大人しくしてて、ってこと……いい? 早まったりなんかしないでよ」
ひろみ「あなたは、あなただけのものじゃないんだから! 消えたりしたら、一生恨んで祟ってやる!」
電話が切れた。
……
私が私だけのものじゃない? そんなの分かってる。
だって、私はもう……もう……
……

397 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 09:55:01.04 ID:PNuOPy9T0
千夏「そんな……だって、春菜が……」
ひろみ「好きな人を言い訳に使うなっ!」
柳瀬が言い放った。
ひろみ「悩むなとか、へコむなとか、落ち込むなとか、そんなこと言う気はないけど……!」
ひろみ「わたし、言ったよね、自分がひとりだなんてことだけは絶対思わないでって」
ひろみ「なのに、何であなたはひとりになろうとするの!? わたしはあなたの力になっちゃダメなの? あなたが春菜さんのことで悩んだりするみたいに、友達のことで一緒に悩んだり、困ったり、考えたりしちゃいけないの!?」
ひろみ「私たちは、あなたを助けちゃいけないの!?」
……勝手なことを……
話聞いただけのくせに……! 話聞いただけで、何も知らないくせに……!
千夏「欲しくなんかない……! お前に助けてなんか欲しくない!」
千夏「誰も私を助けることなんか……!」
ひろみ「そんなの、あなたが決めることじゃないっ!」
ひろみ「あなたにはもう、絶望する権利も資格もない!」
ひろみ「ひとりで勝手に落ち込んで、ひとりで消えてくなんて絶対許さない! 私が許さない!」
……その時、授業終了のチャイムが鳴った。
ひろみ「……今朝も、さっきの休み時間も、掲示板とかには何も貼ってなかったけど……」
ひろみ「このこと知ってるのって……わたしと、あと、二ノ宮さん、っていう1コ下の子だけだね?」
千夏「うん……全部、知ってるのは」
ひろみ「あなたのこと、しばらく私に預けて……」
千夏「……預ける? どういうこと?」
ひろみ「しばらく大人しくしてて、ってこと……いい? 早まったりなんかしないでよ」
ひろみ「あなたは、あなただけのものじゃないんだから! 消えたりしたら、一生恨んで祟ってやる!」
電話が切れた。
……
私が私だけのものじゃない? そんなの分かってる。
だって、私はもう……もう……
……

398 :1:2008/08/24(日) 09:55:13.97 ID:kIrHs7xb0
何で、柳瀬はあんなに怒ったんだろう。
友達がひとりで苦しんでるのって、そんなに辛いことなのかな?
……
当たり前じゃないか。
それがどんな歯がゆくて悔しい事か、私自身がよく知っていたじゃないか。
春菜が、あいつに脅されて、
「心配ないよ」なんて下手な嘘ついた時、どんなに辛かったか。
一言でも「助けて」って言ってくれれば、あいつに直談判して、話つけてやったのに。
口で通じないなら、力ずくでだって……あまりに失礼で、言うこと聞かない後輩への体罰は、陸上部でも決して珍しいものじゃなかったし。
長谷川の頭だって、今までに何度ひっぱたいたことか……
……
バカ、だったなあ、私は。
本当に考えなしだった。
……
そんな私に、柳瀬は怒っている。
けど、言えば、あなたは助けてくれた?
一緒に悩んで、困って、それだけだったかも知れないんじゃない?
……
そうだね。
それだけでも、きっと私は救われていた。
私のことを知って、困って、ただそれだけだったとしても。
きっと私は、支えられていた。
泣いて、嘆いて、叫んで……それでも今ごろ、こんな風に自分の家の中でうずくまってたりなんてしていなかった。

399 :1:2008/08/24(日) 09:55:56.44 ID:kIrHs7xb0
千夏(ごめん……柳瀬)
今更、何がどう変わるかなんても思えないけど、
柳瀬が何するつもりなのか、何が出来るかも分からないけど、
ひろみ(あなたにはもう、絶望する権利も資格もない!)
ひろみ(ひとりで勝手に落ち込んで、ひとりで消えてくなんて絶対許さない! 私が許さない!)
今は、あなたに私を預けてみたい。
ホント、勝手なこと言ってくれちゃって……
私が何に絶望しようと自由じゃないか……
……
千夏(分かったよ、柳瀬……)
千夏(私、何もかも失っても……)
千夏(あなたのために生きてみる)
……私は卑怯かも知れない。
拠り所を、春菜から友達に鞍替えして。
……
考えるのは止めよう。
今の私は、柳瀬のものだから。
体も、心も、あなたの思うままに。

400 :1:2008/08/24(日) 09:57:07.99 ID:kIrHs7xb0
10分もたたない内に、また携帯電話が鳴った。
090ナンバー。柳瀬から。
千夏「もしもし」
すぐ取って、呼びかけると、
ひろみ「……はあっ……ひっく……さ……さくらぎ……さん……」
柳瀬……
千夏(泣いてるの?)
ひろみ「……ぐすっ……はっ……ひぃっ……あの……あのね……」
ひろみ「……に、にの……み……さん……ね……」
千夏「もしもし? 柳瀬?」
ひろみ「……せんせ……って……ない……」
……しゃくり上げた声と、弾んだ息とで、何言ってるかさっぱり分からない。
千夏「柳瀬、落ち着いてよ」
こういう台詞は、私が言うべきじゃないのは分かるけれども。
千夏「どうしたの、柳瀬?」
ひろみ「どうしたの……って……あなたの……」
ひろみ「にのみやさん……先生に、言ってない……って。何も話してない……」
ひろみ「これからも……話す気……ない……って」
……柳瀬。
ひろみ「……もし、話進んでたらさ……職員室に怒鳴り込んでやろうか……なんて思ってたけど……」
ひろみ「そこまで……やらなくて……良かった……」
私の為に……
千夏「どうして……そこまで……」

401 :1:2008/08/24(日) 09:58:05.23 ID:q//FIMHf0
答えなんか分かってるけど、
言葉で聞きたくて、
ちょっとだけ、甘えてしまう。
ひろみ「友達だもの……当たり前でしょ……!」
放校や除名がない、ということなんかじゃなくて、
……私の為に、怒って、走って、泣いて、喜んでくれる人がいる。
ただ、友達だっていうだけで。
そのことが、
そのことが、何て、嬉しい……
千夏「……ごめん……柳瀬」
ひろみ「何で謝るのよ……バカ……」
千夏「だって……ぐすっ……だって……」
……救い。
私は望んでなかったのに、柳瀬が私を救ってくれた。
だから、私は生きていける。そう思う。
明日も、明後日も、その先もずっと、生きていける……!
ひろみ「明日……卒業式だからね……ちゃんと来るんだよ?」
千夏「……うん……行くよ、ちゃんと。学校に行く」
……(お電話、よろしいですか?)
電話が変わる時特有の、一瞬空気が抜けるような音がした。
秋穂「もしもし。佐倉木先輩ですか?」
穏やかで静かな声……

402 :1:2008/08/24(日) 09:58:38.87 ID:q//FIMHf0
千夏「二ノ宮……どうして?」
秋穂「どうしたも何も……最後の授業が終わったら、柳瀬先輩が教室に飛び込んできて、私を中庭に連れ出したんです」
柳瀬……結構突っ走るタイプなんだね。
秋穂「人から本当に泣いて頼みごとをされるなんて、初めてでした」
秋穂「……事情は柳瀬さんが今おっしゃった通りです。佐倉木先輩は、これからもずっとマリエル女学院の生徒です」
千夏「どうして?」
秋穂「……質問ばかりなんですね、佐倉木先輩」
千夏「だって、分からないもの……私をかばったの?」
秋穂「あなたに何かあれば、友原先輩が悲しみます」
千夏「私いなくなれば……私だって、お前に頼むって……」
私よりも、お前の方が頭良くて、強くて……
秋穂「ですから、頼まれた通りのことをしています。友原先輩に、一番必要なことを」
秋穂「あの人は、あなたを愛していますから」
千夏「え……」
秋穂「友原春菜は、佐倉木千夏がいないとダメなんです」
秋穂「……そんなことも分からないんですか?」
……頭が整理できなかった。
私と川瀬のことは、結局二ノ宮の胸の中に収まっている。
それを確かめるために、柳瀬が二ノ宮にそのこと聞き出して、大泣きしている。
……そこまでは分かる。
けど、春菜が私を愛している、なんて。

403 :1:2008/08/24(日) 09:59:26.77 ID:q//FIMHf0
春菜(……私、チイちゃんのことが好きだよ)
春菜はそう言っていたけど……確かにそう言ったけど。
……
頭を横に振った。
千夏「無理だよ、私は。春菜の側にはいられない」
秋穂「佐倉木先輩……それでは、友原先輩は……」
千夏「詳しく言ってなかったっけね。私、川瀬としてるの、春菜に見られちゃったんだ」
秋穂「え……」
息を飲む気配。こいつが驚くなんて滅多にないことだ。
……顔見たかったな。
千夏「わたし、言ったの。川瀬にイかせて欲しくて、好きですって。あなたのものになりますって」
千夏「神様にもそう誓った」
千夏「……そんな人間が、好きな人の側にいていいと思う?」
秋穂「でも……それは……」
千夏「私ならイヤだよ。ちょっとエッチの上手い人が出てきたら、すぐにまたその人の所に行っちゃうでしょ? 信じられないよ」
千夏「私は……そういう人間なんだよ。エッチが好きっていうのは、そういうこと」
秋穂「佐倉木……先輩……」
千夏「オナニーって、したことある?」
千夏「気持ちよくなりたいだけなら、ひとりでだって十分なんだ」
千夏「好きな人さえ、いらない」
千夏「ううん、違う……好きっていう想いさえ、いらない」
エッチについて告白するたびに、
自分の何かが削ぎ落とされていく感じがする。
そして、こんな恥ずかしい告白を、
気付けば私は微笑みながら口にしていた。

404 :1:2008/08/24(日) 10:00:14.13 ID:q//FIMHf0
佐倉木千夏は、Hなことが大好き。
そのことを、やっと受け入れられた気がする。
これからきっと、私はもうちょっと楽に生きていけるだろう。
そう……生きていく。もう死にたいなんて思わない。
こんな私でも、私の為に怒ったり、泣いたりしてくれる人がいるって分かったから。
こんな私に、好きな人の側にいろって、訴えてくれる人がいるって分かったから。
秋穂「……福音書。マタイによる福音書、第5章を覚えてらっしゃいますか?」
千夏「知ってるよ。よく知ってる」
千夏「姦淫するなってヤツでしょ?」
秋穂「違います」

405 :1:2008/08/24(日) 10:02:14.14 ID:q//FIMHf0
間を置いてから、二ノ宮は厳かな口調で語り出す。
秋穂「『しかし、わたしは言っておく。一切誓いを立ててはならない』」
秋穂「『天にかけて誓ってはならない。そこは神の玉座である』」
秋穂「『地にかけて誓ってはならない。そこは神の足台である』」
秋穂「『あなたがたは、『然り、然り』『否、否』と言いなさい。それ以上のことは、悪い者から出るのである』」
秋穂「……ですから、その誓いは無効です。何も意味を持ちません」
千夏「意味ならあるよ。やっちゃいけないことをした」
千夏「それは罪だよ。しかも、一番許されない」
秋穂「春菜先輩は許してくださいます。絶対許して……」
千夏「私が許せないんだよ、私自身を」
千夏「生きてくことは許せても、あの子の側にはいちゃいけない」
秋穂「……あなたはそれでいいんですか?」
千夏「そうでなきゃいけないよ」
秋穂「どうあるべきか、なんて訊いてません。あなたはどうしたいかを訊いているんです」
千夏「どうあるべきか、っていうのも私の望みだよ」
欲望だけが人の本性じゃない。そう信じたい。
秋穂「……それではかわいそうですよ。あなたも、春菜先輩も……」
千夏「春菜には、あなたがいる」
……この想いも、私の望み。間違いなく、私の望み。
千夏「……サンキュ、二ノ宮」
千夏「お前がそこまで言ってくれるなんてことも、思ってなかった」
千夏「本当に、ありがとう」
秋穂「あなたのためじゃありません。春菜先輩のためです」
千夏「……知ってるよ」

406 :1:2008/08/24(日) 10:03:19.44 ID:q//FIMHf0
電話が切れた後、ベッドに寝転がった。
シーツの上に投げ出した手には、わたしの携帯がまだ握られていた。
閉じこもってるバカな私と、外とをつなげてくれたもの。
救いをもたらした、か細いけれども確かな道筋。
……人を好きになれる。
体を求めなくても。触れることを求めなくても。
たった今、言葉だけを交わしただけで、私はこんなにも幸せになれる。
……いつか。
いつか、春菜ともこういう風になれるのだろうか。
時間をかければ、また友達に戻れるのかな?
……これも、私が望んでいたことだ。
やましさも、後ろめたさもなしに、あの子を見つめ、あの子に笑い、
時には……いや、しばしばおバカで間が抜けてるあの子を叱り付けて、それでも、一緒にいるだけで、満ち足りれば、なんて。
やっと……望みが、叶う。
千夏(やっと……終わるんだ)
長かったな。
やっと私、春菜と友達になれるんだ。
……
友達と私とをつないだ携帯電話。
それを握っている私の手。
それは……春菜に触れた手で、春菜に触れられた手だ。
「好き」という想いとともに、つかまえて離す事のなかった手だ。
感触を思い出した。
思い出すと、幸せすぎて涙が出てきた。
手だけじゃなくて、あの子は私の身体中に触れてくれた。
恥ずかしいところ、汚れちゃってるところ、
最初は自分が嫌がったくせに、その後は嫌がる私を押さえつけてまでして、いっぱい愛してくれた。
気持ち良くて、それが嬉しくて、「好き」って思われてることが、心に直接届くみたいで……

407 :1:2008/08/24(日) 10:03:58.81 ID:q//FIMHf0
ユキ(私の事、好き?)
……
ユキ(ね、どう? 気持ちイイ?)
ユキ(どう? いいんでしょ?)
……気持ち良いけど、それだけだ。
あいつには触れたくなかったし、触れてほしくなかったし、
でも、そんな気持ちが意味のないことも、よく知っている。
……投げ出された手。携帯を持っている手。
この手が今、本当に触れたいもの……
千夏(春菜……)
千夏(あなたに……触れたい)
もし、もし今でも、ほんの少しでも私のことが好きなら……
今すぐここに居て欲しい。
エッチなんてしなくていい。抱っこもキスもいらない。
押さえつけていた願いと衝動が、胸の中で湧き上がる。
一番最後に触れたのがアイツなんてイヤ。絶対イヤ。
修学旅行の時みたいに、私と手をつないで欲しい。ほんの数分、数秒でもいいから。それで私は満ち足りる。
……望むな。願うな。
自分の分をわきまえろ。罪人たるを思い知れ。
あるべき姿も、立場でさえも、私はよく知り、望んでいたのに。それは確かに、私の心からの望みなのに……
千夏(会いたい……会いたい……春菜!)
……望むな!
耐えなきゃ。耐えつづけていればいつかは慣れるから。
罪には、罰が与えられなきゃ。罰されることで、罪は償われるはずだもの。
……償い?
できるの、そんなこと? 
できたとしても、その後何が残るの?
私から、春菜がなくなったら、何が残るの?

408 :1:2008/08/24(日) 10:04:41.11 ID:q//FIMHf0
また携帯が鳴った。
千夏(……今日はモテるな)
千夏「もしもし?」
槇「ハァイ。お元気かしら?」
……
千夏「何でお前が電話してるんだ?」
槇「あら、学校休んだクラスメイト、気になっちゃいけないの?」
千夏「……心配してくれたんだ」
千夏「ありがと。一応、礼は言っとく」
まあ、今は。
気遣いってのが、とても嬉しい気分だから。
槇「素直でイイ子ね」
ユキ(いい子ね……じゃあ……)
フラッシュバック。
千夏「悪いけど、その言い方やめてくれないかな?」
千夏「腹立つから。すごく」
槇「そう……ごめんなさいね」
千夏「……あっさり引き下がるんだな」
槇「どうして、って訊いて欲しい?」
千夏「……いや、いい」
槇「じゃあ訊かない」
……こいつでも、こういう気の使い方するんだ。
千夏「明日はちゃんと学校出るよ。卒業式にもちゃんと出る」
千夏「だから、心配はしなくていいから」
槇「……そう。半分は安心した」
槇「そっちの心配はいらないみたいね」
千夏「残りの半分は?」
槇「……春菜さんの事」

409 :1:2008/08/24(日) 10:05:30.53 ID:q//FIMHf0
……だろうね。
っていうか、そっちが本題だろ?
千夏「それは……そっちの方は、早坂の心配することじゃないよ」
槇「知ってる。あなたと春菜さんの問題だもの。首突っ込んで、変に話ややこしくしたくないから」
千夏「そういうこと。気にしてくれた気持ちだけは、嬉しいから」
これは本当。嬉しさで胸がいっぱい、というほどでもないけど。
槇「今日の佐倉木さんは素直でイイ……素直でよろしい」
千夏「いい子って言うな」
槇「ごめんなさいね……で、本題なんだけど」
本題? 
千夏「それ、今終わっただろ」
槇「違うのよ……春菜さんのお友達の話なの」
何、それ?
槇「何か、相談を持ちかけられたみたいで。それが結構深刻で、私の方に話が来たってわけ」
槇「でも、私もどうすればいいのかちょっと困っちゃって、あなたに相談しに電話をかけた」
槇「ここまでOK?」
……ずいぶんまわりくどいな。
千夏「OK。理解した」
槇「で、お話に登場するのは、3人。AさんとBさんとCさん」
槇「AさんとBさんは大の仲良し。そこにCさんが入ってきて、Aさんと仲良くなっちゃった」
槇「Bさんはそれを見てすっごいやきもち。そりゃそうよね、Aさん取られちゃったんだもん」

410 :1:2008/08/24(日) 10:06:10.17 ID:q//FIMHf0
……ふーん。
春菜のお友達の話、ねぇ……
千夏「で?」
槇「でも、Aさんにとっては、Cさんとの仲は不本意っぽかったみたい」
槇「ムッとしたBさんにはそれを分かって欲しかったけど、話せない事情があったらしいわね」
千夏「……Aさんは、Cに脅されていたんじゃないかな」
千夏「何か、ろくでもないことやっちゃったんだよ」
槇「そうね……でも、そのろくでもないこと聞いたら、やっぱりBさんはAさんのこと嫌いになるかしら?」
千夏「それはないな」
千夏「本気で怒るだろうけど、嫌いにだけは絶対ならない」
槇「そう思う?」
千夏「絶対だ」
槇「わたしもそう思う。……で、続きだけどね」
槇「その後、AさんとBさんは仲直りしたみたいなんだけど、今度はCさんがBさんと仲良くなっちゃったの。前みたいに、それをAさんが知ってしまった」
……!
槇「もちろん今回もきわめて不本意……みんな傷ついたでしょうね」
千夏「ああ……そうだろうね」
槇「で、ここまで聞いて思ったんだけどね……」
千夏「……」
槇「最初にAさんとBさんが仲直りした時と同じ事、もう一回やれば簡単なんじゃないかな、って」
槇「何やったかなんて分からないけど……佐倉木さんは、どう思う?」
私と春菜が、仲直りしたきっかけ……
……春菜が、私を保健室で……
いや、その前に、私が春菜を……
千夏(その前、って、どれのことかな……)
春菜の部屋で……いや、その前に教室で……
……もともとは、川瀬と春菜が……だったから……
……

411 :1:2008/08/24(日) 10:07:05.68 ID:NBIaAUaW0
あの時。川瀬の部屋で。
春菜が出て行きさえしなければ。
出て行けって、私が言いさえしなければ、「助けて、春菜」って言ってれば。
助けて、なんて。ずっと私はそう言いたかったのに。
槇「……もしもし?」
千夏「ああ……聞こえてるよ」
千夏「そうだね……そうすれば、話は簡単だったと思うよ」
私がそう言ったみたいに、そうしたみたいに。
春菜(チイちゃんは私のなの!)
春菜(チイちゃん…お願い……私のものになって)
……想像するだけでいくらでも幸せになりそう……。
失われたタイミングは、もう戻らないけど。
槇「でも、無理だったのかな、やっぱり?」
千夏「無理、だね。きっと。だって、春菜は……」
槇「春菜さん?」
千夏「いや、その……Aさんは、そんな事ができる子じゃ、ないと思うんだ」
槇「そんな事って、どんな事? 例えば?」
千夏「例えば……」
……あの時のことが、冷静に考えられるようになっている。
平静にとまではいかないけど、かなり、落ち着いて、客観的に。

412 :1:2008/08/24(日) 10:07:41.60 ID:NBIaAUaW0
千夏「例えば、Bの所に乗り込んで、『AはBのことが好き』、って言ったり、とか」
千夏「Aさんが、CとBが仲良くしてる現場から、Bのことを取り返したりしていれば……」
千夏「それができたなら、問題は、なかったんじゃない……かな……」
槇「そうよね……あなたもそう思うわよね」
千夏「まあ……ね。Cと仲良くした、Bが一番悪いんだけど」
槇「誰がいい悪い、ってだけの問題じゃないと思うけど?」
千夏「一番悪いのはCだよ」
槇「Cさんに付け入られたAさんは?」
千夏「そいつが一番悪い」
槇「一番悪いのはCさんじゃなかった? それともBさん?」
千夏「……全員が悪い」
槇「まあ、いいとか悪いとか言い出したらもうキリがないから、それちょっと置いて」
槇「なっちゃったものはしょうがない。大事なのは、これからどうするか」
これから、なんて……私たちにそんなもの……
槇「あなたもそう思わない?」
千夏「そりゃあそうだけど……」
でも、何をどうしろって……
槇「で、現在はAさんとBさんがまたケンカの最中。Bさんはすっかりヘコんじゃってるし、AさんはBさんと仲直りしたいのに、顔を合わせる事も出来ない」
槇「……どうなるのが幸せかしらね?」
千夏「……そりゃ、AさんとBさんが、仲直りすることだろうね」

413 :1:2008/08/24(日) 10:08:25.07 ID:NBIaAUaW0
それなら絵に描いたようなハッピーエンド。
……そうなるものなら苦労はしないよ。
槇「そうよね……ふたりはもともと仲良しだから、時間が解決してくれるって思う」
槇「でも、時間と一緒に、その仲も消えてしまうかも知れない」
槇「……Aさんは、それをすごく怖がってる」
千夏「……仕方……ないんじゃないかな」
槇「そう?」
千夏「だって……BはAを裏切って、Cと仲良くしちゃったんだろ?」
千夏「BがAとまた仲良くなった所で、Bはまた別な誰かと……」
槇「それは今後、Aさんが頑張ればいい話」
頑張るって……
千夏「何をだよ?」
槇「イ・ロ・イ・ロ」
千夏「だから何だって……」
槇「何考えてるの? 佐倉木さんのエッチ」
千夏「バ……! 私は別に……!」
槇「どんなことだって、努力は必要。人の付き合いだってそう」
槇「もうひとつ。BさんはCさんとのことをすっごく後悔してると思うの」
槇「でも、後悔してるくらいなら……」
千夏「最初からやるな、って?」
分かってるよ、今更そんな事……

414 :1:2008/08/24(日) 10:09:02.31 ID:NBIaAUaW0
槇「違う。謝ればいいじゃない」
千夏「謝って済む話じゃ……!」
槇「済む話よ。AさんはBさんのことが好きなんだもの」
槇「本当に辛いことだったら、AさんとBさんとで分かち合えばいいじゃない。そうは思わない?」
千夏「……分かち……合う……」
槇「最初にAさんが問題抱えてた時も、Bさんはそうして欲しかったわよね。きっと」
千夏「それは……そう……だけど」
槇「佐倉木さん。仲がいいってことは、ただベタベタしてたりイチャイチャくっついてたり、ってだけじゃないと思うの」
槇「辛いことがあったら分かち合って、悩めばいい。ひょっとしたら、解決法が見付かるかもしれない」
槇「その誰かが、BさんにとってAさんであっちゃいけない理由は、どこにもないわ。気が済まないなら平手の一発でも打ってもらえばいいわ」
千夏「でも……Bは……Aのことを守りたくて……」
槇「人という字はどう書くんだっけ?」
槇「……なんてね」
……
槇「私ね、BさんとAさんのことよく知ってる」
槇「Aさんは間が抜けてて、頼りなくて、危なっかしくて」
千夏「忘れっぽくて隙だらけで、よく誰かにからかわれてるな」
槇「あら、何のこと?」
千夏「さあね、誰のことだろうな」
槇「まあいいわ……で、そんなAさんにBさんは、ずっとナイト気取りでくっついていた」

415 :1:2008/08/24(日) 10:09:38.27 ID:NBIaAUaW0
ナイト気取り……
千夏「……悪かったな」
槇「あら、誰のこと?」
千夏「別に……で?」
槇「それで、Bさんは思ってたのよね……自分がAさんを守らなきゃ、何とかしなきゃ、って」
槇「でも、AさんとBさんの関係も、そろそろもう1ステップ進むべきかも知れない」
千夏「……どういう意味?」
槇「守る守られるじゃなくて……支えあうの」
槇「守られてるお姫様だって、いつかはナイトの為に何かしたいって、思うようになるわ。負担になってるだけじゃ、お姫様もいたたまれないもの」
槇「だから、ナイトの方も、そろそろお姫様に甘えてあげて」
槇「押しつぶされそうな剣も鎧も、ひとまず置いて、お姫様の膝の上でお眠りなさいな。お姫様も安心するわ」
千夏「……でも、そのナイト、もう……」
槇「ちょっと派手な戦があって、返り血浴びただけ」
槇「お姫様を、何が何でも守りたかった……きっとそうよね?」
千夏「……うん」
槇「それとも、Bさんは、お姫様のAさんのことが嫌いかしら?」
……バカを言うな!
千夏「そんなことない!」
槇「でも、BさんはAさんと顔合わせたくないのよね?」
千夏「そりゃ……、でも嫌いなわけないっ! BはAを愛しているっ!」
槇「……じゃあ、話くらいはまず聞いてあげてね」
槇「AさんからBさんに、今日連絡があると思うの。電話が来ても、切ったりしちゃダメよ?」
槇「……そうBさんに伝えておいて欲しいんだけど。佐倉木さん、お願いできる?」

416 :1:2008/08/24(日) 10:10:18.59 ID:NBIaAUaW0
……何て。
……何て白々しい会話。
千夏「……分かってる。必ず伝えておく」
それに乗る、私も私だ……全く。
……
電話が切れた後、
(ぐぅ〜)
……そう言えば昨日の昼から何も食べてない……
千夏(何か食べよ……)
……
千夏(何でこんなに、気分が楽になってるんだろう?)
早坂のペースに、すっかり乗せられちゃったからかな?
千夏(何が春菜の友達の話だ……まるっきり私たちのことじゃないか)
千夏(春菜も春菜だ。よりによって、何であんなヤツに……)
……
春菜の方が、
私なんかよりも賢いな。
困った時は、ちゃんと人に相談してる。
無理して何でも背負い込もうとして、自爆しちゃってる私なんかよりも。
でもなぁ……
だったら最初の段階で、私に相談してよ……
……

417 :1:2008/08/24(日) 10:10:50.74 ID:NBIaAUaW0
ねえ。
今私、何思った?
(取り戻せる?)なんて思わなかった?
千夏(そう言えば私……)
千夏(昨日から、春菜の気持ち全然考えてなかった……)
春菜が私のことどう思っているのか……
余裕なくて、春菜に見られちゃったことで動転して……アイツと学校から消えるしかないって。
もう、それしかないって。
いや、動転するな、ってのは無理だけど。
……
春菜(……私、チイちゃんのことが好きだよ)
春菜……そう言ってた。
……私のしたことは、本当に、
「間違いだった」で済む話なのかな。 
「ごめんなさい、もうしません」「今後気をつけます」で済むような話なのかな。
千夏(春菜……)
信じていいの? 私、あなたを……
秋穂(……あなたはどうしたいかを訊いているんです)
どうしたいか、なんて、そんな事……
千夏(春菜に……会いたい……)
……
千夏「……ごちそうさま」
お茶漬けを食べ終わると、少しお腹が落ち着いた。
このタイミングでがっちり食べちゃうと、晩御飯が食べられなくなるから、ちょっと辛いけどセルフコントロール。
自分の部屋に戻って、窓を開けた。
昼下がりの空が、抜けるように青い。
風が吹いて、部屋の中にこもっていた空気が、外に出て行く。
お茶漬け一杯分の気力と体力が、体の中をめぐる。
よみがえる。
私が。

418 :1:2008/08/24(日) 10:12:17.33 ID:NBIaAUaW0
千夏(気持ちいいなぁ……)
この「気持ちいい」は、エッチのそれとは全然違う。
……春菜に、会いたい。
素直にそう思える自分がいる。
春菜に会って、今、私はとっても気持ちがいいって伝えたい。
千夏(ああ、でも……)
槇(AさんからBさんに、今日連絡があると思うの。電話が来ても、切ったりしちゃダメよ?)
……なら、待とう。
お姫様、お姫様。
ナイトは今、傷つき倒れ、あなたの助けを待っています。
お願いです、助けに来てください……
千夏(……役割、まるっきり逆じゃないか)
千夏(……まあいいか)

419 :1:2008/08/24(日) 10:12:50.87 ID:NBIaAUaW0
お姫様からの電話を待つ。
……なんて時に限って、間違い電話がかかってくる。しかも何回かは架空請求っぽかったりした。
その度に、テンションが音を立てて下がっていく。
しかも、いつまでたっても目当てからの電話は来ない。
気がつけば、夜も10時を回ろうとしていた。
……Aさん、昨日の今日のことだもの。Bさんに電話なんて、怖気づいちゃってるかな。
だったとしても、無理はないよ……
明日、直接顔を合わせて……そして……
そして、謝ろう。頭下げて、ごめんなさい、って。
そして、言おう。一緒にいて、って。もう離れたくないよ、って。
私はもう、あなたなしじゃ生きていけないから。
千夏(……っても、そのあなたからの電話が来ないんじゃなぁ……)
……仕方ないか。春菜だもの。
千夏(それでいいよ……無理はしなくて)
でも……ちょっとだけ、無理して欲しかったな。
ま、いいや。今日はあきらめよう。
明日になれば、会えるんだもの。それだけで充分じゃない……。
目を閉じて顔を上げ、込みあがりかけた切なさを飲み込み、深呼吸と一緒に吐き出した。
千夏「……ぷぅっ」

420 :1:2008/08/24(日) 10:13:21.98 ID:NBIaAUaW0
その時、携帯が鳴った。
取ると、見慣れない番号。
また、寄宿舎からの電話番号と違う……
千夏(また間違いかな……?)
千夏「……はい?」
春菜「あ、もしもし、佐倉木さんのお宅でしょうか?」
……顔をしかめた。
千夏「え……春菜……?」
春菜「私、千夏さんの友達で友原という者です」
知ってるよ。
千夏「……春菜…?」
春菜「夜分遅く失礼ですが、千夏さんをお願いできますでしょうか?」
千夏「あの……どうしたの? 春菜」
いや、話してるのその千夏さん。
春菜「あ、チイちゃん? あの……体調の方とかは……って、ダメだよ、チイちゃん!」
千夏「何が?」
春菜「どうしていきなりチイちゃんが出るの? メイドさんとかは?」
メイドさん言うな。
千夏「……だって、これ、私の携帯だし」
春菜「……」
……いけない、ツボった。

421 :1:2008/08/24(日) 10:14:10.75 ID:dUK3UjvZ0
千夏「……っくく……」
春菜「?」
千夏「くくっ……ふふっ…」
まずい、笑い死ぬ。神様ごめん、私まだ死にたくない。
春菜「ああ〜っ! チイちゃん、笑ってる!」
千夏「だ、だって……ひょっとして、メモなんか見ながら喋ってた?」
春菜「そ、そんな事してないよ」
後ろで紙をクシャッてするの聞こえたんだけど?
千夏「そう?」
春菜「また、そうやってすぐにバカにする〜……」
千夏「バカになんてしてないってば」
……わたしのお姫様は、いつも通りのお姫様。
返り血まみれのナイトの前でも、いつもの調子を崩しません。
この姫最高。悩んだり構えたりしていたのが、すっかり力抜けちゃった。
春菜「……もう」
千夏「あ、今日、学校で何かあった?」
千夏「明日の卒業式の連絡事項とか」
春菜「ううん、別に……明日出られるの?」
千夏「うん……ゴメンね、心配かけて」
春菜「いいよ……そんなの」
二ノ宮に言われた通り、春菜は私を許してくれている。
でも……

422 :1:2008/08/24(日) 10:14:42.62 ID:dUK3UjvZ0
千夏「……昨日……ゴメン」
謝るべきことは、ちゃんと謝らないと。
春菜「その話は……もういいよ」
千夏「前に、春菜と保健室でした時……川瀬に見られてたみたいで……」
春菜「え……?」
千夏「それで……」
春菜「もういい……もう、いいから……」
……春菜も、辛かったんだ……
私の為に。
千夏「……うん」
春菜「ごめんね……」
千夏「春菜が謝るなんて……ヘンだよ」
春菜「そうかな」
千夏「そうだよ」
春菜「……」
……誰がいい悪いなんて、もうどうでもいい。
大事なのは、これからどうするか、で、
その為にはまず、ちゃんと私のこと伝えなきゃ。
千夏「あのね、私……すっごくイヤラシイ娘なんだ」
春菜「チイちゃん……」
千夏「小さいときから、一人でHなことするようになって……」
千夏「こんなコトしてちゃダメだって思ってたけど……やめられなくて……」
千夏「両親とも留守がちだったから……通信販売とかで色々と買ったりするうちに止まらなくなっちゃって……」
春菜「あの……マッサージ器も?」
千夏「うん……私の愛用」
春菜「そうだったんだ」
千夏「……」

423 :1:2008/08/24(日) 10:15:22.87 ID:dUK3UjvZ0
春菜は、私を受け入れてくれる。
無理に話を合わせることもなく、もちろん、とがめることもなかった。
これまで、そうだったように。
春菜「ねえ、チイちゃん……」
千夏「なに?」
春菜「電話でだけど……一緒に、Hしよ?」
千夏「……うん」
それは唐突な申し出だったけど、
抵抗なんてこれっぽっちもなかった。
千夏「……じゃあ、パジャマ脱ぐね」
春菜「どんなパジャマ?」
千夏「修学旅行の時と一緒の」
春菜「えっと……どんなのだっけ?」
千夏「黄色いパジャマのやつ」
春菜「前はボタンだよね……外して?」
千夏「うん……ちょっと待ってて」
ボタンをひとつひとつ外していく。

424 :1:2008/08/24(日) 10:16:09.27 ID:dUK3UjvZ0
携帯をちょっと置いて、袖から腕を抜いた。
千夏「うん……はずした」
春菜「今、上は裸?」
千夏「うん、何も着てない……パジャマは畳んで枕元だし」
春菜「下は?」
千夏「下は…まだ履いてる」
春菜「ねえ……今日…触るの、胸だけにしない?」
千夏「え……どうして?」
春菜「えと……その、最後までイクのは…やっぱり、二人で直接の方がイイかなって」
千夏「うん……あ、じゃあ、パンツ越しは?」
春菜「パンツの上からって事?」
千夏「そう、パンツは脱いじゃダメなの」
春菜「うん……それでいいよ。じゃあ、胸からね」
千夏「うん」
私はベッドに横になった。
春菜「あ、ねえ……チイちゃんは右と左……どっちが感じる?」
ちょっと考えてみた。
千夏「……左の方、かな」
春菜「じゃあ、右から触っちゃう」
いたずらっぽく言う春菜。
千夏「どうしてよぉ……」
春菜「オイシイものは後に取って置いた方がいいでしょ?」
千夏「ん……春菜がそう言うんなら」
仰せのままに。

425 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 10:16:15.62 ID:R/UV0LIiO
ここには決定的に足りないものがある!
それは…







支援だ!!!!!

426 :1:2008/08/24(日) 10:17:00.55 ID:dUK3UjvZ0
千夏「……ね、どんな風に触るの?」
春菜「人差し指で、チョンチョンって突っつくみたいに……」
立てた人差し指を、右の乳首の上に……
外気にさらされたのと、期待とで、もう、ピンッ、ってなってる。
千夏「ん……こんな、感じ……かな…んっ…!」
ちょん、ちょん……
千夏「ぁ……っ…は…ぁあ…」
春菜「もう…勃ってるんだ……」
そう……春菜が触ってるんだもの……
春菜「次は、指先で撫でて……」
目を閉じて、人差し指の腹で、そうっと……
千夏「え……あ…んっ…だめっ……やっ…」
春菜「痛い?」
千夏「うん……ちょっと……」
春菜「じゃあ……指、舐めて……濡らしてから触って……」
千夏「ん…ちゅっぷ……ちゅっ……ん……」
立てた人差し指をしゃぶって、ネットリと舌をからませて、
唾液にまみれたそれを、また、右の乳首に這わせる。
しっとりとして、熱い、
千夏(コレ……春菜の指……)
春菜「…どう?」
千夏「……うん…ちょうど……気持ち……いい…ああっ…ん…っく…ふぁ……」
勃ってるピンクの蕾が擦れるたびに、身体中に小さく電流が走る。
千夏(いい……いいよ……春菜)
千夏「ん……っく…ね、ねえ…春菜のもさわらせて」

427 :1:2008/08/24(日) 10:17:48.03 ID:dUK3UjvZ0
呼吸が弾んできて、吐息が熱をはらんできた。
春菜「うん……じゃあ、私もボタン外すから」
耳元に、シュル、シュル、って、衣擦れ。
脳裏に、胸をはだけて横たわる春菜のイメージ。
仰向けに横たわって、私を見てる。
そのイメージだけで、切なくなって涙が出そう。
千夏「ん……春菜の肌、きれい」
瞼をとじて、春菜を見つめながら、胸への刺激を続けた。
千夏「春菜は……ん…どっちなの?」
春菜「え……?」
千夏「胸……どっちが感じるの?」
春菜「んと……私も左かな」
千夏「じゃあ、一緒だね」
春菜「うん……一緒」
同じなのが嬉しくて、
春菜に内緒で、ほっぺにキスしちゃった。
千夏「じゃあ、左の乳首……つまんじゃう」
春菜「え…左からなの?」
千夏「そう、左から……いい?」
春菜「あ、待って、私も……私も、指…舐めさせて」
千夏「うん……ちゅくっ……ちゅっ…」

428 :1:2008/08/24(日) 10:18:47.22 ID:dUK3UjvZ0
口の中に入り込んでくる、人差し指。
コレ、春菜の指だから、
舌だけじゃなくて、歯とか頬の裏を当てたりして、いっぱい愛してあげた。
指が口から抜けた。
千夏「いい?」
春菜「うん……私も、チイちゃんの…つまむね」
千夏「ん……」
触れて……力を……
千夏「ああっん!」
春菜「んんっ……!」
ピクン! と体が一瞬固くなる。
千夏「ぁ……春菜の乳首……コリコリしてる…」
春菜「うん…チイちゃんのも……すっごく…ふぁっ…」
固くなってる乳首を、指で摘んで、転がす。
じんわりと熱が広がって、胸の奥が、ドキン、ドキンって言ってる。
千夏「んぁ……や…だめ………」
春菜「ふぁぁっ……あ…すごい……胸…いいっ……」
千夏「あ…あ、あぁ……はっ…やだ…ん……っく…」
右の乳首の微かな余波が、胸を伝って左のを刺激していた。
左側……切なくなってる……

429 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 10:18:50.21 ID:dLaJVNgt0
電流 衣玖
ウホw

430 :1:2008/08/24(日) 10:19:24.17 ID:dUK3UjvZ0
千夏「ね、ねえ……春菜…左…触って……」
春菜「え…?」
千夏「お願い……もういいでしょ? だから…」
春菜「……やだ」
千夏「あんっ…ずるい……そんなの…私は、春菜の左から……んっ…して、あげたのに……」
春菜「ダメ…右だけ……」
ひどい……触りたい……
春菜「ダメ…右だけ……」
千夏「やだ…そんなの……ね、ねえ……」
春菜「ん…左……スッゴク気持ちいい……」
千夏「ああぁ……」
やだよぉ……左、切ないよぉ……
春菜「指の間でコチョコチョって……」
千夏「んんっ…ね、いいでしょ? ……触って…左の乳首、触って……!」
春菜「ん…いいよ……じゃあ、指をしゃぶって…」
千夏「ん…ちゅっ……ちゅぷっ……」
春菜「親指と人差し指を……軽く添えて……」
お姫様の……
仰せの……ままに……

431 :1:2008/08/24(日) 10:21:08.52 ID:dUK3UjvZ0
千夏「……っ…ぁは……」
春菜「……」
千夏「……っ…ん……ぁ……はっ……」
……次は?
千夏(ねぇ……次は?)
春菜「……つねって」
……クイッ
千夏「……っ………ぁぁっ……ぁあああっ!」
強い熱と、刺激が、体を走り抜けた。
瞬間、私は持ち上げられ……そして沈む。
千夏「ん…ぁぁ…っ……」
春菜「チイちゃん……?」
千夏「……ゴメン、ね…」
春菜「イッちゃったの……?」
千夏「……ちょっとだけ」
春菜「んもぉ…ずるいよぉ……」
……春菜のせいじゃないか。
千夏「じゃあ…あの……アソコの方…触ろ?」
春菜「ん…じゃあ…脱ぎっこね」
千夏「……うん…あ、パンツ脱いじゃダメだよ」
春菜「うん」

432 :1:2008/08/24(日) 10:21:39.98 ID:dUK3UjvZ0
ズボンの裾に右手を入れて、
腰や脚をくねらせて、ちょっと手間取りながら抜き取った。
千夏「ねえ……いい?」
春菜「あ、うん……」
目を閉じる。
私の指は、春菜の指。
春菜の指を、毛布の下にくぐらせて……
千夏「ん……はぁ……」
春菜の指が、ゆっくりとアソコを撫で始めた。
千夏(ちょっと……じれったいけど……)
千夏(春菜に……イジメられてるみたいで……イイ……な)
指が湿ってくる。
それは、春菜の、それ。
春菜「は……はぁ……はぁ………ぁ」
ほら……やっぱり。
千夏「……割れ目にそって……動かすね」
春菜「うん……」
中指の爪。クロッチの所に、ちょっとだけ立てて、
カリカリ……って、爪だけに聞こえるくらいに、ソフト……に
千夏(……んっ!)
春菜のくれる熱と、快感が、全身に広がる。

433 :1:2008/08/24(日) 10:23:04.31 ID:Xgtg57RK0
吐息が、熱くなる。
熱くて、溶けそう。
千夏(……もう、イジメないで……)
千夏「……春菜」
春菜「え…な、なに?」
千夏「ね……直に、触って」
春菜「え…ダメだよ……これ以上は……」
千夏「でも……」
春菜「だって…パンツは脱いじゃダメって……」
千夏「だ……め…私……ゴメン…」
パンツの裾の中に手を入れて、
片脚だけを無理矢理抜き取った。
剥き出しになったアソコに、指を、
触れた。
千夏「んっ……ふぁっ……ぁぁ……あ…」
春菜「脱いじゃったの……?」
千夏「だって……直に、さわって……欲し、くて……ああっ! んっ! ……っく……ぁ」

434 :1:2008/08/24(日) 10:24:10.54 ID:Xgtg57RK0
湿った肉の水音が、指先に聞こえてる。
ちゅっ……くちゅっ……
春菜「ずるい……チイちゃんばっかり……!」
千夏「春菜も……んぁ…脱いで……ね……脱いで…」
春菜「だめだよ……止まらなくなっちゃう……」
千夏「ん……ぁぁ……ぁ…んっ…はぁっ…すごい…」
電話機の向こう、ごそごそ、って音がした。
千夏(えへっ……一緒に……しよ)
春菜「んんっ……ぁあああっ!」
春菜「や、やだ……すご……」
千夏「春菜も……脱いだんだ……」
春菜「ん……チイちゃんが…わるいんだからあ……」
千夏「ごめんね……でも…下着……汚れちゃうし」
春菜「そんなに……濡れてるんだ…」
千夏「う…うん」
春菜「ね、音……聞かせて」
千夏「え……?」
春菜「チイちゃんのHな音……聞きたい」
千夏「Hな音って……アソコの音?」
春菜「うん」
千夏「……いいよ」




>>425
なんだろうこのあったかいような気持ち

435 :1:2008/08/24(日) 10:25:10.69 ID:Xgtg57RK0
人差し指と、薬指で、花びらを広げて、
その間に向けて、中指を、添えた。
千夏「……いくね」
春菜「うん」
携帯を、おヘソの下に持っていって、
送話口を、アソコのすぐ側につけて、
中指で、いじる。
千夏(んふぁっ……!)
ちょっと……激しめに……
音……ちゃんと……届くように……
千夏「聞こえた?」
春菜「うん、聞こえた……スッゴク濡れてるんだ」
千夏「……そんな事…ないよ」
携帯……
ちょっと、ついちゃってたりして……
春菜「ウソ……チイちゃん、オツユ多いんだもん」
千夏「そんな事無い…! 普通だよ……」
春菜「ううん、濡らしすぎ……」
千夏「じゃあ、春菜のも聞かせて」
春菜「え……私?」
千夏「うん」
春菜「ん、じゃあ……」

436 :1:2008/08/24(日) 10:25:42.61 ID:Xgtg57RK0
耳に、神経を集中……
ぴちゃ……くちゅ……
春菜「聞こえた?」
千夏「うん……春菜もビチョビチョなんだ」
春菜「チイちゃんの方がすごかったよ」
千夏「それより……春菜、下……布団かけてる?」
春菜「うん……」
千夏「ダメ……ちゃんと見せて……」
春菜「え……でも…」
千夏「早く……布団をどけて」
春菜「う……うん…」
ためらいがちな、春菜。
春菜「……もう、外したよ」
千夏「ホントに?」
春菜「……う、うん……ホント」
千夏「じゃあ、今、春菜のHなアソコが見えちゃってるの?」
春菜「うん…見えちゃってる」
千夏「……」
春菜「……」
千夏「ウソ」
千夏「ウソ言ってもダメ。まだ布団かけてる」
春菜「え……どうして!?」
千夏「ちゃんと見えるの……私には」
春菜「ね、ねえ……このままじゃだめ?」
千夏「だめ、ちゃんと取って……!」
春菜「う……うん……取るね…」

437 :1:2008/08/24(日) 10:26:13.96 ID:Xgtg57RK0
千夏「うん」
春菜「……」
千夏「……」
春菜「やっぱり、恥ずかしい……」
千夏「私だけだから……ね?」
春菜「うん……チイちゃんだけね……」
衣擦れの音。
今度はちゃんと布団どけてくれた。
春菜ばっかりじゃ不公平だから、私も毛布をどけた。
春菜「や…やだ……」
大丈夫だよ、春菜。大丈夫だから。
春菜「チイちゃん……」
千夏「春菜」
春菜「どう……チイちゃん?」
千夏「うん、見える…スッゴクよく見える」
春菜「……ホントに?」
千夏「うん……春菜のアソコ、ピンク色のがクチュクチュッてなってて、そこからオツユがいっぱい……溢れて……」
春菜「ああ、だめぇ……そんなに……見ちゃ……」
言葉に……すると……
エッチなのが……すごく……広がって……
千夏「ね……指いれていい?」
千夏「春菜のクュクチュの中に……指、入れさせて」
春菜「でも……」
千夏「お願い…」
春菜「……私も、チイちゃんのアソコに…指、いれちゃうよ」
千夏「……う、うん」
春菜「じゃあ……」
千夏「ん……」

438 :1:2008/08/24(日) 10:26:45.23 ID:Xgtg57RK0
ビッショリになってる中、
春菜が、春菜に、
春菜「んっ……!」
千夏「…っは……」
春菜「指…あ、ああっ…入る…入っちゃう……」
千夏「ん……い……いいよ……春菜…すっごく…」
春菜「あ、も……イッパイ……ん」
千夏「あ……春菜…」
あったかいよ……あ……やだ……
千夏「あ……すごい…指…締め付けて……」
春菜「やだ…そんなの、言っちゃ、やだぁ……」
千夏「……動かすね」
春菜「ん……っぁああ!」
淫らなオツユにまみれながら、
指が、ジュクッ、ジュクッ、って、動く。
千夏「ん……あ……あ、ぁああ…や…動いちゃう…」
春菜「だめぇ……指…勝手に…」
千夏「あ、ああっ……や…イく……わたし…」
春菜「ん、んんっ、あ……ぁああ…イく……」
千夏「はぁ…ぁ……あ、ああ、も、もう……」
春菜「イッちゃう……チイちゃん……チイちゃん…」
千夏「ああっ…春菜……はるな………」
春菜「ぁあああっ……ああああっ、あ、ぁぁ…あっ……!」
千夏「んあああぁ、ああっ……ああっ…ああっ……あ…!」
……! ……! …!
……

439 :1:2008/08/24(日) 10:27:42.59 ID:Xgtg57RK0
春菜「はぁ……は…ぁ……ぁ……はぁ……」
千夏「…ぁ………はあ…はぁ……はぁ……」
春菜「チイちゃん……」
千夏「うん……春菜……」
春菜が……とってもエッチで……とってもかわいい顔をしている。
……誰にも見せたくない……私だけの……春菜。
千夏「春菜……」
春菜「チイちゃん……」
千夏「春菜……私、春菜のものだよね……」
春菜「うん……私の……私だけの……チイちゃん」
千夏「じゃあ……春菜も……わたしのもの……」
春菜「……うん……」
千夏「一緒に……いようね……ずっと……」
春菜「……うん」
千夏「明日……会おうね」
春菜「うん……待ってる」

440 :1:2008/08/24(日) 10:28:34.19 ID:Xgtg57RK0
秋穂「はい?」
千夏「佐倉木です。夜遅くにゴメン」
秋穂「佐倉木先輩……こんばんは」
千夏「さっきね、春菜から、電話かかってきた」
千夏「私のこと、許してくれるって」
秋穂「ほら、私の言った通りでしょう?」
千夏「うん……」
秋穂「……もうあの人を悲しませないで下さいね」
千夏「分かってる」
秋穂「次にこんなことがあったら……本当にあなたを除名にしますから」
千夏「二ノ宮はそんなことはしないよ」
秋穂「どうしてそう言えるんですか?」
千夏「私がいなくなったら、春菜が悲しむ」
……溜息の気配。
秋穂「のろけですか?」
千夏「違う。友達を信じてるだけ」
秋穂「友達? 私、佐倉木先輩のこと嫌いなんですよ?」
千夏「知ってる。でも、私はあんたのこと、結構好きだよ」
秋穂「あなたが好きなのは、友原先輩でしょう?」
千夏「恋焦がれるのだけが好きじゃないよ……そうでしょ?」
秋穂「……知ってます」
千夏「……じゃあ、これで」
秋穂「はい……お休みなさい、佐倉木先輩」
千夏「うん……お休み、二ノ宮」
通話が切れた。
次に、さんざん人怒鳴りつけたお友達。
……

441 :1:2008/08/24(日) 10:29:52.56 ID:Xgtg57RK0
ひろみ「はい?」
千夏「佐倉木。こんな時間にごめんね」
ひろみ「佐倉木さん……どうしたの?」
千夏「うん。報告だけは、しとこうと思って」
千夏「春菜から電話来た。私、春菜が好きで、春菜も私を好きで」
千夏「それで、OK」
ひろみ「……仲直り、できた?」
千夏「バッチリ……柳瀬のおかげだよ」
ひろみ「そんな……私は何もしてないよ」
千夏「柳瀬のおかげだってば……怒鳴られたりしてなければ、どうなってたか分からないもの。今ごろこんな風に、口きいてないかも」
ひろみ「悪い冗談はやめてったら」
千夏「冗談なんかじゃないんだってば……だから、本当にありがと」
千夏「あなたがいてくれて、助かった」
ひろみ「うん……」
千夏「……ねえ、ヘンなこと訊くね?」
ひろみ「何?」
千夏「友達だから、っていうけど……どうして、私の為にあそこまでしてくれたの?」
千夏「まさか……私のこと、好き?」
ひろみ「……」
ひろみ「好きよ。自分のことのように愛してる……なんてね」
千夏「……」
ひろみ「代償、なんだと思う」

442 :1:2008/08/24(日) 10:30:23.85 ID:Xgtg57RK0
千夏「代償?」
ひろみ「そう……私と圭子の、代償」
ひろみ「今は普通につきあえてるけど、一番辛い時、私たちには誰もいなかったんだ」
ひろみ「だから……その時の私たちを、どうしても助けたくて……」
ひろみ「あなたと友原さんは、私たちの代わり……。友情なんかじゃないかも」
千夏「……利用、されてた?」
ひろみ「うん……利用してた」
ひろみ「……ごめん」
千夏「……それでも、私は嬉しいよ」
千夏「柳瀬が私を助けたのは、本当なんだもの」
ひろみ「……今度さ。みんなでお話しない?」
千夏「みんな、って?」
ひろみ「佐倉木さんと、友原さん。それと、私と圭子で」
ひろみ「色々、話せることあると思うんだ」
千夏「あはっ。いいね、それ。セッティングしようよ」
ひろみ「うん。後で圭子にも話してみる」
千夏「分かったよ……あ、ねえ。もうひとつ」
ひろみ「何?」
千夏「大きな事って、何? 前に話してた、どんな悩みも小さくなるような、って……」
ひろみ「私たち……私と圭子、ずっと一緒にいられるのかなあ、って」

443 :1:2008/08/24(日) 10:30:57.65 ID:rEy7CxW30
千夏「……え?」
ひろみ「女の子同士だもん、私たち」
ひろみ「同性婚は、この国じゃ認められていない」
ひろみ「社会に出て、女の子同士の、なんて……周りだってどう思うか、想像つくでしょ?」
千夏「……」
千夏「……ごめん、想像できないよ」
千夏「怖くて……」
ひろみ「ずっと一緒にいるためには、いつかはそれが目の前に立つ。そう遠い日の話じゃない」
ひろみ「夜、ひとりでいると、時々泣き叫びたくなるわ。その度に圭子と話すの」
ひろみ「私たち、ずっと一緒にいられないよ、なんて」
千夏「……」
ひろみ「でも、やっぱり、一緒じゃないなんて無理、ってことになって、じゃあどうすればいい? なんて話になって」
ひろみ「そうするたびに、また仲良くなっていく、なんて……ごめん、のろけた」
千夏「いいよ、別に」
千夏「みんなで話す時、それ詳しく聞かせて欲しいな」
ひろみ「いいのかしら? 長くなるわよ?」
千夏「授業サボってもちゃんと聞く」
ひろみ「こら」
千夏「えへっ……じゃあ、明日」
ひろみ「うん、明日」
ひろみ「……佐倉木さん」
千夏「なに?」
ひろみ「良かったわね……本当に良かった」
千夏「……ありがとう」
通話を切る。

444 :1:2008/08/24(日) 10:34:06.15 ID:rEy7CxW30
早坂は……
千夏(明日、学校で顔見せるだけでいいか……)
下手にペースに巻き込まれたら、何喋らされるか分からないよ。
というわけで、早坂は、パス。
後は……
いた。
私が絶対にないがしろにしちゃいけない人が、もうひとり。
携帯電話のアドレス帳。
「陸上部」フォルダから、その名前を探し出す。
「長谷川薫」。
向こうも私の番号は知っていたけど、
前、教えた途端に何度も電話かかってきて、
それ以来「部活に関係ないことで電話するな」って、怒鳴りつけてやったんだっけ。
私の方がそれを破るわけだけど、
ま、必要だし……。


445 :1:2008/08/24(日) 10:34:40.64 ID:rEy7CxW30
薫「もしもしっ! 佐倉木先輩っ!」
早っ!
千夏「あー、こんばんは、長谷川」
薫「昨日はどうされたんですか! 突然いなくなって、学校も休んで!」
薫「心配しちゃうじゃないですか!」
千夏「ごめん……用事があってさ」
薫「……また、友原先輩のことで、ですか?」
千夏「……まあ、ね」
薫「……佐倉木先輩は」
薫「佐倉木先輩は、友原先輩のこと、大好きなんですね」
千夏「……うん」
薫「でも……陸上部だって、大切だと思います。どっちかのために、片方をいい加減になんてしないで下さい」
千夏「そうだね。分かってるよ」
薫「……今度は何があったんですか?」
薫「教えてください。私、できることがあったら何でもしますから」
……ちょっと、迷った。
千夏「ホントに聞きたい?」
薫「……はい」
千夏「大分長くなるよ」
薫「平気です」
千夏「……長谷川、ちょっと辛くなるかも」
薫「大丈夫です……佐倉木先輩と友原先輩が愛し合ってるのは、よく知ってますから」
……私は、

446 :1:2008/08/24(日) 10:35:14.91 ID:rEy7CxW30
長谷川に告解した。
今日の昼間、柳瀬にしたみたいに。
長谷川が仕組んだ保健室でのことが、川瀬に知られ、
私が脅され、そのため昨日に部活を抜け出したことまで話したら、
薫「………………!」
電話口の向こうで、長谷川が号泣した。
正直、自分でもまだ口にするのは苦しいし、
長谷川にとって辛い事だというのは、話す前から分かっていた。
きっかけを作ったのが自分だったというのなら、なおさらだ。
でも。
でも、私は、この後輩にも、何もウソをつきたくなかった。
佐倉木千夏は、長谷川薫に、誠実でありたい。
ひょっとしたら、彼女が一番、私を愛してくれていたかも知れないから。
千夏「長谷川……もう泣かないで」
薫「………………!」
千夏「私は、怒ってないから」
薫「………………!」
千夏「長谷川……」
薫「………………!」
千夏「薫」
薫「………………」
薫「………」
薫「……はい?」
千夏「もう泣かなくていいよ、薫」
薫「でも……でも、佐倉木先輩……私が、私のせいで……!」
薫「私が、ヘンなこと企まなきゃ……!」
薫「でも、私、先輩に元気になって欲しくて……! 私じゃ、私じゃダメだから、友原先輩じゃなきゃ、だから……!」

447 :1:2008/08/24(日) 10:36:38.53 ID:rEy7CxW30
千夏「それも知ってるよ。薫は、私のこと、ずっと心配してくれていたんだもんね」
千夏「こんな事になるなんて予想できなかったし、あなたには悪気はなかった」
千夏「だから……ただ、これからは、もうちょっと気をつけてくれれば、もうそれでいいの」
薫「先輩……」
薫「そのこと……友原先輩は……」
千夏「知ってる」
千夏「でも、もういいって。私の事、好きだって」
千夏「私も春菜の事好きだから、だからずっと一緒にいたい、って」
千夏「あの転校生は、また転校していった……だからもう、全部終わった」
千夏「反省して、悪かったのは改めて、繰り返さないようにすればいい」
千夏「私もそうするし、春菜もそうする。だから薫もそうして」
薫「けど……!」
千夏「私……薫のこと、大好きだから」
薫「……先輩」
薫「それずるいです……。それ聞いたら私、先輩の言うこと聞かなきゃなりません」
薫「本気の好きじゃないのに」
千夏「本気だよ。誓って本気」
……「あなたは誓ってはならない」。
神様、これだけはちょっと見逃してください。
千夏「本当だよ……だって私、落ち込んでる時には薫に構って欲しかったし」
千夏「分かってるけどね。これが、薫の欲しい好きじゃないってことも」

448 :1:2008/08/24(日) 10:37:09.81 ID:rEy7CxW30
そう……私はずるい。
でも、そんなずるい私のことを、薫にこそ分かって欲しい。
受け入れて欲しい。私が春菜を好きで、柳瀬が好きで、二ノ宮が好きで、もちろん薫のことも大好きで、
そして、みんなのことを必要としてるのを。
私は、みんなに支えられながら生きてるって。これまでだってそうだったし、これからだってそうだ。
人と言う字は、互いに支えあってる、って言うけれど、
なら、友という字は何人が支えあってることになるんだろう。
千夏「お願い、薫。ちゃんと分かって」
薫「……分かりません、分かりません!」
薫「……私、先輩傷つけて、春菜先輩も傷つけて……そんなつもり、なかったのに……!」
薫「それが……こんな簡単に、許されていいはずありません!」
千夏「……じゃあ……何でもするって、言ったよね」
薫「……言いました! 何でもします!」
薫「社会に出たら、お給料いっぱい出るトコにもぐりこんで、先輩の生活面倒見ます! なんなら友原先輩のだって……!」
すごいな、長谷川……。
自分が社会に出ること、ちゃんと考えてる……
あたしの家、けっこうお金持ちだったりするんだけど。

449 :1:2008/08/24(日) 10:37:54.61 ID:rEy7CxW30
千夏「そういうのじゃないよ。私が薫にやって欲しいのはね……」
薫「……はい」
千夏「自分のことを許してあげて」
薫「……」
千夏「気が済まないんなら、自分を責めるんじゃなくて、何が良くなかったか、これからどうすればいいかを考えて」
千夏「それで、もう誰も傷つかないようにしていって」
千夏「薫なら、きっとできるよ」
千夏「きっとね……また、私みたいな子が、薫の前に出てくると思うんだ」
千夏「何でもひとりで背負い込んで、気負っちゃって、一人で悩んじゃうような子がね」
千夏「もし、そんな子が現れたら、お願い……その子のこと助けてあげて」
千夏「でしゃばるな、なんて言ってきても構わなくていいから」
薫「……そうすれば、私は許されるんですか?」
千夏「許されるよ。神様だって見てるから」
千夏「私だって、あなたを見てる」
薫「……」
薫「……分かりました、先輩」
薫「でも……」
千夏「でも?」
薫「でも、先輩が見るのは、友原先輩です。私じゃないです」
千夏「春菜ばかりを見てちゃいけないって、よく分かったんだ……一番は、春菜だけどね」
薫「当たり前です」
薫「……」
千夏「……」
薫「先輩。教えてくれませんか?」
千夏「何?」
薫「先輩……その、友原先輩の部屋で、わたしと友原先輩に、その……」
薫「あれって……嫌なこと……でした?」

450 :1:2008/08/24(日) 10:39:06.14 ID:rEy7CxW30
千夏「……」
千夏「難しいこと訊くね」
千夏「……」
千夏「う〜ん……」
千夏「う〜〜〜〜ん……」
千夏「ごめん、それ答えられない」
薫「お願いです」
薫「あれ、なかったことにしないで下さい」
薫「そうしたら私……私、明日から、きっと先輩の言うとおりに出来ますから」
千夏「……」
千夏「分かった。忘れないよ」
薫「ホントですか?」
千夏「うん」
薫「……」
千夏「……」
薫「……先輩」
千夏「なあに、薫?」
薫「お元気で。あと、友原先輩と、お幸せに」
千夏「うん」
薫「……さようなら……千夏……さん」
千夏「さようなら。薫」
携帯を耳から離して、
「長谷川薫」の字が浮かぶ液晶をしばらく見つめた。
そして、いろいろな思いと一緒に、
(プツッ……)
通話を切った。

8日目終わり

451 :1:2008/08/24(日) 10:41:56.89 ID:rEy7CxW30
もう誰も付いてこれてないだろうけどここまできたらやるしかない
>>1は間違いなく基地外

452 :1:2008/08/24(日) 10:42:58.22 ID:QRrZ5Rbh0
「そうだ、地上にただひとりだけでも
 心を分かち合う魂があるといえる者も歓呼せよ
 そしてそれがどうしてもできなかった者は
 この輪から泣く泣く立ち去るがよい」
(ベートーベン 交響曲第九番第四楽章「歓喜の歌」より)

453 :1:2008/08/24(日) 10:43:36.09 ID:QRrZ5Rbh0
朝早く。
いつものように家を出て、いつもの通学路を歩く。
なくしたはずの「いつも通り」を、私は取り戻すことができたけど、
今日は、その「いつも通り」の最後の日。そして「最後」は「いつも通り」であるはずがない。
過ぎ去っていく時間の、なんて速さ。
一分一秒の意味や重みを確かめる前に、「いま」はすぐに「むかし」の中に積み重なって、思い出すことさえ難しくなる。
もちろん、一番大事と信じてるものは私の血、肉、心となって、私の「いま」、そして「これから」を形作っていく。
……けど、知らずに見逃し、なくしてきたものはなかっただろうか。
なくしても、取り戻せるものはある。それはよく知ってるけれど……
千夏(最初から、なくさないで済む方法はなかったのかな?)
ここ最近色々なことがあって、
誰かが誰かを傷つけて、私も傷つける方になったり、傷つけられる方になったり、
それらのことを、反省はしても、後悔しない……って、決めたつもりでも、
無用な傷も、確かにあったはず。
……
結局、それしかないのかな?
失敗して、へこんで、繰り返さないように気をつけて、
自分はもちろん、誰かが同じような失敗をしそうになったら、それを止めて……
千夏(……私みたいな失敗をする人なんて、そうそういるとは思えないけど……)
私の失敗なんて何だろう?
数え上げればきりが無いし、「そもそもの原因は」なんてさかのぼり始めたら、自分がこの世に生まれたことにさえ辿り着く。
それに……

454 :1:2008/08/24(日) 10:44:07.61 ID:QRrZ5Rbh0
一番思い出したくない失敗のことを考えると、まだ胸が苦くなる。
……きっとコイツは、私と春菜がずっと抱えていかなきゃならないものだろう。
そして、春菜としか分かち合えない。
千夏(でも、いつかは……)
……できる、きっと。
あなたとなら、乗り越えられるから。
通学路を進む。一歩ずつ。一歩ずつ。
今日は絶対無理。明日も多分無理。何日かかるか、何ヶ月かかるか、それとも何年?
それでも。
千夏(いつか、必ず、川瀬ユキを……)
思い出したくないその名を、心の中で敢えて呼ぶ。
私の脚は逃げ足じゃないから。辛い事には自分の意志で向き合う。
それが、一番の近道だってことも、今の私はよく知ってる。

455 :1:2008/08/24(日) 10:44:38.54 ID:QRrZ5Rbh0
校門をくぐる。
私に挨拶をして、しがみついてきた可愛い後輩はもういない。
元気で、やかましくて、うっとおしいくらいにまとわりついて、私がどんな時でも私を見つめ続けた子。
……朝練の時以上に早く学校に来たのは、礼拝堂で神様に向き合ってみたくなったからなのだけど、
その前に陸上部の部室に向かうことにした。
部室のドアの前に立ち、鍵を出して(この鍵も返さないと)穴に入れる。
……スカッ
千夏(誰かいる?)
鍵をしまって、ノックして、
千夏「失礼します」
予感とともに、ドアを開いた。
窓から射しこむ光を背にして、ベンチに座っていた人影が立ち上がる。
薫「……おはようございます、先輩」
予感はやっぱり当たっていた。
静かな笑みをたたえて、彼女は私に頭を下げた。
千夏「……おはよう、薫」
千夏「……今日も練習だったっけ?」
もうちょっとまともなことが言えないのか、私は。
静かな笑みのまま、薫は首を横に振った。
薫「まさか。私が早く来ちゃっただけですよ」
薫「先輩もずいぶん早いんですね?」

456 :1:2008/08/24(日) 10:46:39.59 ID:QRrZ5Rbh0
千夏「ああ、うん……。卒業式の前に礼拝堂に寄ってみようかな、なんて」
薫「私も同じです。今までのこと、振り返ってみたくなって……」
千夏「そうなんだ」
千夏「一緒に行こうか?」
薫はまた首を横に振る。
薫「私の礼拝堂は、ここです」
薫「一緒に行こうなんて、もっと早く言ってくだされば良かったのに」
千夏「……ごめん」
薫「……謝らなくてもいいです」
薫「それに、先輩には友原先輩がいらっしゃるでしょう?」
千夏「まあ……ね」
薫「……もう」
……私って、後輩に説教されやすい人間なのかな。
私は薫から眼をそらし、彼女の礼拝堂を見回した。
それは言うまでもなく、私にとっても大事な空間。
授業が終わるとここに駆け込み、トレーニングウェアに着替えて、グラウンドに出て。
走って、跳んで、体を動かして汗を流した後には、またここに来て着替えて。
大会前には部員みんなで顔つき合わせてミーティング。選手で誰が出るのかが発表される時は、やっぱりいつもドキドキしていた……
積み重ねた時間を思い、思わず頬が緩んだ時、
千夏(……そう言えば、この前はここで春菜と……)
……センチな気持ちに水が差された。私の笑みは苦笑に変わる。
くすっ、と、今度は薫が口に出して笑った。
薫「どうされたんですか、先輩?」
薫「何かありました?」
千夏「そりゃ、色々あったよ。だって、私もここでずっと……」
部室の壁沿いに並ぶロッカー。
そのうちのひとつに、凹みがあった。
……

457 :1:2008/08/24(日) 10:47:38.07 ID:QRrZ5Rbh0
千夏(私に話しかけるな!)
そう言って、薫に当たった時の凹み。
千夏「ごめん、薫……」
千夏「痛かった?」
薫は怪訝そうな顔をしたけど、私の視線を追いかけると、また首を横に振った。
薫「別に、気になんてしてません」
千夏「珍しいのが見れたって思うくらいで」
千夏「どうかしてたんだ、私。ここ何日かはずっと」
薫「でしょうね……でも、先輩が八つ当たりしたのって、きっと私だけですよね」
薫「それって……一番心を許しているからですよね、きっと」
千夏「うん……」
千夏「ずっと知ってたのに。薫の気持ち」
千夏「それに、私、ずっと甘えてたのかも」
薫「……」
薫「これからは、友原先輩に甘えてくださいね」
薫「私、本当は友原先輩のこと嫌いじゃなかったんですよ」
千夏「……ごめん」
薫「『自分を許してあげて』って言ったのは、先輩です」
千夏「そうだね……。うん。そうだった」
話さなきゃいけないことがたくさんあるような気がする。
けど、それは全部、昨日のうちに話してしまったような気もする。
親しくて、私のことをよく知ってて、私がよく知ってる人間との、ふたりっきりの空間。
何も言わなくても、沈黙だけで会話ができてしまうような。
気恥ずかしさと、奇妙な居心地のよさとがないまぜになって、
ずっとこの時間が続けばいい、なんて。

458 :1:2008/08/24(日) 10:48:31.34 ID:QRrZ5Rbh0
千夏(でも、分かってる……)
千夏(私はここを、出て行かなくちゃ)
出て行った瞬間、この時間と空間も、私にとっての「むかし」になる。
その瞬間は、もう目の前だっていうのに……。
薫「先輩。お願いがあります」
千夏「何?」
薫「あなたを、抱きしめさせてください」
千夏「……いいよ」
私は腕を広げ、薫に腕を差し伸べた。
千夏「来て、薫」
薫は何かを飲み込むように俯き、
再び顔を上げ、私に向かって歩を踏み出す。
一歩。一歩。
私たちの距離は狭まっていく。
薫の顔は、今まで見たことがないものだった。
潤んだ瞳で微笑みながら、結ばれた唇や目元が震えている。
受け入れることを選び、決意した人だけが浮かべられる表情。
気高くて誇り高い、勇気ある者の笑み。
やがて、薫は私の腕の中に辿り着き、
両腕を私の首に回すと、胸を合わせ、
私の肩の上に自分の首を乗せて、頬をくっつけた。
私も、薫の背中に腕を回す。
そして薫を抱きしめる。
いつでも彼女がそうだったように、薫の体と温もりは揺ぎ無いほどに確かだった。
祝福を。祝福を。
私の愛するこの後輩にも、どうか祝福を――。
薫「……起きよ、光を放て」
千夏「……え?」
顔を動かし、薫を確かめようとした。
けど、「黙っててください」とでも言うように、薫は、ぎゅっ、と腕に力をこめて、私の動きを封じた。

459 :1:2008/08/24(日) 10:49:20.92 ID:QRrZ5Rbh0
薫「起きよ。光を放て」
薫「あなたを照らす光は昇り」
薫「主の栄光はあなたの上に輝く」
薫「見よ、闇は地を覆い、暗黒が国々を包んでいる」
薫「しかし、あなたの上には主が輝き出で」
薫「主の栄光があなたの上に現れる」
薫「国々はあなたを照らす光に向かい」
薫「王たちは射し出でるその輝きに向かって歩む」
薫「目を上げて、見渡すがよい」
薫「みな集い、あなたのもとに来る」
薫「息子たちは遠くから」
薫「娘たちは抱かれて、進んで来る」
薫「そのとき、あなたは畏れつつも喜びに輝き」
薫「おののきつつも心は晴れやかになる」
薫「海からの宝があなたに送られ」
薫「国々の富はあなたのもとに集まる」

460 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 10:50:02.17 ID:ti1fKy5E0
やっぱり槇だよあれはいいキャラしてる

461 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 10:51:05.91 ID:dLaJVNgt0
(・a・っC 

462 :1:2008/08/24(日) 10:51:20.18 ID:QRrZ5Rbh0
……耳元で、吐息とともに囁かれるその言葉は、あくまでも厳かで、
紛れも無い祝福の言葉だった。
言葉の余韻が自分の隅々にまで行き渡ってから、やっと私は口を開いた。
千夏「何それ? 第九?」
薫「何言ってるんですか、先輩……これ、聖書の言葉ですよ」
千夏「そんな言葉、どこかにあったっけ?」
薫「イザヤ書の第60章の頭から。栄光と救いの到来、っていう所です」
薫「さすがは神様の言葉ですね」
薫「先輩に伝えたいこと、代わりに全部言ってくれているような気がします」
千夏「すごい、薫。聖書の言葉、暗記してるんだ?」
薫「ここだけですよ……先輩が卒業する時に、贈る言葉で言えたらな、なんてずっと思ってましたから」
薫「途中でトチらずに言えて、良かったです」
千夏「薫……」
薫「えへへ……褒めてください、先輩」
頬擦りしてくる薫の髪を撫でて上げる。
やがて、薫が頬を離して、首に回した腕を解いた。
離れていく薫の体を、けれど私は止めた。
薫「先輩……?」

463 :1:2008/08/24(日) 10:52:55.92 ID:QRrZ5Rbh0
千夏「私からも、お願いがあるんだ」
薫「何でしょう?」
千夏「あなたに、キスさせて」
薫は一瞬目を丸くして、戸惑ったように視線を逸らし、
苦笑した顔で私を睨んだ。
薫「ダメじゃないですか、先輩。あなたには友原先輩が……」
千夏「恋焦がれるのだけが好きじゃないでしょ?」
薫「……いいんですか? 襲っちゃいますよ?」
千夏「いいよ、別に。その時にはまた抑えこんでやるんだから」
……もしそうなったら。今度は拒みきれる自信がないけど。
薫「……」
千夏「……」
千夏「目、閉じて」
薫は無言で頷いて、目を閉じ、ちょっとだけ顔を上げた。
私は顔を寄せた。
唇の間で、吐息が絡まりあってから、私も目を閉じ、
最後の距離を、ゼロにした。
薫の唇は、春菜のと同じぐらいに柔らかい。
お互いに、声も立てず、
静かに、じっとして、唇の感触を確かめる。
伝えたいことなんて、まだまだいくらでもある。
でも、言葉じゃ到底伝えきれないから、
この接吻に思いを込める。
伝えたつもりでも、薫には伝わってないかもしれない。
伝えたいものが何なのか、私にもよく分かってない。
けど、今じゃなくても、
いつの日か、気付ければそれでいい。
私も、薫も。
……唇を離した。

464 :1:2008/08/24(日) 10:54:04.32 ID:S2ISHC400
顔が離れ、胸が離れ、腕が離れ、
ゼロだった距離は、広がっていく。
この距離は、またいくらでも縮めることができるかもしれないけど、
ゼロになることだけは、もうない。
見詰め合う。
薫は、まなじりから涙をひとすじ頬に伝わせ、微笑みながら私を見ている。
それは、見送るものの笑み。
ねえ、私はどんな顔をしている?
あなたのように、笑っている?
千夏「薫……」
薫「千夏……さん」
千夏「じゃあ、行くね……」
薫「はい……どうぞ、あなたのなすべきことを」
……こら。
千夏「……冗談にしても、タチ悪くない?」
薫「今の私は、とっくに磔になっています」
薫「失恋して、振られた相手に『お幸せに』なんて言わなきゃいけないんですよ?」
……けど、それを選んだのはあなた自身。
望んだのも私。私は春菜と歩いていくことに決めたから。
千夏「幸せになるよ、ちゃんと」
千夏「だから、薫も……ね」
薫「……はい」
千夏「それじゃ……」
薫「はい」
部室を出て、
部室に残る薫を見ながら、ドアを閉じる。
2回続けて、同じ相手とのお別れというのは、結構、切ない。

465 :1:2008/08/24(日) 10:54:53.94 ID:S2ISHC400
物質というのは、分子でできていて、原子でできていて、というのを理科で習った。
つまり、世の中というのは、例えば私自身を含めてその分子や原子の集まり、結びつきでできている、ということになる。
教科書の図版や理科室の模型では、赤や青、黒の玉が、棒でつながってるというのがあったけど、
それらの原子や分子というのは、キラキラと光り輝いているんじゃないか、なんて今は思いたい。
だって、世界はこんなにも美しい。
今なら、この世にある全てのものを好きになれそうな気さえする。
歩きながら、目の前に広がる世界をもっと感じたくて、ちょっと腕を広げてみた。
自分がかきわけていく空気の感触が気持ちいい。体が洗われて行くような感じがする。
千夏(「起きよ、光を放て」)
薫がくれた祝福を反芻する。
千夏(「起きよ、光を放て」)
千夏(「あなたを照らす光は昇り、主の栄光はあなたの上に輝く」)
千夏(「見よ、闇は地を覆い、暗黒が国々を包んでいる」)
千夏(「しかし、あなたの上には栄光が……」)
千夏(……)
千夏(あれ?)
頭上が光って、何だかあちこちから人が来るのは覚えてるんだけど……
……

466 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 10:55:28.58 ID:vlHhRSzX0
まったくお前らは朝から
支援

467 :1:2008/08/24(日) 10:56:04.55 ID:S2ISHC400
千夏(……えーと……聖書)
持ってきたカバンの中から、小型の辞書のような聖書を出す。
目次を開き、項目を探す。
千夏(イザヤ書の第60章……あ、ここ、ここ)
聖書の何が辞書みたいかって、書いてある字も本当に小さくて、紙も薄くて、本当に辞書みたいなのだ。
開いたページに紐を挟み、ページの細かい字を目で追っていると、生徒用玄関の前に差し掛かっていた。
その扉が開き、人影が外に出た。
思わずそちらを向いた時、
千夏(……!)
私は聖書を取り落としそうになった。
千夏(嘘……!)
……世界は、こんなにも美しいはずなのに、
全部を好きになれるはずだったのに。
玄関から出てきた人影が、私の姿を見て、同じように動きを止めた。
それは、美しく、愛すべき世界に落とされた、墨のような……
私が、絶対に好きになることのできない、「好き」とか「愛」という言葉を金輪際使いたくない相手……。

468 :1:2008/08/24(日) 10:56:35.70 ID:S2ISHC400
千夏「……どうして……お前が……」
ユキ「……おはよう、千夏」
ユキ「早いのね」
千夏「……お前……」
千夏「転校したんじゃ……なかったのか」
……向き合おうとは確かに思った。
けど……!
ユキ「したわ」
ユキ「でも、今日じゃないと準備できない書類があったから」
手に持ってるのは、黒い筒。卒業証書。
ユキ「だから、もう行く」
ユキ「卒業式には出ない」
……安堵した。やはり、コイツの顔は、もうこれきり見なくても……
ユキ「……千夏」
ユキ「……あなた、とっても素敵だった」
胸に何かが刺さる音を感じた。
うっすらと、猫の笑みが浮かび、私を見た。
ユキ「……あんなに感じて……」
ユキ「本当に可愛かった」

469 :1:2008/08/24(日) 10:57:43.63 ID:S2ISHC400
……屈辱。
全身が震え、歯の奥がギリギリと鳴る。
泣き崩れたいほどの悔しさを、全身の力でもって耐えしのぐ。
千夏「……言いたいことは」
千夏「言いたいことはそれだけ?」
ここで逃げたら、私は二度と立ち上がれない。そう思った。
だから私は逃げない。コイツが自分から目を逸らし、私の前から姿を消すまで。
千夏「お前は……それで満足なんだろうな」
千夏「誰かを脅して……誰かを無理矢理従わせていればいいんだろうな」
ユキ「……」
猫の顔から笑みが消える。
千夏「考えたこともないだろうな、春菜や私の心がどれだけ傷ついたか、嫌な思いをしたのかなんて」
千夏「お前はそういう人間……ううん、人間ですらない」
ほんの少し、こいつの目が見開かれた。まるで、傷つけられた人間のよう。
千夏「体の中には心があって、嫌なことをされれば切り刻まれる」
千夏「触れられたくない相手に触れられれば、心は血を流すんだ」
千夏「生きているのが嫌になるくらいにね」
千夏「人の心踏みにじっていくのは楽しい?」
猫の眉間に、かすかに皺が寄った。
ユキ「あなただって……」
ユキ「あなただって、気持ちいいって言ったじゃない」
ユキ「もっとして、って」
千夏「言わされたんだ、拷問みたいに」

470 :1:2008/08/24(日) 10:58:14.85 ID:S2ISHC400
それは、魔女狩りのよう。
神の名の元、密告で人を捕まえ、おぞましい拷問でもって「自分は魔女だ」という自白を強要した。
信仰も、誠実さも、誇りも捨てさせて、
この世の地獄から救い出される方法は、死だけ。
私も昨日、死にかけた。
コイツに殺されかけたんだ。
ユキ「神様にも……誓って……」
千夏「その神様も誓いも偽者」
千夏「偽者の神様も、それを信じる者も、呪われればいい」
ユキ「あなただって同じ。気持ちいいことが……」
千夏「私は好きな人じゃなきゃ嫌だ」
ユキ「私、あなたが好きよ。あなただって……」
最低の侮辱だ……!
千夏「お前の汚い口で『好き』って言うな!」
目の前の猫の顔で、口が引き結ばれた。
千夏「お前は誰も好きなんかじゃない」
ユキ「……」
呪い、あるいは糾弾、
言の刃を投げつけるごとに、目の前に立つこいつが傷ついていく。それが確かに分かる。
こいつが傷つくその度に、失われたものが取り戻されていくような気がする。
人を思いやれないくせに、自分を思う心だけは人並みに持っていたらしい。
剥ぎ取られたプライド、誇り。やられたらやり返すことだけが、きっとそれを埋め合わせる。
ユキ「……千夏だって、私を欲しがったくせに」
ユキ「春菜だって……」
千夏「お前にはそれしかないんだね」

471 :1:2008/08/24(日) 10:59:31.70 ID:S2ISHC400
こいつの底が割れた。
とうとう春菜のことまで持ち出した。
千夏「私たちはお前に傷つけられた」
千夏「けど、それでも私たちは一緒にいよう、って、約束した」
千夏「私は春菜のもので、春菜は私のもの。お前はもう何もできない」
ユキ「……そう」
ユキ「せいぜい仲良くね」
声が震えていた。
泣いている?
……泣けばいい。私が流した涙の分だけ。
ただし、誰もお前を救わないけど。
千夏「お前に言われる筋合いはない」
千夏「お前なんかに言われなくたって、私と春菜はずっと一緒」
千夏「もう、お前がここでできることなんてない」
千夏「消えろ」
千夏「お前は、ここに来ちゃいけなかったんだ」
春菜を脅し、春菜を苦しめ、私に春菜を傷つけさせ、
私を脅し、私を傷つけ、春菜を傷つけ、
お前がもたらしたのは災厄の数々。
こいつが瞬いた。
目から涙がこぼれる。
勝った。
私はもう、こいつに脅えなくて済む。

472 :1:2008/08/24(日) 11:00:02.90 ID:S2ISHC400
千夏「じゃあね……」
余裕を見せつけながら、背を向けて礼拝堂に向かおうとした時。
ユキ「……来たくて来たわけじゃない」
そう、言って来た。
言い分くらいは聞いてやろう。
何の意味もないけど。
ユキ「友達が誰もいない所に、来たくなかった……」
千夏「……」
ユキ「だから、友達が欲しかった……そう思って、何が悪いの?」
千夏「……」
ユキ「春菜の本、読んだ時は嬉しかった……」
千夏「……?」
本?
ユキ「私と同じだって、きっと分かり合えるって……」
千夏「……」
ユキ「でも、春菜は違った……それでも、私と一緒にいてくれればそれで良かった」
千夏「……」
ユキ「なのに、春菜は……あなたと……」
千夏「……」
ユキ「でも、あなたとなら分かり合える、って思ったのも本当」
千夏「……」
冗談じゃない。
ユキ「私……人と仲良くする方法、あれしか知らない……」
千夏「……」
ユキ「仲良くするって、触れ合って、感じあう事だって……ずっと思ってた。そう教えられたから……」
千夏「……!」
千夏(教えられた? 誰から?)
……気にするな。こいつはもう消えていく人間だ。

473 :1:2008/08/24(日) 11:00:34.39 ID:S2ISHC400
ユキ「……他にも、あるの?」
ユキ「千夏は仲良くする方法、他に知ってる?」
千夏「……」
ユキ「教えて、千夏」
ユキ「どうして私、友達できないの?」
ユキ「どうして私、春菜やあなたに嫌われるの?」
ユキ「千夏や春菜には、どうして友達がいっぱいいるの?」
ユキ「あなたたちにはあって、私にないものって、何?」
表情の乏しい猫の顔が、くしゃっ、と歪み、俯いて、
しゃくりあげる声にあわせて、肩が震えた。
ユキ「教えて……ひとりぼっちは……イヤ」
千夏「……うるさい」
千夏「神様にでも訊いてみろ」
今度こそ私は背を向けて、礼拝堂に向けて歩き出した。
風に乗って、すすり泣きなんかが聞こえてくるはずがない。
川瀬ユキは人間じゃない。人を苦しめるためだけにここに来た、災厄そのもの。
泣いたり悲しんだりなんて、人のすること。心ある人間のすることだ。
私は勝ったんだ。私を傷つけた相手に復讐した。
もう負い目なんてない。何も恥じることなく、胸を張って生きていける。
……そのはずなのに。
千夏(何、この後味の悪さ……)
気持ち悪くて、吐き気がする……

474 :1:2008/08/24(日) 11:01:11.74 ID:S2ISHC400
礼拝堂に至るまで、色々なものがぐるぐると頭の中で回っていた。
春菜の本、「それ」しか知らないあいつ、友達が欲しかったあいつ、嫌われたくなかったあいつ、「教えて」って言ったあいつ、
あいつ、川瀬ユキ。
色んなことなんかじゃない、川瀬のことばっかりだ。
千夏(……どうして私が、あいつのことを考えなくちゃいけないんだ……!)
礼拝堂の扉を開き、近くの椅子に座った。
両手で顔を拭って、首を振る。
正面の祭壇。十字架と、ステンドグラス。
こごった薄闇に射しこむ光は、天へと至る道のよう。
……私は、間違っていない。
やられたからやり返した。あいつみたいな卑劣な手段を取らなかっただけ、私の方が遥かに上等なはず。
あいつは私たちを傷つけた。苦しめた。私は昨日、死ぬことさえも思った。全てあいつが引き起こしたこと。
春菜には許してもらった、けれど、私は春菜を襲うなんてしたくなかった……
ひろみ(私には、あなたを許すことも裁くこともできないけど)
あいつは裁かれなきゃいけない。そうされるだけのことをしたもの。
ユキ(私……人と仲良くする方法、あれしか知らない……)
ユキ(仲良くするって、触れ合って、感じあう事だって……ずっと思ってた。そう教えられたから……)
千夏(知らないで済まされるか! お前にそんな事を教えたのはどこのどいつだ!)
……あいつはもう、ここにはいない。別な学校に行ってしまった。
進級しても、私たちは校舎の中であいつの姿を見る事はない。
そして、別な所で、あいつはまた同じことを繰り返す。
Cは誰かと「不本意な形で」仲良くなって、また誰かが傷ついて、誰かはまたCを嫌って、憎み、呪いさえして。

475 :1:2008/08/24(日) 11:01:51.22 ID:QPWbc6ex0
ユキ(教えて……ひとりぼっちは……イヤ)
……ひとりが好きなヤツなんていない。
ユキ(好きよ……千夏)
ユキ(ほら、もっと脚を広げて見せて)
ユキ(乳首……気持ちいい?)
ユキ(春菜を捨てて、私だけのモノになって、千夏……)
思い出したくない記憶を自分の中に引き出す。
あれがあいつの本性。脳の奥が、ふつふつと滾り始める。
……本性なのは当然、あいつはあれしか知らないんだから。
ユキ(……他にも、あるの?)
ユキ(千夏は仲良くする方法、他に知ってる?)
ユキ(教えて……ひとりぼっちは……イヤ)
千夏「……うるさいっ!」
がんっ! と椅子の背板を殴りつけた。
千夏「お前なんて知らないっ!」
春菜「……チイちゃん?」
前の方で、物音がした。
見ると、ステンドグラスから下りる光の中に、赤いリボンをつけた女の子が立っていた。

476 :1:2008/08/24(日) 11:02:22.56 ID:QPWbc6ex0
千夏「……春菜」
千夏「おはよう……ずいぶん早いんだね」
春菜「うん……ちょっと早く目が覚めて……じゃなくて」
少し早足気味に、春菜がこちらの方に歩いてきて、隣に座った。
肩で触れ合う感触が、安心できた。
春菜「どうしたの、チイちゃん? すっごく具合悪そう」
千夏「別に……何でもないよ……」
春菜「ウソ」
千夏「……」
千夏「さっき、川瀬に会ってきた……」
春菜「……ユキ……さん?」
千夏「……別に、ただ出くわしただけ」
千夏「あいつはもう転校してるんだけど、卒業証書だけもらいに、今朝学校に来ただけだって」
千夏「だから、あいつはもうこの学校にはいない……」
春菜「……そう」
千夏「だから、色々言ってやったんだ……私と春菜はずっと一緒とか、お前は誰も好きじゃないとか」
千夏「人が傷ついたことなんて考えもしないとか、人間じゃないとか、ここに来ちゃいけなかったとか……あと何言ったっけ……」
春菜「……」
千夏「そしたら、あいつね……」
千夏「自分はそれしか知らなかったとか、どうして私たちに嫌われるのかとか、そんなこと言ってて」
千夏「ひとりぼっちはイヤだとか……今さら何言ってるんだろうね?」
春菜「チイちゃん……」
千夏「あいつ、泣いちゃってさ……ホント、ざまあ見ろって感じなのに」
千夏「……何でこんなに、気持ち悪いのかな」
春菜「……」
千夏「……私は間違ってないよね、春菜」
春菜「……」
千夏「あいつはひどい事をして、だから私はやり返した。あいつと私は敵同士」
千夏「百回殺して、八つ裂きにしたってまだ足りないはずなのに……」
春菜「……チイちゃん」

477 :1:2008/08/24(日) 11:03:02.50 ID:QPWbc6ex0
肩が抱き寄せられた。
ぴったりとくっついた肩は温かくて、
頭にくっつけられた頬は心安らいだ。
春菜「チイちゃんはね、優しい子なの。チイちゃんが思ってるよりも、ずっとずっと優しいの」
春菜「本当は、人を傷つけられるような子じゃないんだよ」
千夏「春菜……」
春菜「……ユキさんは……チイちゃんは、ユキさんにひどい事を言っちゃって、それを悔やんでる……それでいいじゃない」
千夏「でも……あいつは、悪いヤツで……」
春菜「私……ユキさんを悪い人って思ったこと、一度もないよ」
千夏「え?」
春菜「その……色々……されたりして、怖かったりしたけど……悪い人だとは、今でも思ってない」
千夏「……じゃあ、どんな人?」
春菜はしばらく考えてから、口を開いた。
春菜「……寂しい人じゃないかな」
千夏(……!)
春菜「チイちゃんと、その……保健室でするまで、ユキさん、ずっと私にくっついてた」
千夏「それ……春菜を脅してたから」
春菜「今は……少し違うと思う……」
春菜「ユキさん、私の部屋に、オカユ持ってきてくれたりしてたし……」
その後、あいつは、春菜を……
……あれ? 何で私、怒らないの?
春菜「……そういえば、私の風邪が自分のせいじゃないって聞いて、ホッとしてたし……」
春菜「……最初は別に、私を脅したりなんてこともなかったし……」
……何か。
……何か、大事なことを忘れてるような気がする。
……
……
……

478 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 11:03:46.07 ID:ycc3u+/+0
むひょう!しえん

479 :1:2008/08/24(日) 11:04:02.75 ID:QPWbc6ex0
千夏「春菜」
春菜「何?」
千夏「春菜ってさ……最初にあいつと、何あったの?」
春菜「え? 最初にって……」
千夏「……」
千夏「その……思い出したくないんだったら、別に……」
春菜「うん、そうじゃないの……そうじゃなくて、今から考えると、すっごくつまんない話で……」
春菜「……聞いても、ホントに怒らない?」
……あいつのことで、これ以上私が怒るようなことなんて何もないと思うけど。
千夏「怒らないよ……良かったら、話して」
春菜「本があったの」
千夏「本?」
春菜「うん……それ……その、ちょっとエッチな本で……」
千夏「それ……レモン・ティーンみたいなヤツ?」
春菜「違う。小説。秋穂ちゃんに貸してもらったの」

480 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 11:04:38.98 ID:HI0BoW8C0
出かけてくるから夜まで残ってたら嬉しいな・・・

481 :1:2008/08/24(日) 11:04:55.13 ID:QPWbc6ex0
秋穂(いいえ。愛についてのお話です)

千夏「……ラブストーリーか、何か?」
春菜「うん……女の子同士の……」
話を聞いて、体が少し強張った。
春菜「ほら……やっぱり怒ってる」
千夏「……いや、大丈夫。怒ってない」
春菜「……それ、教室の中に置きっぱなしにしちゃって……」
千夏「……そんなもの学校に持ち込むな」
春菜「秋穂ちゃんに、返そうと思ったの……でも、私、授業中、倒れて……」
春菜「目が覚めて、掃除の後の机チェックのこと思い出して、慌てて教室戻ったら……ユキさんがいて」
春菜「その……私の本読んでたの」
千夏「……返してもらえばよかったじゃない」
春菜「それが、その……できなくて」
春菜「……やっぱり怒ってる」
千夏「怒ってないってば……で?」
春菜「ユキさんが本読んでる姿が、あまりきれいで、私、何言っていいか分からなくて……」
春菜「そしたら、ユキさん、この本ちょうだいって言ってきて、私、キスされて……」
……
……

482 :1:2008/08/24(日) 11:05:55.36 ID:QPWbc6ex0
春菜「……怒らないって言ったのに……」
千夏「怒ってない、怒ってない、怒ってない」
春菜「怒ってるよぅ……」
千夏「……で? 続きは?」
春菜「それで私、本のことユキさんにみんなには内緒にしてて欲しいって言ったら……」
春菜「『わたしのものになれ』って……それで……」
……
……

483 :1:2008/08/24(日) 11:07:04.69 ID:QPWbc6ex0
ここまで。
ここまで話がこじれなくて済む方法はあった。確かにあった。
春菜が一言「それ返して」って言えば済む話だったじゃないか。
で、返してもらった後で「内緒にしてて」って言って、それで何か言ってくるようなら、「それならお前も同罪だ」みたいに言えば……
千夏(春菜にそんなこと言えるわけないか……)
でも、「それ返して」くらいだったら普通に言えただろう……
いや、それネタにしてあいつが「わたしのものになれ」なんて言ってくるかも……
でも、それならそれこそ「持ってたら卒業取り消し」とかの話になるし……
……
春菜「……チイちゃん?」
全身から、力が抜けた。
私たちは、たった一冊の本に振り回されていたってわけか……
……

484 :1:2008/08/24(日) 11:07:38.37 ID:QPWbc6ex0
何か、バカみたい……。
千夏「私たち……何やってたんだろうね……」
春菜「うん……」
ホント、みんなバカ……
二ノ宮……変な本貸してるんじゃないよ……
……
千夏(みんなバカ、じゃあないか……)

485 :1:2008/08/24(日) 11:12:16.08 ID:QPWbc6ex0
私は、春菜に身をすり寄せた。
こんなに春菜にくっついて、春菜もそれを許してくれて、
ついこの前までなら、考えられないこと。
春菜だけじゃなくて、私を気遣ってくれる色々な人の心も知った。
……そのうちの一番大事なもののひとつからは、別れ際に素敵な祝福をしてもらった。
私は、私たちは、幸せになる。
春菜に寄せていた体を起こしながら、春菜の体に腕を回す。
目の前には、私がこの世で一番愛しい人の顔。
抜けてて、ぼんやりしてて、可愛くて仕方ない人。
千夏「春菜」
春菜「チイちゃん……」
千夏「ずっと……一緒にいようね……」
春菜「……うん」
私たちは、どちらともなく唇を寄せ合い、
目を閉じて、キスをした。

ttp://wktk.vip2ch.com/vipper97269.bmp

486 :1:2008/08/24(日) 11:13:59.27 ID:QPWbc6ex0
そろそろ教室に集まる時間。
礼拝堂を出ると、真っ青な空を背景に、雪が舞った。
春菜「うわぁ……」
春菜が無邪気に顔を輝かせるのが愛らしい。
風花……晴天に舞う雪……
雪……ユキ……
白くて、冷たい。
ユキ(教えて……ひとりぼっちは……イヤ)
春菜「……チイちゃん?」
千夏「……ううん、何でもない」
千夏「教室行こう」

487 :1:2008/08/24(日) 11:15:06.88 ID:QUS248uG0
「なぜ、わたしは母の胎にいるうちに死んでしまわなかったのか。
 せめて、生まれてすぐに息絶えなかったのか」
 (「ヨブ記」:3.11)

488 :1:2008/08/24(日) 11:15:40.24 ID:QUS248uG0
アンジェラ「卒業式、開式の辞」
卒業式、本番。
式次第は、予行演習の通りに進んでいく。
予行演習の時と違うのは、さすがにあくびを噛み殺しているような人間がいないとか、
やはり卒業式ということで、センチになって泣いている人間がいくらかいるらしい、ということ。
卒業生、父兄、先生方、シスター、講堂に集まっている人の数は、何百人、という規模だろう。
そして、この中で、あいつのことを考えている人間なんて、間違いなく私一人。
……

489 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 11:15:44.85 ID:R/UV0LIiO
死縁

490 :1:2008/08/24(日) 11:16:16.62 ID:QUS248uG0
礼拝堂から教室に入った私は、最初に柳瀬につかまえられ、「心配させるな」という台詞とともにヘッドロックをかけられた。
その後、私の顔に覇気がないことを見抜かれて、柳瀬に告解を迫られたのだ。
正直何をどう話していいのか戸惑っていたら、早坂がやって来て、「AさんとBさんはどうなった?」と訊ねてきたので、
千夏(そのCの話なんだけど……)
という形で説明はできた。
千夏(AとBは、Cにさんざんな目に遭わされたけど、CはCで、単純にAやBと仲良くなりたかっただけらしいんだ。そのやり方が、AとBには嫌なものだったんだけど)
千夏(Cには……人と仲良くするってことは、Hなことをしたりされたり、っていうものだったみたいで……)
槇(それで?)
千夏(……何でCはそうなったのか、とか、AやBが傷つかないで済む方法はなかったのか、とか……考え出すと、ちょっとね)
槇(……)
槇(CさんがそうなるにはCさんの事情があったんでしょうし、AさんやBさんが傷つかないで済む方法もあったかも知れないわね)
千夏(早坂もそう思う?)
槇(でも、知ったところで今さらどうにもならないわ。時間は元には戻せないし、CさんはもうAさんとBさんの前から姿を消した)
槇(きっと、もう会うことはないでしょう……別に死んだわけじゃないから、世の中のどこかにはいるだろうけど)
槇(こっちから会いに行かない限りは、CさんとAさんBさんが出会うことは永遠にない)
槇(それの何が納得できないの?)
千夏(……)
千夏(Cは……別な場所に行っても、きっと同じことを繰り返す。ひとりぼっちで、追い詰められて、また「友達」を求めて、別なAやBに嫌われて、怖がられて……)
槇(それこそCさんの問題じゃない? 縁の切れたBさんが気にしても仕方ないわ)
槇(落ち着かないっていうのなら、神様に祈ったら? Cにご加護と祝福を、って)
槇(それで、AさんBさんCさんのお話はおしまい……もうAさんとBさんだけでいいじゃない?)
……

491 :1:2008/08/24(日) 11:16:49.87 ID:QUS248uG0
多分、いや、間違いなく、それが一番正しいんだと思う。
私もあいつのことを忘れて、あいつとのことを忘れて、
私を救ってくれた友達と、何より春菜のことを見て生きていけばいい。
あいつがひとりぼっちなのは、あいつの問題。
友達が作りづらいっていうのも、友達についての考えが大きく間違っているのもあいつの問題。
……それはそれで、同情できるようなものなのかも知れないけど、
私には関係がない。
何がいけなかったのかをさかのぼればキリがない。
諸悪の根源であるあいつにだって、探せばそれなりの事情がありそうだった。これはきっと、そういう話。
槇(なっちゃったものはしょうがない。大事なのは、これからどうするか)
これは昨日の早坂の台詞。
大事なのは、これから。
私たちには未来があって……そして、あいつにだって未来がある。
知らない場所に放り出されて、ひとりぼっちで、仲良くなれる相手を探して、また人を傷つけていくような未来が。
槇(きっと、もう会うことはないでしょう……別に死んだわけじゃないから、世の中のどこかにはいるだろうけど)

492 :1:2008/08/24(日) 11:17:28.00 ID:QUS248uG0
……そう。
今目の前にいないだけで、
探して、手を伸ばせば、届くところにあいつはいる。
私のクラスの名前が読み上げられる。
もちろん「かわせ」の名前はない。
あいつのことを考えてる人間は……
担任「佐倉木千夏」
千夏「はいっ」
この講堂で、多分私だけ。
転校してきた当日、休み時間にあいつに群がっていた連中はいくらでもいただろうに。

卒業式が終わった。

493 :1:2008/08/24(日) 11:18:10.26 ID:QUS248uG0
心が晴れないまま、春菜と一緒に講堂を出る。
春菜「卒業式、終わったね」
千夏「うん……」
春菜「私たち、もう●等部じゃないんだね」
千夏「うん……」
春菜「……チイちゃん」
千夏「……うん」
秋穂「春菜先輩」
秋穂「ご卒業おめでとうございます」
春菜「うん、ありがとう」
千夏「……」
秋穂「校舎が別々になってしまうのが残念です」
春菜「そんな……寄宿舎で会えるじゃない」
秋穂「そうですわね」
千夏「……二ノ宮」
声をかけられてから、二ノ宮は初めて私の方を見た。
秋穂「佐倉木先輩も、ご卒業おめでとうございます」
いかにも「ついで」なのが分かり易いな。
千夏「ああ、ありがと……あのさ、今から何か、予定ある?」
秋穂「? 特には、ございませんが……」
千夏「ちょっと、力貸して欲しいんだけど……いいかな?」
秋穂「私にできることならば……」

494 :1:2008/08/24(日) 11:19:29.86 ID:QUS248uG0
寄宿舎、春菜の部屋。
テーブルを囲んで3人で、紅茶をすすりつつ、
うちひとりの二ノ宮は、私の聖書を開いてアンダーラインを引いては、ページに付箋を貼っていってる。
二ノ宮に頼んだことは、聖書の「それっぽい」文言の検索。
「それっぽさ」の基準は、「寂しい人間に贈られる言葉」というものだ。
……聖書講読の授業はやらされているし、この手の「神の愛」というのを語っている文言ならば、私だっていくつかは知っている。
けど、今朝の薫みたいに、「なになに書の第何番目の章」みたいには、パッとは出てこない。
それにしても……
春菜「秋穂ちゃん、すごいねえ……」
秋穂「別に、大した事ではありませんわ」
そう答えている二ノ宮の手には、あちこちから付箋が生えた私の聖書がある。
購買で買ってきた付箋100枚のパックは、もう半分近くなくなっている。
しかも、本はまだまだページを残している。
ページをめくり、目当ての個所にラインを引き、付箋を貼る。
その作業の流れにはわずかな遅れもなく、一切のためらいがない。
さすがは聖書。救いの言葉のオンパレード。
いや……それらをテキパキと探し出す二ノ宮も相当すごい。
春菜「ちょっと……トイレ行って来るね」
春菜が中座して、部屋の中には私と二ノ宮だけになる。

495 :1:2008/08/24(日) 11:20:02.57 ID:QUS248uG0
二ノ宮が口を開いた。
秋穂「神様が人の孤独を慰める……そんな言葉を探して、どうされるおつもりです?」
千夏「人に贈る。さびしくって仕方ないっていうバカが知り合いにいてね……」
秋穂「……春菜先輩……とは思えませんね」
千夏「全然違う」
秋穂「……」
秋穂「川瀬先輩……ですね」
千夏「……」
千夏「あいつに先輩なんてつけることない。飛び級してるから、歳は二ノ宮とかと同じはず……ひょっとしたらもっと下かも」
秋穂「『あなたの敵を愛しなさい』、ですか? 博愛主義者なんですね」
千夏「そんなんじゃない……」
秋穂「……愛してしまいましたか?」
千夏「……冗談でも、今度そんなこと言ってみろ」
千夏「ただじゃおかない」
秋穂「恋だけが愛ではないでしょう?」
そう言って、また紅茶を一口すする。
秋穂「……言葉を贈って、何か、意味があるんですか?」
千夏「気休めくらいにはなるんじゃない?」
秋穂「どなたの?」
千夏「……寂しがってるバカのだよ」
秋穂「あなたの良心の、ではありませんか?」
……睨んだ。

496 :1:2008/08/24(日) 11:21:20.89 ID:QUS248uG0
二ノ宮は、ページに目を落としたままで、作業を続けている。
と、その手が止まった。
秋穂「……このしおりには、何か意味が?」
千夏「えーと、イザヤの60章?」
秋穂「はい」
千夏「それ、後輩から贈られた言葉」
秋穂「……ははぁ、なるほど……」
作業の手を止め、しばらく二ノ宮は「起きよ、光を放て」から始まる個所を読み進めた。
秋穂「……ふふっ。佐倉木先輩に相応しいかもしれませんね」
千夏「……あちこちから人に押し寄せられても困るよ」
秋穂「誇らしいですね。こんな言葉贈られたら……」
千夏「うん、だから……」
だから、適当な聖書の言葉を拾って、伝えればいい、なんて思った。
「神様にでも訊いてみろ」って言ったのは私。だから、その神様の答えを探すのくらいは私の義務だろう、なんて。
……結局二ノ宮の力借りてるけど。
秋穂「……誇らしいのは、その後輩の方が、佐倉木先輩を好きだったからですよ」
言いながら、二ノ宮はしおりの挟んである個所にも、ラインと付箋の作業を加えていく。

497 :1:2008/08/24(日) 11:21:51.87 ID:QUS248uG0
千夏「知ってるよ……そんなこと」
秋穂「心のこもってない言葉なんて、落書きや騒音と代わりありません」
秋穂「川瀬先輩が神様を信じていれば話は別でしょうけど……そういった方は最初から孤独ではないでしょう」
千夏「……神様信じてるようには……あまり見えなかったな」
秋穂「なら……こんな言の葉の数々を投げたって、意味はありませんよ」
秋穂「それよりも、佐倉木先輩が、自分の言葉ではなむけの言葉を贈られた方が遥かに心に響きます」
千夏(お前の汚い口で『好き』って言うな!)
千夏(お前は誰も好きなんかじゃない)
千夏(お前のことなんか知らない)
千夏「……だろうね。とても心に響くだろうさ」
秋穂「それに、借り物の言葉は危険です。雄弁過ぎて、本当に伝えたいことが伝わらなくなるかも知れません」
千夏「……あいつに伝えたいことなんて、私にはないよ」
千夏「でも、誰かがあいつに何かを伝えなきゃいけない。そうじゃなきゃ……」
秋穂「だから、聖書の言葉……ですか?」
千夏「まあ……ね」
気がつけば、私は頬杖をつき、
二ノ宮から目をそらしていた。

498 :1:2008/08/24(日) 11:23:18.78 ID:9/Ej+Kxt0
やっぱりこの後輩は苦手だ。隠し事なんかできやしない。
秋穂「佐倉木先輩は、お優しい方ですね」
……うるさい。
秋穂「でも、あなたのそういう所、結構好きですよ」
千夏「私のことは嫌いなんじゃなかったっけ?」
秋穂「好きになって欲しいですか?」
千夏「……どうすりゃいいの?」
秋穂「私だけのものに、なってくだされば」
千夏「真っ平」
秋穂「じゃあ嫌いです」
千夏「私もそれでいい」
今言ったことが、どこまで冗談なのか……
千夏(いや、きっと全部冗談)
そうに決まってる。
千夏「二ノ宮」
秋穂「はい?」
千夏「春菜にさ……あんまり変な本、貸さないであげてね」
秋穂「……」
秋穂「自重します」
ドアが開き、春菜が戻る。
春菜「……? 何か、あった?」
何とも言いようがない微妙な空気に、春菜は複雑な表情を見せた。

499 :1:2008/08/24(日) 11:23:54.64 ID:9/Ej+Kxt0
秋穂「……まあ、こんな所でしょうか?」
ティーカップの紅茶を飲み干し、二ノ宮が聖書を私に差し出した。
本の天側、横側からびっしりと生えている付箋が、なかなか圧倒的だった。
差し出された聖書を受け取り、付箋の個所を適当に開いてみた。
……ヨハネによる福音書、第14章・18節。
 「わたしは、あなたがたをみなしごにはしておかない。
  あなたがたのところに戻って来る。」
……そのすぐ後、第14章・27節。
 「わたしは、平和をあなたがたに残し、私の平和を与える。
  わたしはこれを、世が与えるように与えるのではない。
  心を騒がせるな。おびえるな」
……マタイによる福音書。第11章・28節。
 「疲れた者、重荷を負う者は、だれでも私のところに来なさい。
  休ませてあげよう」
……その後ろ、第28章・20節。
 「わたしは世の終わりまで、いつもあなたがたと共にいる」
……イザヤ書。第43章・4節。
 「わたしの目にあなたは値高く、貴く
  わたしはあなたを愛し、あなたの身代わりとして人を与え
  国々をあなたの魂の代わりとする。
  恐れるな、わたしはあなたと共にいる」
……。
……。

500 :1:2008/08/24(日) 11:24:27.43 ID:9/Ej+Kxt0
春菜「うわあ……アンダーラインでびっしり……」
隣に来て、聖書をのぞきこんだ春菜が声を上げる。
偉そうで、自信に満ちて、
何て力強い言葉……。
千夏「……人が人に贈る言葉じゃないね、これ」
秋穂「それはそうでしょう。もともと神様が人に向けられた言葉だそうですから」
千夏「『あなた』とか『わたし』とかって、いったい誰だよ?」
秋穂「『わたし』は神様で、『あなた』は人間一般ぐらいの意味でしょうね。厳密にはユダヤ教徒とかキリスト教徒とか、ということになるでしょうけど」
秋穂「人が人に言葉を向けるというのなら、さらに違う話でしょう」
千夏「……これの『わたし』は私じゃない」
秋穂「言葉を聞く『あなた』は、果たしてそう思うでしょうか?」
秋穂「『あなた』が神様を信じていないというなら、なおさらです」
本を閉じた。
神様は、大事な時に限ってあまり役には立ってくれない。
アンジェラがこんなことを聞いたら、ひとしきり正論と説教が(例えば「それを為すべきはあなた自身です。主がお与えになった任務云々」なんて)繰り出されるんだろうけれども、
千夏(冗談じゃない)
何で私が、こんなご大層な言葉を伝えられる?
しかも、あいつなんかに?
春菜「チイちゃん……」
春菜が、私の手に自分の手を添える。

501 :1:2008/08/24(日) 11:24:58.60 ID:9/Ej+Kxt0
きっと、心配そうな顔で私のことを見てるんだろうけど、
何をどう、春菜に伝えていいのか、春菜と分かち合えばいいのか分からない。
秋穂「……どうやら、私はあまりお役には立てなかったようですね……」
千夏「そんなことないよ……十分すぎるくらいに言葉は見つかった」
十分というか、十二分というか。
おかげで、私の手に余る。
秋穂「佐倉木先輩は、本当は分かってらっしゃるはずです。自分が何をしたいのか、しなければならないのか」
秋穂「ただ、それと自分とが、折り合いがつかないだけですよ」
千夏「……」
千夏「私のしたいことって、何?」
秋穂「それはご自分で見つけてください。私が口にすべきことではありません」
秋穂「……そして、思い至れば、それを為すべきかどうか悩んで」
秋穂「結局あなたは、自身に下された使命を果たすのでしょう」
千夏「どうして分かるの?」
秋穂「あなたは陸上選手ですから。体全部で、いつだって前に向かって走る方でしょう?」
千夏「……それとこれとは関係ない」
秋穂「でも、あなたは知ってるんです。やらなければ、自分はきっと後悔する」
秋穂「……そんな考え方、私には到底できませんけど。先輩のそういう所、好きです」
ユキ(私、あなたが好きよ。あなただって……)
千夏「あんまり簡単に、人に『好き』っていうもんじゃないよ」
千夏「すごく大事な言葉なのに、信用されなくなる」
秋穂「嘘を言ったつもりはありませんけど……ご助言はありがたく受け取っておきましょう」
二ノ宮は立ち上がった。
いかにも優雅で、ここ何日かずっとじたばたしていた(そして今も何かに足掻いている)私とは、大違いだ。
秋穂「それでは失礼いたします」
秋穂「『友よ、しようとしていることをするがよい』」

502 :1:2008/08/24(日) 11:25:38.91 ID:9/Ej+Kxt0
……またか。
千夏「最近、その罰当たりな冗談って、下級生で流行ってる?」
秋穂「? 何のことでしょう?」
千夏「別に……何でもない。じゃあね」
秋穂「それでは……春菜先輩、お茶をごちそうさまでした」
春菜「じゃあね、秋穂ちゃん」
秋穂「はい……そうそう、ひとつだけ、わたしからも先輩方にご忠告を」
春菜「忠告?」
千夏「何だよ?」
二ノ宮は、意地悪そうな笑みを浮かべた。
秋穂「ご自重ください」
表情を強張らせた私たち二人を残し、二ノ宮は部屋を出て行った。

503 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 11:25:40.74 ID:dLaJVNgt0
ウホ
意味ある文字列で400kbとはすごい

504 :1:2008/08/24(日) 11:26:22.58 ID:9/Ej+Kxt0
千夏(余計なお世話だ、全く……)
春菜の部屋。今は、私と春菜のふたりっきり。
鍵をかければ密室。すぐ隣には寄り添う春菜。ご丁寧なことにベッドまである。
そして、目の前には付箋の生えた聖書。人の口に上らせるには、ありがたくも激しい御言葉の数々。
私は正座していた足を崩し、
膝を抱えて、テーブルの上の聖書を見つめた。
春菜が立ち上がり、私の背後に回り、
私の頭を抱きかかえた。
心地よい温もりに守られて、
私はやっと、自分の中のモヤモヤを吐き出せる。
春菜「チイちゃん……」
千夏「春菜……私のやりたいことって……何だと思う?」
春菜「……」
春菜「……チイちゃんは、ユキさんを助けたいんだよ」
千夏「……そんな事して……何になる?」
千夏「あいつが私たちにしたことが、なくなるわけじゃない……!」
春菜「だから、もうこんなことを繰り返させちゃいけないんでしょ?」
分かってる……けど!
千夏「……そう思うのが……どうして私なんだよ……」
千夏「他にはいないの? あいつのことを普通に心配したり、考えたりできるヤツって?」
春菜「……」
春菜「チイちゃんは……優しいから」
また、春菜が私の頭を撫でる。
春菜「秋穂ちゃんも、薫ちゃんも、チイちゃんのそういう所好きなんだよ」
千夏「……私は……今は自分のこういう所、キライ」
春菜「好きになろうよ……それ、すっごく素敵な所なんだよ」

505 :1:2008/08/24(日) 11:27:10.75 ID:9/Ej+Kxt0
私は、優しくなんかない。
いつも春菜に怒っていたし、自分にまとわりついてくる薫のことを邪険にしてたし、
二ノ宮には悪意や敵意や警戒を持ってたし、早坂にはしょっちゅう腹を立ててた。
機嫌が良ければ、多少は人当たりはよくなっただろうとは思うけど。
そして、あいつには憎しみさえ抱いた。
憎悪だけで、生まれて初めて人を殴った。
……それだけじゃない。
千夏「……春菜」
春菜「何?」
千夏「私……春菜よりも前に、あいつに会っているんだ」
春菜「え?」
本当に優しければ、危なっかしい子の側についてやるってことが、できたはずなんだ。
千夏「春菜が教室であいつに出会う前に……生徒用玄関で、『職員室はどこ』って、訊いて来た」
千夏「最初に、きれいな子だって思って……次に、危なっかしい子だと思った」
千夏「春菜みたいに、道に迷ったりしないかな、なんて」
春菜「もう……チイちゃんったら」
千夏「もしも、さ……あの時、一緒に職員室までついていって、あいつとのきっかけができてれば……」
千夏「あいつが変なこと始める前に、私は止められていたかも、なんて……」
春菜「……」
春菜「チイちゃん……ユキさんのこと、好き?」
千夏「キライ。大嫌い」
千夏「好きになんて、なれるわけない……私はそこまで優しくなんてない……」
春菜「でも……ひょっとしたら、仲良くなれたかも知れないよね……」
千夏「……ひょっとしたら……ね」
代償、なのかも知れない。
柳瀬が昨日言っていたヤツだ。私はそれを探している。
……代償? 

506 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 11:27:18.28 ID:ti1fKy5E0
今何割くらい?

507 :1:2008/08/24(日) 11:28:42.38 ID:9/Ej+Kxt0
何が、何の代償になる?
千夏(……傷ついた、みんなのだ)
春菜と、私と、
……あいつ自身の。
多分、あいつだって、誰も傷つけることはなかったし、傷つくことはなかった。
手を伸ばし、聖書を手に取った。
槇(落ち着かないっていうのなら、神様に祈ったら? Cにご加護と祝福を、って)
……私も、さして敬虔な子じゃない。そこまで神様を信じられない。
祈るだけで願いがかなうものなら、世界はとっくに平和になっているはず。
結局願いは、人の手で、自分の手でかなえるのが確実だ。いつだって。
千夏(こんな……大それた言葉を届けることが?)
……違う。
私がやりたいことは……私が、あいつを助けるために……やりたいことは……
春菜「みんなで仲良く……友達になれたかも知れないのにね」
……友達。
……。
千夏「あいつが思ってるような友達になんて、なれないよ」
春菜「でも、私たちが思ってるような友達になら、なれたかも」
……友達。
千夏(私の友達って……)
……。
柳瀬。
早坂。
二ノ宮。
薫。
……こいつらがいなかったら、今の私はない。

508 :1:2008/08/24(日) 11:31:07.65 ID:9/Ej+Kxt0
昨日、私はひとりぼっちで、満ち足りた気持ちで死を見つめていたのに、
頼んでもいないのに私の中に踏み込み、絶望の中から私を引きずり上げ、
勝手に私を救い、気持ちを上向きにさせた。
薫だってそう。
とっくに私は囚人みたいにして生きていくことにしていたっていうのに、
春菜を抱き込んで、無理矢理私をよみがえらせた。
……ひとりぼっちは人を絶望させる。絶望は人を死へと向かわせる。
それを私は知っている。
そして、あいつが今孤独だってことも、私はよく知っている。
……ずっと、そうだったのだろうか。
この学校にくる前から、あいつはずっと……ひとりで。
千夏(あいつは……昨日の私をずっと繰り返しているのかな)
一分ごと、一秒ごとに、ひとりぼっちになって、絶望して。
千夏(だから……誰かに触れたかった?)
手を触れる。春菜の手に。
私が触れると、春菜の指が動いて、私の指を穏やかに巻き込み、つかまえる。
確かな温もりと、感触。
千の言葉を尽くしても、この確かさは説明できない。
けれど。
ただ体が触れているだけじゃ、ダメだ。そんなの友達じゃない。
本当の友達っていうのは……もっと……
もっと、ずっと確かで、強くて、深くて……友達を決して孤独になんてしておかない。
例えば、ひとりじゃどうしようもない孤独を抱えたまま、背中を見せて消えていくような人間をそのままにはしておかない。




>>506
12時までには終わると思う

509 :1:2008/08/24(日) 11:31:53.77 ID:9/Ej+Kxt0
でも……
あいつは……
千夏「……春菜」
春菜「何?」
千夏「私……行かないと」
春菜「うん」
千夏「多分、私じゃなきゃダメなんだ……今、この学校であいつのこと考えてるのは私だけだから」
春菜「うん」
千夏「でも……怖い」
春菜「……何が?」
千夏「私……あいつに……されてて……」
春菜「……」
千夏「私、今、あいつのこと考えてて……もしそれが、そのせいだったら……」
春菜「……チイちゃん」
春菜が、耳元に唇を寄せた。
春菜「チイちゃんは私のものだよ」
千夏「……」
春菜「もう……絶対誰にも渡さない。私が一番、チイちゃんのこと好きなんだから」
千夏「春菜……」
春菜「どこかに行きそうになったら、ちゃんとつかまえる。チイちゃんのこと離さない」
春菜「この前みたいなことがあっても、逃げない。私、必ずチイちゃんを取り返す」
春菜「……もう起きて欲しくないけど……」
千夏「起きないよ……起きないし、起こさせない」
千夏「私は春菜のなんだもの」
私を抱きしめる腕に、力が込められる。

510 :1:2008/08/24(日) 11:32:25.13 ID:nsb0aY2q0
嬉しいけど、ちょっと不満。
千夏「……力、足りない」
もっと、体がバラバラになるくらいに抱きしめてくれたっていいのに。
春菜「……そんな……じゃあ……力いっぱい……」
春菜「うぅ〜ん……」
千夏「まだまだ」
幸せな拘束に身をゆだねながら、私は付箋の生えてる聖書を見た。
ごめん、二ノ宮。せっかくやってもらったのに、意味なかったみたい。
やっぱり人には、人の口から人の言葉を伝えることにするよ。
何を伝えたいのか……正直自分でもよく分からないけど。
……いや、ひとつだけ。
あいつには絶対に伝えなければならない神様の言葉があった……

511 :1:2008/08/24(日) 11:32:56.49 ID:nsb0aY2q0
聖書を取り上げ、伝えるべき個所にラインを引いて、ベタベタと付箋を貼ってから、
私たちは舎監の先生の所に行って、あいつの連絡先を教えてもらった。
住所は、電車とバスで約1時間ちょいのあたり。
あと、携帯の番号が記してあったのは僥倖だった。
自分の携帯のフリップを開いて、あいつにつながる番号を押す。
数回の呼出音の後で、待ち受けメッセージに切り替わる。
留守電「お客様がおかけになった電話は、ただいま、留守番電話サービスセンターで、メッセージをお預かりしております。発信音の後で、約3分以内で、お名前とメッセージをどうぞ」
……ピーッ。
千夏「川瀬? 佐倉木だけど。話があるから、これからあんたの家に行くね」
千夏「逃げるなよ」
千夏「……次、私の番なんだろ?」

512 :1:2008/08/24(日) 11:33:36.48 ID:nsb0aY2q0
「あなたに書くことはまだいろいろありますが、インクとペンで書こうとは
 思いません。それよりも、近いうちにお目にかかって親しく話し合いたい
 ものです。あなたに平和があるように」(ヨハネの手紙 三:13〜15)

513 :1:2008/08/24(日) 11:34:17.71 ID:nsb0aY2q0
昼下がり。
駅近郊の、塔みたいな高級マンション。
その前の、中庭にあるベンチに並んで二人。
舎監の先生から教えてもらった番号の部屋は、ずいぶんと高いところにあって、
外からだと、まだ人が住んでるのかどうか分からない。
ここに来てから約30分が経過。
携帯電話は、相変わらず留守電。
自宅の電話にも何度かかけてみたけど、やっぱり留守番電話だけ。
一応メッセージは吹き込んだ。
……もうちょっと、平和な言い方で。
春菜「連絡……来ないね」
千夏「まあ……無理もないよ」
私がそうだったように、向こうにとってもこっちは敵なんだし。
殴りつけたり、面と向かって罵り倒した相手となんて、普通は顔を合わせたくはないだろう。
……本当は、私だってそうだ。
それでもここに来てるのは、来ないと後悔するって分かってるからだ。
……二ノ宮の言う通りになってるのが癪だった。
千夏(やっぱり私もあいつのこと嫌いだ)
フリップを開き、液晶を見た。
あいつにつながる電話番号は、発信履歴だけ。
着信履歴にはない。
千夏(答えがないのが答え……なのかな)
そのうち、番号も変わるのかも知れない。
そうして、私たちとあいつのつながりは、完全に切れる。
……それもまた、あいつからの雄弁な答え。
あいつからの反応があるだけ、まだ割り切りもできるかも知れない。

514 :1:2008/08/24(日) 11:35:14.27 ID:nsb0aY2q0
千夏(また二ノ宮の言う通りだ……)
結局、私自身の気休めにしかならない。
千夏「ごめんね、春菜。ヘンなことにつきあわせて」
春菜「気にしないで、チイちゃん。私が勝手についてきたんだもの」
これもまた、ここに来てから何度目かになるやりとり。
春菜「チイちゃん……道に迷いもしないで、よくこんな所まで来れたねえ」
千夏「最近の携帯電話は便利なんだ。色々機能もついてて」
春菜「すごいなあ……でも、高いんでしょ?」
千夏「モノによるよ。型落ちのヤツだったら、お小遣い程度で十分」
千夏「春菜が使ってるのって、どういうタイプ?」
春菜「……良く分かんない」
千夏「? だってゆうべ……」
ゆうべ、というキーワードに、
私たちふたりは、同時に顔を赤くした。
千夏「その……ほら……昨日、携帯で連絡してきて……」
春菜「……あれ……人から貸してもらったの」
千夏「へえ……そうなんだ」
千夏(春菜……人から借りた携帯で……私と……)
春菜「うん……槇さんから、貸してもらって……」
千夏「……」

515 :1:2008/08/24(日) 11:36:17.13 ID:nsb0aY2q0
あいつ……意外と抜け目ないヤツ……。
っていうか、全部筒抜け?
千夏「か、帰りにさ、お店とかのぞいてかない?」
春菜「で、でも私、今そんなにお金ないし。携帯電話って、色々面倒そうだし」
千夏「別に今日すぐじゃなくてもいいじゃない? 契約の仕方とか、私がちゃんと教えたげるから」
春菜「け、契約?」
千夏「そう、契約。自分専用の電話線引くようなもんだし」
春菜「うう……どうしようかなぁ……」
千夏「春菜……私とお喋りするの、嫌なの?」
春菜「そ、そんなことないけど……」
千夏「私、毎晩すごく寂しかったんだよ? ひとりぼっちで、春菜に会いたくて、声聞きたくて……」
春菜「チイちゃん……」
千夏「春菜……私のこと、つかまえててくれないの?」
春菜「……チイちゃん、あれ」
千夏「こら。話そらさないの」
春菜「そうじゃなくて……ほら」
春菜が指差す方を見ると、

516 :1:2008/08/24(日) 11:36:51.55 ID:nsb0aY2q0
中庭の門から入ってくる、マリエルの制服。
少し小柄な、左右に垂れたツインテールの黒い髪。
いつもそうだったように、その姿は今もひとりだけで、
その顔がこちらを向いて、動きが止まった。
千夏(……)
千夏(待ってたよ、ずっと)
私は立ち上がり、
あいつに向かって、歩を進めた。
呆然とした表情で、立ち止まったまま、
あいつは私が近づくのを待っている。
歩を止めた。
その間合い、約数歩。
それは、二人の距離そのもの。
ゼロになることこそないけれど、広がりもすれば縮まりもする。

517 :1:2008/08/24(日) 11:37:23.70 ID:nsb0aY2q0
ユキ「……どうして……あなたが、ここに……?」
千夏「電話しただろ、携帯に」
千夏「留守電聞いたら、連絡ぐらいしろよ。嫌われるぞ」
ユキ「携帯……持ち歩いてない」
ユキ「電話かかって来ることなんて、ないもの」
千夏「……これからは持ち歩くようにするんだね」
ユキ「……それで?」
ユキ「私に何か用?」
千夏「用があるから来たんだよ」
私はカバンから、聖書を取り出した。
二ノ宮には申し訳ないけど、貼られた付箋は全部剥がした。今は本当に大事な所にしか、付箋は貼ってない。
私が、一番こいつに言い聞かせたい所にだけ貼ってある。
間合いを詰めた。距離、約一歩強。

518 :1:2008/08/24(日) 11:37:55.18 ID:nsb0aY2q0
千夏「これ、あんたの」
千夏「付箋貼ってあるところ、ちゃんと読んでおくように」
こいつは、差し出された聖書をガラクタでも見るような目で見て、
一言、
ユキ「……いらない」
千夏(予想してたよ)
カバンを地面に置き、聖書を左手に持ち替えた。
さらに間合いを詰めた。距離は約半歩弱。
私は右手で、影絵の「きつね」みたいな形を作り、
髪がきれいに分けられ、広く出ている真っ白なおでこの前に出すと、
中指で、思いっきり弾いた。
べしっ!

519 :1:2008/08/24(日) 11:38:26.83 ID:nsb0aY2q0
ユキ「痛っ……!」
春菜「ち、チイちゃん!」
こいつは顔をそらし、おでこを両手で押さえる。
春菜「チイちゃん、何するの!?」
千夏「ん? デコピンだけど?」
春菜「で、デコピンじゃなくて……それ、ちょっと乱暴じゃ……」
千夏「陸上部だったらこんなもんじゃ済まないよ?」
千夏「あんまり失礼で言うこと聞かない後輩には、往復ビンタが飛ぶんだから」
春菜「お、往復ビンタ……って」
千夏「……そうそう、それでね、川瀬。付箋貼ってあるところなんだけど」
おでこを押さえたまま、こいつは私を睨む。
ユキ「いらない……そんなもの」
千夏「人の好意は素直に受け取っといた方がいいと思うよ」
ユキ「神様なんて……信じてない」
気持ちは分かるけど、一応聞き捨てならない。
再び右手の「きつね」を上げて、再びおでこを弾く。
べしっ!
ユキ「あ痛っ……!」
春菜「チイちゃんってば!」
千夏「仮にもミッション系の学校にいたんだから、そういう口のきき方はないんじゃないの?」
ユキ「あなただって……信じてないくせに」
千夏「今はお前の話をしてるんだ。口答えは許さない」
こいつと春菜の非難の眼を無視して、私は聖書の一番大事なページを開いた。

520 :1:2008/08/24(日) 11:39:03.36 ID:Vl6E/oNM0
……マタイによる福音書:5.28
 「しかし、あなた方に告げるならば、情欲を抱いて女性を見つめる者は既に、
  心の中で姦淫を犯しているのです」

521 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 11:39:15.38 ID:ycc3u+/+0
さるさん帽子

522 :1:2008/08/24(日) 11:39:38.32 ID:Vl6E/oNM0
千夏「神様信じてなくても、お前はまずこの箇所を一日100回読め」
千夏「情欲は罪、姦淫は罪なんだから。いいね?」
ユキ「……」
ユキ「あなたが言っても、説得力ない」
千夏「……」
べしべしべしべしべしべしべしべし……!
春菜「チイちゃん! お願い、もう止めて!」
見かねた春菜が割って入り、こいつをかばう。
春菜「ユキさん、大丈夫?」
ユキ「春菜……痛いよ」
千夏「大した事ないだろ、デコピンじゃ人は死なないんだから」
春菜「チイちゃん!」
千夏「罪には罰が必要なんだ、春菜」
千夏「悪いことは悪いって、ちゃんと教えてやらないといけない……ほら、どいて」
私は、こいつから春菜を引き剥がし、
その胸に聖書を押し付けた。
千夏「で、どこまで話したっけ……そうそう、聖書のここ読めって話だよね」
千夏「お前さ、私や春菜にどうして嫌われるかって訊いたけど、ホントにどうしてだか分からない?」
こいつは胸の聖書を両手で受け取りながら、
上目遣いで私を見た。
ユキ「……春菜や千夏に……エッチなことをしたから……」

523 :1:2008/08/24(日) 11:40:09.31 ID:Vl6E/oNM0
千夏「50点」
べしっ!
ユキ「痛いっ……!」
千夏「無理矢理エッチなことをして、私や春菜を傷つけたから、が正解」
千夏「確かにね、いまさらエッチするなって言ったって説得力ないだろうから、そこまでは言わないけど」
千夏「もうちょっと慎重になること。さもなきゃ、今度は命が危ないよ」
ユキ「……私……あれしか知らない」
千夏「もう知らないじゃ済まされないんだよ。あんたのおかげで昨日私死にかけたんだから」
さすがにこいつも、驚いたように眼を見開いた。
ユキ「そんな……私……そんな……」
春菜「チイちゃん……それ、ホント?」
千夏「うん。本当」
私は頷く。

524 :1:2008/08/24(日) 11:40:46.75 ID:Vl6E/oNM0
千夏「友達が助けてくれなかったら、今頃ここにこうしていない」
春菜「そんな……どうして話してくれなかったの?」
千夏「きっかけなくてね、隠してたわけじゃないんだ」
千夏「で、続きだけどね、川瀬……」
槇(CさんがそうなるにはCさんの事情があったんでしょうし、)
千夏「お前がそうなるにはお前の事情があったんだろうけど」
槇(大事なのは、これからどうするか)
千夏「大事なのは、これからどうするか」
槇(あなたもそう思わない?)
千夏「お前もそう思うだろ?」
ユキ「……これから……なんて」
千夏「まず最低限、お前はもう人を傷つけちゃいけない」
千夏「人を傷つけるようなヤツに、友達なんてできるはずないからね」
ユキ「……知ってる、そんなの」
ユキ「でも、どうしていいか分からない」
……だから、こいつはずっとひとりなんだろう。
それは罪なのか、罰なのか。
……少なくとも、昨日私はひとりでいようとして、柳瀬からこっぴどく怒られた。
苦手な後輩からも説教された。私のことを嫌いだと言い切った後輩からだ。
だから、「ひとり」はきっと罪。
その罪を、これから正す。

525 :1:2008/08/24(日) 11:41:23.72 ID:Vl6E/oNM0
千夏「お前の携帯に、私からの着信履歴が残ってるはずだから」
千夏「何かあったら、電話よこして」
ユキ「……」
ユキ「……どうして?」
千夏「お前がひとりにならないためだ」
千夏「ひとりのままじゃ、お前はずっと同じことを繰り返すから」
ユキ「イヤ」
顔を上げ、こいつは初めてきっぱりと言い切った。
ユキ「どうして私があなたに電話しなきゃいけないの?」
ユキ「同情なんていらない」
ひろみ(何であなたはひとりになろうとするの!? わたしはあなたの力になっちゃダメなの?)
千夏「同情なんかじゃない。これは私たちの義務だ」
睨みつけてくる眼を、真っ向から睨み返した。
千夏「お前は私たちを傷つけた。これ以上、誰もそんな目に遭わせちゃいけない」
千夏「で、お前が私たちを傷つけたのは、ひとりだったから。そして傷つけるような方法しか知らなかったから」
千夏「どうすりゃいいのか、分かる範囲で教えてやる。分からなかったら一緒に考える」
千夏「お前に誰も傷つけさせないし、ひとりにもさせない」
千夏「……いいね?」
ユキ「……分からない」
ユキ「……あなた、私のことが嫌いなのに」
千夏「嫌いだよ。大嫌い」
千夏「でも、今のままのお前は危険だ。それは分かるな?」
千夏「どんなに辛いことがあったって、それで誰かを傷つけてもいいってことにはならないから」
ひろみ(あなたにはもう、絶望する権利も資格もない!)
千夏「お前にはもう、絶望する権利も資格もない」
ひろみ(ひとりで勝手に落ち込んで、ひとりで消えてくなんて絶対許さない! 私が許さない!)
千夏「ひとりで勝手に傷ついて、誰かを傷つけるなんて、私が許さない」

526 :1:2008/08/24(日) 11:42:32.36 ID:Vl6E/oNM0
……やっと分かった。私がこいつに伝えたかったことが。
わたしは、こいつに「友達」を教えたかったんだ。
時として容赦なく、こっちの心の中にずかずかと入ってきて、
ひとりでいることを、傷ついたままでいることを許さない、優しくて乱暴な、思いそのもの。
それは単に、「友達だから」なんていうきれい事だけじゃなくて、裏に色々な思いが隠れていることもあるけれど、
二ノ宮あたりは「偽善です」なんて笑いながら切り捨てるものかもしれないけど、
それでも……

527 :1:2008/08/24(日) 11:43:24.22 ID:Vl6E/oNM0
ユキ「……何それ」
ユキ「勝手に私の事決め付けて……」
ユキ「私の事なんて、何も知らないくせに」
千夏「知るわけないでしょ、聞いたことないもの」
千夏「訊けば教えてくれる?」
ユキ「……」
千夏「分かった。後で聞くから」
ユキ「後?」
千夏「電話。コレによこして」
ポケットから私の携帯電話を出して、ヒラヒラと振った。
千夏「待ってるから」
ユキ「……イヤ。絶対イヤ」
ユキ「あなたなんか、大嫌い」
千夏「じゃあ、私の勝ち、あんたの負け」
千夏「ずっと私に脅えながら生きていくんだね」
ユキ「そんなの知らない……あなたなんて、もう関係ない」
千夏「それこそ私の知ったことじゃないね」
気がつけば、私とこいつの距離が縮まっていた。
限りなくゼロに近かったその距離が、また開く。
私が、横で成り行きを見守っていた春菜の方に歩いていったからだ。
千夏「お待たせ、春菜。帰るよ」
春菜「……え? 終わったの?」
千夏「うん……こんなもんだと思う」
春菜「でも……」
私は春菜の手を引いて、
中庭の門を通り、外に出た。

528 :1:2008/08/24(日) 11:44:15.68 ID:Vl6E/oNM0
振り返ると、あいつもやっぱりこっちの方を見ていた。
猫の顔が、いろいろな思いを抱えた目つきで、こちらを睨んでいる。
足を止めた。
千夏「……言いたい事あるんだろ?」
ユキ「……」
千夏「ちゃんと聞いてやるよ」
ユキ「……」
私は待った。
こいつは何も言わず、睨みつけてくるだけ。
それさえも、こいつにとっては雄弁な解答なんだろうけど。
千夏「そっか……」
千夏「じゃあね」
今度こそ、私はあいつに背を向けて、歩き出した。

529 :1:2008/08/24(日) 11:44:55.41 ID:Vl6E/oNM0
春菜「ねえ……チイちゃん」
千夏「うん?」
マンションから大分離れた辺りで、春菜が声をかけて来る。
春菜「他にも言い方があったと思うよ……」
千夏「多分ね……でも、今更仲良くしようなんて口が裂けたって言えないし」
千夏「私があいつ嫌いなのは本当だし……誰かに嘘つくなんて、もうしたくない」
春菜「でも……助けたかったんでしょ?」
千夏「本人が望まなきゃ、無理だよ」
千夏「……望むような言い方、ってのはあったと思うけど」
……早坂、お前ならどう言った?

530 :1:2008/08/24(日) 11:45:31.67 ID:Vl6E/oNM0
苦笑した。
千夏「やっぱりさ……できないことは無理してやるもんじゃないのかな」
千夏「私には、セラピストの素質はないみたいだね」
結局、自分の気休めでしかなかったよ。二ノ宮、あんたの言った通り。
千夏「自分がされて嬉しい事が、他人にもそうだとは限らない……分かりきっていたことなのに」
髪の中に手を突っ込んで、乱暴にかき回した。
春菜「……チイちゃん……あんな風に言われて、嬉しかったんだ」
千夏「うん。嬉しかった」
千夏「昨日……昼間の話。柳瀬と、二ノ宮と、早坂が代わりばんこで電話かけてきてさ」
千夏「柳瀬は『お前に絶望する資格はない』なんて無茶なこと怒鳴りつけてくるし、二ノ宮は『春菜はお前を愛している』なんて言って来るし……」
春菜「秋穂ちゃん……そんなことを……」
千夏「あいつ……私の事が嫌いっても言ってたな」
春菜「それ、嘘だよ。秋穂ちゃん、チイちゃんのこと好きだよ」
千夏(本人からさっき聞いたよ)
千夏「あと……早坂は、『大切なのはこれからどうするか』って……」
千夏「そして最後に、春菜から電話来て……私、ここでこうしている……」
春菜「……ごめん、チイちゃん」
春菜「チイちゃんがそこまで思いつめていたなんて……思ってもなかった」
春菜「私……自分のことしか考えられなくて」
千夏「私もそうだよ……ずっと自分のことだけで精一杯で、自分の物差しでしか考えられなくて」

531 :1:2008/08/24(日) 11:46:24.96 ID:N4Nh+ZyK0
……代償。
あの時の自分が、今のあいつに思えて。
あいつとの事は、やっぱり今でも辛い記憶。
あいつを助けられれば、また自分を救うことができれば、あの辛さも少しは薄れるかな……なんて。
千夏(『心に愛がなければ、どんなに美しい言葉も、相手の胸に響かない』……)
千夏(聖書のどこらへんに載っている言葉だろ?)
やっぱり、私じゃ無理だったんだ。
あいつへの愛なんて、絶対無理だもの。
千夏「春菜……学校で、一緒に礼拝堂行こうよ」
春菜「……うん」
やっぱり……祈ることしかできないか……。
その時、私の携帯が鳴った。
取り出し、液晶を見る。
……川瀬の番号。
深呼吸して、受信ボタンを押し、耳に当てた。

532 :1:2008/08/24(日) 11:46:56.06 ID:N4Nh+ZyK0
千夏「……もしもし?」
ユキ「……」
千夏「川瀬?」
ユキ「……千夏」
千夏「そう。私」
千夏「何か用?」
ユキ「私……」
ユキ「私……あなたの事、嫌い」
千夏「私もだよ」
ユキ「大嫌い」
千夏「そうだね」
ユキ「……」
千夏「それだけ?」
それだけでも、十分といえば十分なのかも知れないけど。
ユキ「最初に会った時、覚えてる?」
千夏「覚えてるよ……玄関だろ」
ユキ「そう……」
ユキ「職員室……ついて行こうかって言われた時、本当は嬉しかった」
千夏「……」
千夏「そうか……」
ユキ「でも、今はあなたの事嫌い」
千夏「うん」
ユキ「……ごめん」
千夏「ダメ。許さない」
ユキ「……そうだよね……」
ユキ「春菜、いる?」
千夏「いるよ。代わろうか?」
ユキ「いらない。ただ、謝ってたって伝えて欲しい」
千夏「分かったよ……」
千夏「でも、伝えたいことは、直接自分で言ってごらん」

533 :1:2008/08/24(日) 11:47:27.52 ID:N4Nh+ZyK0
文句を言われる前に、私は春菜に携帯を差し出した。
春菜「ユキさんから?」
私が頷くと、春菜は携帯を受け取り、自分の耳に当てた。
春菜「もしもし、ユキさん?」
春菜「……うん、そう」
春菜「……いいよ、もう。終わったことだもの」
春菜「……うん、分かってる……それも分かってる」
春菜「……うん」
春菜「……」
春菜「……ねえ、ユキさん」
春菜「私たち、やり直すことできないかな?」
春菜「もう一度やり直して、今度はちゃんとした友達になるの」
春菜「ユキさんの考えてるような『友達』じゃないけど、私たちの『友達』も、結構いいと思うんだ」
春菜「……こういう風にお喋りしたり、時々は一緒にどこかに出かけたりするの」
春菜「すごく楽しくて、嬉しくて」
春菜「……私はこんなだから、みんなに迷惑ばっかりかけてるけど……」
春菜「助けてもらえると、とっても嬉しいの」
春菜「……うん。とっても素敵」
春菜「だから、ユキさんも、そういう風になろうよ……」
春菜「私、ユキさんと友達になりたい」
春菜「もちろん……私たちの意味での『友達』だけど……」
春菜「なれるよ……きっとなれる」
春菜「うん……大丈夫だよ、きっと」
春菜「うん……じゃあ、代わるね」
今度は春菜が、私に携帯電話を差し出した。

534 :1:2008/08/24(日) 11:48:02.49 ID:N4Nh+ZyK0
千夏「……もしもし?」
ユキ「……教えて。他に、何ある?」
千夏「何が?」
千夏「友達の作り方」
ユキ「留守電入ってたらすぐ電話することと……好意は素直に受け取ることと……他には?」
千夏「……」
千夏「言いたいことは、ちゃんと言う。今みたいに」
ユキ「うん……」
ユキ「あとは?」
千夏「……そうだねぇ」
千夏「新しい所行ったらさ、クラブ、入ってみるといいよ」
ユキ「クラブ……何がいい?」
千夏「陸上部」
即答した。

535 :1:2008/08/24(日) 11:48:40.72 ID:N4Nh+ZyK0
千夏「走るのは気持ちいいよ。運動は苦手?」
ユキ「……嫌いじゃないけど……そんなに得意でもない」
千夏「やってみなよ。一生懸命やってれば、見てくれる人は必ずいる」
千夏「流した汗は、自分も他人も裏切らないから」
ユキ「……」
ユキ「……うん」
千夏「落ち着いたら、また連絡しなよ」
ユキ「……うん」
ユキ「……千夏。私……」
千夏「何?」
ユキ「私……」
ユキ「やっぱりあなたの事嫌い」
千夏「私も。お前の事なんか大嫌いだ」
ユキ「大嫌い」
千夏「うん。大嫌い」
ユキ「……じゃあ……また」
千夏「あ、あとさ」
ユキ「何?」
千夏「……朝……言い過ぎた」
千夏「ごめん」
ユキ「……謝らなくてもいい」
ユキ「私……ひどいことしたんだもの」
千夏「……もう、するなよ」
ユキ「うん」
通話が、切れた。
溜息をついて、手の中の携帯を見た。
……うん。大丈夫なのかも知れない。
と、春菜が手をつないできた。
手が強くつかまれている。

536 :1:2008/08/24(日) 11:49:21.49 ID:N4Nh+ZyK0
千夏「……春菜?」
春菜「……嘘ばっかり」
千夏「何が?」
春菜「ユキさんのこと。嫌いなんて、嘘ばっかり」
千夏「何言ってるの? 私はあいつが大嫌いって……」
春菜「電話しながら、笑ってたじゃない」
千夏「え? 嘘……」
春菜「笑ってた。楽しそうにしてたもの」
千夏「ああ……それは多分、話が陸上部のことになったから……」
春菜「……」
春菜「進学したら、私も陸上部に入る」
……え?
春菜「携帯電話屋さんってどこ? すぐ何か持つから」
春菜「毎日電話して、昨夜みたいにイッパイするんだから」
千夏「あ、あのさ、春菜」
ひょっとして……やきもち妬いてる?
春菜「携帯屋さんってどこ? 教えて、チイちゃん」
千夏「……携帯ショップなら、駅前に行けばいくらでもあるよ」
春菜「じゃあ、そこ行く。チイちゃんは私のなんだから」
春菜が私の手を引っ張った。
千夏「こら、そっち違う。駅はこっち……!」
春菜に引っ張られ、どたばたしながら、
私は自分の携帯電話を操作して、
(ピーッ)
川瀬の電話番号を、アドレスに登録した。

………………。

537 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 11:49:32.09 ID:YOBRHhNGO
これほど>>1が頑張ってるスレも珍しいな

538 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 11:50:02.61 ID:ti1fKy5E0
さるさん

539 :1:2008/08/24(日) 11:50:05.10 ID:N4Nh+ZyK0
私たちと別れてから、あいつはあいつで色々あったらしい。
まず、私から押し付けられた聖書を地面に叩きつけ、
二ノ宮があちこちに引いたアンダーラインを見て、涙が止まらなくなって、
自分宛に残された留守録メッセージが、やっぱりとても心にしみて、
けど、やっぱり私の事は嫌いだったらしくて。
……こんな話を私が聞いたのは、卒業式の日からもう少し経ってから。
私と川瀬ユキが、
ちゃんとした友達になってからの事になる。

540 :1:2008/08/24(日) 11:53:43.53 ID:N4Nh+ZyK0
「起きよ、光を放て。
 あなたを照らす光は昇り
 主の栄光はあなたの上に輝く。
 見よ、闇は地を覆い、暗黒が国々を包んでいる。
 しかし、あなたの上には主が輝き出で
 主の栄光があなたの上に現れる。
 国々はあなたを照らす光に向かい
 王たちは射し出でるその輝きに向かって歩む。
 目を上げて、見渡すがよい
 みな集い、あなたのもとに来る。
 息子たちは遠くから
 娘たちは抱かれて、進んで来る。
 そのとき、あなたは畏れつつも喜びに輝き
 おののきつつも心は晴れやかになる。」
 ……
 ……
 ……
 ……
 ……
 異邦の人々があなたの城壁を築き
 その王たちはあなたに仕える。
 わたしは怒ってあなたを打ったが
 今、あなたを憐れむことを喜ぶ」
 (イザヤ書:60.1〜10)


「わたしは怒ってあなたを打ったが
 今、あなたを憐れむことを喜ぶ」

終わり

541 :1:2008/08/24(日) 11:54:14.23 ID:N4Nh+ZyK0
After graduation

春菜「……ねむい……」
隣で春菜が、ショボくれた眼をこすっている。
千夏「今朝早起きするの分かってたじゃない? 何してるのよ?」
春菜「……だって、興奮して眠れなくって……」
ふわぁぁ、と春菜が大きなあくびをした。

542 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 11:54:21.00 ID:ti1fKy5E0
おもしろかった

543 :1:2008/08/24(日) 11:55:09.70 ID:N4Nh+ZyK0
千夏「興奮したんだ……」
春菜「……」
春菜「そういう意味じゃないからね?」
千夏「そういう意味って、どういう意味?」
春菜「だから……そういう意味じゃないってば」
千夏「ふーん……」
耳元に、唇を寄せた。
千夏「つまんないなぁ……」
春菜「……チイちゃん、エッチ」
千夏「そうだよ、知ってるでしょ?」
私は微笑み、春菜の肩に寄りかかる。
時計はまだ、朝の7時も回っていない。

544 :1:2008/08/24(日) 11:56:08.65 ID:a/qufe270
在来線、始発駅。
平日の朝っぱら、下りの予約席はがらがらで、みんな春菜みたいに眠そうにしている。
人によっては、窓に寄りかかったり、座席を倒したりして、本格的に寝に入ってたりしている。
春菜「……私たち、ホントに旅行に出かけるんだ……」
春菜「何だか、まだ信じられないよ……」
千夏「何よぉ……私と二人っきりっていうの、イヤなの?」
よりかかった背中を、ぐいぐいと押しつける。
春菜「そ、そうじゃなくて……」
春菜「その……何て言うか、その……心の……準備が……」
千夏「大丈夫……優しくしてあげるから」
春菜「んもぅ……チイちゃん、槇さんに似てきたよ?」
千夏「私は早坂とは違うよ? だって私、春菜にしか興味ないし」
……私は、到底あいつみたいにはなれない。
煮詰まってる人間に、気軽に話し掛けて、
一番必要なことをきちんと伝えて、そいつを負担を軽くする、なんて。
……分かち合い、支えあう。
それが私と春菜の、次のステップ、らしい。
一緒にいるためには、守る守られるだけじゃダメだって。
でも、何を、どれだけ分かち合えばいいのか、まだ分からないから、
まずは、こうやって体で春菜に寄りかかってみる。
春菜「……びっくりしたよ」
千夏「何が?」
春菜「チイちゃんが、家に来た時には……」
千夏「可愛い娘さんを預かって遠出するんだもの。親御さんにはきちんとご挨拶しなきゃ」
春菜「……でも、『どうか春菜さんのことは私に任せてください』なんて、まるで……」
千夏「『しばらく』が抜けてるよ……結婚なんてまだするつもりないから」
春菜「……まだ?」
千夏「そう……まだ」

545 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 11:56:11.10 ID:dLaJVNgt0
お疲れさん
お金かけずにラノベ読めた気分になった

546 :1:2008/08/24(日) 11:56:49.54 ID:a/qufe270
私たちは、まだ学生。
世の中のこと、何にも知らない子供。
お父さんやお母さんに、ご飯を食べさせてもらっているヒヨッ子だから。
結婚とか、一緒にいる、なんて、まだまだママゴトでしかない。
だから、大人になりたい。
世の中に出たら、自分の脚で、ちゃんと歩けるようになりたい。
春菜と一緒に、ふたりで。いつまでも、どこまでも。
春菜のご両親に、自分でご挨拶にうかがったのは、私にとっては「大人」になるための第一歩だった。
私が、親の力を借りず、自分ひとりで、春菜と一緒にいるために。
……まあ「佐倉木」の名前は、親御さんには結構説得力があったみたいだけど、
これは、そういう家に生まれて運が良かったと考えることにした。

547 :1:2008/08/24(日) 11:57:37.80 ID:a/qufe270
春菜「ねえ……新幹線とかダメだったの?」
千夏「だって、お金かかるもの」
春菜「言ったのに……私だってお小遣いあるんだから、切符は割り勘に、って」
千夏「それは、とっておいて。今回は、私が誘ったんだから」
千夏「だから、私におもてなしさせてくださいな」
春菜「……チイちゃん、メイドさんになるの?」
千夏「そっか……春菜はそういうのが好きなんだ」
わざとらしく、申し訳なさそうな声を出す。
千夏「ゴメン、そっちは用意してなかった。最初に言ってよ……」
春菜「……そういうのって、どういうの?」
千夏「……今度教えてあげる」
コスプレは、春菜には多分難度が高いだろう。
その時、アナウンスが流れ、
がたん、と列車が動き出した。
規則的な揺れと音は、ただでさえ眠いのを、さらに心地よい眠りへと誘う。
私もまぶたが重くなる。
その時、背中の感触が、ぐらっ、と揺れた。
春菜「……きゃっ」
体勢を崩して倒れかけた春菜が、窓枠につかまって、眼を瞬かせていた。

548 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 11:57:46.91 ID:znjWFv6zO
触手のないロリなんて肉のないカレーと一緒だ!!!!!!

549 :1:2008/08/24(日) 11:58:13.05 ID:a/qufe270
それでは、最初のおもてなしを。
千夏「春菜、こっち……」
私は、春菜に寄りかかってた姿勢を正して、
千夏「え……ぁん」
千夏「ほら……」
春菜の肩を抱き寄せ、くっつけた。
千夏「眠ってていいよ……ちゃんと、私がつかまえててあげる」
春菜「……うん」
春菜は頷き、私の体に腕を回し、
無防備に身をすり寄せてきた。
まだまだ私は、春菜のことを守っていかなきゃいけないみたいだけど、
いつかは、私のことも寄りかからせてね、春菜。
……その……エッチ以外のことでも。
やがて、私のすぐ側で、春菜が寝息を立て始めた。
赤ちゃんのように無防備な寝顔と寝息に、私の心も安らいで、
だんだん眠くなってきた。

550 :1:2008/08/24(日) 11:59:07.32 ID:a/qufe270
列車は、進む。
まだ始まったばかりの、まだ小さな私たちのことを乗せて。
まぶたが重くなるのを感じながら、
もう寝入っちゃってる人たちに向けて、私はこっそり心で呼びかけた。

551 :1:2008/08/24(日) 12:00:04.07 ID:a/qufe270
千夏(ねえ、見て見て。この子、すっごく可愛いでしょ)
千夏(この子、春菜っていってね)
千夏(私の、彼女なんだよ)






〜fin〜


おまけ
ttp://wktk.vip2ch.com/vipper97278.bmp

552 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 12:02:09.11 ID:ti1fKy5E0


553 :シャビ ◆Shabi.I/dA :2008/08/24(日) 12:02:26.51 ID:rht489HfO ?2BP(4568)
お疲れさん
よかった。

554 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 12:03:44.26 ID:YOBRHhNGO


555 :1:2008/08/24(日) 12:05:29.17 ID:a/qufe270
12時間耐久でお疲れ様でした

見てくれた方
支援していただいた方
本当にありがとうございました

後最後に秋穂だけ画像がなくて可愛そうだったので

ttp://wktk.vip2ch.com/vipper97280.bmp

さよならー

556 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 12:05:49.37 ID:PDLhl7oUO


557 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 12:26:25.66 ID:ti1fKy5E0
槇!槇!

558 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 12:31:18.33 ID:mlYobYXA0
>>1がんばりすぎだろ…


559 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 12:32:59.71 ID:0W81pYa00
おつかれでした


560 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 12:33:46.60 ID:C72/9MAKO
お疲れ様でした( ^ω^)

561 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 12:54:56.20 ID:auRJL+Hb0
半日でこの量を投下とは
大体一冊分か?
>>1お疲れ様でした

562 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 13:15:46.90 ID:beWsz+6dO
遂においつけなかった…
乙!なんかよかった!!

563 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 13:28:17.51 ID:6Lho7vYJ0
>>1の教養パネェwwwwwwwwwwwwwwww

乙!

564 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 13:37:15.85 ID:ZP4wiX3M0
>>1お疲れ様!


565 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 13:47:47.05 ID:9o/FRZmiO
薫が健気で可愛すぎる・・・

566 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 14:13:55.95 ID:9o/FRZmiO
保守

567 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 14:15:38.46 ID:9o/FRZmiO
保守

568 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 14:27:23.66 ID:9o/FRZmiO
保守

569 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 14:34:44.75 ID:9o/FRZmiO
保守

570 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 15:00:18.55 ID:9o/FRZmiO
保守

571 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 15:11:44.18 ID:a/qufe270
まだ落ちてない!

ちょっとしたZIP
ttp://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org15992.zip.html

パスはヒロインたちの名前から連想できる
漢字2文字

572 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 15:19:53.74 ID:9o/FRZmiO
保守

573 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 15:27:07.69 ID:9o/FRZmiO
保守

574 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 15:29:50.21 ID:9o/FRZmiO
保守

575 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 15:36:43.80 ID:oEm1Tdgz0
a

576 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 15:43:29.21 ID:oEm1Tdgz0
>>571
春夏でやったけど解除できなかったぞ?

577 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 15:49:12.33 ID:9o/FRZmiO
保守

578 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 15:50:57.45 ID:rrVpBGJpO
>>1
なにこの自己満野郎

579 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 15:51:44.51 ID:9o/FRZmiO
保守

580 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 15:51:56.87 ID:a/qufe270
>>576

じゃぁわかりやすいようにヒント訂正

パスは主人公とヒロイン達の名前から連想できる
漢字2文字        ~~~

581 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 15:54:48.95 ID:fUfp6EIF0
昨日70レスくらいで寝た者だが、まだあったとはw

保守

582 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 15:55:31.20 ID:oEm1Tdgz0
>>580
ごめん、書き込んだあとにそのワードを試したらすぐに解除できた。
でも、解凍ソフトが使えないからどの道見れない。
今PCが壊れてて、セーフモードで起動してるんだ。

583 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 15:56:11.70 ID:9o/FRZmiO
保守

584 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 15:59:46.28 ID:oEm1Tdgz0
あれ?上手く解凍できたわ

585 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 16:01:54.42 ID:oEm1Tdgz0
何でこれモザイク掛かってんだよ!

ロリ百合娘たちのきれいなワレメやピンク色の膣が見えないと意味が無いだろ。

586 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 16:09:44.15 ID:a/qufe270
>>585
そうかすまなかった
不満なゴミ箱にでも入れておいてくれ

587 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 16:10:23.53 ID:fUfp6EIF0
いまVIPの保守しなきゃいけない時間の間隔はどれくらい?

588 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 16:12:11.02 ID:9o/FRZmiO
保守

589 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 16:13:45.66 ID:oEm1Tdgz0
>>586
誰が描いたの?

絵師に描き直してもらうことはできないの?

590 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 16:16:14.62 ID:a/qufe270
>>589
日柳こより先生

591 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 16:19:17.05 ID:9o/FRZmiO
保守

592 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 16:20:14.08 ID:fWFw6KlO0
ジェイペグでくれ

593 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 16:21:22.43 ID:fWFw6KlO0
すぐさま作者に苦情を寄せる>>589であった

594 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 16:26:14.24 ID:9o/FRZmiO
保守

595 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 16:27:13.34 ID:a/qufe270
>>592
jpegはすまないが各自で変換でもしておくれ・・

596 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 16:33:12.48 ID:9o/FRZmiO
薫=蒼星石で変換された
こんな感じの積極的な蒼星石もいいなと思った

597 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 16:35:01.25 ID:9o/FRZmiO
保守

598 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 16:38:29.22 ID:ZRZBw6MZ0
>>1すげぇ

599 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 16:39:00.80 ID:9o/FRZmiO
また糞スレを保守する作業が始まるお・・・

600 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 16:42:07.61 ID:9o/FRZmiO
保守

601 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 16:46:54.06 ID:9o/FRZmiO
保守

602 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 16:56:09.43 ID:9o/FRZmiO
保守

603 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 17:02:12.59 ID:9o/FRZmiO
保守

604 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 17:03:53.02 ID:9o/FRZmiO
保守

605 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 17:08:54.57 ID:9o/FRZmiO
保守

606 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 17:13:02.70 ID:9o/FRZmiO
保守

607 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 17:22:15.50 ID:9o/FRZmiO
保守

608 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 17:49:09.35 ID:9o/FRZmiO
保守

609 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 17:50:00.36 ID:xc6Ef9Rb0


610 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 17:50:42.38 ID:bA4v4QHsO
誰かまとめURLをくれ

611 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 17:59:53.93 ID:9o/FRZmiO
保守

612 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 18:03:57.90 ID:9o/FRZmiO
保守

613 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 18:13:21.55 ID:9o/FRZmiO
保守

614 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 18:15:46.05 ID:9o/FRZmiO
保守

615 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 18:26:10.21 ID:9o/FRZmiO
保守

616 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 18:34:11.98 ID:9o/FRZmiO
保守

617 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 18:42:03.13 ID:9o/FRZmiO
保守

618 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 18:47:47.80 ID:9o/FRZmiO
保守

619 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 19:00:45.92 ID:SUnYkSNb0
で、パスは?

620 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 19:04:12.60 ID:9o/FRZmiO
保守

621 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 19:11:34.00 ID:9o/FRZmiO
薫ううぅぅぅぅうう!!!!!!!!

622 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 19:16:46.59 ID:9o/FRZmiO
薫可愛すぎるよぉ

623 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/24(日) 19:27:31.72 ID:WwQy3slN0
この話だとユキちゃんいまいちかもしれないけど
本編のユキちゃんルートのユキちゃんは最高だよ!

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